【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
僕は星野愛久愛海、わりと有名な俳優だ。
母さんのお世話になった人というのもあるが中学三年生の僕を恋愛リアリティショー「今からガチ恋始めます」に出演させるのは中々に覚悟と度胸を必要とする試みだ。
下手したら僕も番組も炎上するぞこれ。と、呆れながら今ガチの詳細の書かれた資料というか台本といえばいいのか。まったく分からない紙束を読んでいると父さんが部屋に入ってきた。
せめてノックくらいしろよ。
「やっぱり煮詰まってるね、アクア」
そりゃあそうなるよね。と言いながら僕の台本を掠めとると「恋愛リアリティショーにこういうのは必要ないから。どっちかといえば普通の男子中学生としていれば良いだけだよ」と笑ってそう言った。
いや、そういうわけにはいかないし。かなのやつもなんでか「アクアのバカ、もう知らないからね!」なんて怒鳴るだけ怒鳴って着信拒否するし、ほんとに分からないことだらけだ。
……ところで、今度は何したの?
そう左頬を押さえている父さんに聞く。すると「いやあ、寝るアイさんにキスしたら蹴られちゃったんだよね」なんて笑いながら教えてくれる。
やっぱり父さんが母さんと結婚できたのは奇跡に近いのだろうか。そんなことを考えていると父さんはいつの間にか消えていた。
いや、今ガチの台本は置いていけよ。
「アクアーっ、今ガチにでるってほんと?」
いきなり僕の後ろに現れたルビーにビビりつつ、ゆっくりと振り返る。ここ高層マンションのはずなんだけど。どうして、取っ手も縁もない壁を伝って窓から侵入できるのかほんとに謎すぎて仕方ない。
「アクアは私のでしょ?」
………どちらかといえばルビーが僕のだね。
そんなことを考えながらもギリギリと肩に食い込んでいくルビーの爪を引き剥がす。できれば、うん、あれだね、もうちょっとだけ優しくしてくれるかな?僕は父さんとは違うからさ。
「そういえばアイドルの話は?」
「あれは保留だって言われた。ママやヒカルはやっていいよって言ってくれてるのに、ほんとに世間は余計なことしかしない。……あわよくば家族結婚もありにしてくれればいいのにね」
それは無理だろ。
そう言ったらルビーに押し倒され、ガブガブと首筋や耳、はてには口までルビーに噛まれていく。ちゃんと怪我しないように甘噛みだ。
………………………いや、よくないな。
僕はルビーを押し退けて座り直す。まずは落ち着こう、未だに僕の首筋にルビーが噛み付いているのはこの際だから諦める。
しかし、どうやって説得しよう。さりなちゃんことルビーとは結婚する約束をしてしまっているし、かなもなんでか僕が今ガチに出演するのを嫌がっている。ウ~ン、やっぱり不思議だ。
〈アクアはにぶちん〉
二つ名。
とあるドラマの裏側をこっそりと撮影していた監督陣営のお遊びによって露点してしまった星野愛久愛海の性格である。ちなみに本人は全く理解しておらず、有馬かなと仲良くしているのは当たり前の事だと発言している。