フラスコの世界を駆け抜ける   作:影後

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戦いを終えた私達に待っていたのは暫しの休み。
戦士にも、休息が必要だから。


L5戦役 Part1休日

地球連邦軍 極東支部 伊豆基地

そのハガネ達に与えられたレクリエーションルームの一室で、

レイラとテンペスト、カイ、ギリアムの3人が言葉を交わす。

いや、言い争いをしていた。

 

「つまりか、連邦はおじさんの事件を隠蔽したあげく…

お兄ちゃんの心も踏みにじったの!?なんなのそれ……

なんのためにマイヤーさんまで撃って……なんのために!」

 

「レイラ、落ち着け。話を」

 

「落ち着け…落ち着け?!お兄ちゃんのそばにも居ないで!

そうだよね、特殊戦技教導隊は解散だもん!でも!私とパパが

お兄ちゃんの近くにいる事はできたはずでしょ!

カイさんやギリアムさんも……地球に居たんなら」

 

「……居たからこそだ。リョウマ少佐を含め、

あの事件に関わった俺達は監視されていた。

特にリョウマ少佐の監視は厳しかった。

だが、ビアン・ゾルダークの庇護下というか私兵の様になり、

軍から遠ざかり彼の監視は緩くなった。それに反比例する様に、

カイと俺の監視が厳しくなり、俺はカイの平穏のため

諜報部に所属したんだ」

 

「俺の監視が急に消えたのはお前のおかげだったか」

 

「あぁ、だからカーウァイ大佐の墓参りもあんな大人数で

できたんだ。手を回すのに苦労した」

 

「……だとしたら、

お兄ちゃんの隣にいてくれたゼンガーさんは……。

私達が……」

 

「ゼンガーは覚悟していたさ。リョウマ君もだ」

 

『おいおい、レイラが悲しむ必要無いだろ』

 

「え…」

 

そこにいたのはアンドロイドだ。画面には傷だらけの天使。

いや、火傷だらけの人間の顔。

 

『お久しぶりです、リョウマ・ラウ少佐です。

カイ・キタムラ少佐、ギリアム・イェーガー少佐、

テンペスト・ホーカー少佐』

 

「なにしに」

 

『ハガネとヒリュウ改のメンバーを集めてください。

情報がありますのでね』

 

数分後、パイロットとハガネ、ヒリュウ改のブリッジメンバー

が共にレクリエーションルームに揃った。

 

『レフィーナ艦長、噂に違わぬ美貌ですな。

部下達がブロマイドを購入するのも理解できる』

 

「リョウマ少佐、冗談は寄せ。

ここで接触して来たのだ、何かあるだろう」

 

『流石です、ギリアムさん。

まず、俺の復讐の時が来た。前に話したな。

奴等はバグズを利用したエイリアンだ。

俺達DCの一部はあの事件から常に警戒していた。

奴等の秘密部隊、いや諜報部隊だな。我々はそれを

秘密裏に討伐、解析していた。だが、ここ数週間で

急に増えてきた。おそらく、バグズ本隊が近付く証拠だ』

 

「ごめんなさい、チーフ。その、なんでわかるのかしら」

 

『俺の勘が6割、奴等の事を調べていた結論で4割だ』

 

「チーフの〘勘〙なら、信じないとよね。ブリット君」

 

「はい………」

 

「まて、勘で」

 

『ブリット少尉、キョウスケ・ナンブ中尉に話せ』

 

「えと、チーフの勘はイカれてまして。

七並べなら一回も間違えないでやれるし、

ロシアンルーレットなら何発目に出るかも予想できます。

他には競馬なら三連単は簡単に当てますし、

背後から狙撃されても回避すら位には〘勘〙が」

 

「それは既にサイキックの類じゃ無いのか?」

 

「因みにそれが目覚めたのは彼が

コーヒー風呂に溺れてからだ」

 

「……アレか」「嫌な思い出だな」

「コーヒー風呂?」「溺れて?」

 

