【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
僕は星野アクア、「今ガチ」出演者だ。
スタッフや監督に「えっとね、アクアくんが恋愛するのは共演者とだけ」というお叱りを受けたりと大変な生活を送っているが、黒川やMEMちょは「星野くん、そういうところあるよね」とよく分からない納得をされてしまった。
「ねえねえ、星野くん」
「ん。なに、MEMちょ?」
「あかねちゃんが配ってたんだけどさ。どうすればいいのかな、これ?」
MEMちょはそう言って「黒川あかね式今ガチ的戦略恋愛術」というドラマ一本分の厚さはある本を手渡してきた。恐る恐る受け取って本を開き、ペラペラと流すように読んでみる。
………………うん、あれだな。
ほとんどかなやルビーにやってるやつだ。しかし、この多方面ラブコメ好き好きゴミ屑野郎というのは僕のことだろうか?
いや、そんなわけないか。黒川とは「劇団ララライ」で何度も共演してるし、そんなこと思われてるなんてあり得ないはずだ。そう信じてMEMちょを見るとサッと視線を反らされた。
「…MEMちょ、こっち向けよ」
「い、いやあ…ちょっと無理かなあ?なんて」
「フーン。じゃあ、僕がそっち行くよ」
「うえぇ!?ちょ、ちょっまっ!!?」
僕がにっこりと笑顔を見せるとMEMちょは逃げるように後退り、どうにか僕の顔を見ないように必死に視線を反らす彼女の顎を軽く掴むように押さえつけ、壁ドンしながら顔と顔の距離を10cmくらいまで思いっきり近づける。
うるうると濡れた瞳、緊張しすぎて紅潮した顔、どこか期待や不安で震える身体。やがて恥ずかしそうにギュッと目を瞑って顔を上げる……あれ、MEMちょってマジでチョロいやつなのか?
そんなことを思いながら僕より小さくてほっそりとしたMEMちょを見下ろす。………まあ、さすがにやり過ぎだな。
「ごめんね、怖かった?」
「……へ?あ、ああ、へーき!へいきだよ!?ほんとだよ、へーきだからね!?」
うん、チョロかわいい。
しかし、黒川の作ってくれた台本た通りにやってるだけなのにMEMちょもすごい演技力だ。ユーチューバーじゃなくて女優やアイドルを目指すのもありなんじゃないか?なんて考えながら僕達のやり取りを赤面して見ているみんなはなんなのだろうか。
「マリンちゃん、マジで刺されるぞ?」
「いや、(元医者だから)刺すのは得意だぞ」
「おまっ、ほんとによぉ…」
さっきから熊野のやつは……あーっ、なるほど、そういうことか。確かにさっきのはファンを勘違いさせるようなことだったし、そりゃあ炎上して刺されるかもしれないけど。
〈MEMちょは乙女さん会〉
カップリング。
星野アクアによって露点してしまったMEMちょ氏のチョロさと乙女っぷりにやられたファン達の間で盛り上がっている「アクかなしか勝たん会」並みに生まれたアクメム推しの応援団である。今ガチ視聴者は「星野アクアの行動にドキドキするMEMちょ氏はかわいい」や「やはりアクメムだよな」なんて言うことが多い。