転生先が悪逆非道の血みどろ騎士モンスターで詰んだ男、過酷な迷宮で救いを見つける   作:飛び回る蜂

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68 恩讐の魂

「まずは適性検査から始めましょう。これは義務なので例外はありません。あしからず」

 

 

 探索者になろうとする者は多くの場合何かしらの事情を抱えている。生まれ育ちから字が書けないなどは序の口、犯罪歴はおろか現在指名手配中などもそこまで珍しくない。普通に就職できるなら命を賭ける必要など無いのだ。

 しかしいくら探索者という職が受け皿としての役割を持っていても限度がある。無法者の街を作りたいならまだしも、仮にもダンジョンは神のお膝元だ。最低限の礼儀も弁えない者がいていい場所ではない。ここで言う最低限とは挨拶などの礼節の事ではなく「他者を侵害しない」や「法を犯さない」という人が人として生きるのに必要な最低限の決まりを指す。

 ある程度は他の街でも線引きをしているが、事前の質問や面談程度で見抜けるならばそれも苦労しない。これには今も多くの街が苦心しており、ある程度は諦めて問題が起きたら対処すると割り切っているところも珍しくない。

 だが『ダイダロス』は潔癖、品行方正の街だ。指名手配犯など論外。前科が一つでもあれば徹底してその前歴を洗う。その上で問題なしと判定できれば入国を許可している。

 しかし一人一人そんな対応をしていたら探索者は一向に増えない。煩雑な対応に堪え性のない探索者達が潔く待ってくれることは少ない。

 だが人が来ないのも困る。事実『徘徊者』の地上出没を受けその月の探索者志望数が激減したことがある。即座に損に繋がるわけではないが、街の存続には大いに影響する。

 かといって量を重視した結果ゴロツキのたまり場になるのはもっと困る。簡便でいてかつ、数をこなせるセンサーが必要だった。

 問題点を考慮した上で、センサーにはいくつかの条件を突破する必要があった。それが以下の条件である。

 

・文章の読み書きが出来ない。

・何者かに強制されている。

・自分の年齢や出身地を知らない。

・来歴を隠している。

 

 他にも小さな条件は山ほどあるが、この4つが概ね問題となる。

 文字の読み書きについてはむしろ字が書けて尚探索者を目指す人間の方が警戒に値するという身も蓋も無い話もある。さておき、字が書けない場合は代筆という手段があるから然程大きな問題ではない。

 しかし書き手が情報を歪める可能性は無視できない。この街はかつて貴族と協会職員、そして探索者が癒着し腐敗していた。自浄作用が確かな内は問題ないだろうが、併せて対策が必要だと考えた。なにせこれらが1件あるだけで犯罪の温床になり得る。

 

 自分の正確なプロフィールを把握していない者もいる。名で呼ばれたことが無く、名を名乗ることも無く、名を与えられたことの無い者達だ。

 探索者は彼らに居場所を提供する場であらねばならない。これはダンジョンがこの世に生まれた時からそうあるべしと定められた責務だ。

 

 そして一番の問題にして最大の難問。来歴の隠蔽、詐称だ。ダンジョンタウンは行き場のない人間に居場所を与えるものであって罪人を匿う場所ではない。

 指名手配犯ならまだいい、顔が割れているなら判別のしようもある。入国時点で顔が知られていない逃亡犯もだ。この2者は審査で弾ける。犯罪者の逃走先にダンジョンタウンが多いのは周知の事実、国内の主要な犯罪事件は各ダンジョンタウンに共有される取り決めとなっているからだ。

 最も状況を危うくするのが冤罪、当人に覚えが無く理由も分からず逃亡している者だ。彼らは匿うにもリスクが高く、しかし本人には責が無い。彼らは自分の無罪を一貫して主張しても、法は罪を主張し続ける。ダンジョンタウンはその板挟みとなってしまう。

 いくら『ダイダロス』が『国』の干渉を突っぱねているとはいえ、犯罪者を放し飼いにしようものならあらゆる面でバッシングは免れない。

 

 

