勇者どころか巫女でもない   作:伊織ん

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初投稿です。

あらすじにもありますように、モノを書くのは初めてなので、初めの方は原作から大きく逸脱するようなことはしないように心がけようと思います。

一応、最後までの大まかなプロットは出来上がっていますので、書ききるのは気持ちの問題だけです。
ただ、展開は固めていますが、オリ主の性格等はしっかり固まっておらず、フワフワなのでそこだけが心配です。

一番怖いのは書きたいところ以外を書くとき(説明パートとか)、モチベが下がってやめてしまうことです。

何卒よろしく。


第1章:四国撤退編
空からの殺戮者:四国撤退編.1


 二〇一五年、七月三〇日、奈良県御所市

 

 さっきまで下界を焦がすように照っていた太陽が沈み、仕事を終えたサラリーマンや学生が帰路につく、そんな時間。

 だが、最近頻発している地震によって、交通網のダイヤは乱れることが多くなり、今日も小規模とはいえ数回の地震が立て続けに起こっていたため、関西の私鉄、JR、その他さまざまな交通網が運転見合わせとなっていた。

 自分の住処である大阪に帰ろうとしていたこの男も、その余波を食らった一人だった。

 彼の住処は大阪府と京都府と奈良県の境目。家に帰るためには大阪行きの私鉄に乗りこみ、一度大阪中心部まで戻った後、京都行きの電車に乗り換えなければ家路にたどり着くことが出来ないのである。

 そんな中、男はとあるスーパーマーケット横の火葬場、無数の墓石に囲まれた異質な場所の前で、買ってきたスナック菓子を食べながらSNSを開き、時間を潰していた。

 交通情報アプリでダイヤが乱れていることが分かっていても、「もしかしたらすぐに運転を再開するかもしれない」と考えながら駅に向かい、見事その期待をぶち壊してくれた関西の私鉄にぶつくさ文句を言っていた。

 駅前は同じようなことを考えるサラリーマンや学生などでごった返し、夏の気温も相まってとても長居できる状態ではなかったため、逃げるように人通りの少ないこの墓地で運転が再開するまで時間をつぶしていたのであった。

 

 その時、また揺れた。

 

 ここ数日あった小規模の地震ではなく、かなり大きい。

 しかし、『地震大国ニッポン』に住んでいるこの男は日本人らしく、初めはその地震の規模に少し驚きつつも「なんだ、いつものことか」と身の危険よりも「このままでは今日中に電車が動くことはないかもな」とそっちの方が身の危険らしく、再びSNSを開き、インターネット越しの友人や地震情報Webサイトなどから情報収集を始めた。

 

 突然、空がヌッと暗くなった。

 

 もうすっかり日が落ちて暗くなっているのに、そこからさらに暗くなったのである。

 流石にスマートフォンを見ていても気づくその異常に、おや。と不思議に思ったのか、男は画面から視線を外し、顔を上げた。

 

 空に何かが浮いていた。

 

 違う、白くて丸いナニカが空から次々と降ってきていたのである。

 なんだろう。と考えているうちにも、その白くて丸いナニカはどんどん大きくなりながら落ちてきて。

 

 人を押しつぶした。

 

 いや、食ったのだ。

 

 ちょうどそのころ、隣のスーパーマーケットでも同じように、凄惨な状況が繰り広げられていた。

 明日に備えて夕食を調達していた烏丸久美子という女も、そんな凄惨な状況に巻き込まれていた一人であった。

 店内の客たちは窓にこびりついた、「ヒトだったもの」の下半分を見て悲鳴を上げ、ある者は店の外へ飛び出し、駐車場に止めてあった車に乗り込もうとしたが、車の前で白い化け物に食われ、たとえ乗り込めたとしても車ごと食われていた。

 店内にとどまった客たちはまとまりのない烏合の衆であったが、烏丸は場を乱す様な真似をした黒シャツ男を利用し、発言力を高め、周囲に対してとある提案を持ち掛けた。

 『自分が店外へ出て囮になるから、一グループ五人となり、二〇秒ごとに店から脱出しろ』という極めて単純なものであった。

 

 「馬鹿が…」

 烏丸はしっかり六〇秒ほど白い化け物から逃げ切り、約束を果たそうとしたがその前に店内の連中が我先にと脱出し始めていた。

 烏丸を追いかけた白い化け物は三体、囮となって三体全てを引き受けたのに、我先にと逃げ出した連中のせいで、うち二体はスーパーマーケットへと引き返してしまった。

 

 駐車場に止めていた自分のバイクへと到着した烏丸はバイクに跨り、エンジンをかけた。

 あの調子では逃げ出した人間たちは無残に食い殺されているだろうと予想しながら振り向いた。

 

 しかし、その予想は外れることとなった。

 

