【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
今日は星野アイの15歳の誕生日だ。
彼女と出会って凡そ四年と三ヶ月、どれだけ貴女に愛していると伝えたくても偽物だからと伝えるのは烏滸がましいと思っていた。なんとなくアイも気づいているのか、そういうことを聞いてくることは少なかった。
貴女は私の娘だって言ってあげたい。そんな想いで心が埋め尽くされて、いつも以上に貴女のことを考えてしまって仕事も少しだけ遅れてしまった。
……いや、それは良くないわね。
「あなた、変わったわよね」
えと、そうですか?
そう言ってきたミヤコ副社長に首を傾げる。太っただろうかと横腹を掴もうとするけど、それほど脂肪もなければ肉もない平均的な身体だ。いったい、どこが変わっているのだろうか。
私の行動に「そういうところもアイは似てきたわよね」とつぶやき、星野アイの誕生日ライブをやっているB小町を舞台裏で見つめる。
アイと彼女達の確執は完全には拭いきれていないけど。おそらく彼女たちは友達といえるくらいには関係は回復している。
「みんな嬉しそうね。まあ、わかるけど」
ミヤコ副社長の言葉に頷き、代わる代わるにセンターを交代して歌っているB小町を見る。斎藤社長とミヤコ副社長は、いきなり持ち込まれたアイの提案によってセンターを無くして……いや、みんなでセンターをやることに決まった。
代わる代わるにセンターを変えて、代わる代わるに歌っていく。自分の推しを応援するファンは「ようやくセンターになってくれた!」「やっぱり、君は最高だ!」なんて叫んでいる。
「あいつら良い笑顔になったぜ」
「貴方も良い笑顔になってるわよ」
「おう。そりゃあ当然だろ?」
「えぇ、そうね」
私の後ろでイチャイチャするのはやめてほしい。
まあ、今日はアイの誕生日だから許してあげよう。あれ、神木くんも見に来てくれたんだ。ララライでアイとよく話してたから応援に来てくれたのかな?
そんなことを考えながら赤色のサイリウムを振っている神木くんを見つめる。アイにどこか期待や執着を持ってるのは知ってるけど。そういうのはママの目の届かないところで出してもらえると助かる。
アイも神木くんを見つけたのか。
ところどころて半笑いになったりしてる。そうなるよね、神木くんったら真顔でオタ芸をやってるし、なんならオタ芸が伝播してるもん。なんかあそこだけ異質な空間になってるわね。
「……あそこだけ異質ね」
「なんかすげえな、あそこだけ」
二人とも同じことを言っている。
いや、分からなくはない。ライブ会場にいるファンの過半数が「負けるものか!」とか「やらせるものか!?」とか言いながらB小町を讃えるためにた全力でオタ芸を披露している。
ここはそういうところじゃないんだけど。
まあ、楽しそうだからいいか。
〈伝説のライブ〉
B小町のライブ。
星野アイ氏の生誕を祝うB小町主催のライブにて突如として現れた劇団ララライ所属の神木ヒカル氏によるオタ芸(推しを讃えるダンス)に感化された全ファン一斉のオタ芸の披露が行われた。