田舎農家のオッサン、最強ドラゴンを倒す様子を配信し伝説の配信者へと成り上がる   作:コネリカ

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第13話 S級ダンジョンの入り口にて

 

「ここがS級ダンジョン《青水晶の洞窟》ですか。話には聞いたことがありますが、すごく綺麗な場所ですねぇ」

「とはいえ冒険者協会が危険度S級に指定するくらいの場所だからな。慎重に行こう」

 

 初配信の翌日――。

 

 ゴーシュとミズリーは王都近郊にあるダンジョンにやって来ていた。

 淡く光る水晶に囲まれた洞窟で、幻想的な光景ですらある。が、れっきとしたダンジョンである。

 

 「ダンジョン」とはかつてエルフ族が解読した古代文字を元にして生まれた俗語であり、現代では魔物の巣窟となっている洞窟などの閉鎖的空間を指す言葉として用いられている。

 

 魔物と遭遇する可能性が高いため、冒険者協会が主体となり各ダンジョンには危険度を表す等級が定められているのだが、今ゴーシュたちが訪れているのはその中で最上級の危険度を誇るとされるS級ダンジョンだった。

 

「けど、本当に良かったのかな。いきなりS級ダンジョンを攻略するなんて言っちゃって」

「ふふん。ゴーシュさんなら大丈夫ですよ。あのフレイムドラゴンを余裕で倒しちゃうくらいなんですから」

「そうかなぁ。まあ既に告知しちゃったし、しっかり成果を上げないといけないわけだけれど」

 

 初配信の際にS級ダンジョン攻略を宣言しようと発案したのはミズリーである。

 ミズリーという一人の少女が純朴な信頼を寄せてくれるのは嬉しいことなのだが、当のゴーシュは先日まで田舎で農家をやっていた身なのだ。

 

 いきなり最上級危険度のダンジョン攻略に乗り出して良いものなのだろうか、凶悪な魔物と遭遇して敗走するシーンを配信してしまうことになるのではないかと、ゴーシュは内心恐々としていた。

 

「ところでミズリーは魔物との戦闘とか平気なのか? 初めてモスリフで出会った時には普段から鍛えてるって言ってたけど」

「はい、それはお任せください! ずっとゴーシュさんの配信を追いかけてきましたので!」

「ん? どういうこと?」

「ゴーシュさんが出ている配信を何度も繰り返して見て、見様見真似で練習してたんです。おかげで、剣についてはそれなりに自信があります。と言っても、もちろんゴーシュさんほどじゃありませんけど」

 

 ミズリーはそう言って、腰に刺してある片手用細身剣(レイピア)を誇示した。

 ゴーシュが背負っている大剣とは明らかに異なる性質のものだが、小柄なミズリーに似合っている剣だ。

 

「俺が出ている配信を繰り返し見たって、何回くらい?」

「ええと、ざっと1万回は見ましたかね。《炎天の大蛇》にいた頃のものも含めるとですけど」

「おおぅ……」

 

 自分が出ていた配信をそんなにも見られていたとは恥ずかしいなと、ゴーシュは乙女のように顔を覆いたくなった。いや、実際に覆っていた。

 

「でも――」

「ん?」

 

 ゴーシュが顔を上げると、ミズリーは微笑を浮かべていた。

 その顔はこれまでとはどこか雰囲気が異なっていて、ゴーシュは思わず息を呑む。

 手を後ろ手で組み、洞窟内の水晶の光に照らされるその様は、配信していなかったことが悔やまれる程に印象的な立ち姿だった。

 

「私、ゴーシュさんの出ている配信を繰り返し見てきたことで気づいたことがあるんです」

「気づいたこと?」

「はい。ゴーシュさんの強さの秘密についてです」

「……」

「今日はそのお披露目でもあるかなって。だからゴーシュさんには思う存分、剣を振るってほしいんです」

 

 ミズリーの青い瞳がゴーシュを真っ直ぐに見据える。

 

「……分かった。俺の剣に注目してくれる人がどれくらいいるかは分からないけど、やれるだけやってみるよ」

「はい! 期待してます、ゴーシュさん」

 

 今度は満面の笑みだった。

 ちょっと照れくさいなと思いながらも、ゴーシュは微精霊との交信を開始しようとする。

 

「それじゃあ配信を始めるけど、無茶はしなくていいからな。もし危険だと思ったら撤退することも考えよう」

「ふっふっふ。心配無用だと思いますよ」

「いやいや、配信で注目を集めるのは大事だけど、俺にとってはミズリーの無事の方が大切だから」

「……」

「どうした、ミズリー?」

「い、いえっ! 何でもありません!」

 

 突然しどろもどろになって背を向けた相方に、ゴーシュは怪訝な顔を向ける。

 対するミズリーはといえば……。

 

(ドキッとしました! 今のゴーシュさんの言葉、ドキッとしました! 配信始まってたらヤバかったです!)

 

 胸に手を当てて興奮を押さえつけるのに必死だった。

 

 

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