『ギリアム・イェーガー少佐。止めていただこう。

兎に角だ、此方としても君達には気を抜いて貰う訳には

いかないのだよ』

 

リョウマの顔は険しく、怒りと憎悪に満ちていた。

 

『マイヤーさんとゼンガーさんを殺したお前達を利用する。

何とも…度し難いな。だが、やるしかない。

ATXチームの機体とセリウスの強化プラン、

及び貴様らへの補給物資をこのポイントに置いてある。

使う使わないは貴様ら次第だ』

 

「…うそ……チーフ、それって」

 

『俺はもとよりATXチームだ。

ゼンガー少佐もそれは変わらん。

我々は我々の戦い、地球の守護を続ける。

その守護に、地球連邦軍が刃を向けるならあの時の様に、

優しい戦争など起こらない。今度こそ、殲滅する。

…マサキ・アンドー、お前はヒーローになると言ったな』

 

「あぁ、なってやるさ。世界を護るヒー」

 

『ヒーロー…英雄か、使い潰され、いつの間にか消えていく。

まぁ、頑張り給え。応援はしてやろう。物資の補給も、

してやろう。我々は物資も、資金も、人材も潤沢だ。

君達が連邦を離れ、我々と合流ないし、協力関係を築く事が

できるのなら、君達への支援は怠らない。

そして、その協力関係とは地球の守護。理解しているな』

 

「あぁ……」

 

『ライディース』

 

「……リョウマ、俺は」

 

『兄だと思っている。エルザムさんと共に家族だと。

その気持ちは変わらないさ、話すか?』

 

「……いや、良い。文句を言いたくなる」

 

『了解だ。テンペストさん、レイラ』

 

「……君はまだ」

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃんは何のために」

 

『連邦は腐っている、本当なら内側から何とか粛清し、

実権を握ろうかとも思ったがな………邪魔が多すぎる。

たから外側からやろうとしたが、お前達に負けた。

それに、俺の本質は変わっていない。

あの日、父さんと、テンペストさんの様な軍人になると!

もう、母さんや、アンナさんの様な人を出さないと!

……話し過ぎた。

このアンドロイドから此方に連絡も送れる様になっている。

逆探知しても無駄だぞ、俺は天才だからな』

 

リョウマとの通信が終わると、

テンペストは一人涙を流している。

レイラは理解できていない、いや、知らない方が良い。

リョウマはずっと、あの日から変わっていなかった。

それが、余計にテンペストを苦しめる。

 

「お父さん?…ねぇ、大丈夫?」

 

「俺は………くそ……………」

 

「取りに行くのか?」

 

「罠じゃ」

 

「……少佐は負けを認めている。今更、罠はないだろう」

 

「チーフは戦場以外ですと罠は張らないと思います。

あくまでも、ATXチーム…自分の感想ですが」

 

「そうね……チーフなら無意味な殺戮はしないわよ。

わざわざラングレーを降下部隊で制圧したのよ?

しかも、死傷者は一人もなし。

催涙ガス弾と、スタングレネード、捕虜の扱いも国際法に

則っての在り方だし」

 

「……あくまでも、リョウマ少佐の扱い方だがな。

他の場所ではミサイルによる急襲もあった。

ラングレー基地、あの場所とリョウマ少佐が関わった基地は

比較的優しく対処されていたさ」

 

「別に優しく優しくしてた訳じゃない」

 

「な?!」

 

「……どうやって…ここの警備は」

 

「そうか、ゼンガーさん、エルザムさん、テンペストさん、

 レイラは知ってるよな?」

 

「いや、知らないけど……てか、何を」

 

「単独潜入、ステルス任務、サボタージュ、諜報、

俺、天才だから何でもできるの。射撃もエリートさ。

まぁ、妹に2回殺されかけたがね」

 

先程まで画面で話していたのは何だったのかという疑問

が出てくる。対話までしていたのだ、録画の訳が無い。

 

「それの対話してたのはエルザムさんだ。

画面外からは後ろは見えないだろ?」

 

『……君の真似をするのは大変だったぞ。

いくら答えを通信で貰えると言ってもな』

 

エルザムさんも現れ、彼等の警戒度がマックスに上がる。

だが、此方は敵対の意思はない。

 

「レイラ、どうした。俺だぞ……兄離れか」

 

レイラに近付き、ハグしようとすれば左腕の

サイボーグアームと右目の眼帯が嫌でも目に付く。

それだけでなく、痛々しい火傷痕。

それでも整っている顔なのがレイラは少しイライラした。

 

「別に子供じゃないし」

 

「反抗期か?

