フラスコの世界を駆け抜ける   作:影後

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ここが、運命の分岐点だった。
僕が、私となり、私は……俺となった。
この日から俺の心にはドス黒い、炎が燃え上がったんだ。


教導隊part3

新西暦184年ビアン・ゾルダーク主導の下に、特殊戦技教導隊、テスラ・ライヒ研究所が全面協力し、更にモーションパターンの作製に薩摩示現流師範リシュウ・トウゴウを招く事でとある機体の試作機が完成した。

今までのパーソナルトルーパーよりも巨大な全長50.3m、どの機体よりもパワーを有するその機体の名はグルンガスト。ゲシュペンストでは対応できない巨大生物を相手に戦うために設計開発された特殊機体。

『特機』である。

武装の大半が内臓武装をしめ、特機は基本的に1機で戦場を左右できる様に作られていた。

これをしたのはビアンとリョウマである。

 

「リョウマ君、君は私に賛同してくれるのか」

 

「………えぇ…母さんの眠るこの星を、異星人の好きにはさせない」

 

リョウマはビアンの言葉を信じた、異星人との接触は有効的なら良いがそうとも限らない。

守るためには戦うことが必要なのだから。

戦わなければ、生き残れない。戦わなければ、守ることもできない巨大

その考えのもと、完成したのがこのグルンガストのプロトタイプである零式である。

 

「……」

 

パイロットはリョウマが推薦したゼンガー・ゾンボルト大尉。

彼はグルンガストを手足の様に動かす。

 

「よし、ゼンガー大尉。零式斬艦刀を使ってみてくれ」

 

「ふっ……」

 

零式斬艦刀、全長82m。機体全長よりも長く、一太刀で戦艦おも斬り裂くことが可能なブロードソードである。

 

「……チェストぉぉぉぉぉ!!!!」

 

前にあるのは廃棄寸前のイージス艦である。

ソレをゼンガーは一太刀で沈めてみせた。

 

「我が斬艦刀に……断てぬもの無し!」

 

まるで演出かの如く、斬艦刀を納刀した瞬間イージス艦が爆発する。

ソレをビアンは涙ながらに見ていた。 

 

「完成した……私の、私達の希望となるロボットが」

 

「違いますよ、ビアン博士。完成じゃない、未完成だ。未完成なら前へと進める、未熟な完成よりも、素晴らしき未完成を。僕達は、このグルンガストすら足場に新たな守護神を創り出す」

 

「そうだな、リョウマ君」

 

リョウマの心も踊っていた。男心だけでない、誰かを守る力が増えれば、救われる人が増える。

ソレを、信じているからだ。

 

「リョウマ君はこれからは」

 

「宇宙です、ゲシュペンストタイプSのテストですね」

 

「呼び名は変えたのかね?」

 

「えぇ、S型よりもタイプSの方が格好いいでしょ?」

 

「納得だ」

 

ビアンも子供のような感性を持っている、リョウマも一部の感性は子供の頃から成長はしていないのだ。そして…

 

「……ゲシュペンストは問題ない」 

 

運命の日となるこの日、リョウマは宇宙地球連邦軍月基地の格納庫にてゲシュペンストタイプSの整備を行っていた。

 

「大丈夫、大丈夫」

 

システムの全てを確認し、異常がないことを確認する。これはリョウマの日課である。

ラングレー基地からの陰湿な嫌がらせはリョウマ自身ではなく、仲間の機体にも現れる事がある。

だから人知れずこうして整備をしているのだ。

 

「……この胸騒ぎ、何もなければ良いのだけれど」

 

リョウマはノートPCを仕舞うと与えられた自室に戻る。細工されれば即座にメッセージが飛ぶシステムも入っており、ゲシュペンストに対して異物が認められれば、リョウマが裏で動く。

ギリアム以外には決して知られてはいけない。

 

「……何もなしか」

 

まもなく、ゲシュペンストタイプSが出発する。

だが、リョウマは感動よりも先に警戒を続ける。

宇宙での試験はコレが初である。

パーソナルトルーパーの快挙よりも、仲間への警戒が酷いと言うのは良い事とは言えないが。

 

「ゲシュペンストタイプS。カーウェイ・ラウ、これより宇宙空間試験を開始する」

 

