転生先が悪逆非道の血みどろ騎士モンスターで詰んだ男、過酷な迷宮で救いを見つける   作:飛び回る蜂

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 大変長らくお待たせしました。本日よりまた投稿を開始します!
 短い期間ですが、何卒よろしくお願いします!
 最初の2回はインタビュー回からとなります。


第四章 拒諫編
レポート『徘徊者』との会談記録(一部抜粋)・前半


 

・では始めましょう。自己紹介をお願いします。

 分かりました。ええとまず、僕は人間でした。名前は憶えていません。自分の認識では一度こことは違う世界で死んで、目が覚めたらここにいた、んだと思います。それからはずっと歩き回りながらここを出ようとして、手探りで地上を目指していた所をミリアムさん達と出会いました。

 

・違う世界……いえ、それは後に回します。一度死んだというのはどういうことですか?

 中学校(成人前に通う学校の意)卒業はしてないから、たしか14歳で死んだんです。こことは明らかに世界観が違うので、魂が転生?転移?(翻訳難)して憑依(死霊術師の憑依術とは異なると思われる)の類ではないかと思います。

 

・14……歳……?

 はい。でもここでどれくらい過ごしたか分かりません。実年齢はもう少し上だと思います。

 

・(質問者沈黙につき魔術師代表が質問)失礼、私が代わろう。先程仰った『世界観』とはどういう意図の言葉か聞いても?

 えーと、概念の説明はとても難しいです。(ここで少し考えるそぶりを見せる)……あっ、そうですね。言い方を変えさせてください。ここは僕が生きていた所とは全く違う歴史の世界、僕らの言葉では異世界と呼ぶそれだと思います。

 

・ふむ、私の発言を正確に理解している。使用言語が同じ……いや、これは別な由来によるものか?これは後に置いておこう。歴史的に重要な分岐点に置いて異なる選択をした場合、この世は全く違う未来を辿るだろうか?という思考実験がある。異なる世界史、世界観。なるほど確かに異世界と呼ぶべきものだ。君のいた世界は具体的にこことどう違う?

 ファンタジー(固有名詞?翻訳難)な世界……じゃ伝わらないですよね。この世界には魔法がありますよね。僕のいた世界にはそれがありません。魔力、モンスター、神様……そのほとんどが空想上の物でした。そして機械とか技術がとても発達していました。

 

・どれくらいの規模か説明できるか?

 世界中のあらゆる知識を好きなだけ集めることができる通信機端末を、その国に住むほぼ全ての人が持っていました。けどその知識を閲覧できる形にするのも人なので、集めた情報には間違いもあります。なので自分で調べるのは簡単だけど難しいです。……伝わりますか?

 

・個人がいつでも見られる情報源というわけか、興味深い。是非詳しく聞きたいところだが……(担当者に目配せ、首を振る)時間が足りない、今はよそう。他には?

 この世界には馬はいますか?いるんですね。馬と同じ速度で走る、馬を使わないとても頑丈な車輪付きの『車』(動物や魔力に由来しない動力付き車両と思われる)がそこら中を走っています。1台や2台じゃありません。人の数だけって言ったら過言かも?ってくらい走ってます。

 

・車……なるほど、魔力を用いない動力付き車両の事だな。動力源は?

 ガソリン(固有名詞?翻訳難)っていう化石燃料だそうです。長い歴史の中で地面の下に溜まった色んなものがエネルギーになるそうです。

 

・成程、それらはエネルギーを生む触媒として優れている訳だ。現代では何をするにも魔力方式が主流だ、燃料を用いたものとエネルギー効率がどれ程変わるものか。研究テーマとして非常に面白い。実現するのにはどれくらいかかった?

 え、いや、それは分かりません……何百年もかかったって何かの本で読んだような。すみません、覚えていないです。

 

・では少し戻るが、先の車というものが人の数だけ動き回るとなれば大きな危険を伴う筈だ。扱うのに資格はいるのか?年齢制限は?君も乗れるのか?

 資格自体は成人してから、お金を出して試験を受けて合格すれば免許を取ることができます。事故も……かなり起きていて、ずっと社会問題になっています。けれど多くの人の主な移動手段でもあって暮らしに深く根付いています。あっ、僕は成人する前に死んだと思うので乗れません。

 

・……失言だった、すまない。

 あっ……いえいえ、気にしないでください。

 

(その後もいくつかの技術的な質問が入るが、本人は技術そのものの知識は少なく不明瞭な解答も多かった。食事に関しては非常にこだわりがある様に見受けられた)

 

・(回答者復帰)……失礼しました、質問を続けます。貴方が我々とは根本的に違う価値観や概念を持っていることは明らかです。続けて、貴方自身の考えを聞かせてください。どうして探索者の遺物を集めたり、助けたりするのですか?

