47層フローリア
「剣を取れ!僕と決闘しろ!」
何故に俺は金髪のイケメン野郎に喧嘩を売られているのだろう?
いや、理由は分かりきっている。今も俺の腕に自身の腕を絡み付けるようにしている美人な相棒が根本的な理由だ。
少年が大声で騒ぐものだから俺達を囲むように野次馬が集まっているため容易に抜け出せなくなってしまっている。そして、俺の前にはデュエルが申し込まれていることを知らせるウィンドウが現れている。
本当……どうしてこうなった?
時は遡り数十分前
今俺はどうしようもない後悔に追い込まれている。と言うのも待ち合わせ場所を決めたは良いが集合時間を決め忘れていたのを転移門についた頃に思い出したからだ。と言うのも俺とアリーは待ち合わせというものを殆どやったことがない。いや必要が無いと言った方が適切か。何故なら、だいたいアイテムなどの買い出しからレベリングまで、寝るとき以外殆ど一緒に行動しているからだ。
メッセージを飛ばそうかとも考えたが、それは何か急かしているような気がするから辞めた。それに転移門で待ってればすれ違うことも無いだろうし、近場のカフェテリアでジュースでも飲みながら待つことにしよう。にしても……
「見事にカップルばかりだよなぁ……」
右を見れど左を見れど、どこもかしこも男女カップルばかりである。中には初々しい者達もいれば、馬鹿騒ぎしている若者や男に甘えたような声を発している派手な者など子供の教育にあまり宜しくないような者達までと様々。
クリスマスイブで現段階最も人気のあるデートスポットともなれば当然と言えば当然な光景とも言えるが……
一年という月日がアインクラッドに囚われた人達を変えた。
一層で呆然と助けを待っている人はもう減り。多数が安全なエリアで狩を行い金を稼ぎ遊ぶ様は、バイトをする学生や社会人を彷彿させる。
低層だけの話では無い。攻略組にも同じことが起きて来はじめている。
数層前だが、一部の小規模攻略ギルドが攻略組から姿を消した。別に全滅したとかではない、一層分の攻略を休んだと思えばそれ以降の攻略に全く顔を出さなくなった。後に聞いた話では攻略第一から生きることを優先するように方針換えをしたとのことだ。そして、そこから伝播するように徐々に小規模ギルドやソロプレイヤー達が攻略を離れだしている。
当初は理不尽なデスゲームの強制や茅場への憎しみが起爆剤となっていたが、それも一年で大部分が薄れてしまったのだろう。
駄目だ。明らかにこんな日に考えるようなものでは無い。姿形はどうあれ、皆笑っているのだから……
そんなことを想っていると、転移門から一人分の光が溢れ一人の女性プレイヤーが姿を現した。
輝かしい白銀の長髪を緩やかにサイドで纏め、赤紫のカーディガンに無地の黒シャツとチノパン、そして方耳のみにイヤリングを着けている。決して派手ではない、しかし、彼女の類い稀無いスタイルと雰囲気がそこだけを別次元であるような錯覚を見せた。彼女──アリーは転移が終ると、人が大勢いるにも関わらず直ぐに俺を見つけ歩いてくる。俺は中身が半分ほど残っているジュースをその場に放棄し立ち上がると、アリーへと歩を進めた。
「ごめん、時間決めてなかったね。待った?」
「ほんの10分位ッスよ。まぁ、いつも以上に美人なアリーを見れたから、それくらいどうってこと無いッス!」
実際いつも見ている大胆なシャツとショートパンツだけの私服とはまた違った魅力があり、正直柄にもなく緊張している。辺りでデートをしていた男性プレイヤーの何人かがチラチラとアリーを見ていることにちょっとした優越感とあまり見るんじゃねぇよ!と独占欲が入り交じっておかしな心情になってしまう。
「ありがとケイも格好いいよ、じゃ行こっか?」
「っと、ちょっと待ってほしいッス。」
「あっ……」
歩き出そうとするアリーの左手を握ると、ピクリと動きが止まり不思議そうに俺の顔をじっと見つめてくる。
「お嬢様今日は俺がエスコートさせて貰うッスよ?」
「ッ!?……あ、うん、お願い。」
おそらくもう二度と吐くことの無いであろう俺のキザったらしい台詞を聴き、アリーの顔がうっすらと赤くなり握っている手に己の手を絡み付けてくる。
……自分で始めたこととはいえ、腕を絡められるとは考えてなかった。密着していることで感じる彼女の体温や僅かに香る甘い匂いに俺の体温も急上昇だ。
「あの!!」
「「ん?」」
いざ行かんと歩き出そうとしたが、急な声かけに出足を挫かれた。声の主はアリーの隣に立っている金髪の男。見た目からしてキリトやアスナと同い年くらいに見えるが、どことなく幼いような雰囲気を持っており顔立ちは整っている。その少年は俺達と言うよりアリーのみを見据えているようだ。
