SAO―切り裂き姫ととある騎士   作:チキン ボーイ

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第11話生きる意志

 

 

「ダッカー!もっと敵をよく見るッス!

サチは適度に力を抜いて!ササマルとケイタ、テツオは二人のフォロー!!」

 

『は、はい!』

 

 

18層迷宮区、そこでは5人のプレイヤーが重鎧プレイヤーの指示で忙しなく動き回っている。

私とキリトはその後方で万が一の場合に備えて待機しながら近くにポップしたモンスターを狩っている。

 

 

「にしても、ケイって結構スパルタなんだな。」

 

「……でも、それは彼らを想ってのこと、この位で泣き言を言うようであればケイタの上げた目標なんて、目指さない方が身のためよ。」

 

 

ケイタがケイとキリトにサチの盾持ちへの転向を相談した後、ケイは少しだけサチを見つめ問うた。

 

何故転向させるのか、今回の探索は危なかったが他の層でレベルを上げれば今のままでもいいのでは?……と。

 

 

「……まぁ、確かに攻略組を目指すとなればな。」

 

 

そう、ケイタはそこで黒猫団として後々攻略組ギルドの一つに入りたいと打ち明けた。

その宣言を聞いてケイは短期間ではあるが、サチどころかギルド全体のレクチャーを自ら名乗り出て、今現在に至る。

 

 

「ケイだって彼らを死なせたくないのでしょ、同い年みたいだし……」

 

 

正直当初の彼らが攻略組に入れる可能性はかなり低かった。

あのアットホームな雰囲気が攻略組にあれば多少気が楽になるのは確かだ。

だが、そのアットホーム故に彼らの緊張感はあまり高くない。

 

この前なんかシーフを自称するダッカーが見つけた宝箱を、何の迷いもなく開きミミックに噛みつかれていた。

もともとその階の迷宮区は完制されていて宝箱は既に無いこと、さらにトラップモンスターが潜んでいることは事前に私たちから説明を受けているはずなのにだ。

 

その後のケイは凄かった。

ダッカーに噛みついているミミックを威力重視のアバンスパイクで吹き飛ばし、一緒に吹き飛ばされたダッカーにその場で一時間説教を始めた。

 

 

「よし!今日はここまでッス。全員ポーションを飲んで変えるッスよ~。」

 

 

ケイがそう言うと5人は言われたようにポーションを順番に飲み警戒を解かないようにしている。

キリトはその中に入り軽いアドバイスを行っている。私は離れてそれを見ているケイに近づき声をかける。

 

 

「お疲れさまケイ。」

 

「アリーこそ後方の警戒お疲れさまッス。

 

このままだと、後数日ってところッスかね。」

 

「そう……ケイの満足いくようにすれば良いわ。」

 

「悪いッスね、俺の我が儘で前線から離れちゃって……」

 

「……良いのよ、今まであまり我が儘を言わなくて、遠慮されてるんじゃないかと不安だったくらいたから。

 

でも、まぁこれくらいはしてもらおうかな?」

 

 

そう冗談半分で言い盾を持ってない方の腕にしがみつくとケイは少し困ったように顔を赤くした。

 

 

「どう思いますかキリトさん。」

 

「どうもこうもないですよケイタさん。」

 

『リア充爆発しろ!』

 

 

少し離れていた男子たちが声を揃えて妬みを告げ、そして皆声をあげて笑う。

この暖かさ、ケイが気をかけたくなるのも納得できる……が!

 

腰から素早く投剣を抜き放つ。

投剣はケイタとキリトの間を抜け、後ろにポップしたモンスターの眉間に突き刺さる。そして素早く反応したキリトがソードスキルで真っ二つに切り裂いた。

 

 

「周囲の警戒はまだまだ甘いね。」

 

『スミマセン……』

 

 

安心させるように笑いかけると男子たちは顔を青ざめさせながら謝ってきた。

 

 

「アリー目が笑ってないッス。」

 

「ん?そう?」

 

「そうッスよ、俺の前だと綺麗に笑えるのに……何でなんスかね?」

 

 

それは貴方が私にとって特別な存在だから……

なんて言っても鈍感なケイは正しく理解してはくれないだろう。

いっそのこと襲ってしまおうか?

 

 

「ア、アリー?何か瞳に邪な光が見える気がするんスけど!?」

 

「……気のせいよ?」

 

「いやいや!キリット君み、見えるッスよね?」

 

 

何か危険を感じたのかキリトに話を向け、私はキリトと視線を合わさる。

すると何故かキリトはフッと視線を外した。他の男子も同様に。

 

 

「……ミエマセン。」

 

「だってさ。」

 

「そりゃ顔反らせば見えないッスよね?!