「いつ見ても凄い仕組みよね……これ作った人超がつくド変態よ……」

 

「初めて見た時は私も驚きました。生産数の都合多くは使えませんが、法廷供述の根拠補強にも使われる程です」

 

 

 それを解決するためにあらゆる技術者が心血を注いだ結果生まれたのが「地下迷宮(ダンジョン)における探索許可及びアイテム受領に関する申請交付書類」、縮めて『探索者申請書』だ。

 この用紙に刻まれているのは幾重にも魔法式、魔術式による条件設定が成されている。体外に排出された生きた血液に反応して記入者の思考を用紙へと出力する措置が施されている。

 記入者が質問を聞き取る、あるいは読み取ることで簡易チェックボックスに〇×が記載される仕組みとなっている。

 特定の文章を読んだ時に起きる肯定、否定の感情を概念への干渉を得意とする魔法式によって読み取り、物質への干渉が得意な魔術式が文章化して用紙へと抽出、インクとして浮き上がらせる構造だ。

 これは現代で言うポリグラフ検査、ウソ発見器に似た機能をしている。本来はイエスノーの回答を行った際に心拍や呼吸、電気抵抗が変化した際にブザーを鳴らすものである。

 この申請書に刻まれた反応式は魂に直接干渉して書き起こす。その精度は現時点において非常に高いと評価されている。

 

 

「4階を突破してからの10年はそれを作る為の期間でもありました。秘匿性を守る都合時間がかかり、この街の供給だけで手一杯なのでそこは改善点です。ではそちらに血判……血を垂らしてみてください。それで通るでしょう、多分」

 

「(多分……?)」

 

「モンスター相手は初めてですから。正直に言えば、貴方を通してこの紙がどんな反応をするのかずっと前から見て見たかったんですよ」

 

「まぁ確かに……あれひょっとして私達、人類初を次々体験してる?」

 

「何を今更。ここに貴方が規定する貴方自身の名前が記載されます。そこから紙に触れたまま順に規約を読んでいけば、該当箇所に印がつくようになっています。今回は私が読み上げましょう」

 

 

 恐る恐る少年は首元に手を当てて血を指で掬い、そのまま用紙右上の四角欄に押し込む。

 用紙全体にじわりとした感触。血液に反応した魔力が用紙全体に浸透した合図だ。それと同時に『徘徊者』の身体に微かな変化が起こる。

 

 

「(うわわわ、なんか全身がむずむずする!皮膚の下が痒い!掻いても治まらないタイプ!)」

 

「むずむずする?くすぐったいの?」

 

「回答者に直接作用する式は無い筈……まさか、鎧の中身が血液だから?常人では微弱過ぎて感じず、血液で満たされている彼には目に見える副作用として現れているのでしょうか」

 

「血液と魂が密接に関係している生態だからでしょうか?多分それ以上の害は無いのでしばらく我慢してください」

 

「(そんなぁ……)」

 

「(普通にキツい)」

 

 

 ガチャガチャと音を立てながら身もだえしていると、名前の欄にボンヤリと滲んだインクの染みが現れ始める。

 ワクワクしながら少し待ってみるが、あやふやなまま紙の上を踊るばかり。遠目で見ても近づいて見ても、何時まで経ってもきちんとした文字にはならない。

 判目で訝しんでいるように見えたのか、ヘレスが用紙を覗き込んで納得したように頷いた。

 

 

「名前が表記されないのは貴方自身が自分の名前を定義しかねているからです。可能なら今ここで自分の名前を決めて頂けると助かります」

 

「(無茶ぶりだ!でも確かに、徘徊者って呼ばれるのあんまり好きじゃない……何か希望有ります?)」

 

「(……君が決めた方がいい)」

 

「(勘ですか?)」

 

「(ああ、そんな気がする)」

 

 

 その言葉に少年は思案する。この世界で人と関わり始めてだいたい1年弱、その中でも分かってきたことがある。彼らの言う『勘』、『直感』はかなり当てになるということだ。

 ここぞと言う時の判断。未知を踏破する前の危険指数。命懸けの探索業をやっている内に磨かれている第六感とも言うべきもの。少年自身も彼等の「そうすべきだと思った」という『直感』に心を救われてきた。

