【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
僕は星野愛久愛海、中学三年生だ。
母さんの知り合いに『今からガチ恋始めます』へ出演してほしいというスカウトを受け、かなやルビーに噛まれたりつねられたりと散々な目にあいながら撮影当日を迎えた。
かつて父さんのいた「劇団ララライ」に所属する黒川あかねとは少しだけ面識はある。だが、それは舞台やドラマの時に話したりした程度だ。しかし、ルビーや母さんの愛読するファッション雑誌のモデルを務める鷲見ゆきがいるのは意外だ。彼女はどちらかと言えば清楚系で売っている。
MEMちょに関してはスマホやパソコンで見たりしただけ、本名も年齢も不明の謎の人物であるのは確かだが、どうにも僕を見ている目が薄暗い。…僕はなにかしたのか?
あとは舞台の振り付けやダンスのレッスンで一緒になることの多い熊野ノブユキとイケメンでバンドマンなのに影が薄いことで定評のある森本ケンゴだがやはり影は薄い。
「星野くん、君の番だよ?」
黒川の声で考えるのをやめる。
どうやら僕以外はとっくに自己紹介を済ませているらしい。ああ、タイミングをミスったと溜め息を溢しそうになる。
「初めまして、星野アクアです。なぜか中学生なのに今ガチにいます」
「いや、ほんとにそれな?」
僕の自己紹介にズバッと突っ込みを返してきた熊野を見る。明らかにわざと僕を挑発しているので「うん、ほんとにそれなんだよ」と言い返す。すると彼はにやりと憎ったらしい笑顔を向けてきた。
「久しぶりだな、マリンちゃん」
「殺すぞ貴様」
星野アクアマリン。
芸名やあだ名は「アクア」だ。しかし、熊野からのあだ名は「マリンちゃん」という明らかにふざけているとしか思えない呼び方だ。
「僕だって知ってるんだぞ、そっち系の振り付け師に『のぶきゅん』って呼ばれてるの」
「やめろ。それはほんとにやめろ。あれだけは思い出したくもねえ」
ふいっと視線を反らす熊野を見てコロンビアを決める。ふと僕を見つめる共演者の視線やカメラに気付き、僕もまた熊野と同じように視線を反らす。……なんか黒川が「星野くん、かわいい」とか言ってるけど、そういうのは聞きたくない。
「こほん。えぇっと、じゃあ何する?」
「MEMちょ、さすがに無理だよそれは」
「そうですよ、台本だってないし」
「いや、私はやるよ!?ゆきもあかねも手伝ってね、あと男子はおふざけなしだからね!!」
「「「……すげえ、オカンだ」」」
「オカン言うな!!」
ぺちんっ!と熊野の頭にシュシュが当たり、僕の顔もシュシュが当たる。そして、なにもしていなかったはずの森本には角つきカチューシャがぶつけられた。森本は森本で僕の足元にひれ伏して「なんで、おれだけ?」と狼狽えている。
〈今からガチ恋始めます〉
恋愛リアリティショー。
星野アクアの出演する生放送作品。わりとハチャメチャすぎるスタートを切ったおかげで視聴率はうなぎ登りだそうだ。尚、クールなイメージのあった星野アクアは「キレ芸するやつ」としても人気になりつつあるが、基本的には共演者たちで青春を謳歌している。ちなみにアクかなファンは「やめろ!それはかなちゃんのだぞ!!」や「アクアきゅんとかなたんのラブラブコンビに割り込みは許さん!」というコメントを送っている。
〈星野アクア〉
若手俳優。
クールなキャラでやって来たのに初手でぶちギレたら「マリンちゃん呼びは熊野ノブユキだけ」という暗黙のルールを作られた挙げ句、わりと「今ガチ」の中心人物として行動するようになってしまった。ちなみにシスコンとマザコンを兼ね備えた究極の存在である。また、幼馴染みは大切だと公言し良い方に燃えた。
〈黒川あかね〉
舞台女優。
「劇団ララライ」所属の女優。台本の無い恋愛リアリティショーに緊張していたが初手でおふざけをする星野アクアと熊野ノブユキのやり取りを見て、こうすればいいのかと納得する。尚、出演後に「あかねさん、年下が好きなのでは?」という考察が飛び交っている。
〈鷲見ゆき〉
ファッションモデル。
星野母娘の愛読するファッション雑誌のモデル。表紙や特集を組まれるほど売れに売れまくっている。女優業の開拓も兼ねて「今ガチ」に出演することを決め、初手で好きにやって良いと把握する。
〈MEMちょ〉
ユーチューバー。
無所属のユーチューバー。お馬鹿キャラでやっていたのに、わりと何でも出来るオカンとしての一面を発揮してしまったためチャンネルで「来たで、オカン!」や「まっとったでぇ、オカン!」等と言われるようになってしまった。ある意味では「今ガチ」の被害者とも言えるだろう。
〈熊野ノブユキ〉
ダンサー。
何度か星野アクアとレッスンで一緒になったりしたこともあり、取り繕ったりせずに普通に話しかけるため悪友のようなポジションにいると自覚しながら鷲見ゆきにアプローチを仕掛けている。ちなみに森本ケンゴと彼女を取り合っているが、そっち系の振り付け師の話でよく気落ちさせられる。
〈森本ケンゴ〉
バンドマン。
自他共に認めるほど影の薄いバンドマン。イケメンなのに影が薄いという理由で一定数のファンはいるが、基本的に応援されることは少ない。鷲見ゆきを巡って熊野ノブユキとやりあっているが、振り付け師の話を聞くたびに慰めている。