【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました 作:SUN'S
僕は神木ヒカル、舞台俳優だ。
いわゆる精神異常者という類いの人間だ。その事はしっかりと自覚しているし、なんなら最近まで同類だと思っていた星野アイと話し合ってなんとなく精神の不安定を治す方法が分かってきた。
その方法と言うのは星野アイと結婚して、彼女の母親に甘えることだ。アイドルを始めて間もない頃の彼女を見ていた僕にとって彼女は唯一分かり合える人だと考えていた。………けれど、それは僕の勘違いで、彼女はお母さんに会えなくて不貞腐れていただけだったのだ。
「僕にアイさんをください!」
人生で初めての土下座だ。
どこか清々しくて晴れやかな気分にもなれる。しかし、僕の目の前に座っているアイさんは「いや死ねよ、マジで」とつぶやき、まるで汚物を見るような目で僕を見下し、ママさんはママで困ったように僕を見ている。
………なんだろうか、この気持ちは?
「えと、神木くん?」
「は「喋らないで、部屋が汚れる」…」
やっぱり、おかしい。
ああやってアイさんに蔑まれたり見下されたり侮蔑の視線を向けられると僕の知らない感情が込み上がってくる。まさか僕は本当にアイさんを好きになってしまったのだろうか?
「ママ、これは人じゃないから」
「そ、そうなの?でも神木くんよ?」
「違うよ?これはクズキカスル」
んっ、だめだ、やっぱりなにか!
「………っと………」
「喋らな……なに?」
「もっと罵ってください!」
そうか。
そうだったのか。
僕が彼女に惹かれていたのは同類だとかそんな適当なことじゃなかったんだ。彼女こそ僕の心を埋めてくれる人なんだ!
「アイさん、もっと僕をっ!!」
「ま、まま、やっぱり変だよこいつ」
「ああっ!!その気持ち悪いものを見るような目、僕の知らない感情が溢れ出す、これがアイさんのくれた愛なんですね!!」
そう言った瞬間、僕の顔にアイさんの蹴りが叩き込まれた。ああ、ああ、いい、すごくいい、この痛みすらアイさんの与えてくれる愛なんだ!!
「アイ、あれはドエムーよ」
「ど、どえむぅ?」
「好きな人にならなにをされても嬉しくて仕方ない。そう思っちゃう、どうしようもない人のことよ。アイの思うようにすればいいと思うけど。ただ、ドエムーは厄介だからね?」
「ま、ままぁ…!」
アイさんは僕の事を踏みつけてママさんところに行き、また僕に向かって汚物を見るような眼差しで睨み付けてくる。
はぁーーーっ、ほんと好きだ。
「アイさん、是が非でも貴女をお嫁さんにします!僕から逃げられるなんて思わないでくださいね!!絶対に逃がしませんよ!!」
「ほんとにキモいから!?」
翌年、無事?にゴールインしました。
〈星野ヒカル〉
舞台俳優。
自分の事を精神異常者だと思い込んでいた快楽の悪魔「ドエムー」である。星野アイと結婚するために彼女の言いつける条件を嬉々としてクリアしていき、たった一年で彼女を根負けさせた。星野アイにつけられたあだ名の「クズキカスル」で目覚めた。