田舎農家のオッサン、最強ドラゴンを倒す様子を配信し伝説の配信者へと成り上がる   作:コネリカ

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第7話 大剣オジサン、王都に行く

 

「さて、そうなると一つ問題があるな」

 

 ゴーシュは呟き、考えを整理する。

 

 王都で配信ギルドを立ち上げるというミズリーの話に応じるとして、ゴーシュはモスリフの地で農家をやっている身なのだ。

 自分の育てた作物たちをそのまま放置して、というのも気が引けた。

 

「せめて誰かに引き継いでもらえればいいんだがな……ん?」

 

 ゴーシュが思考を巡らせていると、走りながら近づいてくる人物がいた。

 

「おーい、ゴーシュ」

 

 それはゴーシュの友人であり、同じ農家仲間のロイだった。

 

「ふう。わりぃがちょっと雨宿りさせてくれよ。温かい紅茶でも出してくれるとなお嬉しい」

「ロイか。ちょうど良かった。俺もお前に話がある」

「話? っていうか、何でお前外にいるんだよ? 雨に打たれる趣味でもあったか?」

「いや、ちょっとな……」

 

 ロイは言いよどむ友人に怪訝な顔を向ける。

 

「まあいいや。早く中に入れてくれ」

「ちょっと待て」

 

 家に入ろうとしたロイを制し、ゴーシュは入り口の扉をノックした。もちろん、中で着替えをしているミズリーに配慮してである。

 

 一方でここまでの流れを知らないロイは「何で自分の家なのにノックするんだ?」と疑問符を浮かべていた。

 

「ミズリー、もう入っても平気か?」

「あ、はいゴーシュさん。お待たせしました。もう着替え終わったので大丈夫です」

 

「…………は?」

 

 そのやり取りを聞いたロイが呆気に取られた表情で固まる。

 そしてゴーシュが扉を開け、家の中から金髪の美少女が現れると、ロイが驚愕の表情を浮かべていた。

 

「な、な……」

 

 ちなみにロイはゴーシュと同じくらいの歳で、まだ独身である。

 ロイにとって、ゴーシュは農家仲間であり独身仲間でもあったわけだが、その友人宅に行ったら金髪の美少女がいたという状況なのだ。固まるのも無理はない。

 

「ゴーシュさん、ありがとうございました。おかげでとてもスッキリしました」

「す、スッキリした、だと……」

「あれ? ゴーシュさん、そちらの御方は?」

「ああ、俺の友人なんだ。ロイっていう」

「そうなんですね。初めまして、ロイさん」

 

 ミズリーが礼儀正しくお辞儀をする一方で、ロイは隣に立っていたゴーシュの首に腕を絡めて耳打ちした。

 

「お、おいゴーシュ。お前、いつの間にこんな別嬪(べっぴん)の若い彼女を……!」

「彼女じゃないが……」

「いやいや、あの娘が着てるのお前の服じゃねえか! あれだろ? 最近若い子たちの間で流行ってる呼び方で『彼シャツ』とか言うやつだ!」

「お前は何を言ってるんだ?」

 

 ロイが勝手に暴走しているようだったので、ゴーシュは放っておくことにする。

 

「すまないな、ミズリー。悪い奴じゃないんだが、ちょっと変わってるんだ」

「い、いえいえ」

 

 困惑したミズリーがパタパタと手を振り、ロイは「ついにコイツにも春が来たか」などと勝手に感動している。

 その傍らで、ゴーシュは深い溜息をついた。

 

「ん? そういえばゴーシュ。お前、オレに話があるって言ってたよな? あれは何だ?」

「ああ、そのことだがな……」

 

 ゴーシュはロイを一瞥(いちべつ)して、ミズリーの方へと向き直る。

 まず先に、ミズリーに対して話をするのが筋だと思ったからだ。

 

「ミズリー、さっきの話なんだが」

「は、はい」

 

 ミズリーが緊張した面持ちでゴーシュの言葉を待つ。

 その傍らでロイが「何だ何だ?」と興味深げに聞き耳を立てていた。

 

「例の話、俺からもお願いしたいと思う」

「え、本当ですか!?」

「ああ。これから二人で頑張っていこう」

「はいっ! ……嬉しいです。ゴーシュさんが私の想いを受け入れてくれて。ふつつか者ですが、これからよろしくお願いします!」

 

 答えを聞いて、笑顔をはじけさせるミズリー。

 ゴーシュはミズリーに対して頷いた後、ロイの方へと向き直る。

 

「ロイ、そんなわけで俺はこれから彼女と一緒に王都へ行こうと思う。ロイに俺の田畑を引き継いでほしいんだが、頼めるか?」

「ああ。それは構わねえけど……」

「最近は魔物も活発化しているし、申し訳ないんだが……。俺もなるべく顔は出せるようにするから」

「それは大丈夫だろ。ゴーシュが教えてくれた武術のおかげで村の奴らも最近めっぽう強くなったし。まあ、お前のようにはいかんけど、って、それはどうでも良くてだな」

 

 ロイが顎に手を当てて考え込み、そして何か合点がいったらしくポンッと手を叩いた。

 

「ゴーシュ。とりあえず友人として言っておくわ。結婚おめでとう」

「は……?」

「そちらのお嬢さんも、コイツのことをよろしく頼む。すっげえいいヤツだからよ」

「へ……?」

 

 事情を知らないロイが場違いなことを口に出したが、それも無理はないことである。

 

 ミズリーが赤面し、ゴーシュが誤解を解くために一から状況を説明して――。

 

 そうしているうちにいつの間にか空は晴れ渡り、気持ちのいい日差しがゴーシュたちのいる部屋の窓から差し込んでいた。

 

   ***

 

 一方その頃、王都グラハムの外れにある洞窟にて――。

 

「お、おい、あれはフレイムドラゴンじゃねえか! 何であんな新種の魔物がこんなところにいやがる!?」

 

 半年前にゴーシュを追い出した《炎天の大蛇》のギルド長、アセルスが慌てふためきながら叫んでいた。

 

 

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