 白い化け物が少女に殴られていた。

 

 どう考えても、あの白い化け物と少女の体格差を考えれば少女の拳の打撃などかすり傷にもならないはず。

 しかし、少女に殴られた化け物は距離を取り、嫌がっているように見えた。殴られた箇所は崩れ落ちており、明らかにダメージが入っている。

 「面白いじゃないか」

 気が変わったのか、烏丸は白い化け物に対峙し拳を振るっている少女と、彼女から少し離れて店内へ戻るよう呼び掛けるもう一人の少女に向かってバイクを走らせた。

 

 男は混乱していた。非現実的な状況に。凄惨な状況を目撃してしまったことに。

 目の前で人が白い化け物に食われていることが信じられなかったが、その生々しさ、あふれ出るどす黒く赤い液体、映画で見たスプラッタ表現とは全然違うんだな、と最初はのんきなことを考えていたが、白い化け物の口らしき部分にこびりついた血と臓物と、かすかに漂ってくるその臭いに段々と現実が追いついてきた。

 

 くるり、と食べ終えたのか白い化け物がこちらに振り返った。

 どう考えても次は自分の番である。

 「ちょ、ちょっと待ってぇや!」

 男は流暢な関西(大阪)弁で白い化け物に待つように懇願した。

 文字だけではイントネーションが伝わらないのが残念である。

 化け物がそんな願いを聞き入れてくれるはずもなく、ガバァ…と大きな口を開け、こちらに向かってきた。

 「じょ、冗談じゃないわ!」

 男は追ってくる化け物から逃げるため、先ほどスナック菓子を買ったスーパーマーケットへと走り出した。

 

 「うおおおおおおおお!」

 少女の向こう側の曲がり角から男が悲鳴を上げながら飛び出して、こちらに向かってきたため、加速しようとしていたバイクのブレーキを握る。

 曲がり角からは白い化け物が男の後を追うように現れ、この場に化け物が新たに追加されたことに、烏丸は小さく舌打ちをした。

 少女は男とその後ろから追いかけてくる化け物に気づいたのか、男の方へ体を向け、拳を握り、迎撃の体制に入った。

 しかし、それをチャンスと見たのか、先ほど殴られた化け物が少女に襲い掛かる。

 「ガキ!そのままジッとしてろ!」

 思いきりアクセルを回して再加速、少女に不意打ちを行おうとした化け物に最高速度までバイクを加速させた後、バイクから飛び降り、激突させた。

 え?と戸惑ったような顔をした少女を押し倒すようにして抱きかかえ、同時にもう一体の化け物からの攻撃も避けたが、バイクから飛び降りた衝撃は大きく、着ていたライダースーツはボロボロになってしまった。

 痛みに耐えながらも立ち上がり、白い化け物を見るが全くダメージがない。どう考えてもバイクの激突の方がこの少女の拳より威力がありそうなのに。

 すると、少女のことは諦めたのか、化け物は先ほど脇を走り抜けた男の方へと向かって行ってしまった。

 「はぁ!?なんでこっちくんねん!! ムリムリムリムリ、無理やって!」

 化け物四体が男へと向かったため、少女が助けようと追いかけるがそれを引き止めて尋ねる。

 「ガキ。お前、なんであの化け物と戦える。」

 「えっ!?えっと…わからないです……。でも、これをつけると、戦えるような気がして」

 差し出された少女の手には古びた手甲が取り付けられていた。

 「これが…?」

 信じがたいことだが、そもそもこの状況すらも信じがたいことであるため、今はどんな超常現象も受け入れることにした。

 「は、はい!お姉さん、助けてくれてありがとうございます!大丈夫です、今度はきっとあのお化けをやっつけて、さっきのお兄さんも助けて見せますから!」

 こんな子供が人を食い殺す化け物を相手に平気な顔をして、さらに他人の心配までしていることに超常現象を感じたが、先ほど悲鳴を上げながら走って行った男が化け物を連れて戻ってきたため、少女の戦い方を思い出し、アドバイスを与える。

 「敵を殴るときは足で地面をしっかり踏め。腰の回転を意識して、自分の体ごと相手にぶつかる気持ちで殴れ、手数やフットワークの軽さより、一撃の威力を重視するんだ」

 「え? ……は、はい、やってみます!」

 突然言われても実践できるものではないだろう。そう考えていたが少女の拳はさっきとは全く別物のようになり、男を追いかけていた化け物を一撃で粉砕した。

 殴るときは腹から声を出すようにもアドバイスしたところ、少女の拳の威力はさらに上がる。そうして少女の拳が四体の化け物に突き刺さると、元から存在しなかったように、痕跡を残さず消えていった。

 

