【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
私は星野アイ、アイドルである。
今日は佐藤社長の取ってきた舞台のお仕事をする。ただ、はっきりと言えば退屈だ。むずかしいレッスンしたりすることはあるけど。佐藤社長の言っていた私の経験値になるような出来事は起こらない。
そう思っていた。いや、そう私が思いたかったんだと思う。ソイツは誰もが気を許してしまうほど優しげな笑顔でママと話していた。
なんで私のママに近づいてるわけ?なんてことを考えながらママと話すソイツの目の前に立つ。どこか驚いたような、なにか期待するような、そういう眼差しで私を見上げるソイツはまた笑う。
「はじめまして、神木ヒカルです」
「…星野アイ」
「ああ、貴女がB小町の…!」
なんか白々しい言い方だ。
ちょっとだけムッとしそうになるのを我慢して「ありがとう」と返して握手をする。……なんかすごいねちっこい触り方だけど、ソイツは真剣に私の右手を確かめるように握っている。
私の後ろでママは「仲良くできそう?」と聞いてくるので直ぐに答えることはできず、ソイツがいるのに「…たぶん?」とビミョーな感じでママに返事を返してしまった。
「ところで、アイさんと彼女は?」
「……あの人は私のママだよ」
「……お母さんか…なるほど………」
なにが「なるほど」なのだろうか。
そして、またソイツはニコニコと笑う。
やめて、そんな薄っぺらな笑顔を私に向けるの。………ああ、なるほど、これって同族嫌悪ってヤツなのかな。ふとそんなことを考えてしまうけど。どうしてかママは私の頭を優しく撫でてくれた。
まあ、どうでもいいやこれくらい。
「星野さん、ちょっといいですかぁ!」
後ろでスタッフの人に呼ばれて「すぐに行きます。アイ、気を付けてね?」と言ってママは離れていく。私とソイツは二人っきりになった。
「アイさんは幸せそうですね」
そりゃあそうだよ、ママがいるもん。
そう言うと思ってすぐに口を閉じる。なにかを狙ってる?いや、どっちかと言えばコイツはなにかを聞きたがってるのかな?
「僕と付き合ってくれませんか?」
「すごい、とーとつだね」
「そうですかね?けど、貴女にシンパシーを感じているのは本当ですよ。たぶん、貴女は僕の知らないものを知っている。それが気になるんです」
「……えと、つまり?」
「僕は貴女に惚れた。ただ、それだけです」
こいつ、あれだ。
ミヤコさんの言っていた「男はみんな狼なのよ!」というやつだ。どうしよう?こういうときの断り方って習ってないし………ウ~ン、困った。
「じゃあ、まずは友達からということで」
「……そっちが仕切るの?」
「アイさんは悩んでいるようなので」
やっぱり、なんかこいつは白々しい。
「それとお母さんにもよろしくと」
こいつは嫌な嫌な嫌なヤツだっ!!ほんとは私じゃなくてママに惚れてるんだ。ぜったいにこいつをママと付き合わせるもんか。
ママは私のだもん!!
〈神木ヒカル〉
舞台俳優。
数年前に「テレビで見た星野アイ」と「共演する星野アイ」の違和感に気づき、それとなく探りを入れようと彼女のマネージャーに話し掛けたら大人になった星野アイその者で驚いた。その後、星野アイ本人に「付き合ってほしい」など告白をする。だが、彼女には「どこか白々しくて嫌な嫌な嫌なヤツ!」と認識されている。