 (首を傾げ困惑している)困っている人を助けるのは普通の事だと思います。

 

・それを持ち逃げしたところで責任を問われることはないとしても?

 そうかもしれませんが、結局いつかはバレると思います。バレないとしてもしたくありません(ミリアムは「怒りを感じた」と証言)。人にしたことはいつか自分に返ってくると思います。

 

・貴方は自分が善人だと思いますか?

 (長考)……悪いことはしてこなかったと思います。でも、自分がいい人間だとは……思えないかもしれません。両親、前の世界で両親にはたくさん迷惑をかけました。友達にも。僕を大切にしてくれた人達に何も返すことができませんでした。

 

・貴方は人を傷つけるつもりはないと考えているようですね。では、ミリアムの片腕を切り落とし、地上に現れた時のことを聞かせてください。なぜあのようなことを?

 あの時……初めて会ったあの時まで、僕は僕の意思で『戦う』ことはありませんでした。戦いになると急に引っ張られるように身体が勝手に動いたんです。その時までは怖いけど便利だなって、ミリアムさんに会った時までがそうでした。ミリアムさんを殺してしまうその瞬間になってようやく身体が止まって、必死に輸血しました。信じてもらえないと思います。あの時の事は今でもハッキリ覚えています。僕は……もうあんなことは……。

 

(ミリアムは「色んな負の記憶が浮かび上がり『徘徊者』の精神に著しい負荷がかかっている」と証言。一度休憩を挟む)

 

(出現初期から携わっていた数名が『徘徊者』の傍に寄り熱心なメンタルケアを行っている。徘徊者は両手で顔を押さえて震えている。ミリアムはこれを「幾つかの辛い記憶が混同している。非常に強い恐怖と不安を感じる」と証言)

 

(「ある程度の年齢を考慮して質問を作成している都合、質問の中には刺激の強い言葉が含まれるだろう。だが我々は……彼を尋問したいわけではないはずだ。教育者の立場として、いくつか文言の修正を求める」)

 

(「そのつもりです。先のやり取りを踏まえ質問内容は適宜修正します。まさか彼がそれほど幼いとは想定していませんでした……」)

 

(10分の休憩、その後不安定ながらも復帰したため質問を再開)

 

・落ち着かれたようですね。申し訳ありません、辛い記憶を思い出させてしまいました。

 こちらこそ、ごめんなさい。一番辛かったのはミリアムさんや周りの人達だと思います。(ミリアムが視線で発言を促される。「生きてたから問題なし、本当に嫌になってたらもう一度会いになんて行かなかった」と発言)

 

・時間の都合もあります、続けましょう。貴方に人を傷つける動機や目的がないことは理解しました。ではもう一人、貴方の中にいる人についてできる範囲で聞かせてください。

 分かりました。いいですよね?……腹は括ったんですね、ありがとうございます。僕は今この身体をもう1人の方と共有しています。名前は「リューベル」さん。凄く強い騎士だったと聞いています。何度も助けられました。この間地上に出てきちゃったときの……えー……アルマさん、でしたよね?に叩かれたあの時です。それまではずっとリューベルさんが身体を動かしていました。

 

・貴方が身体を扱っていた時期はいつ頃ですか?

 確か……あの蜘蛛に追われていた人達?を助けた頃です。(『徘徊者』が考えるそぶりを見せる。何かを察したようにミリアムがゴウカフ、ヴァズの2人の方を視線で促す。『徘徊者』は非常に驚いていた)お2人です!お2人と併せて6人くらいいましたよね。あの時は僕です。

 

・時期で言えば貴方との接触を担当する『騎士捜索隊』のパーティ結成と同時期か少し後くらいですね。なぜ……(質問しようとしたヘレスをミリアムが首を横に振りつつ視線で制する。必死な様子から何かの禁句に触れると判断)失礼しました、お気になさらず。リューベル氏は今もこの会話を聞いているのですか?

 はい。でも……リューベルさんがこの身体を使う時は、ミリアムさんとの意思疎通が出来なくなるようです。今の所原因は分かりません。

 

・貴方からミリアムへの意思疎通は可能ですね。逆はどうなんですか?ミリアムから貴方へは?

 感情は何となく共有されています。相手に伝えたいことがある時は結構しっかり、言葉や文章、頑張れば記憶までちゃんと伝わります(ミリアムが「そうだったんだ」と感想を告げる)。でも基本的にはミリアムさんが話した言葉を聞き取っています。

 

・なるほど。では次に、貴女の中にいるのが本物のリューベル・ミランかどうかの確認をさせて下さい。いいですね?18年前、貴方の2つ名は?

