片想い四角形〜恋するTS娘〜   作:布団から出られない

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我々はその真相を解き明かすべくジャングルの奥地へと向かった。


5 元男の友人を意識するのはホモなのか?

親友から電話がかかってきた。

 

性転換病にかかったとか、いきなり言われて困惑した。確かに、声が明らか女のものになっていたし、母親の声、にしては若過ぎたので、性転換したというのは本当だとすぐに分かった。あいつには姉妹はいないし、仲良い女子なんて彩芽くらいだったしな。それに、あいつと話している時の感覚は、他の人間と話しているときと違って、何か特別感がある。だからだろう、俺は少しの間困惑したけど、あいつが女になったってことをすぐに認識できた。

 

で、その後翔太と、彩芽に連絡取って、そのことを話した。そしたら2人とも、めちゃくちゃ慌ててたな。彩芽は暫く固まって声が出せないみたいだったし、翔太なんかは俺に『今すぐ蓮の家に迎え! 後悔してからじゃ遅い!』なんて取り乱した声で言ってくるくらいだ。後から聞くと、翔太のやつ、蓮が自殺しちゃうんじゃないかって心配になったらしい。実際、性転換病がきっかけで自殺っていう話は何件か起きているわけだし。

 

で、実際に2人とも蓮に合うと、塩対応なわけ。蓮の方は気づいてなかったが、こいつらお前のことめちゃくちゃ心配してたんだぜ? 面白いよな。2人とも必死で何ともないって顔を装ってるの。

 

んでまぁ、蓮が性転換病にかかったって、俺達の関係性は変わらないし、これから1年間何事もなく、気づいたら蓮が男に戻ってて、そのまま過ぎ去るんだろうなって思ってた。

 

けど、最近、そうじゃなくなるんじゃないかって、ちょっと焦りを感じてきてる。

その兆候が見られたのは、蓮が初めて女子制服を着て登校してきた時だ。びっくりした。

あの蓮が、滅茶苦茶可愛く見えた。勿論、顔立ちに蓮らしさは残っている。けど、それでも女になった蓮は、クラスの中でも1、2を争うくらいには可愛かった。

 

それなのに蓮のやつ、自分の可愛さを自覚してなかった。

自分からスカートをたくし上げてきた時は、それはもう焦った。そこから更に俺と翔太の前で彩芽と下着の話をしだすわけだから、もうそりゃ……。

本当に、心臓に悪いなって。

 

しかも後日。その下着選びにやってきていた蓮と偶然会ってしまったのだ。でも、腐っても俺は蓮の親友だ。蓮が下着コーナーに恐怖している姿を見て、俺はマイベストフレンドのために! その重い腰を上げ、勇気を出して共に女性用の下着コーナーに入ることを決意したのだった!!

 

……断じて蓮の上目遣いが可愛かったからとかじゃない……多分。

 

はぁ………。正直、蓮のこと、少し異性として意識し始めてしまっているっていうのはある。

こいつは俺の親友だぞ、元男だぞって、そう言い聞かせてても、やっぱりどうしても意識してしまう。

 

男に戻るかもしれないんだぞって、何度も言い聞かせた。でもそしたらそのうち、あいつと一度でも交われば、あいつはもう二度と男に戻れない。最悪、襲ってしまえばいい。なんて、恐ろしい考えが、ほんの少しではあるが湧いてくるほどに。こんな感情、親友に対して持ち合わせちゃいけないんだろうに。

 

まだほんの数日しか経ってないのに、こんなに心を掻き乱されてる。あと1年もこれが続くとして、俺は耐えられるのか……?

 

「いや、大丈夫か俺。割と蓮のこと本気になっちまいそうだ」

 

蓮とは気が合うし、一緒にバカもやれる。それは、蓮が女になっても変わらない。そう、変わらないんだ。一緒にいることの心地よさも、隣にいて一緒に馬鹿騒ぎすることの楽しさも、全く変わらない。ただそこに、ちょっとドキドキさせられてしまうことがあるっていうのが追加されただけで。

 

そう、はっきり言って、蓮と結婚したら、滅茶苦茶上手く行くんじゃないかなって気が……。って俺、何考えてるんだ。蓮だぞ? 親友だぞ? 親友のことそんな目でみるなんて、それはさ……。

 

「だいぶ不味くないか?」

 

正直、このまま1年経って、蓮が男に戻ったとしよう。

俺は、蓮に対して、全くの負い目なく接することができるか?

