【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
僕は星野アクア、「今ガチ」演者だ。
最愛の恋人のかなを付け狙っている黒川あかねと壮絶なエピソード語りで幾度となく勝利してきたものの。とうとう痺れを切らした黒川あかねに壁ドンならぬ床ドンをされている。
普通に考えると男女逆じゃないか?と呟きそうになるがなんとか堪える。この状況はかなと僕の関係を壊すためにやっているに違いない。ふぅ…危うく黒川あかねの罠に引っ掛かるところだった。
それにしてもだ。黒川あかねは生真面目でふざけるようなリアクションは苦手だと思っていたけど。どうやら、そういうわけでもないらしい。
「ごめ、ごごごごごっっ」
あっ、これ偶然だわ。
よくよく考えてみると黒川って「今ガチ」の男に関しては僕としか話してない上、ほとんど僕とかなを取り合ってるだけで、それほど恋愛に参加しているわけでもなかった。
……というか。黒川って舞台と稽古ばっかり、あとかなの追っかけで男女問わず友達になること事態が少ないんじゃないだろうか。
「ご、ごめっごめんなさい!でも、さっきのはかなちゃんとチューしている君を襲おうとしたわけじゃないんだよ!?ちょっと躓いちゃっただけで、他意はないからね!」
「そりゃあそうだろ?あれで他意があったら黒川がエグいくらい炎上してるし、下手したらもっと危ないことになってたぞ」
「ヒェッ…!」
僕の言葉に恐れ戦く黒川。そういうところは、ちゃんとしてるんだよなあ。けど、生粋のかな狂いだから制御は難しいし。
こいつ、いったいなんなんだろうか?
「………ところでさ、星野くん」
「なんだ?あと退いてくれ」
「コレ、かなちゃんも着けてたよね」
黒川はそう言うと僕のネックレスを指で掬い上げる。しかもシルバーリングに、わざとらしく小指を引っ掛けて、にこやかに笑っている。
「かなちゃんとお揃い…ハァ…ハァ…っ」
「お、おい?黒川、黒川さん!?」
「ちょっとだけ、指に嵌めるだけっ」
「いや、薬指はダメだ!!」
無理やり身体を横にねじり、怪我しないように黒川を押し退ける。うるうると瞳を濡らして僕を見つめる黒川を一瞬だけ視認した後、僕はまた全力でみんなのところへと走った。
なんか後ろで騒いでいるというか。ふつうに僕の背中にくっついている黒川をどうにかしたい。どうして、いつも僕の近くにいる人はニンジャみたいなことをするんだろうか。
ちょっとだけ泣きそうになりながら、みんなのところに辿り着く。すると、みんなは「ああ、またなのか」と僕と黒川を見て苦笑いする。
〈黒川あかねニンジャ説〉
黒川あかねの考察。
彼女の異質すぎる身体能力と異常すぎる人間模倣によって浮上した説。掲示板に「あかねさん、マジでニンジャすぎ」や「あれはニンジャだから」というスレが幾つも建っている。