SAO―切り裂き姫ととある騎士   作:チキン ボーイ

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第12話クリスマスイブ

 

 

「……以上がこっちで調べられた情報ダヨ。」

 

 

22層のもはや俺とアリーのホームと化している宿屋のエントランス。そこにケイタを始めとする黒猫団、最近攻略組入りしたギルド風林火山のリーダーであるクライン、そして相変わらずの真っ黒黒助キリトと情報屋《鼠》のアルゴというこれまでにない程の人数が押し寄せていることもありほぼ貸しきりのような状態になっている。

 

まぁ、こんな人数が集まるのにはそれなりに理由があり。その理由と言うのが今アルゴが提示してきたウィンドウに示されたことだ。

 

クリスマス限定イベント《背教者ニコラス》の討伐

 

 

季節に合わせたイベントはMMOの醍醐味の一つであるが、このイベントは些か不信な所が多い。

 

出現する時間が12月25日0時丁度、おまけに出現場所は35層の何処かに生えている樅の木という何とも不鮮明な情報しかでまわっていない。

 

ただでさえ35層には迷いの森という専用マップが無ければ迷子確定なほどの森があり、その中から1本の樅を探り当てるなど至難のことだ。

 

50層……ターニングポイントの攻略が間近に迫っている現在。情報屋への支払いやレベリングに費やす時間の減少等を踏まえれると、普通ならばパスしてもおかしくないイベントだが……

このイベントには中層ギルドだけでなく聖竜連合や血盟騎士団といった大型トップギルドまでもが競うように情報を集め回っている。

 

 

「……それだけ魅力的ってことッスよね。」

 

 

アルゴが絞りこんだ3本の樅の情報がずらりと並んでいるその下に書かれた一つの情報。それはイベントの報酬。

 

SAO全プレイヤーが欲するであろうアイテム。攻略組トップギルドまでも動かすもの、それは……

 

 

「蘇生アイテム……か。」

 

 

死んだものを生き返らせることができる。

 

 

ただのゲームであればそれだけのアイテム。

 

だが

 

デスゲームにおいては超級と言っても過言ではないものだ。

そりゃ攻略ギルドも攻略ほっぽって探し回るわけだ。

 

最も攻略ギルド以上に必死になっている者が二人も身近にいるのだが……

 

 

「此方の樅は回りに空いている空間が少なすぎるな。」

 

「この樅は少し離れたところに違う樅がある、可能性は低いと思う。」

 

 

キリトとアリーが他のメンバーなど知らんといった感じに二人でアルゴが持ってきた情報だけでなく、自分達で探してきた情報を交換しあっている。

 

 

「なぁケー坊。」

 

「何スか?」

 

「ケー坊は良いのか?」

 

 

良いとはなんのことだろう?

アルゴは麦茶色のブドウ味ジュースをちびちびと飲みながら俺に向けていた視線を未だにあーでもないこーでもないと議論しているアリーへと向け、そして再び俺へと戻した。

 

 

「いや~、せっかくのクリスマスイブなのに、こんなむさ苦しい所に居ても良いのかってことだヨ。」

 

「いやそれは言わないお約束ってやつッスよアルちゃん。」

 

「そうだぞアルゴ!今はニコラス討伐が優先だ!」

 

 

そう声を上げるのは24歳独身のクライン。その拳は固く握りしめられ、その瞳にはうっすらと光るものがちらついている。明らかに痩せ我慢だと一目で分かる。

 

まぁ、そんな哀しい大人は放っておくとして、俺だって男だ。

勿論クリスマスイブに女の子とデートなどという輝かしいイベントに憧れが無いわけでは無い。ただ、悲しきかな攻略に勤しみ続ける日々を繰り返す男に出会いがあるわけもなく……何が言いたいかというと相手がいない。

 

 

「そりゃ相手がいないクラインはそうだろうがナ。人気上昇中の守護者様はどうだろうナ?」

 

「人気上昇中?よくわからないッスけど、とにかく今日は夜までフリーッスよ。」

 

「そうなのカ?てっきりお誘いの二つや三つは受けてると思ったんだガ……ん?」

 

 

怪しむような眼でじろじろと見てくるアルゴの肩をサチがちょんちょんと叩き、そのまま耳元でごにょごにょと何かを吹き込む。

 

 

(ケイの横にはいつもアリウムが居るんだよ?他の人が声かけられると思う?)

 

(あー、なるほどナ。)

 

 

「ケー坊も罪な男だナ。」

 

「はぁ?」

 

 

しかしまぁ、俺やキリトは女の子の知り合いは比較的多い方だろう。

この場にいるアリーとアルゴそれとサチ、そして恐らく今はニコラス討伐に向けて鬼のような指揮をとっているであろうアスナ。

たった四人だが女性が少ないアインクラッドで、しかも前線ともなれば女性など殆どいない。と言うかアスナとアリーくらいしか攻略組にはいないはずだ。

 

ともあれ、この四人の誰かを誘ったとしたら?

アスナは……そんな暇あるならボス攻略に手を貸せとか言いそうだ。

アルゴは考えるまでもなく金を遠慮なく搾り取って行くだろう。

サチは……誘ったら黒猫団の男子に袋叩きされそうだし、やんわりと断られる気がする。

 

 

「やっぱりアリーだよな……」

 

「何が?」

 

「うわっ!?」

 

 

気がつけば目の前にアリーの顔があり、驚いて思わず後ろに下がろうとし、自分が椅子に座っていることを思い出した。

とはいえ、思い出したから直ぐに動けるというわけでもなく、体重を後ろに反らしたため椅子は後ろへと傾き視線が一気に天井へと移行したかと思えば……

 

ゴツンッ!

