【完結】苺プロで働くしがない普通の事務員なのですが仕事に復帰したら某トップアイドルに「お母さんっ!!」と抱きつかれました   作:SUN'S

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苺プロで働くしがない普通の母親なのですが娘が産休から復帰したら「おばあちゃん!!」と抱きつかれました

私の可愛いアイは16歳という若さで赤ちゃんを出産する。神木くん…いや、ヒカルくんの手の早さにも驚いているけれど。あれだけヒカルくんを嫌っていたアイがにゃんにゃんしているなんて予想外だわ。

 

「お母さん、僕はどうしたら…」

 

そう分娩室の長椅子で項垂れているヒカルくんに「しっかりしなさい!貴方はもうすぐお父さんになるんでしょう!」と怒りながらも私も彼と同じだ。今すぐにでもドアを抉じ開けてこアイのところに行ってあげたい。

 

そんなことを考えていると泥だらけで息も絶え絶えなアイの担当をしてくれていた雨宮吾郎先生が白衣とカッターシャツを脱ぎ捨て、分娩室の隣の部屋に入ったかと思えばドラマや映画で見る服に着替えて戻ってきた。

 

「必ず、僕が成功させます」

 

「「よろしくお願いします…!」」

 

ギュッとゴム手袋を嵌めて分娩室に入っていく雨宮先生に頭を下げる。どうか、どうかアイと赤ちゃんが無事に産まれますようにっ!!

 

十分、あるいは三十分、もしかしたらもっと時間が経ったかもしれない。不安で貧乏ゆすりをしたり、自販機でジュースを買ったり、今にも押し潰されそうなほどアイの事を考えてくれるヒカルくんに感謝しながら私は分娩室のドアを見つめる。

 

私はアイの母親をやれているのか。

 

彼女と同じ痛みを味わっていないのに、彼女の母親を名乗っていいのだろうか。………そんなことを考えるな、今はアイと赤ちゃんの無事だけを考えなさい。私は、アイの母親でおばあちゃんになるのよ。

 

ふと微かに泣き声が聞こえてきた。

 

「産まれました!!」

 

その言葉と共に駆け出したヒカルくんは双子の赤ちゃんと分娩台に眠っているアイと見比べて、小さな声で聞こえるか聞こえないか。ほんとうにギリギリの声で「これが命なんだね、アイさん…!」と呟き、ゆっくりとアイの手を握り締めた。

 

「ありがとうございます、雨宮先生」

 

そう言って分娩室の壁際で蹲っている雨宮先生に話し掛ける。憔悴しきった本当に疲れているのがわかるほど顔色の悪い雨宮先生は「…やった……やったよ…さりなちゃん…」と言い、横に倒れてしまった。

 

よく見ればアイの限定グッズの入った名札をとても大事そうに握り締めて、疲れているのにどこか晴れやかに成し遂げたような穏やかな顔でアイと同じように眠っている。

 

本当にありがとうございます、雨宮先生。

 

それから産後の容態の悪化を危惧してアイと赤ちゃんと暫く会えないという説明を受け、昨晩の怪我は「寝惚けて崖下に落っこちた」という雨宮先生を労いながらアイの回復を待つ。

 

 




〈雨宮吾郎〉

担当医。

星野アイの出産を受け持ってくれた医師。かなりのドルオタであるという噂が院内に広まっているが、彼の励ましや応援で手術に踏み切れたと感謝を伝える患者は多い。尚、崖下に落っこちたときに人魂らしきものが分離するのを見たと言っているそうで………?
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