田舎農家のオッサン、最強ドラゴンを倒す様子を配信し伝説の配信者へと成り上がる   作:コネリカ

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第5話 大剣オジサン、美少女から誘われる

 

●本日のフェアリー・チューブまとめ記事

・期待のオールドルーキー現る

・謎の大剣オジサン、世界樹を斬る

・【もしかして】大剣オジサンの出自求ム【伝説の剣聖?】

・本当にただの田舎農家? 大剣オジサンの素顔に迫る!

・配信切り忘れてフレイムドラゴン討伐してたらバズってた件~オレ何かやっちまったかい?~

・次はいつになる? 大剣オジサンの魔物討伐!

・マルグードの領主が大剣オジサンを騎士団に勧誘

・今日の大剣オジサン01

 

「やだ、恥ずかしい……」

 

 帰宅し、フェアリー・チューブのまとめ記事を開いたところ。

 ゴーシュは乙女のように両手で顔を覆っていた。

 

 一昨日まで配信している動画の視聴者は一桁、多い日で二桁だったのに、今日配信した動画は最大同接数が二万を超えていたのだ。《炎天の大蛇》にいた頃でも見たことのない数値である。

 

 あげく、ゴーシュに関する記事がいくつも作成され、公開されている。

 

「しかし、なるほどな。昨日の配信を切り忘れたのがきっかけだったのか。あの魔物、普通の赤いトカゲだと思ってたのになぁ」

 

 ゴーシュは呑気に呟き、一つ息をついた。

 

 どうやらゴーシュが新種の赤いトカゲだと思っていた魔物は、最近巷で話題のフレイムドラゴンという魔物だったらしい。

 付け加えるなら、その魔物は最近になって冒険者協会が危険度A級に指定した魔物で、一人では絶対に交戦しないように勧告されている魔物だということか。

 

 とにかく、それは娯楽に飢えているこの世界の人間にとって、話題性を持つには十分すぎた。

 本来なら専門の討伐隊が派遣されて駆除にあたるような魔物を、冴えない田舎農家の中年男性が大剣一つで倒していたのだから。

 

 モスリフ村の住人にも知れ渡っているらしく、ゴーシュが帰宅した後に、褒め称えながらも冷やかす友人が何人か訪れる始末だった。

 

「コメントも、多すぎて全部は確認できないな……」

 

 ゴーシュは始め、自身の配信に寄せられたコメントを全て確認しようとしていた。が、あまりの量に断念するしかない。

 

 そうしてゴーシュはベッドに横になり、夜は更けていった。

 

   ***

 

 次の日。

 

「えー、皆さんまた見に来てくれてありがとう。ゴーシュです。こんなオッサンだけど、少しでもためになったり楽しんでいただければと思います。今日はこの後ひと雨来そうな天候なので、短い配信になるかもしれませんが」

 

【よ、待ってました!】

【今度は何を見せてくれるんです?】

【今日もイケボ! 渋いですわ!】

 

【昨日の薪割りやってみました。絶対あんなの無理です。本当にありがとうございました】

【あんなの普通はできんだろw】

【うーん、今日もめっちゃ人いるな】

 

【同時接続数:10,536】

 

「おおぅ……」

 

 今日もどうやらゴーシュの配信動画を見に来た者は大勢いるようだ。

 ゴーシュが照れながら挨拶すると、既に同接数は一万を超えていた。

 

「あ、そういえばコメントをたくさんいただきまして、ありがとうございます。申し訳ないんですけど数が多すぎてざっとしか確認することができず……。せっかく書き込んでもらったのに反応できなくて申し訳ないです」

 

【そりゃそうだよなw】

【律儀だなー】

【普通は全部なんて拾ってられないぞ】

【なんかこの人、いい人そうだよなw】

【配信はよ! はよ!】

 

「えーっと。それじゃあ今回は田畑に現れた魔物を討伐していこうと思います。要望くれていた人も多かったみたいですね。まとめ記事、ちょっとだけ読みました」

 

【待ってましたわ!】

【キター!】

【大剣オジサンの魔物討伐が、見られる!】

【まとめ読んだのかw】

【ぼく、田畑持ってないw】

 

 ゴーシュが今日の配信内容を読み上げたところ、一斉にコメント欄が流れていく。

 

 そこまで期待してくれていたのは嬉しいものだが、ゴーシュからすると今日の内容は不安だった。

 いつもやっていることで、あまり需要が無いと思っていたからだ。

 

「お、早速いいところに魔物が現れましたね。ちょっと小さいですが、まずはアレを退治していきたいと思います」

 

 ゴーシュが遠くの方に現れた魔物を見つける。

 その魔物は銀の翼を持つワイバーンだった。

 

【ちい、さい……?】

【いやいや、十分デカいぞ】

【あの魔物、ドレッドワイバーンじゃないか?】

【ドレッドワイバーンって確かこの前、王都の冒険者協会が危険種に指定した魔物じゃねえか!】

 

【おいおい大丈夫か?】

【ゴーシュさん逃げてー!】

【田舎、怖いですわ……】

 

 どうやら小さいと思っていたのはゴーシュだけらしい。

 ゴーシュにとっては毎日のように討伐している魔物だったので、「そんな貧弱な魔物、誰だって倒せるわw」と非難されることも覚悟の上だったのだが。

 

「はは、どうやら心配してくれている方もいらっしゃるようですが、大丈夫です。毎日のように出てくる魔物ですから」

 

【毎日?】

【いつも倒してるってこと? ドレッドワイバーンを?】

【ますます深まる、大剣オジサンの謎】

【あれ倒したら本物だろ】

【冒険者協会に勤務している者です。あれは本当に危険な魔物ですよ! 絶対無理ですから逃げてください!】

 

 ゴーシュは流れるコメントに苦笑しつつ、ドレッドワイバーンの元に向かう。

 

 ――ギャァアアアアアス!!!