 

女の頃の蓮を意識しないと、そう断言できるか?

 

「もし、俺が女の頃の蓮を引きずってて、蓮が男に戻った後も、蓮のことを意識しちまったら……」

 

それ、もうホモじゃん。てか、今の蓮にドギマギさせられてる時点で、それはもうホモでは?

 

「俺はホモだったのか…?」

 

そもそもホモって何だ? ホモサピエンスか? なら人類の起源か? ってことは、俺は人類の起源な訳だから、何も間違ってないな! つまり、ホモは正常だ!!

 

「何考えてんだ俺………」

 

現実逃避が強引過ぎた。これははっきりさせておかないといけない。

蓮に対して、どうするか。自分を抑制し、蓮の男の頃を思い出して、女の蓮を頭から消し去るか。

もしくはいっそのこと、女の蓮に恋してみるか。

 

いや、ダメだろ。親友に恋は。友達から恋人に、はよくある話だが、俺と蓮の間柄でそれはないだろ。

 

「こんなになるなんて思ってなかったぞ…。蓮のやつ、どう責任とってくれんだ……」

 

いや本当にどうしてくれんの? もう俺お婿に行けない……。いや、婿入りするつもりはないけど。

 

「大体、あいつは彩芽のことが好きなんだぞ……俺なんかが挟まる余地なんて……」

 

そういえば、百合の間に挟まる男は最低、みたいな文化があったな。今の蓮は女だから、彩芽と蓮の間に挟まることになる俺は最低なのか?

 

「いやでも別に俺は彩芽に興味があるわけじゃないし……」

 

ぶっちゃけ彩芽のことを恋愛的な目で見ることって一生ないなって思う。多分彩芽も同じこと思ってるだろう。

いやまぁそれと同じくらい蓮とはないと思ってたわけだけど。てか男だったし……。

 

それが蓮が女になった途端これだ。改めて考えると、俺って最低なのでは?

 

「いやでもだって、あいつ可愛いし……」

 

って。口に出すとやばい。

頭の中に、蓮の顔が思い浮かぶ。可愛い。やばいな、口に出してしまったことによって、蓮の可愛さを再認識してしまったかもしれない。

 

「落ち着け落ち着け、相手は男だぞ」

 

俺は男の頃の蓮の顔を思い浮かべる。いや、女の時とあんま変わらないぞ? 何でだ?

 

「あいつ元から可愛かったってことか……?」

 

いや、そんなことある? あいつそんなに女顔だったか?

てか、このままじゃ蓮が男に戻っても、俺の脳みそは蓮の顔を可愛いと認識しているわけだから、あれ? ダメじゃね?

 

「本格的にやばくなってきたってやつだこれ。流石に彩芽か翔太辺りに相談した方がいいか?」

 

いや、彩芽には言いづらいよな……。かと言って翔太に言ったら、絶対弱みにされる。ことあるごとに『咲が蓮のこと意識してたこと言っちゃおっかな?』なんて風に脅されるに違いない。

 

あーあ。こういう時の相談事に1番向いてるのって、蓮なんだけどな。今の悩みが、その蓮についてのものなもんで、1番相談したい相手に相談できない状態になってしまっている。いや、内容的には1番相談したくない相手だな。

 

あーあ。考えれば考えるほど沼にハマる。あいつ魔性の女すぎるだろ。

 

もしかして俺、本当に蓮のこと好きになってるんじゃ……。

 

「好き…………」

 

試しに、一つ、呟いてみる。

あ、これやばい。

 

「好きだ、蓮………」

 

なんか、感情が波のように溢れてくる。うまく言い表せないけど、なんか、凄い………。本当に俺は、蓮のこと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、何やってんだ俺………」

 

唐突な自己嫌悪。親友に対して、変な感情を持ってしまったことに、ひどく罪悪感を覚える。

恐ろしや性転換病。聞いた当初はこうなるなんてまったくこれっぽっちも予想していなかった。

 

「はぁ………」

 

俺はこの悩みを、どうすればいいのだろうか。

俺は、悶々とし続ける。

 

結局、この日は一睡もできなかった。

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