 それを受けて少年はリューベルの言葉に従い、自分の名前を決めることにした。

 

 

「(いざこの場で自分の名前を決めるっていうのも難しいな……記憶喪失のキャラクターはこの難問を自力で乗り越えているんだなぁ)」

 

「(スミスかジョーンズならジョーンズがいいな。ジューロは響きが好みじゃない)」

 

「(記憶喪失の赤髪だから?誰に伝わるんですかそれ……リューベルさんには伝わるか。にしても名前、名前かぁ……)」

 

 

 前世における少年の名前は既に記憶から失われている。当然ながら少年は何度も自分の記憶を辿り名前を思い出そうとした。

 だが10年にも渡る年月が彼から名前を奪ってしまったのか。すっかり『忘却』されており、思い出そうにもまるで空を掴むようにうまくいかなかった。それがどこかもどかしく、しかし思い出せない者は仕方ないと諦めつつある。

 ならばせめて、今生は前世に由来する名前がいいと考えた。それが自分の存在証明。名前を呼ばれる度に自分の来歴を思い出せる。

 

 

「(……)」

 

 

 このことについて、リューベルには大きな懸念があった。この記憶喪失には些か妙な点がある。

 見まいに来る親と友人の顔、病室の内装や部屋番号、よく遊んだであろう遊戯(ゲーム)の微かな記憶。10年経てどもその記憶を保持し、それを保ち続けた強靭な心を少年は持っている。

 だというのにただ一つ、人間の名前だけが記憶にない。カーテン、病院、といった物品の名称は明瞭に理解しているのに人名だけが霧の中だ。

 短期的な記憶喪失ではそういった症状が出ることがある。以前頭を打った隊員にそんな症状が現れたことがある。結局自然に思い出すのを待ったものだ。

 忘れるなら忘れるで納得できる。しかし今の少年の記憶、謂わば異世界の記憶は強力なアイデンティティだ。その中で人名のみを失うことがあるのだろうか?剰え少年は「思い出せないならいいか」と楽観視しているが、それすらも思考誘導の類なのではないか?

 それはリューベルに「何者かが彼の魂に干渉し続けているのでは?」という疑念を持たせるには十分だった。もちろん名前を『忘却』したことで彼の道徳心が失われることはないだろう。だが一定の不安はいつまでも拭えない。

 それも踏まえてこれから向き合わねばならない3つの命題がある。

 

 ・何故少年は自分の名前を思い出せないのか、思い出そうとしないのか。

 ・リューベルが目覚める前、彼の代わりに何が戦っていたのか。

 ・何故死者であり、異世界より来た少年と自分がモンスターとして蘇ったのか。

 

 リューベルはこの命題を少年から隠すように、なるべく思考の隅で行うことにした。本人に聞いても不安を煽るだけだ。良い方向には進むまい。

 次に身体の主導権を握った時、確認しなければならないことが幾つかできた。それさえ済めば少なくとも命題の1つは気にしなくて良くなるだろう。

 

 

(「せっかくだからちょっとカッコいい名前にしよっかな……強そうで勇敢そうで、刹那とか無限とか刃とか無敵とか、そんな強そうなのがいい!」)

 

「(強そうなのがいいのは分かるが、それは他称であるべきだ。強さは他者に認められてこそ意味がある)」

 

「(そうですか……なんかないかなー……あー……)」

 

 

 年相応のネーミングセンスに概念的な笑顔を浮かべているリューベルを他所に、自分が覚えている範囲で記憶から色んなものの名前を引っ張り出す。

 真っ白な部屋に朝葱色のカーテンで覆われたベッドの隣、テーブルの上に他の見舞い品と一緒に紛れていたもの。それから家の神棚にも置いてあったもの。現世にも存在した武器の名を冠するお守り。

 そう言えばこれも武器の名前が入ってたなぁ。ぼやけていた輪郭がその姿をハッキリと映し出した時、用紙の文字は明確に形を成して文字と化した。出力されたのは少年には見たことのない文字、この世界の言語であった。