 

サッちゃん!!」

 

 

ケイはこの場で唯一敵で無いと確信できるサチに助けを求めた。まぁ、その判断は間違いなんだけどね。

 

 

「大丈夫!後でちゃんと感想を聞いてあげるから!」

 

「サッちゃーん!?」

 

 

私の気持ちを一番理解できているであろうサチは眼を輝かせながら親指を突き立てる。それをケイは信じられないものを見るよう顔になり、再び皆が笑い声をあげる。

ケイは拗ねたような顔をしたが、すぐに同じような笑い声をあげた。

 

まぁ、今はこれくらいにしておこう。

これ以上やると帰るのが遅くなっちゃうからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日で俺たちのレクチャーは終りッスね。」

 

「そっか……ありがとうございました。

三人には本当にお世話になりました。」

 

 

黒猫団と関わりを持つようになって3ヶ月くらいが経ち彼らもかなり成長した。

まだ攻略組には一歩届かないが、これ以降は彼ら自身の努力でたどり着いてもらわないとならない。

 

後心残りなのは……

 

 

「サッちゃん、ちょっとこっちに来てもらっていいッスか?」

 

「え?あ、うん。」

 

 

黒猫団との交流の場となっている酒場の外へとサチを呼び出す。

……何故かアリーが不安そうな顔をしていたのが気がかりだ。

 

 

「さて、サッちゃん。俺とキリット君そしてアリーはこれまで生きていく戦い方をレクチャーしてきた。」

 

「……うん。」

 

「そしてその中で気になったことがあるんス。

サッちゃん、君は……どうしたいんだ?」

 

 

どうしたいと聞かれたサチは何も答えず俯いた。

ケイタに彼女の盾持ちへの転向を相談されたときと同じ反応だ。タンクとして言わせてもらうなら彼女は盾使いとしての素質は高い方だと言える。ただし、攻略組……いや、フィールドに出てモンスターを狩るのは……命を賭けることには向いていない。

 

彼女は臆病であるが、生きようと……どんなことがあっても現実に帰ろうとする意志が薄いように感じる。

 

 

「多分、今のサッちゃんはただ流れに身を任せてるだけ。ギルドリーダーのケイタが攻略組を目指すと言ったから攻略組を目指し、俺やキリトが鍛えると言ったから鍛えられた。」

 

「……すごいね。ケイ君の推測は合ってるよ。

このまえ、他のギルドの友達が……臆病で安全圏内でしか狩りをしなかった友達がね、死んじゃったんだ。

そのとき思ったの、どうせ死ぬときは死ぬんだって……」

 

 

現在のアインクラッドでは、初めの一ヶ月ほどでは無いが数日に何人かずつその姿を消している。

それは攻略の犠牲であったり、不運な事故であったり……最近現れたレッドギルドだったりと様々だ。

 

 

「本当はフィールドになんか出たくなかった!ずっとはじまりの街で過ごしたかった!!

でも……」

 

「現実でも仲の良かった黒猫団の男子達は違った。」

 

 

俺の言葉にサチはコクリと頷いた。

思わずため息がこぼれる。

正面から言わないサチもサチだが、サチの気持ちを察しない男子も男子だ。

近すぎるが故に気づけない。

 

 

「サッちゃん、俺もね、本当は臆病な人間なんスよ。

アリーが連れ出してくれなければきっとはじまりの街で引きこもってたと思う。

死への恐怖で何度も挫けそうになった。でも、その度に思うんス。

 

自分が死んだら何が残るのかって。」

 

「死んだら何が残るか……」

 

「俺が死ねば……親父が悲しむ、友達が悲しむ、なにより俺を連れ出してくれたアリーが悲しむ。

悲しみばかりが残る。

そんなの嫌じゃないッスか。俺が戦えば、勿論危険は増えるけどその分誰かが死ぬ前にクリアできるかもしれない。救うことができるかもしれない。

 

アリーを帰せるかもしれない。

 

 

きっと黒猫団の皆は君をサチを帰すために攻略組に入ろうとしてるんだと思う。

でも、君は臆病だから彼らは君を常に側に置いておきたいんじゃないんスかね?君が寂しくないように。後は……直接話すべきッス。」

 

「え?」

 

 

俺は宿屋の方を指差す。すると宿屋の中から黒猫団の皆が出てくる。

 

 

「話してる時にアリーに盗み聞きさせるようにメッセージを送らせてもらったんスよ。」

 

 

未だに混乱しているサチを横目に一歩下がると、ケイタが気まずそうに一歩前へと歩み出て頭を下げる。

 

 

「サチ……ごめんな、俺たちお前の気持ちを考えないで……本当にごめん!」

 

「ケイタ……」

 

「サチはずっと泣いてたから……どうにかしたかったんだ。」

 

「……私こそごめん、本当はもっと早く言わないといけなかったことなのに。」

 

 

サチを中心に5人が肩を抱き合い涙を流す。

それを離れたところからそっと見守っているとアリーが隣に来た。その顔は優しく微笑んでいた。

 

 

「ケイ。気はすんだ?」

 

「あぁ、もう大丈夫だ。彼らならこれからも生きていける。」

 

「そっか、なら明日からは前線に戻らないとな。」

 

 

装備を前線用のものに変えたキリトが横にならびながら言う。

 

ちょくちょくボス戦に顔を出しているとはいえ前線から離れてしまっていたのだから鬼の副団長様からなんと言われるのやら……

 

 

アリーとキリトと共にその場を離れる直前に見た彼らの顔は、涙でよごれているが、確かな笑顔であった。

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