SAO―切り裂き姫ととある騎士   作:チキン ボーイ

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サブタイトルから分かる通り少しばかり暗い話になります。
まぁ相変わらずイチャイチャしているのですが……




第7話 罪と涙

 

 

 

アインクラッド二十二層、そこは珍しくもフィールドにモンスターがポップせず、迷宮区もボスを除けば比較的簡単な層だった。

俺としては初のLAを取った記念すべき層であるのだが、いかんせん攻略にかかったら日数が僅か三日という最短記録を叩き出したのだから攻略に躍起になっている攻略組の中では、頭の片隅にうっすら記憶が残る程度となっている。

 

 

余裕を持って見渡せば緑豊かで素晴らしい景色なんだけどなぁ。

 

 

 

「ケイ、見せたい景色ってのは?」

 

「もう少しッスよ~。」

 

 

 

俺はアリーをある場所に連れていくべく森林の中を東に進んでいる。

因みに移動に使っているのは村などで借りられる馬で、これは誰でも借りられるのだが騎乗(ライド)スキルがなければ指定した場所に行く、帰るしかできない。

俺はレベリングの合間やアリーが用事で居ないときなどにここに来て騎乗スキルを上げているから、自分の後ろに誰かを乗せて行きたいところに走らせることができる。

 

 

攻略には不要なスキルだが、こういった趣味を持つと心に余裕ができるし、スピードを出せばスカッとする。

 

キリトを乗せて二人でこの層の端から端まで全力疾走したのは記憶に新しい。

俺がアリーに見せたい風景を見つけたのもその時だ。

 

 

 

「到着ー!」

 

「……綺麗。」

 

 

 

森林を抜けると木々に囲まれ月明かりに照らされた小さな湖があった。

湖の水は澄んでいて湖面はキラキラと月明かりを反射し、緩やかな風が木々の葉を揺らし心地よい音を奏でている。

 

 

 

「まだ情報屋にも売ってない隠れスポットなんスよ。

 

と言うか、売るつもりは無いッスね。

……人が沢山来ても嫌だし。

 

だから知ってるのは俺とアリーだけッス。」

 

 

 

あっちの世界でも有名になったスポットとか人が来すぎて風情が台無しになるとかあったしな。ここをそんな風にはしたくない。

 

攻略に必要なものでもないし、このくらい独占しても良いよな。

 

 

 

「……貴方は何故そんなにも私の心を揺さぶれるの?」

 

「え?」

 

 

 

数歩前に出たアリーはくるりと振り返る。その顔に浮かぶのは見慣れた鉄仮面のような無表情ではなく……

困惑・悲しみ・迷い……それらを混ぜ混んだような儚く散ってしまいそうな、今にも泣いてしまうような顔だった。

 

 

 

「え?え?俺なんか傷つけるようなこと言っちゃった!?」

 

「……違う、聞いてケイ。貴方には聞いて欲しい。

 

汚く私情にまみれた罪人の話を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、アリウムこと美咲 亜里菜は世間一般と比べれば裕福な家の長女として生まれた。

でも私は産まれたときには1つの病を抱えていたの。

 

先天性白皮症や先天性色素欠乏症……

世間的にはアルビノと言う方が伝わりやすい?

 

病気のこともあって私は屋敷から出ることを許されなかった。

勉強は、学校には通わず親が宿った家庭教師に教えてもらい。

買い物は全て使用人にお願いしないと行けなかった。

少しでも勝手に外に出ようとすれば、捕まって怒られたよ。

 

きっと親は私を世間に知られたくなかったんだと思う。

長女が病気持ちだなんて世間に知られれば色々尾ひれが着いて広まる世の中だから。」

 

 

 

ケイは私の話を一字一句聞き逃さまいと黙って聞いてくれている。

いつも軽い調子で明るく振る舞っている癖にそういった様が妙に様になっていて。

きっと現実世界では良く相談事などに乗っていたんじゃないかな?

 

 

 

「そんな私にも楽しみはあった。

 

ケイに似た弟が居てね……

年は二つ下で、やんちゃで無鉄砲でお人好しのバカ……それでいていつも何かの中心にいた子だった。

学校に行けない私に毎日のようにその日にあったことを面白可笑しく話してくれて、良く自分のゲームを持ってきて一緒に遊んだりしたんだ。

 

私がゲーム好きになったのもそれが切っ掛け。」

 

 

 

こんなに話したのはいつぶりだろう?