「……何?」
アリーも少年が自分に対して声をかけたと気づいたようで、どことなくうんざりしたように続きを促す。
「えっと、僕ランスロットっていいます!その少しお茶でも……」
「嫌よ、私たちは今からデート。ほら行くよ。」
そう言って絡み付かせている腕を引いて歩き出すアリー。俺は引かれるままに着いていく。いや、正直嫌な予感しかしない……イケメン君はデートという単語に信じられないと言ったような顔でアリーを見ていたが、親の仇を見るような目で俺を睨み付けた。
あぁ、こりゃ完全に……
「待ってください!!そこの君!僕とその娘を賭けて決闘しろ!」
ランスロットと名乗ったイケメン君は背負っていたバスターソードを引き抜き
「お断りっス。こっちには何の利益も無いし、と言うか、アリーに断られたんだから素直に諦めろ。」
「嫌だ!僕は君に勝って彼女の隣に立つんだ!剣を取れ!僕と決闘しろ!」
──ということがあり今に至ったわけだ。
「はぁ……しかた無いッスね。アリーちょっとだけ離れといてくれないっスか?」
「……相手する気?」
アリーの問いかけに軽く頷き返す。逃げようにも集まってきた野次馬が邪魔で直ぐに捕まってしまうのが目に見えている。彼女もそれは分かっているのだろう、渋々ながらも腕から離れ一歩下がる。俺はそれを見届けるとウィンドウを操作し、ライノガードと《短槍》クルルンカを呼び出し、初撃決着ルールを選択した。
今の私は非常に不愉快だ。
今朝意図的では無かったのだろうがケイからデートの誘いを受けたとき、夜のボスイベントが頭の中から何処かに飛んでいくほどの歓喜をなんとか押さえながら平然を装いつつ承諾した。だが、集合時間を決め忘れるというポカをやらかしてしまった。気づいた時にはもう遅く、ケイ はすでに宿を出ておりマップ追跡で47層の転移門近くに居ることが確認できた。急ぐべきなのだろうが、私だって女だ。デートのときくらい惚れた相手には綺麗な姿を魅せたい、ケイには悪いが少しの間だけ待っていてもらおう。
私はサチから買った服装に着替え髪を調え、
まぁ、そんな感じで遅れながらも47層に着き辺りを見回すとカフェテリアで飲み物を飲んでいるケイと目が合った。何時もと違う服を着ていたが、一年も
「ごめん、時間決めてなかったね。待った?」
「ほんの10分位ッスよ。まぁ、いつも以上に美人なアリーを見れたから、それくらいどうってこと無いッス!」
「ありがとケイも格好いいよ、じゃ行こっか?」
「っと、ちょっと待ってほしいッス。」
「あっ……」
嘘。彼が私と約束した数分後に宿を出ているのは確認ずみで、今はそれから三十分近く経っている。しかしそれを指摘したところで軽くあしらわれるのは今までの経験で身に染みている。それと、いつも以上に美人と言われ単純ながら嬉しく顔が熱くなるのが分かり、それを隠すように歩き出そうとしたがケイに手を握られ立ち止まる。
ケイから手を握ってくるのは珍しい……というかあの弱さを見せた夜以来初めてだ。どうしたのかな?
「お嬢様今日は俺がエスコートさせて貰うッスよ?」
「ッ!?……あ、うん、お願い。」
ふざけたようなキザったらしい台詞。これが見ず知らずの人から言われたのなら腕を振りほどいている自信がある。でも大好きな人から言われるとこんなにもキュンとするのか……なるほど恋せよ乙女とはよく言ったものだ。
エスコートすると言ってくれたのだ、今日は彼に全てを任せよう。私は握られた腕に自らの腕を絡ませ体を密着させ、チラリとケイの顔を伺うと顔が赤くなっている。
……少しは意識してるんだ。嬉しいな。
「あの!!」
「「ん?」」
今日は最高の日になるだろうと心を踊らせているところに声をかけられ、嫌な予感がするが声のした方を見ると
幼い金髪の男が立っている。その男は私達ではなく、私のみを見ておりケイは眼中に無いようだ。またナンパか……
攻略の最前線に居るときは全く無いが、アイテムの買い込みや街の探索などをやっているときは頻繁に声をかけられる。まぁ、その度にケイが立ち塞がってくれるのだけど。
「……何?」
「えっと、僕ランスロットっていいます!その少しお茶でも……」
「嫌よ、私たちは今からデート。ほら行くよ。」
こういった相手は冷たくあしらうに限る。いくら見た感じ年下だからといって優しくすると浸け上がられるからね。だから相手がショックを受けて固まっている間に逃げようとケイを引っ張るが、回り込まれケイを睨み付けていた。
「待ってください!!そこの君!僕とその娘を賭けて決闘しろ!」
いや、いつの時代のアニメ?
