SAO―切り裂き姫ととある騎士   作:チキン ボーイ

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第14話聖夜の死闘

 35層迷いの森深部にある小さな広場。そこにサチを除く黒猫団のメンバーと俺、そして、アリウムとケイのペアが集まっている。辺りの地面にはキラキラしたものが撒かれており、これはモンスターが近寄りにくくなるアイテムだ。

 

 

「遅いなクラインさん達。」

 

「そうっスね。もしかして迷子?」

 

「ポイントを打ったマップを渡してあるから迷うはずはないんだよね?」

 

 

 ケイタやケイ達が言うように現在俺らはギルド風林火山の面々を待っている。と言うのも、今回のイベントボス攻略は黒猫の四人と俺・ケイ・アリウムのパーティーと風林火山のパーティーの2パーティーで攻略することになっているからだ。このような人数で大丈夫かと不安ではあったが、元々目を付けていた樅の周囲は余りスペースが無く、安全性を考えても2パーティーが限度であったし、アルゴからボス自体も現階層のフィールドボスより弱いという情報があったから大丈夫だろう。

 

 

「残り十分か、どうする?俺達だけで突撃するか?」

 

「……いや、どうやら間に合った見たいっス。」

 

 

 ケイが森の入り口がある方角を指さす。しかし、俺達の目には暗闇しか映らない。ケイは《聴音》の上位スキルである《聞き耳》と《索敵》の派生である《プレイヤー探知》を取得しているから間違いは無いはず。その証拠に数秒後には俺のプレイヤー探知にも反応があり、さらにその数秒後には赤髪に悪趣味なバンダナを巻いた甲冑を着込んだプレイヤーを先頭に数人のプレイヤーが見えた。

 

 

「いやー悪い悪い、道に迷っちまった。」

 

「何でマップを渡したのに迷うんだよ?」

 

「しかたねぇだろ?こうも似たような風景が続いてたら道の一本や二本間違えるって。」

 

「……それで?何本間違えたの?」

 

『リーダーに任せたら五本です!』

 

「クラインお前はもうマップを持つな!」

 

「なんでだよ!?それとお前ら!お前達にも確認したら合ってるって、言ったじゃねぇか!」

 

 

 子供のように騒ぐクラインとは、今でこそ冗談を言い合えるような関係だが再開当初は今のように冗談など言える状態じゃなかった。クラインは何とも思っていないようだったが、当時の俺はデスゲーム開始時に彼を見捨てたことへの後ろめたさがあり気まずい雰囲気になってしまった。そんな時に間を取り持ってくれたのがケイだった。

 

 第一層でMPKに晒されたときにたまたま巻き込んでしまったペアの方翼。ソロで行こうとしていた俺をパーティーに誘ってくれた友人は、お世辞にもプレイが上手いとは言えなかった。βテスター(アリウム)に手解きを受けたとはいえ、やはりビギナーであることには変わりなく何度もソードスキルを不発させたりぼったくりにあったりしていた。

それでもケイは折れなかった。

不発にしてしまったならそれ以上の回数を反復練習し、ぼったくりにあったなら倍の情報収集を行い二度と同じ間違いを犯さないように気を配った。

 

 攻略組の中にはケイのことを、βテスター二人に守ってもらってきた運の良い奴と陰口を叩く奴もいるが、守ってきて貰ったのはむしろ俺達の方だ。

タンクとして常にモンスターやボスの攻撃から俺達を守り、ビギナーからβテスターへの弾圧からもケイは俺達を庇ってくれた。

そんな彼だから俺やアリウムは安心して守備を任せられる。

 

 ……そういやさっきからケイが何も喋ってないな?

 

 

「なぁケイどうかしt「静かに……!」」

 

 

 ケイの鋭い言葉にその場に居る全員が黙り辺りを警戒し始める。ケイはその場に伏せると雪が積もった地面に耳をつけたり。

 

 

「ひーふーみー……まだ増える!?前方から多数のプレイが近づいてきてるっス!少なくとも20は来てる!」

 

『!?』

 

 

 20人つまり約3パーティー以上が近づいて来ているということ。偶然か?いや、ここは情報屋から提示された樅の中でも俺とアリウムが長年培ったMMOでの勘と経験から選び出した樅の木だ。完全にとは言えないが、他のパーティーと被ることは無いと言っていいだろう。

 

 構えてから数十秒後、ケイの報告どおり大量のプレイヤーが姿を表しす。そして、それは見知ったプレイヤーだった。

 