現実世界で信頼している使用人にも、こっちに来て仲良くなったアスナにもここまで長く話したことは無い。

 

それは、きっと私が信用しきれていないから。

 

 

 

「……あの日、私の18の誕生日に屋敷では私の誕生日を祝うパーティーが開かれてた。

 

本家と分家だけの小規模のパーティーだけど、私はパーティーが好きじゃなかった。

分家の跡取りにね、私より六つ上の人がいて、その人が下品な目で見てくるんだ。

 

……ちょっとした手違いでお酒を飲んじゃって酔った私は自室に戻って休んでたんだ。

でもそこに跡取りの人が来て……

 

普段なら部屋の前に使用人がいてガードしてくれるんだけど、その日はパーティーの方に手伝いに行ってて居なかった。」

 

 

 

あの男の欲にまみれ濁った瞳を思いだし体が震える。

ケイはそんな私を見て近くの切り株にゆっくりと座るように促し、自分は離れた石の上に座った。

離れた位置に座ったのは私への配慮だろう。

 

 

 

「男は大量の飲酒で酔っ払い私を押し倒そうとしてきた。

必死に抗ったけど……男は包丁を持ってて…でもそこに光輝……弟が駆けつけてくれて男を引き剥がしてくれたの、でも……

 

…男は……狂ったように暴れまわって包丁がッ……光輝に突き刺さって……!

 

気がつけばッ!私はッ!インテリアのスタンドライトでッ男の首を!!」

 

「アリー!」

 

「!?」

 

「……落ち着いて、息を整えて。」

 

 

 

ケイのゆっくりとした言葉に従って深呼吸をすると、不思議なことに落ち着いてくる。

 

 

 

「ごめん、続き話すね

 

男の暴れた音を聞きつけた使用人が駆けつけてくれたんだけど……光輝は搬送先の病院で……男も……」

 

 

 

それ以上言葉にできなかった。

言葉にしようとしても嗚咽しか出てこない。

ケイを見据えていたはずなのに、いつの間にか俯いて握りしめた手を見ていた。

 

 

嫌われただろう、当たり前だ。

私は罪人……弟の犠牲で生き残り、人の命を奪った罪人だ。

 

 

 

デスゲームが始まるあの日、ケイの姿に光輝の姿を重なって見え、ソロで行こうという気持ちは一瞬で砕け、私は彼の手をとっていた。

 

ケイは今を必死に生きていた。恐怖を圧し殺しこの理不尽な世界で足掻き続けている。

悲しくてもけして弱音を吐かず、キリトやアスナ、そして私をその身で守ってきた。

 

 

いつの間にか彼は攻略組でも上位の実力者になっていた。

最近になっては《守護者(ガーディアン)》なる二つ名までつけられていた。

 

 

私はそんな彼を見て、光輝と同じように消えてしまう姿を幻視してしまい。

彼を離さないように縛りつけた。

 

 

でも、縛りつけたら縛りつけただけ彼と光輝の違いに気づいた。

 

まず、彼は結構(うぶ)だ。

少し腕に抱きついただけで顔を紅くする。

そこが可愛く感じた。

 

それでいて頭の回転が早くて、気が利く。

そこが頼もしく感じる。

 

なんだかんだ言いながらも、自分より友人の命を優先する。

そこが危なっかしくて守りたくなる。

 

 

 

いつの間にか私はケイに光輝を重ねず、彼を彼として見ていた。

彼の言葉……何気ない仕草……全てが目に焼き付いて離れない。

 

アスナやエギル、そして鈍感なキリトにさえ気づかれているこの気持ちを彼は気づいてくれない。

 

 

それで良い、弟の犠牲で生きて人の命を奪った私が幸せになることは許されない。

 

 

 

……伝えたからには別れなければ。

 

 

 

「……俺には、アリーの気持ちがわからない。

正当防衛だなんて慰めを言うこともできない。

アリーが俺に弟を透視してたってのも察した。」

 

 

 

ケイが立ち上がり、私に近づいてくる。

一歩、また一歩と近くだけで私の体は石のように固くなる。

 

……ついに目の前までやって来た。

殴られるのだろうか?罵倒されるのだろうか?