 

 近づいてきたゴーシュに気付くと、ドレッドワイバーンは大口を開けて叫び声を上げた。

 それはまさしく、万人を震わせるかのような竜族の咆哮だったが、ゴーシュは意に介す様子もなく大剣を構える。

 

「えー皆さん。ワイバーンの狩り方についてです。といっても俺の立ち回りが参考になるか分かりませんが」

 

 言いつつ、ゴーシュはドレッドワイバーンの攻撃を軽々と躱していく。とても大剣を所持しているとは思えない身軽さにコメント欄は大賑わいを見せていた。

 

「まず、ワイバーンは鋭い爪を持ちますが、当たらなければどうということはありません。遠距離から放ってくる攻撃も無いですし、大振りかつワンパターンなので見切るのも簡単でしょう。俺は剣を使いますが、弓や投げ槍で攻撃すると良いかもしれません」

 

【ドレッドワイバーンの攻撃を見切るのが簡単?】

【お、オレは今何を見させられてるんだ……?】

【攻撃の風圧で周りの樹が倒れそうなんですが】

 

【解説しながら危険種の魔物と戦うとか正気かよ】

【おわっ! あぶっ――なくねえな。本当に見切ってる】

【やだ、カッコいいですわ……】

【冒険者協会の者です。攻撃を避けられても仕留めることなんてできないでしょう! 今すぐに逃げてください!】

 

「で、ワイバーンは硬い甲殻に覆われているんですが、弱点があります。頭を破壊しても良いんですが、ワイバーンの兜焼きは美味しいのでなるべく頭部を傷つけずに仕留めましょう」

 

 ゴーシュは攻撃を回避しつつ、隙を窺う。

 そして、ドレッドワイバーンが大口を開けてかぶりつこうとした時、ゴーシュは空高く跳躍してみせた。

 

「とうっ――!」

 

 落下する勢いそのままに、大剣の切っ先をドレッドワイバーンの背後から突き立てる。正確にはドレッドワイバーンの首筋に、だ。

 

 ――ガァアアアアアア!?

 

 一撃だった。

 

 ドレッドワイバーンの首には深々とゴーシュの大剣が突き刺さり、ワイバーンは地面を揺るがしながら倒れ込む。

 ズシンという轟音が配信にも流れ、ドレッドワイバーンの背中の上でひと仕事を終えたゴーシュが映し出されていた。

 

【おぉおおおおおお!?】

【一撃かよ!】

【神回確定! 神回確定!!!】

 

【ゴーシュさん、弟子にしてください】

【こりゃあ今日のまとめも賑わうぞw】

【祭りじゃあああああ!】

 

【なんでこんなオッサンが田舎で農家やってんだよw】

【それな】

【ほんとそれ】

【もっと伸びろ】

【私たちは今、神を目撃しているのです】

 

【冒険者協会の者です。私たちの協会で素敵な冒険者ライフを始めませんか?】

【↑勧誘すんなw】

【↑手のひらクルックルw】

【冒険者協会w さっきまで逃げろって言ってたじゃんw】

 

【同時接続数:32,500】

 

「ハハハ……。皆さん大げさですね。でも喜んでいただけたようで何よりです。それでは少し早いですが今日はこの辺で」

 

 ゴーシュが深々とお辞儀をして配信画面を切断する頃にはコメント欄がお祭り状態になっていた。

 

「ふぅ。これで良かったんだろうか……。ん――?」

 

 ゴーシュが深く息をつくと、近くに馬車が停まっているのが見えた。

 どうやらモスリフの地にやって来た馬車らしい。

 

 停まっているということは誰かがここで降りるのだろうか。

 ゴーシュがそんなことを考えていると、馬車から勢いよく人が飛び出てきた。

 

「ゴーシュさんっ!」

「え……?」

 

 それは端整な顔立ちをした少女で、肩の辺りまで伸ばした金髪を揺らしながらゴーシュの元へと一直線に駆けてくる。

 

「ゴーシュさん! やっとお会いできました!」

「ええと……。失礼ですが、どなた?」

「あ、そうですよね。突然すいません」

 

 少女はペコリとお辞儀をして、柔らかい笑みをゴーシュに向けた。

 

「私、ミズリー・アローニャと申します。ゴーシュさんには『ニャオチン』って言った方が伝わるかもしれませんが」

「え? 『ニャオチン』ってあの、いつも俺の配信を見てくれていた?」

 

 意外、だった。

 まさかこんな若い――美人の少女がオッサンである自分の配信を見てくれていたのかと、ゴーシュは予想外の出来事に目を白黒させる。

 

 しかし、ミズリーと名乗った金髪少女が次に発した言葉によって、ゴーシュは更に戸惑うことになった。

 

「ゴーシュさんっ! 私と一緒に王都で配信ギルドを立ち上げませんか!?」

 

 

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