ゲシュペンストタイプSが飛び立つ。

今回の演習は2日間を使い航宙試験を行う予定だ。

プロペラント・タンクを増設され、2日後に帰ってくる手筈だ。

 

「成功だな、中尉」

 

「………そうですね」

 

「心配なのか?」

 

「……当たり前ですよ、航宙試験と言ってもこれ自体はもっと先のはずだった。いくらゲシュペンストが万能機だと言っても、」

 

「だからだ、カーウェイ大佐はお前のゲシュペンストを信じている。だから乗ったのだ」

 

ゼンガーはリョウマの目を見て言い放つ。

 

「リョウマ、お前と、カーウェイ大佐が気付きあげたゲシュペンストをお前が信じないでどうするか」

 

「……そうですね」

 

リョウマは暗い顔をしながら教導隊の待機室を後にした。

 

「……仕方ないさ、リョウマ中尉は母親をこの宇宙で亡くしている。まだ、トラウマは消えていないんだろう」

 

カイ、ゼンガー、エルザムの3人は嫌な顔を浮かべる。

 

「ホープ事件だな、だがテンペストお前も」

 

「あぁ…妻がな。俺は憎んださ、連邦軍を。でも、それ以上にリョウマ中尉に誇れる軍人でありたい」

 

「……テンペスト、どういう意味だ」

 

言葉を紡いだのはカイだった。

妻と娘をもつカイはテンペスト、カーウェイの気持ちがわかる。だからこそ、リョウマに誇れる軍人というのがわからなかった。

 

「当時、6歳のリョウマ君は……俺の妻、アンナの遺品と娘のレイラを守ってくれたんだ。信じられるか、6歳だぞ。しかも背中には爆風からレイラを守った際にできたと思える大火傷。服が皮膚とこびりついたり、破片を排除したりで1年7ヶ月は入院さ。勉強は自分でやってたし、正直、そんな子に憧れられたんだぞ。頑張りたいと思えるだろ」

 

テンペストは頬を赤らめながら、「らしくないな」という。

カイ、ゼンガー、エルザムは笑いながら「良いじゃないか」と親友の肩を叩いた。

 

(リョウマ中尉はこの世界の生まれ、だが…あちらの記憶もあるのか?だとしたら………いや、あの1軒以来事は起きていない。まさか……システムXNのせいなのか)

 

「ギリアム、どうしたんだ」

 

「いや…なんでもない」

 

(あちらの世界でもリョウマ中尉は名のある技術者だった。それに、アームパンチやウェアラブルアーマー。自分で設計し、テスラ研にて試作されているが……コレは別の)

 

リョウマは夢で見た技術を記憶し、書き記しただけである。

無論、自身は何故書いたのかすら覚えていない。

ギリアムはリョウマという存在が不安定な物に見えて仕方がなかった。

 

(私とは違うが……)

 

ギリアムにとってもリョウマは弟の様な存在だ。

天才と言われても、親や仲間の前では背伸びしているように見えてしまう。

それに、まだ17いやもうすぐ18だが、本来ならハイスクールに居てもおかしくない年齢なのだ。

 

「来たぞ」

 

ゼンガーの声でゲシュペンストタイプSからの映像が映る。記録用のカメラからは無限の星星が輝いている。

 

「………何だ?」

 

急に画面が荒れる、ゲシュペンストの腕が映り映像が途絶えてしまった。

 

「トラブルか?」

 

「だとしたら……格納庫だ、中尉を止めるぞ」

 

テンペストが叫ぶ。同じ答えに行き着いた教導隊のメンバーが格納庫に向かう。

 

「出せ!ゲシュペンストなら俺は動かせる!」

 

「まだ何が起きたかわかってないんですよ!」

 

「現地で確かめれば良いだろうが!速くしろ!」

 

「発信許可もおりてない!」

 

「なら破壊するまでだ!」

 

「落ち着け!」

 

リョウマを止めたのはテンペストの拳だった。

リョウマは何故テンペストに打たれたのか理解できていない。

 

「リョウマ中尉、君が慌てたら意味がないんだ!これから捜索隊派遣の為に掛け合う!ここで暴れて!営倉入りしたいのか!」

 

「……頭を冷やします」

 