 

 

ケイの両手が顔に向かって伸びてくる。

 

叩かれるのか。

 

 

だが、私が感じたのは痛みではなく……優しさだった。

 

 

 

「よく頑張った。」

 

 

 

ケイの指が頬を撫で、片手で優しく頭を撫でられた。

これは私がホルンカの森でケイにやった……

 

 

 

「俺はアリーに救われた。アリーが居たからここまで頑張れた。

 

それは弟の変わりだったとしても、事実だ。

 

俺はアリーみたいに病を抱えているわけでもないし、世間のしがらみとかに振り回されるような家庭の出身じゃない。

人を手にかけたことも無い。

 

でも、これだけは分かる。

 

 

アリーは悔いている。

自分の罪から目を逸らさずに後悔している。」

 

 

 

頬を撫でる指が目に溜まった涙を拭い、頭を撫でる手が振り乱し乱れた髪を整え、離れていく。

 

 

 

「俺はアリーのパートナーだ。

 

パートナーってのは支えあえる関係のことだろ?

俺は何があってもアリーを支える。だからアリーも俺を支えてくれ。」

 

 

 

せっかくケイが拭ってくれたのにまた……涙が溢れてくる。

きっと今の私は酷い顔をしているだろう。

 

 

 

「良い……の?」

 

「ん?」

 

「……私の手は汚れて……あ」

 

 

 

ケイは迷いもなく私の手を握った。

人肌の温もりがじんわりと広がり、まるで私の心を溶かしていくようだ。

 

 

 

「俺にはアリーが必要なんスよ。」

 

 

 

もう駄目だった。

私はケイに抱きつき感情の赴くまま泣いた。

嗚咽を噛み殺すことなく、小さな子供のようにケイの胸元に頭を埋めて泣いた。

 

ケイは私が泣き止むまでずっと頭を撫でていてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたッスか?」

 

「えぇ、ありがとう。」

 

「どういたしまして、こっちもアリーのレアな表情が見れて良かっ痛ってー!?」

 

 

 

泣き止んだが未だに離れないアリー。

女性特有の柔らかい肌触りや髪の匂いで俺の鼓動は上がりっぱなしだ。

なのでちゃかして離れて貰おうと思ったのだが、離れずそのまま脇腹にパンチを食らった。

 

 

 

「あれ?なんスかあれは?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、湖の一ヶ所がなんか光ってるんスよ。」

 

「…本当ね。」

 

 

 

月明かりの反射かと思ったが、湖の一ヶ所が光っているのに気づき、アリーにも確認してもらったが見間違いじゃなさそうだ。

 

アリーに抱きつかれたままで動きにくいが、湖も膝くらいの浅さみたいだし近づいてみよう。

 

 

近づいて見てみると、底に手のひらサイズの小さなトレジャーボックスが沈んでいた。

 

光は月光がトレジャーボックスに反射したもののようだ。

辺りに罠のようなものはものは見られない。

ゆっくりと持ち上げてみると簡単に持ち上がり湖から持ち上げられた。

 

 

 

 

「……開けるッスよ。」

 

「イヤリング?」

 

 

トレジャーボックスを開けると中には小さな二つのイヤリングが入っていた。

 

 

 

「ん?これ方耳ずつ見たいッスね。」

 

 

 

アイコンを見ると二つのイヤリングは左右別々のアイテムらしい。

 

 

 

「効果は……鑑定スキルが必要みたいッスね。

明日ギルの所にでも持っていくッスか?」

 

「そうね、そうしましょ。

 

でも今日はもう……宿屋行きましょうか。」

 

「そうッスね。」

 

 

 

 

その後宿屋につきアリーの要望通り二人部屋(ベッド別々)に泊まり、アリーがベッドに潜り込んできた気がするが気のせいだ。無理矢理寝た。

 

 

「根性なし……」

 

 

 





盆休みが終わり書く時間が大幅に減ってしまった……更新も2日に1話とかになりそうです。

じゃないとHFがプレイできない……
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