転属先はアズカバン!   作:ロマン・モール

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思っていたよりもアクセスされていたので、次話を投稿します。



尋問と無口な議長

 私は手紙を読み終えると、顔にはっきりとした疑念が浮かび上がった。やはりこの手紙は私は絶対に書いていない。

 

 バグノールド大臣も私の表情を見て何かを察したようで、次官に手紙を渡すと早口で指示を出した。

 

「ウェッジウッド次官、今すぐ手紙の調査の手配を。闇払い局と、場合によっては神秘部にも。それから開心術師をこの部屋に寄越すように。それから秘書補佐官、あなたはウィゼンガモットヘ人事変更について連絡を」

 

 大臣はこちらを振り向くと杖を抜く。同時にウェッジウッド次官や秘書、秘書補佐官も一斉に杖を私に向けた。

 

「ミスター・テイラー、抵抗しないでくださいね? あなたは今服従されている可能性がある。拘束しなくては」

 

 私は大臣の目を見ると、静かに頷いた。

 仕方あるまい。服従の呪文にかかっていないと私自身は断言できるが、周りからは本当に記憶がないのか、記憶がないフリをさせられているのかわからないのだから。何より目の前には魔法大臣。暗殺だったり拉致だったりの可能性を考えれば妥当な措置だ。

 

「ストゥーピファイ!!  麻痺せよ!!」

 

 私は眼前に突きつけられた杖から迸る赤い光線を静かに受け入れた。

 

 それから私が医務室のベッドで目を覚ましたのは3時間後のことだった。

 後にウェッジウッド次官に聞いた話によると、大臣室から魔法法執行部の尋問室へ身柄を移し、無抵抗状態での開心術による記憶の審査を行ったらしい。

 その後、魔法省内の医務室まで運んでくれたそうだ。

 

 審査結果は何一つ問題なし。知らず知らずのうちに操られていなかったことにはひとまずホッとした。

 

 だが、件の手紙についての調査はしばらく先になるだろう。

 なにせ今の魔法省はめちゃくちゃ忙しいのだから。

 

 私がちょうどホグワーツに入学する際に始まった、イギリス魔法界をかけた戦争。

「例のあの人」を筆頭に、「死喰い人」と呼ばれる闇の魔法使いは急速に勢力を広げ、私が魔法省に入省した頃はまさに暗黒の時代だった。

 各地で闇の印が上がり、住人は決して外に出ようとしなかった。

 ダイアゴン横丁の店はドアや窓に木を打ちつけ、ラジオをつければ新しい行方不明者の情報が流れる。

 そんな中、魔法省職員はほぼ例外なく激務になっている。

 ただし、私を含むそもそも「普通」の状態を知らない職員からしたら何も問題はないのだが。なにせ戦争時の激務が「普通」なのである。

 

 ともかく、そんな激務の中でも特に忙しい魔法法執行部に対して、手紙の調査をさっさとしろなどと私から言えるわけがない。

 ウェッジウッド次官によれば、バグノールド大臣は調査が済み次第結果を送るとおっしゃっていたようだし、気長に待つしかない。

 

 と、ここで医務室のドアが開いた。

 先頭はバグノールド大臣に、闇払いの護衛か? 黒いローブをまとった人物が2人。それからあの髭を生やした男性はウィゼンガモットの議長だったはず。

 

「あぁ、ミスター・テイラー。ウェッジウッドからあなたが目を覚ましたと聞きましてね。大体はもうウェッジウッドが話したと言っていたが」

 

「これは大臣、わざわざありがとうございます。ただ、どうしてこちらに?」

 

 私は慌ててベッドから立ち上がり、大臣に一礼する。

 

「うむ、君に2つほど話があってね」

 

 大臣は私の目をまっすぐ見つめると、やおら深く腰を折った。

 

「まずは謝罪を。君は言うなれば被害者だったにもかかわらず、失神呪文で気絶させられ、開心呪文で尋問されたわけですので」

 

 これには私も大いに驚き、慌てて頭をもう一度下げる。

 

「いえ! その、あの状況ではそうするのが当然でしょうし、私も納得しておりますので! どうか頭をお上げください!」

 

「そうですか、それはありがとうございます」

 

 大臣は頭をあげると、こちらを見て少し疲れたように微笑む。

 

「それで、話というのは?」

 

「うん、先ほどの謝罪が2つある話のうちの1つめ。2つめはあなたの人事についてですね、ミスター・テイラー。件の手紙について、あなたが本当に書いていないということは開心術により確認されました。ただ、すでに辞令は下されたものであり、これを今更変更するのは厳しいとウィゼンガモットは判断しまして」

 

 ここで大臣は少し厳しい目を私に向ける。

 

「つまり、あなたにはやはりアズカバンの監獄長補佐官を務めて頂きたいのですよ、ミスター・テイラー」

 

 そうか、まあ薄々そんな気はしていた。

 辞令は本日付の物であったし、他の人物をいきなり引っこ抜くのも難しいということだろう。

 私はアズカバン行きか.