 

 

「ぐおぉぉ!?!?」

 

『うわぁ……』

 

 

鈍いような鋭いような、ただ痛みだけは想像しやすい音をたてて俺の頭と板張りの床が衝突し、その様子を見ていた者は顔をしかめた。一人を覗いて。

 

 

「大丈夫?」

 

 

座っていた椅子から素早く立ち上がると、迷いなく痛みに悶絶している俺の頭をそっと掬い上げ空いたスペースに自らの脚を滑り込ませ顔を覗き込んできた。

所謂膝枕状態だ。

 

テーブル越しだというのに向かい側に座っていたクラインとダッカーの妬みの隠った視線を感じ、横を見やればニヤニヤとした笑みを浮かべるサチとアルゴ、ただし、アルゴの手には映像記録結晶が握られている。

 

 

「ア、アルちゃん、その手に握ってる物をすぐこっちに渡なッグゥ!?」

 

 

突然両足に走る痛みに驚き、視線を向けるとクラインとダッカーがそれぞれの足を踏みつけている。

イラッときたので腹筋で一気に上体を起こして、STR全開の拳を脛に向かって放つ!

放たれた拳は寸分違わず二人の脛にクリティカルし、痛みで飛び上がった二人は先程の俺と同じように椅子ごと後ろにひっくり返る。

 

……俺は一つ失念していた。

 

俺と二人の間には床に釘止めされたテーブルが君臨していたことを!

 

 

ゴッ!!

 

 

『ヌオォォ!?!?』

 

 

二人の後頭部が床に打ち付けられ、勢いを減らし切らなかった俺の額がテーブルの縁に衝突しそれぞれが苦悶の声を上げるのは同時だった。

 

 

「はぁ……何やってるの?」

 

 

痛みで倒れた俺は再びアリーの膝に頭を乗せ、ぶつけた箇所を優しく撫でられている。

クライン達の方からこれが差別か!……などと聞こえてくる。それに対してこれがパートナーとしての特権だと自慢したいところだが余りの心地よさに立ち上がると気力がごっそりと持っていかれてしまう。

 

 

「それで?」

 

「ん?」

 

「何がやっぱり私なの?」

 

 

……そうだ。色々あって忘れかけていたが、元々アリーに聞こえていないと思った呟きを聞かれていたことに対して驚いて頭ぶつけたんだった。

 

 

「あー、今日ってクリスマスイブじゃないッスか。それでアルちゃんにデートの予約は無いのかって聞かれて……」

 

 

デートというと単語が出たとたんに頭を撫でていた手が止まり、俺の瞳をじっと見つめてくる。

 

 

「それで知り合いの女の子とデートするってのを想像したんスけど……しっくり来なかったって言うか、色々言い訳が出るくらい違うって感じがして。

 

ただ、アリーとだけは……」

 

 

違和感なくすんなりと想像できた。

長い間コンビを組んできたからなのか、それとも……

 

 

「ねぇケイ、私でいいの?」

 

「いや、アリーでいいと言うかアリーがいい?」

 

「……うん、じゃデートしようか。」

 

 

そう言うとアリーは膝枕をやめ、47層の転移門で待ち合わせねと告げると、借りている自室へと向かいだした。その背中はどことなく機嫌が良さそうに感じられる。

 

 

「ま、アリーが喜ぶんなら何だって良いかって……なにしてんスかクラっちにダッカー?」

 

 

立ち上がろうと足に力を込めたところで、足にしがみつく二人に気がついた。それは先程まで悶絶していたクラインとダッカーだ。

 

 

「なぁケイ俺たち誓っただろ。哀を愛し哀に生きるって。」

 

「誓ってないッス。」

 

「幸せになるときは二人一緒って約束したじゃないか!」

 

「そんな約束した覚えないッス。」

 

 

未練がましくしがみついていく二人をアイアンクローで引き剥がす。

にしてもデートか……

47層って言えば確かカップル御用達のデートスポットだったっけ?

とりあえず俺はとくに準備とか無いしそのまま宿を出ようと立ち上がる。

 

 

「ケイ、その格好で行くの?」

 

「へ?まぁ、これ以外だと鎧しか持ってないし。」

 

 

その言葉を聞くとサチはジト目で俺を睨みウィンドウを操作すると俺にトレードを申請してきた。

表示されたアイテムは衣服?

 

 

「最近出来たばかりの物だよ。御代は後で良いからちゃんと(・・・・)オシャレしていくんだよ!」

 

「お、おう。」

 

 

そう言えばサチはあの夜の後、戦闘から離れ職人へと移行したサチは鍛冶系ではなく裁縫系のスキルを鍛え、中層区ではそれなりに人気を誇っているらしい。

そんなサチの鬼気迫る表情に圧されるようにOKボタンをクリックした。すると手には水色をベースに緑のラインのが入った服が現れた。間違いなく今着ている服よりオシャレだな。

 

 

「それと!しっかりアリウムをリードすること!彼女のお願いは極力聴くこと!後褒めたりするのも忘れちゃダメだからね!」

 

「あ、あぁ」

 

「返事は!」

 

「イエスマム!!」

 

 

あれ?サチってこんな娘だったっけ?

とにかくこれ以上キャラが崩壊しかけている友人を見るのは恐いので素早く自室へ戻り貰った服に着替えると転移結晶を使い47層へと転移した。

 

 

 

 





皆さんお久し振りです
……という挨拶も本来なら3話ほど前にやらないといけなかったのですが

申し訳ないですがひたすら本編書くことに集中したかったので遅れてしまいました。
まぁ本編と言ってもただ単にケイ君とアリウムさんをイチャイチャさせたかっただけなんですがね!

しかし来週からまた仕事が忙しくなるので更新速度は遅くなりそうです。
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