私と同じ罪を背負う少女。
ケイはそれ以上語ることはなかった。
狙ったようなタイミングでキリトからメッセージが飛んできたというのもあるが、ケイ自身それ以上の追求を避けたからだ。
私達はいまキリトに呼ばれ素材集めのため、前線よりも半分以上下の階層の迷宮区でモンスターを狩っている。
私の装備はあのドレスではなくその前に使っていた軽鎧だが、その上に顔まで隠すローブを被っている。
ケイやキリトも前線で使っているものではなく、NPCから購入できる物。つまり誰でも手に入る装備。
私は装備的にローブだけで隠せるが二人はそうもいかないからね。
装備を偽装するのは此処が下層だから。上層プレイヤーが下層でモンスターを刈るのは所謂荒らし行為になる。
波風は立てないに越したことはない。
「アリウム、ケイそっちはどうだ?」
「ん~、あ、今ので最後ッス。」
「……こっちもね。」
下層だからモンスターは簡単に倒すことができる。麻痺や毒などの
「二人とも急で悪かったな。」
「あ~、まぁそれは旨い物でも奢ってもらうってことで……ん?」
「どうしたのケイ?何か見つけたの?」
手に入れたアイテムをキリトに渡しているとケイが遠くを見て首を傾げた。
ケイは確か私より索敵スキルが上だからモンスターでも見つけたのかな?
「ありゃ、ちょっも不味いッスかね?
キリット君見えるッスか?」
「あぁ、見えた。」
「……何が?」
そう言えばキリトも索敵スキル高かった。二人だけで話が進むのは気に入らない……
「多分中層プレイヤーのパーティーッスね。編成は盾持ち片手棍・短剣・両手槍・長棍。
お世辞にもバランスが良いとは言えないッスね。」
確かにバランスが悪い、前衛ができそうなのは片手棍使いくらいだろうし。
ケイの口ぶりからすると苦戦してるのだろう。安全マージンが取れていないのか。
「……どうする?」
「ここで見捨てるのは流石に……せめて今の戦闘のアシストと忠告だけでも……
あ、あれくらいなら俺だけでも楽勝ッスよ。」
ケイが一人でもと言ったのは多分私達を思ってのことだろう。私とキリトはβテスターで、一分の……と言うか下層のプレイヤーには良く思われていない。
かと言ってここでケイを一人で行かせ何かあればケイ一人が叩かれる場合がある。
「バカ言わないで、私も行く。」
「もちろん俺もな、何かあれば転移で逃げればいいし。」
「そうッスか?……じゃさっさと行くッス、これで着く前に犠牲出ました、じゃ洒落にならないッスからね。」
私達はさっそくそのパーティーに近づきケイとキリトが「前支えときましょうか?」とリーダーらしき片手棍使いに声をかけた。
片手棍使いは少し驚いたような顔をしたが、自分のHPとモンスターを見ていくばくか考えた後「では、お願いします」と答えた。
そこからは……まぁ、流れ作業だった。
ケイがヘイトを稼ぎキリトがゴブリンの武器を弾いて私がHPを削り、止めは中層プレイヤー達に譲った。私達には微々たるものだが、このプレイヤー達には結構な経験値なはず。
とりあえず周りにいたモンスターの最後の一体を両手槍使いの女の子が倒し、中層プレイヤー達の歓喜の声が上がる。多分誰かかレベルアップしたのだろう。
レベルアップはパーティーを組んでいる人にしか分からないようになってるからね。
私達はそれを微笑ましく見守っていた。攻略組にとってレベリングはもはや日課である。特にβ時代ソロだった私やキリトは1日1レベル以上上がるのは当たり前と言えるほどだ。
「ありがとう……助けに来てくれて本当に嬉しかった……本当にありがとう。」
両手槍使いの女の子が目尻に涙を貯めながらキリトの手を握りお礼を言っている。そういったことに耐性の無いキリトは顔を赤くし視線をそらし頬を指でかくという、なんとも分かりやすい反応をしている。
キリトが照れながら頬を掻いている間、短剣使いが俺の顔をじろじろと見てくる……もしかして正体がばれた?
