勇者どころか巫女でもない   作:伊織ん

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プロット時点で書きたかったところです。

ところで、今日は七月三〇日ですね。(暗黒微笑)


百聞は一見に如かず:勇者計画編.4

 ここは四国の中で最も淡路島に近い場所、徳島県・鳴門市。

 世界三大潮流の一つでもある『鳴門のうずしお』で有名なあの鳴門市である。

 淡路島は神樹が作った結界の外のため、現在ここは四国の中でも、最も最前線。

 地元の住民はバーテックスがいつ襲ってくるかと肝を冷やしており、疎開をすることも考えていたが、避難民で溢れかえった四国には疎開先など存在せず、地元の住人は逃げることも隠れることもできなかった。

 そんな鳴門市の南には旧吉野川が東西を分断するように流れており、川を超えた先には徳島空港(徳島阿波おどり空港)が存在する。

 この徳島空港は自衛隊機と民間機が使用する官民共用の飛行場であり、陸上自衛隊の分屯地と、海上自衛隊の教育航空群が配備されており、日夜を問わず警備や訓練が行なわれていた。

 しかし、今となってはひっきりなしに飛行機やヘリコプターが離着陸を行い、トラックなどが敷地内を駆け巡っている最前線基地となっていた。

 

 そんな最前線である飛行場の一角には大きなコンクリート片がいくつか置かれていた。

 「え~、それではただいまより、勇者様の威力評価試験を行います。」

 と、防衛省のお偉いさんがそう宣言したのであった。

 

 そもそも、事の発端は先日の会議直後であった。

 日も暮れて、やっと会議が終わったとノビをしていた桐生であったが、『バーテックスの生体(?)サンプル』と『勇者の力とやらをこの目で見たい』と学者側から要望が出たのであった。

 敵を知るためには、やはり敵自身を解析するのが一番であろう。特にバーテックスの生体サンプルは何としてでも欲しい。通常兵器に耐えて見せたあの化け物は一体どういう奴らなのか。なぜ勇者ならあの化け物を倒せるのか。学者たちは知りたがっていた。できれば生きている状態で捕まえてきてほしい。学者たちはついでと言わんばかりに口を揃えてそう言った。

 

 大社も政府関係者もこれには困った。

 通常兵器が効かない相手をどうやって生け捕りにしろと言うのだ。首に縄を付けて引きずって来いとでも?

 そんなことをしてみろ、飼い犬に手を噛まれるどころか、胴体ごと嚙み千切られかねない。なんせ相手はこちらを食い殺そうとしてくる化け物である。野生動物とはわけが違うのだ。

 しかし、学者たちの言うこともわかる。サンプルが無ければ学者たちもどうしようもないだろう。未知の病気に対して『サンプルは無いけど、特効薬を作れ』と言っているようなものである。いくら頭が良くても無理である。

 政府や大社関係者は「頑張ります」としか言えなかった。

 

 もう一つの要望である『勇者の力』

 こちらについては学者たちの要望がすんなりと通った。

 政府は場所と設備を提供することを約束し、その日は解散となった。

 ちなみに、高嶋と合わせろと烏丸に言ったら、もう帰ったぞ。と言われた。なんでだよ。

 ここまで会議が長引くとは思わなかったらしい。こればかりは想定外だ。すまない。と謝っていたが、どこまで本当なのやら。

 また別の日に高嶋と会えるように調整すると烏丸は言ったので、その日は帰宅した。

 帰ったら横手君に『遅い』と怒られた。今日は厄日だわ。

 そうして会議から数日が経過した今日、ここ徳島空港の一角で学者たちが考えた項目による、勇者たちの評価試験が行われようとしていた。

 

 徳島空港の一角にいくつか置かれたコンクリート片。

 大きさは約二~三メートル四方の長方体であり、バーテックスとほぼ同じサイズを想定されている。そのため、コンクリートの一面にはバーテックスの顔がデフォルメされている。色も大体同じで、くすんだ豆腐みたいだ。可愛くない。

 ちなみに、このコンクリート片は自衛隊員が運んできてくれました。お勤めご苦労様です。彼らも勇者の力を一目見ようと学者たちと共に勇者を見守っている。

 

 さて、そんな『バーテックス(豆腐)』の前に立ったのは勇者・高嶋友奈。

 彼女は誰もが見てわかる接近戦タイプ。両腕に手甲を付けて準備運動をしている。

 来ている服はお披露目時にも着ていた、あの色とりどりの服だ。

 どうやら『勇者服』と言うらしい。

 大社特製の戦装束で、神樹からお借りする力をさらに増幅するようだ。霊的要素が満載らしい。

 「それでは、お願いします。」

 そう防衛省のお偉いさんが宣言すると、高嶋は元気な声で「はい!」と返事し。

 「勇者パンチ!」と掛け声を出して、拳をバーテックス(豆腐)に叩きこんだ。

 

 豆腐は跡形も無く、砕け散った。

 

 学者も自衛隊員もポカンとしている。

 高嶋はそんな学者と自衛隊員に振り返り、

 

 「次! お願いします!」と言い放った。

 

 いや、それでオシマイなんですよ。

 

 高嶋は物足りなさそうな顔をしていた。

 

 

 