 

「聖竜連合……!!ディアベル、これはどういうことだ?」

 

 

 姿を表したのはギルドは聖竜連合、フラグボスの為なら一時的なオレンジ化を辞さないと噂されているギルドだ。その先頭に立つのはあの日、一層ボス攻略を呼び掛け実行に移したβテスターでありギルドマスターでもあるディアベル。

 

 

「やぁ、黒の剣士に風林火山の皆さん、そして比翼まで……奇遇だね。」

 

 

 そうにこやかに挨拶するディアベルの後ろにはここ数日レベリングスポットのアリ塚で何度も顔を会わせた面子が揃っている。それとその何人かは俺とアリウムの前で盾を構えているケイを睨み付けていた。聖竜連合に限った話ではない、アリウムのファンは攻略組にも多く存在し、その隣に立つケイはビーターと呼ばれている俺と同じくらい邪険に想われている。かといって一度アリウムが聖竜連合のナンパを返り討ちにして以来は彼女への直接なアプローチは減ったが、換わりにケイへの挑戦が後を絶えないらしい。恐らくだが睨み付けている奴らはそういったファンであろう。因に比翼とは低層のプレイヤー達がケイとアリウムの関係を間接的に聞いた末につけられたタッグ名だ。意味はアスナ曰くなかむつまじい男女を示しているらしい。

 

にしても

 

 

「奇遇…ね。そのメンバーで本当に奇遇なんスかね?」

 

 

 そう、目の前にいるのは聖竜連合のメンバーは最前線に出てくるような高レベルプレイヤー達、聖竜の本気小隊だ。そのメンバーが偶然(・・)ボス出現の数分前に現れたのは作為的なものを感じてしまうのは仕方ないことだ。

 

 

「……ここで俺がそうだと言ったところで信用する君たちじゃないだろう?」

 

「まぁ、そうね。それで?この先は私達が押さえていた樅の木で、私達のパーティーで満員なんだけど?」

 

 

 アリウムの言葉には隠しきれていない棘がが含まれている。彼女が今回のボスへどれだけの想いを込めているか知っているのはきっと俺だけだろう。彼女はこのクリスマスイベントが噂され始めた頃、一人で俺の塒を訪ねてきて迎え入れた俺に深々と頭を下げた。

どうしても蘇生アイテムを手に入れたいから協力してくれと。

詳しく聞いた訳ではないが、おそらくそれもケイを想ってのことだと直ぐに分かった。普段から二人に世話になっている俺は二つ返事でそれを了承し情報を集め、風林火山と月夜の黒猫団に協力を頼んだ。

 

 

「それは困った。俺達も蘇生アイテムを求めてレベリング放り出してまで此処まで来たんだ。手ぶらで帰るわけにはいかない。」

 

 

 ディアベルの隣に居るリンドが手を挙げると一斉に武器を構える。力ずくか!!

チラリと時間を確認するとクエスト開始まで後2分!2分で攻略組を叩き伏せるのは不可能だ。どうする?

 

 

「っ!ケイ!アリウムさん!キリト!

先に行って!!」

 

「ここは俺達が食い止める!お前らは行ってボスを倒せ!だが!ぜってえ死ぬんじゃねぇぞ!?」

 

 

 黒猫団と風林火山が俺達の前で壁となり聖竜の進行を防ぐ。数は二倍近く敗けは濃厚だというのに彼らは俺達に託した。

 

 

「行こう二人とも、長くはもたない!」

 

「分かったっス!」

 

「ありがとうッ!必ず倒すよ!」

 

 

 俺達は後ろで聞こえる怒号や金属同士のぶつかる鋭い音を振り払い最後のワープポイントに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワープが完了すると何処からともなく鈴の音が鳴り響き、目的の樅の木の上空から見たことのないモンスターに引かれるソリが樅の木の真上まで来るとそこから黒い影が飛び出した。

俺の三倍はありそうな巨体、捩れた髭と血のような赤い服、そして奇妙な長い腕に握られた頭陀袋と鉈。

降り立った《背徳卿ニコラス》がクエストにより決められた台詞を喋ろうと口を開く……

 

 

「ウオオオォォォォ!!」

 

 

 ニコラスの台詞はケイの咆哮(ハウル)によって掻き消されることとなり続いて飛び出した俺とアリウムのソードスキルがニコラスの顔面と首元に突き刺さり戦闘が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間にして30分にも満たない戦闘は熾烈を極めるものだった。ケイのガードを主軸に俺とアリウムが攻撃し、ケイが回復している間は二人でひたすらパリィをし続けてヘイトを稼ぐ、後はその繰り返しだったが回復アイテムがほとんど無くなりかけたところで漸く倒せた。