 えーと……『制圧』か『化物』か『騎士鎧に非常識を詰め込んだもの』?

 

・どれも正解です。続けて、奥方と娘の名前は?

 リナ、ミリアム。婿入りだからミラン性は妻のもの。私の姓はない。

 

・初対面の私にした発言の内容は?

 ……凄く言いたくなさそうにしています。でも言わないといけなくて……その、「メドゥーサとアラクネの混血か?初めて見た。面白いな」です。あの「いっそ殺してくれ」と。

 

・(舌打ちのようなノイズ音)まぁいいでしょう、最後。貴方がダンジョンで最後に逃がした隊員、彼の名前は?

 クリュエ。それと彼ではない、彼女だ。

 

・本人なのは間違いないでしょう。彼とはどれくらい付き合いがあるのですか?

 明確にやり取りするようになったのは、僕が身体の主導権を失ってから目が覚めた時なので……あっ、そうですね。現職の騎士、スレイさんが会いに来た時の少し前くらいです。

 

・一体何があって一緒にいることになったのですか?それと彼は今どういう行動方針で貴方と一緒にいるのですか?

 聞いた限りでは、ミリアムさんと僕が最初に出会った頃に意識がハッキリと浮上したそうです。それまでもぼんやりとはいたみたいです。それからは僕の……えぇと、思想?行動?に感動?したらしい……です。身体の主導権がリューベルさんにある時、僕が地上で暮らせるように、人気者になれば早く受け入れてくれるだろうって行動してくれていたんです。

 

・貴方が他の探索者と意思疎通していればもう少し早く……そうだ、字が書けないのでしたね……失念していました。リューベル、貴方が知りたいことは多くあるでしょう。ですがこの場はあくまで『徘徊者』としての会談です。心苦しいでしょうが、ご理解ください。

 承知した。私としても異存はない(この時『徘徊者』、後述『少年』はミリアムに視線をやるが、ミリアムは首を横に振った)すみません、なんでもありません。

 

・(魔術師代表が挙手、質問に移る)気になる点がある。君が『血みどろ甲冑』に憑依しリューベル氏と共存しているのなら、元のモンスターの人格とでも言えばいいのか。それもいるのか?

 いいえ。今の所それらしいものは無いと……(幾分かの逡巡。ミリアムは「リューベル氏と相談している」と証言)分かりました。最初にリューベルさんが意識を取り戻したのはミリアムさんと出会ってからだと言いました。でもそれより前、まだ意識を取り戻す前の戦闘は『モンスターの意思』がそうさせていたのかもしれません。

 

・詳しく聞かせてもらえるか?

 はい。思い返してみると、ミリアムさんに会う前、僕が身体を引っ張り回されていた時の戦い方は凄く荒々しかったように思えます。モンスターを殴ったり蹴ったり、剣を力任せに振ったり、変なうめき声を上げたり……そう、丁度リューベルさんの意識がはっきりした頃かな。剣を凄く綺麗に使うようになったんです。そうか、僕とリューベルさんが意識の表層にいるからモンスターの人格が出てこれていないだけの可能性があります。

 

・……発言の意味を理解しているのか?もしそれが本当なら君の地上進出は重大な危険性を持つことになる。

 はい。リューベルさんはその心配を僕に伝えた上で「判断は委ねる」と言ってくれました。僕は僕が正しいと思う選択をしたい。僕はまだこの世界のことに詳しくありません。そうすべきだと言うなら、僕はダンジョンの外には一歩も出ません。

 

・モンスターはダンジョンの外に出られない。それがモンスターの意思によるものなのか、それともダンジョンの法則によるものなのかはさておき、少なくとも探索者のリスク低減には繋がるだろう。なるほど、合理的に考えれば君をダンジョンの外に出す選択肢は消える。(発言者が協会長に代わる)話が逸れています。今の議題は彼が地上にいるべきかどうかではありません。あくまで彼個人のプロファイルです(「失敬、好奇心が先行した」という声が入る)。

 

・これまでの質問から「貴方が何者であるか」という問いへの答えとなるでしょう。総括します。貴方はこことは違う歴史を経た世界から迷い込んだ死者の魂。それが何の因果かこのダンジョンの果てへと誘われモンスターに漂着した。同時期に亡くなったと思われるリューベル・ミラン氏も同様。なぜこのようなことが起きたのかは未だもって不明。こんな所でしょうか。他に質問は?……ないようですね。以上を以て『彼は何者か』の答えとしたいと思います。

 

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