止めておけ、反抗期なんてやるより家族で過ごそう。

休暇だろ、ほらクロガネで宇宙行ってさ。

ライディースも」

 

「リョウマッ!」

 

「……はいはい。まったく、お前達が罠だと思うだろうから

態々出張ってきてやってるのに。何だよその顔は」

 

「……テロリストの親玉の一人だと思われてるぞ。

少佐」

 

「大尉、ゲシュペンスト・レンジャーの乗り心地は?」

 

「変わらん、俺の為にカスタムされているレンジャーは

最高だ」

 

久し振りのストーム2との邂逅に微笑むリョウマ。

ストーム3、ストーム4はよく会えるが敵対していた

ストーム2とは久しぶりだ。

 

「それで、俺らがストーム1は何をしに来たんだ?」

 

「まず、俺という戦力を貸し与えに。

我々DCは今2つに分かれた。博士をNo.1とし、

真に地球圏の繁栄と未来を護るために戦う地下組織。

ノイエDC.そして、アードラー・コッホをリーダーに

しているDC残党。何が違うと言われれば理念が違う。

我々ノイエDCは負けた。負けた上で、地球圏の守護者

として受け入れ裏側から護る。

基本的に週休二日制のホワイト企業だぞ?」

 

「冗談は寄せ、リョウマ君。他の事は?」

 

「一応、DCも一枚岩ではなくてですね。

反地球連邦の旗印だけで参加した者や、

利益を考えて参加した奴もいる。その中で、

ビアン・ゾルダーク含めた本当の馬鹿は本気で平和の為、

未来の為に戦ってたんです。それを託すことの出来る

馬鹿がいた。サイバスターに乗って、ヒーローになる!

なんて叫んだ馬鹿が」

 

「馬鹿馬鹿って、お前喧嘩を」

 

「馬鹿だよ、大馬鹿者さ。俺達と同じだ。

俺は、お前みたいな馬鹿になりたかった。ヒーローに、

なりたかった。でも、無理だった。だから、戦争を起こした。

戦争で、上が挿げ替えられれば、きっと護れると。

でも負けた。俺が最後、お前達に正面切って

戦わなかったのは、命令もあるが俺が万全じゃないからだ。

宇宙で既に負けていた。そもそも、腕と目のリハビリも

まともに済んでない。羨ましいやつだよ」

 

それはリョウマが吐露した本心だ。

メンバーも、その言葉を否定できなかった。

 

「まぁ、というわけだ。リハビリテーションは60%だが、

パイロットとしての腕は変わってない。と、言うわけで」

 

そしてリョウマは悪戯成功というが如く、

一枚の辞令書を見せた。

 

「……なんだと」

 

「あらあら……おかえりなさい。チーフ」

 

「うげ……またしごかれるんですか」

 

「カーウァイ・テンペスト。特務大尉。

現時刻をもってATXチーム指揮官に任命されました。

以後、お見知り置きを」




ATXチーム指揮官って何それ!!

偽造だよ、経歴から全てな。命令書も正式なもの。
しかも総司令部発行の命令書だ。
大将クラスでないと邪魔できないレベルのな。

くぅ……戻ってきてくれて嬉しいけど、
周りのお兄ちゃんへの当たり方が不安になる!

次回、L5戦役Part2 新たな力

まさか、お兄ちゃん?!

俺のじゃない!

兎に角次回、お楽しみに!!
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