倒したは良いが三人とも激戦の後ということもあり大の字で雪の上に四肢を投げ出し息を整えていた。

 

 

「ハァ……ハァ……ゲホッ」

 

「もうッ……二度とこんな無茶なボス討伐なんて……したくない。」

 

「……そうだね。」

 

 

 壁役として常に一人ボスの攻撃に防いでいたケイの心的負担は相当なものだったのだろう。いつものふざけた語尾は抜け正直な愚痴を溢している。

 

 さて、いつまでも寝ころがって居るわけにはいかない。クライン達の無事も確認しないといけない。俺は上半身を起こしウインドウを呼び出す。電子ベルのような呼び出し音が隣からも聞こえる。多分アリウムも同じ様にウインドウを呼び出したのだろう。

 

 アイテムストレージの最後辺りを探る。そこには決して少なくない量のドロップ品が並んでおりそこから探すとなると少し時間が掛かるだろう。

 

 

「……こっちは無いね。」

 

「こっちも外れっス。」

 

 

 アリウムといつの間にかウインドウを確認していたケイが首を振る。ということは……あった!ストレージの最下部に確かにそのアイテムは存在した。

アイテム名《還魂の聖晶石》

タップして実体(オブジェクト)化させると卵形の七色に輝く美しい宝石が出現する。

ケイとアリウムを見る。二人とも無言で頷き、俺も頷き返すし宝石をワンクリックするとアイテムの説明が表示される。それを見てアリウムに向かって放る。キャッチしたアリウムはそのままワンクリックしその効果に見る。

 

 

「十秒……か。」

 

 

 そう、アイテムは確かに自分以外のHPが0になったプレイヤーを蘇生させることができる。しかし、それは死んでから十秒以内でというじょうけんが付いていた。

 

 

「これは、公開できないっスね。」

 

「あぁ、下手をすればまた混乱をおこすかもしれない。」

 

 

 何せこれは直接ではないにしろ仮想世界での死が現実での死にリンクしていることを強く暗示させるものだからだ。今のプレイヤー達の中には、此方での死=彼方での死ということを考えないようにしている者も少なくない。そうでもしないと不安で押し潰されてしまいそうになるからだ。

そんなプレイヤー達にとってこのアイテムの効果は爆弾にも等しい。

 

 

「じゃこれは私達と外で待ってる皆だけの秘密にしておこうか。」

 

「そうだな、とりあえずは戻って皆と話し合うか。」

 

 

 疲れて眠ってしまいたい気持ちを抑え、ワープポイントに足を踏み入れると景色が変わり目の前には風林火山と黒猫団の面々と一人のプレイヤーが疲れたように腰を下ろしていた。

 

 

「おぉキリト!無事でなによりだ。」

 

「そっちこそ。それで、そこのあんたは?」

 

「レイニーな。25層の時にパーティー組んだろ?」

 

 

 そう言えばあの時に居た気がする。確かケイがフレンド登録をしていてそれなりに交流があったはずだ。

そこまで考えていると後に二人分の足跡が現れる。

 

 

「皆無事っスね。あれ?レイ?」

 

「何で貴方がここに居るの?」

 

「それは俺から説明するよ。

キリト達がワープポイントに入った後聖竜連合とぶつかったんだけど、レイニーさんがこっち側に着いてくれたんだ。」

 

「元々最近のギルドの方向性に嫌気が指してたときにこんなことがあったんでな、我慢できずに蹴り入れちまった。」

 

 

 なるほど、油断させてアイテムを奪うような性格では無さそうだしこれ以上警戒しなくてもよさそうだ。

 

 

 とりあえずは宿に戻ってから詳しい話をするということになり俺達はケイとアリウムが拠点にしている宿へと向かうのであった。

 





はい!今回はキリト君視点で話を進めてみましたがいかがでしたでしょうか?
ケイとアリウムさんの介入により原作のように思い詰めていないので書くのに少し手間取ってしまいました。

そして完全にディアベルが悪役になってしまってますね。どうしてこうなった

さて次回は50層攻略!……ではなく間話を挟みたいとおもっています。
オリジナルの話、ケイとアリウム、後は分かりますね?

てなわけで次回またお会いしましょう。
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