酒とケーキとお嬢様   作:りタ

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プロローグ

上田 透(かんだ とおる)

齢19のただの大学生。頭も交友関係にも困ったことがなかった彼が一つ困ったことができてしまった。

 

「金が無い……」

 

風が通り抜けるほど軽くなった財布を見ながら呟いた。

7/31の極暑、彼は、金欠に悩まされていた。

 

「バイトは辞めさせられるし、どうしたもんかなー」

 

先日まで飲食店で働いていたのだが、少し客と揉め事があり、責任を取るという形でクビになったのだ。

店長も悪い人ではないのだが、少し優しすぎる。

まぁ、そんなこと考えていても仕方ないが……

 

ピリリリリッッ!

 

ポッケに入れた携帯から電子音が鳴り、取り出す。

 

「もしもし、誰ですか?」

 

『もしもし透クーン?』

 

「なんだ、(すがる)かよ。何の用だ?」

 

秋名 縋(あきな すがる)

胡散臭い喋り方にも関わらず、顔が整っているからなのか、()()()は数え切れないほどいる。噂では彼女も美人であるという。

 

()()()から君が困ってるとお聞きしまして、君にバイト先を紹介しようと思いましテ』

 

どうやら俺が金欠だということを知っているらしい。

()()()からにでも聞いたのだろう。

 

「俺に紹介してくれるのか?」

 

『ええ君は()()だからネ。こんな暑い中お金がないのは雇い主には《僕が信頼できる人》なら誰でも良いって言われてるシ』

 

「信頼ね……それで?俺は履歴書でも書けば良いのか?」

 

『いや、判子をポンッと押すだけだヨ』

 

「そうか、簡単だな」

 

確か判子は机の引き出しに入れてたはずだ…

 

「んで?いつ書類を受け取れば良いんだ?」

 

「『今』」

 

「んえ?」

 

驚きのあまり変な声が出てしまった。

玄関を開け、声の主を迎える。

 

「やぁやぁやぁ!やはり親友は電話越しではなく直接話をしないと親しいとは言えないよネ!あっちなみに書類これネ」

 

流れるようにクリアファイルを渡される。

中には紙が2枚入っていた。

 

「この紙のここに判子を押せば私が書類を雇い主に渡すヨ。もう一枚の方は日時とかが書いてあるからネ。それとしばらくこのアパートに戻ってこれないと思ったほうが良いヨ?」

 

判子を押した書類を返し、もう一枚の書類に目を通す。

 

「???何でだ?」

 

ここから近いんじゃないのか?

 

「だって住み込みバイトだからネ」

 

「ああ…それなら納得だ」

 

「それにここから遠いのもありますネ」

 

「へぇ、どのくらい遠いんだ?」

 

車で2,3時間か?

 

「飛行機で2,3時間。目的地は札幌だヨ」

 

「規模がちがう!?お前、友人を南端から北端まで飛ばす気か?正気なのか?!」

 

書類に判子押しちまったじゃねえか!

 

「大丈夫!大丈夫!そんなこともあろうと思って私というガイドがいますから!」

 

胸を叩きながら自慢げにそのような子とお言う

 

「へぇ,それでガイドさんは札幌のことどのくらい知っているんだ?」

 

「2020年のグーグルマップは頭に入ってますよ?」

 

(畜生こいつも賢いんだった……)

 

「それで荷造りしなくていいノ?」

 

「そりゃあするけど……まだ時間あるだろ?」

 

「書類見なかったノ?」

 

「え?」

 

そういえばもう一枚の書類に日時が書いてあるって……

 

「?!…………あのー縋さん書類に明日の日時が書いてあるのですが……」

 

「ウン、明日だもん」

 

 

 

ふざけんなぁぁぁぁ!!

 

 

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