「あの、間違ってたらごめんだけど……剣山?」
「ん?……あ!もしかしてダッカー!?」
ダッカーは中学で俺と同じクラスだったお調子者で、高校では別々になったため会うのは実に二年ぶりである。
因みにダッカーとは渾名であり、本名は……忘れた。
「久しぶりッスね、今はケイってネームなんでそこんとこよろしくッス。」
「久しぶりだな!ケイもアインクラッドに来てたのか。」
現実での知り合いと再会に思わずテンションが上がってしまう。
それは久しぶりの再会だからだけでなく、お互いが生きていることの喜びが混じっているからだ。
「あ~、喜びあってるところ悪いが……ケイ、目的忘れてるぞ。」
キリトに言われようやく何故このパーティーに声をかけたかを思い出した。横を見ればアリーも呆れたようにため息を吐き出した。……すみません。
それから俺たちはパーティーリーダーに現在のパーティーはバランスが良くなくこのまま進むのは危険だということを説明しダンジョンを抜け出すように出口まで護衛することを伝えた。
リーダーもこのままでは危険だと思っていたらしくその話を素直に聞いて、俺たちはダンジョンを脱出すべく出口へと歩を進める。
途中に出てくるモンスターは出来る限り中層パーティーに経験を積ませるように立ち回った。
始めはローブを被ったままのアリーに彼らは多少の警戒をしていたが、アリーが女性であることを俺が説明したら納得してくれた。
そして……
「三人の恩人との出会に……乾杯!」
『乾杯ー!!』
俺達は助けたパーティーギルド《月夜の黒猫団》の歓迎会に招待されている。
最初は断ったのだが、黒猫団の皆にどうしてもお礼がしたいと言われ、そこまで言うならと足を運んだのだ。
「それじゃ自己紹介からだね。俺はケイタ、月夜の黒猫団のギルドリーダーだ。」
パーティーリーダーを勤めていたが一歩前へ出て自己紹介をすると続けてダッカー・ササマル・テツオ・サチ、と次々に自己紹介を始めた。
そして次はこちらの番なのだが……俺とキリトは名前だけなら攻略組であることはばれないだろうが、アリーは美人で攻略組と言うこともあり下層のプレイヤー達にもかなり知れわたっている。
ついでに言うと俺とキリトも有名ではある、だが、俺の場合ケイと言う名はスペルが違うプレイヤーが数人いるうえ、前線ではヘルムを被っているので顔がばれにくい。キリトはボス攻略でとことんLAをかっさらうから、軍の一部がビーターと言う渾名を付け悪い噂を流し、一時期厄介なことになっていたのだが、そこは友人の情報屋アルゴに協力してもらい無くなったとまでは言えないが押さえられた。
アリーの場合下手に正体をばらすと情報屋や熱烈なファンにストーキングされかねない。
「ケイ……この人達なら大丈夫。そんな気がする。」
適当に誤魔化すか迷っていると、肩を軽く叩かれ、そちらを向くとアリーがそう言って俺より一歩前へ出て、ローブで隠された素顔を晒した。
「私はアリウム、ケイのパートナー。」
淡々とした口調だが、その透き通るようなソプラノボイスやミステリアスな容姿を見て黒猫団は全員唖然とする。
しかし、そこで俺のパートナーと言う必要はあったのだろうか?
そして、最初に我に帰ったのは黒猫団の紅一点サチ。
「えっと……もしかしなくても
「最近はそう呼ばれてるね。」
「えぇ!?てっことは……三人は攻略組!?」
こちらが攻略組だと分かると一斉に四人が驚きの声をあげる。
まぁ、下層のプレイヤーからしてみればベータテスターに嫌悪を抱きはすれど攻略組自体は現実に帰るための希望であり命をかけて戦ってくれる英雄のようなものであり、殆ど前線で戦っているので滅多に会えない存在であるのだ。
それに会えたとなれば驚くのも無理もあるまい。
「あれ?アリウムさんがケイのパートナー?切り裂き姫のパートナーは確か……」
ケイタができれば気づいて欲しくないことに気がついたようで、アリーからツーと視線をスライドさせると釣られたように他のメンバーまで俺にそのフォーカスを向けた。
そして、ダッカーがわなわなと震えた指を向け叫ぶ。
「
あまりの大声に思わず耳を両手で塞ぎ顔をしかめるが、索敵と共に上げている聴音スキルの補正がかかり手で塞ぐ程度では殆ど変わらない。
そこからはあれやこれやと質問攻めにあった。やれこの前の攻略はどうだっただの、あの噂は本当かだの……
その質問攻めをキリトは笑いながら傍観しやがったので、俺はキリトが攻略組屈指のダメージディーラーであることを暴露してやった。
そこに食いついたのがササマルやテツオ、ケイタといったアタッカーである男子だ。攻略において必要なのはアタッカーとディフェンダーのバランスだが、やはりアタッカーの方が男に人気がある。
まぁ、例外でダッカーが俺にアリーとパートナーとはどういうことだやら、どこで出会った等を力強く揺さぶりながら問い詰めて来たので、そのまま体術スキルの乗った頭突きをかましてやった。
その間アリーは同じ女性であるサチと静かに喋っていた。
と、まぁそんな感じにワイワイ騒いでいたが、俺とキリトにケイタがとある話を持ちかけてきた。
「あのさ、サチを盾持ち片手剣にしようと思うんだけど二人はどう思う?」
言われたサチは困ったような顔をし、視線を床に向ける。
……そうか、この子は……