SAO―切り裂き姫ととある騎士   作:チキン ボーイ

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今回は完全オリジナル回です。
タイトルでほとんどネタバレしていますがあの人も登場!


第3話 戦う理由と鼠

 

 

 アインクラッド生活二日目の夜、俺達はキリトの話を聞き終わりそれぞれの部屋へ戻っていた。

 

 キリトはデスゲーム開始時にクラインを誘い街を出ようとしていたが、クラインは仲間を置いて行けないと街に残ったそうだ。

そう語るキリトの顔には隠しきれない後悔の念が見え隠れしていた。

 

 その後は俺達と同じように片手剣入手クエストを受けてあの森に向かい、[リトルネペント]を狩っていた所にコペルというβテスターが現れ共同で狩をしていた。

 

後は俺達の知っての通り……

 

 

 

「あんな簡単に死ぬのか……」

 

 

 

 顔も見れていないが確かに一人のプレイヤーが目の前で死んだ。

強いモンスターと相対したわけでもなく、普通のモンスターに囲まれパニックになっただけ。

βテスターも一般プレイヤーも関係ない、この世界での死は皆平等だ。

 

 

 はは……今更になって震えて来やがった。

これからもこんな日々が続くと思うと耐えきれる自信がない。

いっそこのまま引きこもってしまった方がとも思ってしまう。

 

 

 そんなときコンコンとドアがノックされた。

震える足を叱咤しどうにか扉まで行き開ける。

 

 

 

「アリウムさん?……どうかしたんスか?」

 

 

 

 扉を開けて立っていたのはアリウムさんだった。

身に付けていた軽鎧は取り外されており、シャツ一枚にショーパンというちょっと目のやり場に困る格好だ。

 

 

 

「……ケイはまだ鎧を着ているのね。」

 

「あっ」

 

 

 

 アリウムさんの言う通り俺の格好は未だに戦闘時のままだ。

話を聞いてからそれなりに時間が経過したというのにこれは不自然過ぎる。

あわてて武装を解除し部屋着になるがもう遅いだろう。

 

 

 

「少し部屋に入れてもらってもいい?」

 

「あー、いや、そういう格好で男の部屋に来るもんじゃないッスよ。

 

俺はしないッスけど他の男は勘違いしたりするかもしれないですし。」

 

 

 

 別に疚しいことがあるわけではないが、今誰かと居ると自分の飲み込もうとしているものを吐露してしまいそうだからだ。

 

強くあらねばならない、一度でも折れれば弱い俺はきっと立ち直れまい。

 

 

 

「お願いですから退いてください……

俺が強くあれてる内に。」

 

「……私は恐い。」

 

「え?」

 

「ケイが壊れてしまうんじゃないか、ケイもあのプレイヤーと同じように消えてしまうんじゃないか……

 

……私がケイを連れ出したのは私のエゴ。

約九千人のビギナーを見捨てて前に進むことの罪悪感を減らすために貴方を利用した。

勝手なのは分かってる、でも貴方を私の戦う理由にさせてほしい。

 

そうすれば私は強くなれる。」

 

 

 

 エゴ…利用…か、そう言うなら何故そんな悲しい顔をしているのか。

今まで見たく無表情で言ってくれれば信じられた。

でも無理だよ、そんな顔で言われたって信じられねぇよ。

 

 

 

「それだけ……言っておきたかった。ごめんね、ゆっくり休んで。」

 

「待って下さい、アリウムさんの言いたいことはわかったッス。

正直少しカチンときましたし、ふざけるなとも思った。

でも、何ででしょうね恨めないんスよ。

不謹慎スけど選ばれたのが俺で良かったなんて思えちゃうんス。

 

戦う理由にするのは構わないッス、でも、かわりに俺も貴女を戦う理由にさせてもらうのでそこんとこよろしく!

