【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
我が家の朝ごはんは変わっている。
まずはオーブントースターにアイと一緒に捏ねておいたパンをセットする。斎藤社長曰く「あいつは食べるのにもトラウマがある。だから出来るだけ気遣ってやってほしい」と言っていたので、ならばとパンを一緒に作ることにした。
みんなが買える市販品を使うのも考えたけれど。アイにとっての母親の味を塗り替える。そのつもりで料理していこうと思う。ごはんは美味しく食べたいし、美味しく食べて貰いたいと思うのは当たり前の感情だと私は認識している。
そんなことを考えているとパジャマ姿でモゾモゾと不自然に動いている物体を見つけ、ゆっくりと彼女の目の前に座る。直立して彼女を見下ろすような体勢はNGだ。しっかりと目線を合わせながら「おはよう」と伝える。
「……ままぁ…おはぁ……ぐぅ…」
いや、寝ないでね?
ようやく40kg台になってきたアイを抱き上げ、洗面台で歯磨きをしてあげ、お湯で顔を洗って洗顔クリームを塗って洗い落とし、彼女の肌に優しい保湿液に乳液と塗っていく。
それを終えるとリビングに用意しておいた朝ごはんを食べてもらうために彼女を木製の椅子に座らせて、ちょうど良く焼けたパンを差し出す。ジャム、チョコ、ピーナッツ、ブルーベリー、マーガリン、バターなど置いていくが彼女は何もつけずにモソモソとパンを食べ始める。
ああ、ちゃんと野菜とベーコンエッグも食べないとだめだからね?と言いつつ、パンだけを食べようとするアイに仕方ないかと納得する。
ホットココアか紅茶かを問いかけると「……ここぁ」と気の抜けた声が返ってきたのでポットのお湯をココアパウダーと角砂糖の入ったマグカップに注ぎ、熱いからねと伝えて手渡す。
なんかみさえさんみたいだな。
ふと頭に浮かんでしまった事に納得するところもあるが「アイのためだから」と考えれば辛くもないし、苦しくもないので問題ない。むしろ仕事と考えれば楽しいかもしれない。
「……今、何時だっけ………」
もう7時27分ね。と、アイに伝える。
すると、彼女は今日も今日とて焦ったように部屋に戻ってブラッシングに勤しみ、斎藤社長が「せめて義務教育はきっちりと受けろ」と通わせてくれている学校の制服に着替える。
うん、歯磨きも出来てる、偉いわね。
「ママ、行ってきます!」
はい、行ってらっしゃい。
やっぱり、我が家の朝は変わっている。
そう思いながらアイの持っていき忘れたお弁当を掴み、すでにエレベーターに乗り込んだ彼女よりも早くマンションのエントランスに辿り着き、お弁当と水筒を手渡す。
「えへっ、ごめんね!」
今度は気を付けてね?
そう言ってアイを見送る。よし、私も着替えて斎藤社長とミヤコ副社長のいる事務所に行こう。休んでいた分の仕事を取り戻すつもりで働く!
〈星野家の朝ごはん〉
星野ママ(そっくりさん)の手料理。
トラウマで他人の作ったものがあまり食べられない星野アイも安心して食べることの出来る手作りパン。彼女と一緒に作ることで不安を取り除き、母娘の仲を深めることができる。それでもジャムやバターなど加工品はつけようとしない。