 

 

「……『ハマヤ』?それが貴方の名前ですか?」 

 

「(あっ……僕が破魔矢になっちゃった……)」

 

「(おお、いいんじゃないか?君のいた所では魔除けや厄除けを願うものだろう?今生で必要だ)」

 

「(えぇー、でもちょっと……かっこよくなくないですか、ハマヤって……)」

 

「(まぁまぁ、かっこいい名前は追々二つ名で貰おうじゃないか。いいぞ、二つ名は。私が知り得る限りでは『到達者』や『覇者』なんてのがいたが、名前よりもそっちで呼ばれることが多かったと思う。君もいずれそれに匹敵する名がつくだろう)」

 

「(……『覇者』……超かっこいいです……!これはあくまで登録名ですもんね。よし、これにしましょう!)」

 

「(破魔矢も大概かっこいいと思う。私は凄くかっこいいと思う。聖弓の銘にあってもおかしくないくらいだと思う)」

 

 

 始めは少年はちょっと文句を言いたげではあったが、リューベルの説得によりこれに決定。祈りを捧ぐ物であればこれも縁だろうと納得した。

 ミリアムに思考が流れて来ても何が何やらだったが最終的に納得、これに落ち着いたようだ。

 彼の名前は今日から『ハマヤ』だ。

 

 

「きっと、貴方にとって意味を持つ言葉なのでしょう。夫と相談して決めたのなら、どうか誇ってその名をお名乗り下さい」

 

「(リナさん……!)」

 

「とはいえしばらくは『徘徊者』と呼ばれるでしょうね。定着するまでは我慢してください。風評は一朝一夕ではどうにもなりませんので」

 

「(ヘレスさん……)」

 

 

 リナの温かみのある言葉とヘレスのとてもドライな言葉に挟まれて少年は少し肩身が狭くなった。

 とはいえ名前が決まったからと言って適性検査が終わるわけがない。これからが本番である。

 

 

「では質問に移ります。項目数は20。文章の隣に数字がありますね?数字は分かるんですね。番号と本文を読み上げますので、視界に入れつつ質問の答えを思い浮かべてください。口頭で回答できない分はミリアムの補助で対応します。いいですね?」

 

「はーい」

 

「はいは伸ばさない。まったく、叱るのはリナの仕事でしょうに……では始めますよ。1番の性別から……男、でいいんですよね……?」

 

「(精神的には男だと自負しているが、繁殖に必要な物がない。ダンジョンで人に倒されるべく生まれたモンスターに性別が必要なのか?哲学的な問いだな)」

 

「(蚕みたいです。いやこれはちょっと自虐的過ぎるかな……)」

 

 

 そうして1つ1つ確認を取りながら、時にお互い首を傾げ、時にこんな前例無い……作るしかない!と意気込み、必死に案を絞りながら書類と格闘する。

 悪戦苦闘している3人の傍でミリアムとリナ、ミラン母娘が寄り添う。

 

 

「ママ的にはさ」

 

「……はい」

 

「やっぱりその、複雑というか、嫌?パパが実は生きてた……生きてた?とか、勝手にあいつを弟呼びしたりとか……その、色々。流れで知ったり決まったりが多くなっちゃって」

 

 

 ミリアムは書類と前人未到の挑戦する3人を見て、少しだけ不安を覗かせた。

 

 

「私、自分でもよく分かってないの。パパはパパって呼ぶ前にいなくなっちゃったし。けど今も目の前にいて、アイツに文字を読んであげてる。私には読み聞かせなんてしてくれなかったのに」

 

「ミリアム……」

 

「分かってるの。どうしようもなかったって。……それに分からないことがあるの」

 

 

 一息ついたミリアムは、2人の耳には届かない様に小さく、けれどハッキリと言葉にした。

 

 

「一度とはいえ戦ったから分かる。パパは尋常じゃなく強い。しかも生きてた頃ってつまり全盛期でしょ?15年前の深度は4から5、今は私でも到達できる場所になったの。だとしたらやっぱり変なの。あのパパが5階のモンスター程度に負ける筈がない」