そこからは話を省くが、男が騒いだせいで辺りに野次馬ができて逃げるのは不可能な状態になり。仕方なくケイがデュエルを受けることになり、私は絡めていた腕を解かなければいけなくなり、嫌々ながら後ろに下がった。
「ふむ、中々面白いことになっているね。」
「ッ!?……ヒースクリフ?何故ここに?」
ケイが盾と武器を呼び出し初撃決着を選択したとき、ふと横から聞き覚えのある声に喋りかけられたと思えば血盟騎士団団長ヒースクリフが立っていた。
「なに、少し野暮用でこの層に来てたのだが、白銀の髪をもつ美女を賭けて決闘が行われると耳にし、こうして見に来たわけだ。」
「……貴方が興味を持つような組み合わせでは無いと思うけど?」
「ふむ、確かに勝敗は分かりきっているようなものだ。私が面白いと言ったのは二人のキャラネームに関してのことだ。
アーサー伝説は知っているかね?」
アーサー伝説。詳しくは知らないがアーサー王が聖剣エクスカリバーを手にいれ国を作っていく物語だっけ?
「ランスロットとケイは共にアーサー王に仕えた円卓の騎士の一員だ。」
「ランスロットは聞いたことがあるけど、ケイもそうなの?」
「ケイ卿はアーサー王の義兄にあたり円卓の騎士の中でも最古参で最後までアーサー王に忠義を誓っていた数少ない騎士だ。性格は……まぁ似たり寄ったりだね。」
「ふーん。」
そんなことを話しているとカウントダウンが0になり開始のブザーが鳴り響く。それと同時にランスロットが片手剣スキル[バーチカル]を放つが、ケイの持つ壁盾に防がれそのまま押し返された。
「タンク相手に正面特攻は愚策ッスよ。」
「ならこれでどうだ!」
今度は壁盾で視界が塞がれる左側に回り込みケイの横まで来ると、突進技[ソニックリープ]を放つが、やはりそれもスライドされた盾で止められる。そして盾をずらし反撃しようとするケイを見て慌てて盾を構え後ろに下がろうとするが……バランスを崩し倒れる。
「なっ!?」
「ほぉ……」
「決まりね。」
見れば盾をずらしたところからケイの足が踏み込んでランスロットの脚を捕らえていた。ただでさえ壁盾でケイの左半身は確認ができない、そのうえソードスキルの硬直後に見えた反撃の構えに釘付けになり足元まで意識が回らなかったのが決定打となった。
立ち上がる余裕など与えずケイはランスロットの剣を持つ腕を踏みつけ、喉元に短槍を突きつける。
「勝負ありだ。おとなしく降参してくれっス。」
「……
勝敗は当たり前のようにケイの勝ち、まぁ攻略組と中層プレイヤーなのだから当たり前と言えば当たり前だ。負けたランスロットは野次馬をかき分け転移門で何処かに転移していった。ヒースクリフもいつの間にかいなくなっている。
何はともあれ、これでようやくデートができるのだ。私はケイに駆け寄り再び腕に抱きついた。
「おっと!お待たせっス。」
「うん、待った分以上に楽しませてもらおうかな?」
何を言っているんだ私は、原因は私だというのに……でも、ケイは私の言葉に任せておけと笑い私をエスコートし始める。
孝哉……私の愛しい弟。
私は駄目なお姉ちゃんだけど、貴方によく似た最愛の人に沢山の幸せを貰っています。
そっちに行くのはまだまだ先になりそうだけど、いつか必ず会いに行きます。だけど、それまで……せめて彼を現実まで帰すその時まで、この幸せを感じさせて下さい。彼を守らせて下さい。
たとえ
「……この気持ちが伝わらなくても……ね。」
さて第13話決闘はいかがだったでしょうか?
と言っても殆ど決闘してないっていうね!
まぁ二人のレベルさがありすぎましたから仕方ない……
そして突然のヒースクリフ登場とケイのネーム由来。
アーサー伝説はアーサーやランスロット、ガウェインなどが有名ですがケイ卿みたいな人だっているのです、
ケイ卿の特徴の良く渾名をつけたりふざけた感じが強いですが、家庭一筋だったり裏切りが多いアーサー伝説の中でも最後までアーサー王に忠義を誓っていたりと味のあるキャラをしてます。
話は変わりますが、最近復活したばかりなのにスランプ気味で文が滅茶苦茶になってしまってる感が否めません。
と言うかさっさと原作進めろと自分に突っ込みを入れる日々を過ごしてます。……ダッテ、イチャイチャサセタインダモン
ごほん!
しかし次はようやくニコラス討伐戦です!
あまり期待せずにお待ちください!←オイッ