 

「そうですか、大臣。私はアズカバン行きですか」

 

 私の言葉を受けた大臣は、少し居心地が悪そうな顔をする。

 

「その言い方ですと少々誤解されそうですが、まあそういう事です。こちらとしても申し訳なく思ってはいますが、今は受け入れて頂けると助かります。ただし」

 

 大臣は鋭い目を私に向けると、厳格な口調で続ける

 

「ミスター・テイラー、これはあなたが望んだ職ではないとしても、非常に重要なポストである事は理解しておいてください。近頃、死喰い人の検挙率も増加傾向にありますし、アズカバンから脱獄される様な事があっては決してなりません。よろしいですね?」

 

 それはバグノールド大臣のおっしゃる通りだろう。

 いくらやりたくない仕事とはいえ、今までとは重要性が違いすぎる。

 もしアズカバンから脱獄者が出てしまえば、死喰い人供がますます勢いを増すのは目に見えているのだから。

 

 それに、万が一アズカバンで問題が起きれば責任を取ることになるのは私や監獄長だろうし。

 背筋を伸ばし、大臣に返事を返す。

 

「ええ、大臣。精一杯やらせていただきます」

 

 さて、私は失神呪文で寝ていただけで健康には問題無いし、医務室から出てももう構わないだろう。

 ひとまず荷物を纏めて、それから一旦魔法法執行部に顔を出しておくか。

 アズカバンについての詳細なデータと業務内容について確認しなくては。

 おそらく一週間以内にはアズカバンでの寝泊まりが始まるだろうし、一応守護霊の呪文の確認もしなければばなるまい。

 

 大臣にああ言った手前、生半可な気持ちで業務に携わるのは私自身が許せない。

 まあ、そもそもアズカバンでは一瞬たりとも気を抜けないことは間違いないのだが。

 

「それではバグノールド大臣、議長、失礼致します」

 

 一礼し、医務室のドアを開け、廊下へと足を進める。

 

 あれ? そういえばウィゼンガモットの議長、一言も喋らなかったな。

 今回の件について何かしら話でもあるのかと思っていたが。

 まあいいか、話す必要が無かったのならばそれでよし。

 これ以上面倒ごとを押し付けられるのはごめん被る。

 

 ────────────────

 

 アティカス・テイラーが去った後、その場に残ったバグノールド魔法大臣とウィゼンガモットの議長はボソリと言葉を交わした。

 

「議長? 本当に彼で大丈夫なんでしょうね?」

 

「あぁ、大丈夫さ。想定外の事が起きたとはいえ、元々彼は候補の1人だったしね。精々頑張ってもらおうじゃないか」

 

 大臣が心配そうに聞く中、議長はどこか楽しげに、指で顎髭をなぞりながら答えたのだった。

 

 

 

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ウィゼンガモット定期 人物監査ならびに適正職監査報告書

 

 

アズカバン監獄長補佐官 候補No.03

 

氏名:アティカス・テイラー

学歴:ホグワーツ魔法魔術学校 レイブンクロー寮卒業 最終学年席次第4位

現職:イギリス魔法省 国際魔法協力部 欧州並びに北米地区長

血統:半純血

守護霊:適正あり

犯罪歴:後述

 

入省してわずか3年で欧州並びに北米地区長のポストについている。

人当たりは良いが、自身を第一に優先する傾向あり。

杖使いは優秀。入省時は闇払い局へ特別推薦されるもそれを固辞し、協力部に留まる。

 

犯罪歴はないが、過去に*******検閲済み・機密情報*******において*******検閲済み・機密情報*******可能性が高い。

注意されたし。しかしそれゆえ、アズカバンにおける疑似隔離の優先性は高い。

 

以上

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もし連載を未完で終了する際には活動報告にて記載致します。それまでは不定期更新ですが、少しづつ執筆していきたいと思います。
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