【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
私は星野アイ、アイドルだ。
ここ最近に出来たばかりの私立陽東高校という普通科だけじゃなくて芸能科(未成年のアイドルや俳優などテレビ関係の子供が通える学科)もある。こういう高校があるのはわりと助かる。
なんとかちゃんも新しい高校ということもあって普通科で受験してみようかな?と言っているし、二人とも受かったら一緒に通おうねと約束した。
あとで勉強を教えてあげないとだ。
「アイさん、僕も行きますね」
「………ここ三年の教室だよ?」
「えぇ、そうですね。それが?」
「なんとかちゃん、任せた!」
私の言葉に「うえぇ!?」なんて驚いているなんとかちゃんを見て見ぬふりする。ほんとにごめんね、どうも勉強会をしてからまともに神木のこと見れないというか、なんというかあれなんだよね。
にやける?ほぐれる?なんて例えればいいのかは分からないけど。神木の顔を見ると嬉しいような、恥ずかしいような気がする。
「ほ、星野さんは、えと、あれだから!」
「あれとは?」
「ほ、ほら、あれだよ!あれ!」
「………ハッ、ついに僕の指輪を!?」
いや、それはまだないから。
まだってなんだよ、もう!!私はトップアイドルなのになんでこんなやつのこと気にしなくちゃいけないんだ。
ふぅーーーっ、まずは落ち着こう。
神木のペースに飲まれるのはまずい。っていうか、なんでこいつは三年の教室に我が物顔で出入りしてるのに誰も注意しないの?
そんなことを思っていると神木の顔が目の前に現れた。どこか不安そうな表情で私を見ている。ぐっ、なによ、そんな顔されても指輪は受け取らないし、君と付き合うつもりもないからね。
………はあ、もう帰ろ。下校時刻を知らせるチャイムを聞きながらカバンに教科書やお弁当箱を入れ直す。どうも形が揃わないと気持ち悪い。
「アイさん、僕達も帰りましょうか」
「……そうだね」
やっぱり、なんかムカつく。
私は校門でなんとかちゃんと「また明日ね」という挨拶を交わして神木と一緒に通学路を歩く。彼に付きまとわれる前はママが迎えに来てくれたり、シャチョーやミヤコさんが来てくれたりもした。
「……アイさん……」
「なに、神木」
ふと私の横から消えた神木を探すように後ろに振り返るとまた指輪の入った小さな箱を取り出す彼になんとも言えない感情を抱きつつ、いつもより真剣な眼差しの彼を蹴ることも逃げることもしないで見つめ返す。
神木は私とおんなじ白い星を宿している。あれ?彼と会ったときは黒かったような気がする。そうだ、夢の中のカミキヒカルも黒い星だった。
「僕は、僕は貴女と夢の続きを見たい!あんな悲しくて辛い、誰も報われないバッドエンドなんかにはしない!!だから僕と結婚して……ッッ」
「もう、なんで肝心なところで泣くのさ」
ちょっぴり呆れながら彼の差し出す小さな箱を受け取り、私は左手の薬指に嵌める。さすがにダイヤモンドとかはついてないけど、彼が一生懸命にデザインしてくれた指輪を彼に見せつける。
「全くしょうがないなあ、
「すみ゛まぜん゛…ずるっ、でも」
「ほら、帰るよ!」
「………ぐすっ、はい…っ…」
私は泣いているヒカルと手を繋ぎ、ママやシャチョーたちになんて言おうかと考えながら左手に嵌めた指輪を見て嬉しくなる。
そう頭の中に言葉が過った。
うん、そうだね。今度はちゃんとヒカルに指輪を貰えたし、ちゃんと愛してもらえるよ。だからもうゆっくりしていいんだよ。
〈君と夢の続きを〉
『アイ』と『カミキヒカル』の記憶。
自分と似た人物の記憶を辿るのはおしまい。これからは自分たちで進んでいく。遊んだり、デートしたり、喧嘩したり、ちょっぴり照れくさい平和な世界でまた君と……。