 

じゃまた明日ッス。」

 

 

 

最初は不安げな顔をしていたアリウムさんだったが、最後はキョトンとした顔になっていた。

我ながらあんな恥ずかしい台詞をよく言えたものだ……

 

扉を閉める直前におやすみまた明日という言葉が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら何かあった?」

 

「「何かって何が?」」

 

 

 

翌日再び酒場に集まった俺とアリウムさんの所にキリトが降りてきて早々に訳の分からぬことを聞いてきた。

 

思わず聞き返した言葉とタイミングがアリウムさんと同じで顔を見合わせて笑う。

 

 

 

「やっぱ何かあっただろ。」

 

「ん~、雨降って地固まるってやつッスかね?」

 

「そうね、そんな感じかな。」

 

「ところでキリット君は今後どうするんスか?

あんなことが有った翌日になんなんスけど俺らと一緒に行く気はないッスかね?」

 

 

 

昨日共闘した時に見たキリトの実力は素人目でもかなり高い、キリトが居れば二人で戦うより効率も高くなるし、危険も減るだろう。

 

MPKされそうになった次の日に他人を信じるのは難しいだろうが……

 

 

 

「そうだな……俺は二人が良いなら是非。

 

アタッカー2にタンク1ってのはバランス良いしな。」

 

「そうね、とりあえずケイは盾を買わないとね。」

 

 

 

あっさり了承されたが、キリトは結構肝が座っているらしいな。

そしてアリウムさんの言う通り俺は盾を装備していない、と言うのも始まりの街で最初に持っていたコルは槍と鎧につぎ込んだからだ。

昨日の狩りでコルはそれなりに稼いでいるから盾を1つ買うくらい何の問題もない。

 

 

 

「盾ならここからちょっと東に行った場所でポップする[ゴブリンファイター]のドロップの方が性能がいいぞ、経験値稼ぎにもなるし行ってみるか?」

 

「おぉ、流石キリット君頼りになるッス。

アリウムさんもそれでいいッスか?」

 

「いいんだけど……ねぇ。」

 

「ん?どうしたんスか?」

 

「何で私にはあだ名をつけないの?」

 

 

 

場の空気が固まるのを肌で感じた。

いや、別にたいして理由があるわけではないが何となく考え付かなかっただけだ、

 

 

 

「アリウムさんのあだ名をッスか……

 

安直ですけどアリーってのはどうッスか?」

 

 

 

と言うか俺のつけるあだ名は捻りもないもじっただけのものが大半なんだけどな。

しかし何故いきなりそんなことを気にしたのだろうか?

あれかな距離をとられていると思われたのかな。

 

 

 

「アリー…うん、それでいいよ。

 

じゃ準備をして向かおうか。」

 

「?了解ッス。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉ!!」

 

 

 

キリトがソードスキルを放ちガキンッという音と共に[ゴブリンファイター]の持つ棍棒が弾かれた。

隙だらけになった所にアリーが三連撃のソードスキルを放ちHPを大幅に削るが止めをさしきれず[ゴブリンファイター]は反撃に移る。

 

 

 

「よっと!」

 

 

 

反撃に棍棒を振るった[ゴブリンファイター]とアリーの間に入り槍で棍棒を弾き、《ツイン・スラスト》を放つ。

一発目は盾を弾き、二発目が残っているHPを削りきる。

 

 

 

「……お、ようやくドロップしたッスよ。」

 

 

 

ドロップしたのはウッドシールドという盾で、βテスト時は二層のショップで販売されていたらしい。

因みに一層で買えるのはウッドバックラーだ。

 

 

 

「これでよしっと、どうするッスか?

 

目的の物は手に入ったし次の村に向かうか?」

 

「このメンバーなら次の村まで問題なく行けるな。」

 

「うん、でももう少し此処でレベリングしようかケイも盾を慣らさないと。」

 

 

 

確かに、今まで何もなかった左腕についた盾を軽く振ってみるが違和感は拭えない。

ある程度敵のアルゴリズムが分かっているこの場で慣らしといた方が後々安全だろう。

 

慣らすで思い出したが……

 

 

 

「アリーはそのフードに慣れたッスか?」

 

 

 

今現在アリーは深めのフードで顔をすっぽり隠している。

これは村を出る際にキリトが提案したもので、美女のアリーは目立つ上女であるから変な気を起こしたやつから目をつけられる可能性が高いからだそうだ。

 