 

「……」

 

「ねぇ、()()()()()()()()()()()()

 

 

 これまで聞くことの叶わなかった疑問。最高硬度のゴーレム達を鎧袖一触とばかりに打ち払った本物の武力。

 稽古をつけてやるとばかりにミリアム達の前に立ちはだかり、当時できる渾身の不意打ちと一撃を叩き込みながらもまるで応えていなかった。

 今の国家騎士の中でも上から数えた方が遥かに速いジェグイ・スレイを真正面から一方的に封殺したとも聞いている。

 手荷物から商材を取り出した時も、その数と質から多くのモンスターと渡り合ってきたことは明らかだ。

 そんな傑物である父が5階で死亡?聞けば聞くほどあり得ない話だ。出てくるゴーレムの品質にもよるが、鉱石レベルなら自分達でも苦戦しない。金属程度までなら余裕をもって対処できるだろう。なんなら全盛ではないはずの借り物の身体と武器で『宝石』ゴーレムを何体も破壊している。

 それ程の実力を持っていながら死んだリューベルの死因は一体何なのか。母は、あるいはヘレスはそれを知っているのか。少なくともヘレスは知っているに違いない。

 そう思い聞いてみたが、返ってきたのはあまりに温度の無い返事だった。

 

 

「裏切りです。隊員の中に、リューベルとヘレスさんを疎ましく思う人間の手勢がいました。ダンジョンの利権に直接関わろうとしたようです」

 

「……それでどうなったの?」

 

「ヘレスさんが直接手を下したと聞きます。この問題は解決しました。くれぐれも掘り返さないように」

 

 

 目の前で「9番。直近2年以内に他国へ訪れたことはありますか?」「(ありません)」「(あったらダメだろ)」という何の味もしない虚無に等しい質問を繰り返している彼等だが、ここに至るまでには多くの苦難と絶望があった筈だ。

 リナはリューベルの復活を聞いて最初にこう思った。もしも彼が復讐を、報復を願っているとしたら?今のリューベル達の平穏は、15年という時間が傷を古傷に変えてしまっただけなのではないか?

 謀殺され、裏切られ、怒り狂う魂が時間によって忘れられ鎮火しているだけに過ぎないのではないか?

 あの日受けた凶刃を持ち主に返すべく、因果応報を実行するためにヘレスと組んだら?ヘレスがそれを良しとしてしまったら?想像するだけで恐ろしい。

 今目の前で少年の補佐をしているのは本当にリューベルなのだろう。だからこそ不思議でもあった。夫が復讐心の塊となって騎士そのものを憎んでいても不思議はないとさえ思っていた。

 自分達を謀殺し、自分で言うのもなんだが家族を引き裂いた人間がいるのだ。だというのに人の心を保つどころか、やりとりの中でどこか大人として成長しているようにすら感じる。

 

 その点で『少年』という存在には感謝をしていた。自分の復讐心よりも優先するべきもの。心に光を宿した少年を導くことに大きな使命感を持っているのかもしれない。

 もし彼がいなければ憎悪と破壊をまき散らす怪物が出会い頭に一切を塵殺しながら地上に現れ、その有り余る力で国一つを骸の山で埋めていたのかもしれない。

 リューベルは魔法や奇跡と言った異能を持たない。故に血塗られた道をその手で一から作り上げてみせただろう。リューベルが再度現れたことには安心感より、そうならなかったことへの安堵が強いのだ。

 

 

「教えてくれるんだ。今まで全然教えてくれなかったのに」

 

「もう隠せません。あなたがここまで大成するとは思ってませんでしたから……それが嬉しくもあり、ますます命の危険が高まるばかりと心労で倒れそうです……」

 

「強くてごめんね」

 

「せっかくならリューベルくらい強くなってください……そうしたら安心できます」

 

「それ無茶ぶりだってぇ!?」

 

 

 くすくすと笑う顔の下、胸の中でどんな思いが渦巻いているのか。

 リナにすらそれは分からなくなっていた。

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