リョウマはその言葉に理解を示し、握り拳を作りながら格納庫からゲシュペンストに乗り込む。

 

「発進許可はなくとも、発進準備は可能でしょう」

 

「まったく、ゼンガー、エルザム、ギリアムはゲシュペンストで待機してくれ。俺とカイでなんとかして見せる」

 

「こういうのなら、俺達が適任だからな。二人は、リョウマ中尉が暴走しないか見ててくれ」

 

テンペストとカイの二人は3人にそう告げると格納庫から走り出した。

リョウマは何度もゲシュペンストの中でゲシュペンストタイプSから送られてきたデータを確認する。本来、許される事ではないが、リョウマはコレが事件性があるものだと理解している。

機体の不備もなく、不安要素はなかった。

事故など起こる可能性は限りなく低かった。

 

「あの腕の動き、何かから……」

 

リョウマは何度もデータを見返す。

そして、一つの答えを思いつく。

 

「ゼンガー大尉、エルザム大尉、ギリアム大尉」

「これは秘匿回線で発信しました。こちらのデータを確認下さい」

 

リョウマは解析したデータを3人の機体に移す。

 

「……まさか、だが」

 

「真実なら、なんとも」

 

「ビアン・ゾルダーク氏の考えが当たったか」

 

リョウマとしては皮肉である、解析したデータにはなんと意図的に外されただろうデータがあった。中継される映像は何物かに改竄された後であったのだ。

 

「………」

 

「リョウマ中尉、カーウェイ・ラウ大佐の捜索は認められない。これに違反するようなら、」

 

リョウマはカイからの通信を受け、素直にゲシュペンストから降りる。

教導隊のメンバーは不穏な空気を纏いながら佇むリョウマをじっと見ていた。

 

「クソぉぉぉぉ」

 

「クソ!クソ!!クソガァァァァ!!!!」

 

自身の拳を何度も、何度も、何度もゲシュペンストに打ち付ける。赤い液体がポタポタと垂れ、教導隊以外の兵士全員が目を逸らす。

 

「……クソぉぉぉぉ!!!!」

 

その数日後、特殊戦技教導隊に一つの辞令が下された。

 

「解散……俺達が………」

 

「カーウェイ大佐の捜索もろくに行われず、コレか」

 

「テンペスト、お前はどうするつもりだ」

 

「どうもしない、けどな……まさか全員が昇進とは」

 

「リョウマ中尉も……今では少佐か。最年少らしいな」

 

「だが、テスラ・ライヒ研究所に出向。体の良い左遷だ、それ程俺達の知ったことは上層部とって、大きいという事か」

 

「……誰が伝える」

 

「俺が行こう、リョウマ少佐とは仲がな。テンペスト、お前は言えないだろう」

 

「ギリアム、すまない」

 

ギリアムはリョウマの部屋に行く。

そこでは荷造りが終わり、手に痛々しい程の包帯が巻かれたリョウマがいた。

 

「……リョウマ少佐」

 

「……解散なんですか。予想してましたけど、苦しいですね。この荷物、俺だけのじゃないんですよ。父さんの……カーウェイ大佐の荷物もです。そしたら……こんなのも出てきた」

 

それはカーウェイとリョウマのアルバムだった。

幼い頃の自分、ジェシカ・ラウに抱かれる自分。

沢山の家族写真がそこにはあった。

 

「……リョウマ少佐」

 

「テスラ・ライヒ研究所。ビアン博士が僕を呼んだらしいんです。ギリアムさん、ありがとうございました。皆さんにも」

 

「伝えなくて良いのか?」

 

「……皆と居たら、父さんを思い出してしまう。ごめんなさい、一人にさせてください」

 

ギリアムは写真立てを大事そうに抱えていた姿を見た。それが何なのか、他人でも理解できる。

 

「……何時か、また会えることを願う」

 

「さようなら、ギリアム少佐」

 

その日の晩に、リョウマはテスラ・ライヒ研究所へと出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……コレが、私が俺となった事件だ。

…カーウェイおじさん、そんな

くそ……巫山戯たいが、そんな空気じゃない。
今回だけは………すまん

うん、大丈夫だよ。お兄ちゃん
私が続けるね。

次回レイラ・テンペストPart1

次は私が事件に巻き込まれた話だよ。
うん、大丈夫だった。
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