最初は渋っていたアリーだったが、俺も一緒に説得すると簡単に折れてくれた。

 

 

 

「うん、動くのには支障は無いしいざとなれば脱ぎ捨てるから。」

 

「ならいいんスよ、さてと敵さんも湧いたし慣らしますか。

 

俺がタゲ取るんで攻撃よろしくッス!」

 

 

 

湧き出た[ゴブリンファイター]に初級単発突《スラスト》を当ててヘイトを稼ぐ、そして盾で棍棒を防ぐと軽く衝撃が走ったがHPは1ドットも削れていない。

そのまま棍棒を押し退け横に避けると二人がソードスキルを放つ。

後はこれの繰り返しだ。

 

 

 

「おーい!」

 

「ん?誰か呼んだッスか?」

 

「いや、どうやら向こうから誰か来るみたいだ。」

 

 

 

キリトが指差す先には確かに小さな人影が此方に向かって走ってきていた。

ここまで来たということはβテスターだろうか?

 

 

 

「はぁ、やっと追いついたゾ。

 

久し振りだなキー坊。」

 

「その呼び方…その髭、お前アルゴか!」

 

 

 

どうやらキリトの知り合いだったらしい、てことはβテスターか。

 

 

 

「……彼女は『鼠のアルゴ』私達と同じβテスターで、情報屋をやっていたわ。

信条は売れるものなら何でも売る。」

 

「ただの守銭奴じゃ……」

 

「守銭奴とは失礼な坊やダナ。」

 

「ひゃぅ!?」

 

 

 

いつの間にか真横に来ていたアルゴに耳に息を吹きかかられ変な声を出してしまった俺は素早くアリーの陰に隠れた。

 

壁戦士がアタッカーの後ろに隠れるとはこれいかに……

 

 

 

「にゃははは、良い反応ダ。」

 

「おいおいアルゴ、そいつビギナー何だから余りからかうなよ。」

 

「ほぅ!ソロだったキー坊やアリウムがパーティー組んでるだけでも珍しいのにおまけにビギナーか。」

 

 

 

目を大きく開きキリト・アリー・俺と順に見る目には純粋な驚きと少しばかりの疑惑が浮かんでる。

 

 

 

「アルゴ、何か用があって私達を探していたんじゃないの?」

 

「おっとそうだったナ、まずはそこの君にお姉さんからのプレゼントだ!」

 

 

 

そう言ってアルゴが俺に差し出してきたのは一冊の本みたいな物だった。

表紙にはガイドブックと書かれている。

 

確かデスゲーム開始前にはこんなもの売られていなかったと思うけど?

 

 

 

「そいつは俺っちが他のβテスターに協力してもらって作ったβテスト時の情報が乗っているガイドブックだヨ。

 

クエスト関連のものからソードスキルのことまで乗ってるから是非参考にしてクレ。」

 

「お、いいなアルゴ俺にもくれよ。」

 

「ほら。」

 

 

 

アルゴはキリトにガイドブックを渡さずに右手を突きだした。

アリーには左手を突きだしている。

 

訳が分からず三人の顔を見てみると、キリトは顔を引きつかせて、アルゴはしてやったりといった笑み、アリーは口しか見えないがやっぱりかといった溜め息を吐いていた。

 

 

 

「このガイドブックはビギナーのみ無料配布ダ、βテスターからは500コル頂くゾ。」

 

「クッ…守銭奴ぶりは変わらずか。」

 

「今に始まったことじゃないでしょ、はい。」

 

 

 

大人しく500コルを支払う二人、それを満面の笑みで受けとるアルゴ。

とりあえず、この人はそういう人なのだと覚えておこう。

 

 

 

その後アルゴはキリトとアリーからいくつか情報提供をしてもらいそそくさと帰っていった。

 

 

 




と言う訳で如何だったでしょうかオリジナル回。
自分的にはケイやアリウムの心状が伝わればなぁと思います。

そしてアルゴの登場、書いてみて思うのはあの喋り方結構書きにくい……
個人的にはかなり好きなキャラなのでもうちょっと頑張りたいですね
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