 高嶋友奈は接近戦タイプだったため、威力も段違いだったのだろう。

 様子を見ていた自衛隊員たちはそう思いながら、次のバーテックス(豆腐)を設置していく。五個では足りなかったかもしれない。

 意識が戻ってきたのか、学者たちはハッとすると途端にソワソワしだし、みんなこぞってどこかへと駆け出していった。

 ちょうど自衛隊員がバーテックス(豆腐)を設置し終えたころ、学者たちが手に機器類をたくさん抱えて戻ってきた。子供がおもちゃを収納箱ごと持ってきたようにニコニコしている。

 どうやら、威力を測る装置だったり、映像を超スローモーションで撮影できるカメラらしい。手慣れたように設置を始めた。

 

 次は一番遠距離タイプの伊予島杏がバーテックス(豆腐)の前に立った。

 気が弱いのか、多くの視線に耐えられないのか、どこか不安げな表情をしている。

 「それでは、お願いします。」

 そう防衛省のお偉いさんが宣言すると、伊予島君は「は……はい」と小さく返事し、ボウガンのような武器を豆腐に向けて、引き金を引いた。

 

 豆腐は跡形も無く、砕け散った。

 自衛隊員も学者たちも興奮していた。

 

 特に若い自衛隊員と学者たちは大興奮している。

 「すげぇ!」

 「見たか今の!」

 「俺達にはできないことを平然とやってのける!」

 「うっそだぁ」

 「こ、粉々じゃねぇか」

 「パーンってなりましたね!」

 「ゆ、夢じゃないよな」

 「なんじゃあこりゃぁ!?」

 「あ、厚さ三メートルの特殊RCを一撃で……?」

 

 皆が興奮するのは当然である。

 使われたコンクリート片の厚さは三メートル。

 しかもただのコンクリート片ではない。原子力発電所の外壁に使われている特殊なコンクリート壁である。

 一九九二年、原発用外壁の堅牢さを証明するため、米国でF-4という戦闘機を特殊コンクリート壁に激突させるという大規模な実験があった。

 結果は、特殊コンクリートはほぼ無傷。

 十九トンもの物体が秒速二百十五メートルという速さで衝突したにもかかわらずである。当然、戦闘機は衝撃でバラバラ。

 瞬間最大衝撃荷重は百六十メガニュートンを記録した。とにかくとんでもない衝撃を一点に超短時間で受けたにも関わらず、コンクリートは表面がちょっと削れただけで、ほぼ無傷だったのである。

 そんなコンクリートが少女のパンチ一撃で、少女の持つボウガンの一撃で跡形もなく消し飛んだのである。

 

 初めはニコニコしながら実験結果をまとめていた学者たちだったが、それと同時に恐ろしいことに気が付いてしまった。

 この威力でやっとこさバーテックスが一匹倒せるのである。

 通常兵器では歯が立たないのも当然である。自分たちはとんでもないものと戦おうとしているのかもしれない。ましてやそれに打ち勝たなければ人類は滅亡してしまうのである。大変なことになった。学者たちは心の底から震えていた。

 

 その後、他の勇者たちが続々とバーテックス(豆腐)に対して攻撃を行っていった。

 日本刀のような剣で真っ二つ、鎌のような武器で細切れ、ヨーヨーみたいな武器で木っ端みじん。と言ったように恐ろしい威力を叩きこんでいったのであった。

 用意したバーテックス(豆腐)が無くなってしまったため、予定していた威力評価試験はこれで終わってしまうことになった。

 だが、そばで見守っていた自衛隊員が悪乗りをし始めた。

 なんと飛行機と綱引きをさせようと言い出した。

 現場指揮官と整備士たちは、ふざけるな。と反対したが、防衛省のお偉いさんが、面白そうじゃないか。と鶴の一声。急遽やることになった。

 ちょうど物資輸送のため、荷物を降ろしていたC-1という軍用輸送機が一機、貸し出されることになった。整備士たちは、ただでさえ数が少ないC-1を壊したりでもしたらどうするんですか。と最後まで反対していた。

 結果としては輸送機が少女一人に引きずられていた。14,500lbfのエンジンが二つ、フルパワーで回っていても適わなかったのだ。お偉いさんはケラケラと笑っていたが、整備士はさめざめと泣いていた。この後、『総点検』という名の尻ぬぐいをするのは彼らである。かわいそうに。

 

 泣いていた整備士たちを見た、五人の勇者たちは『なんだか知らないが、申し訳ないことをした』と思ったのか、皆で協力して機体を素手で持ち上げ、元の場所まで運んで行った。

 整備士たちはひっくり返って気絶していた。

 

 こうして予定されていた威力評価試験は無事(?)終了した。

 終わったころには学者や政府関係者の中で、勇者の力を疑う者は誰もいなかった。なぜそんなことができるのか、その理屈はまだ分かっていないが、とにかく素晴らしく未知の要素が詰まっている。子供を戦場に立たせることは反対だが、自分たちがこの力を解明できれば、彼女たちを矢面に立たせなくて済む。

 そう確信して、皆この力の源を調べたがってうずうずしていた。

 

 こうして勇者の圧倒的な力は、政府関係者や学者たちのみならず、その場で見守っていた自衛隊にも証明し、その目的を達成することに成功したのであった。




え、こんなギャグ回を七月三〇日に投稿するんですか?



誤字脱字など、一応投稿前にチェックしてますが、もしあれば遠慮なくお願いします。

文体や表現方法、視点描写、その他読みづらいなどのご指摘がありましたら、こちらも指摘していただければ極力反映しようと考えております。
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