 「いやぁ、助かったわ!マジで死ぬかと思ぅたもん」

 さっきまで大の字で床に寝そべって、ヒィヒィ言っていた男が立ち上がり、少女に向かって礼を言う。

 礼を言われて嬉しいのか、少女は笑顔を浮かべ男に対してよかったですと返事を返している。

 そんな二人に割って入ったのが先ほど少女の近くで店内に戻るよう呼び掛けていたもう一人の少女である。

 「ゆうちゃん、大丈夫!?」

 見たところ中学生か。戦っていた少女を心配する。

 「大丈夫!このお姉さんが助けてくれたから」

 とこちらを見て言った。

 男との会話に割って入った中学生はこちらを見てぎごちなく、

 「あの…ゆうちゃんを助けてくれてありがとうございました。けがは…大丈夫ですか…?」

 さっきまで大人を店内へ戻るよう呼び掛けていた態度が嘘のようだ。うつむいて目を合わせようともしない。人見知りするのだろうか。

 「服が破れただけだ、かすり傷は負ったが、大きな怪我はない。受け身は得意な方だからな」

 しかし、この服装のままではまずいな。少しきわどい部分も破れてしまったから、先ほどの男に見られるのもいい気分じゃないな。と思い男の方を振り返ると、こちらには興味がないのか私物であろうスマートフォンとパソコンをケーブルでつなぎ、ボソボソ何か独り言を喋りながら調べ物をしていた。

 

 少女たちに視線を戻すと少女二人が見上げて

 「私、高嶋友奈って言います。お姉さんは?」

 「烏丸久美子だ」

 「えっと…ボクは横手茉莉と言います」

 中学生の少女も名乗った。

 高嶋友奈と横手茉莉、明るく活発な少女と少し暗く人見知りする少女。対照的だった。

 「あのう…烏丸さん、でエエんかな?」

 私たちの自己紹介を聞いていたのか、先ほどまでパソコンを覗き込んで調べ物をしていた男が声をかけてきた。

 「自分、桐生っていいます。さっきはありがとうございました。ところで、少しお伝えしたいことがあるんですけど…よろしいですか?」

 桐生と名乗った男はなぜか私にもお礼を言い、パソコンの画面をこちらに向けて喋り始めた。

 「この状況、明らかに異常事態です。政府機関や各省庁から公式な通知はまだ出てませんけども、海外でも似たような事例が多数報告されてます。報道機関も洗いましたがどこも特番を組んでの大騒ぎ、あの東テレですらバラエティーを中断して報道してました。」

 

 ベラベラ喋るとき、関西弁はなりを潜めるらしい。

 桐生は話を続ける。

 

 「『宇宙人が攻めてきた』とか『新型の生物兵器』だとか陰謀論が混じった情報が飛び交ってますが、共通しとるンは『白いたこ焼きみたいな化け物が突然現れて人を襲い、食い殺していること。』そこだけはどこも同じです。」

 

 あの図体で何をどう見たら『たこ焼き』に見えるのかが分からないが、あの化け物のことを『白いたこ焼き』と呼ぶこの男は、この異常事態に対して、短時間でかなりの情報を調べ上げたようだ。

 ショッキングな映像も含めてSNSで集めた情報を私に見せながら言葉を続ける。

 

 「多分ですけども、この異常事態は地球規模で起こってると考えられます。どこもかしこも大騒ぎ、米国政府は即応軍を本土で展開したとの情報もありますが、つい三〇分前からは情報の更新が極端に減少してます。また、こっちは正確な出どころはわかりませんが、七分前には大統領が白いたこ焼きに襲われて重傷を負ったとの情報もあり、国際為替の変動も無茶苦茶。皆何を信じればいいのか分らんのでしょうなぁ。

 ただ、これ見てください。ほら、これ。四国では行政機関が避難の呼びかけをいち早く出してます。なんでか分かりませんが被害は少なく、まだ組織的に行動できる余裕があると判断できます。他にもSNS上で四国だけが被害が少ないとの情報も多くみられますし、ここ数時間の様々なアナリティクスのセッション数でも確かに四国だけは接続数が極端に減少してません。四国では未だ利用者が多いということです。情報の確度は高いとみてエエでしょう。

 したがって、私はこの奈良からどうにかして脱出し、四国へ向かうのがベストだと考えているんですが、どうでしょうか。」

 

 一部専門用語が飛び交って何を言っているのか、少しわからなかった。高嶋友奈と横手茉莉に至っては首をかしげている。

 が、四国が安全そうだということだけは伝わったらしい。

 なるほど、この男の言うことには一理ある。

 ただ、こいつが言うことが本当ならあの超大国である米国ですら太刀打ちできない本当の異常事態だということになってしまう。

 しかし、この情報を否定できるだけの材料も否定する意味もないし、四国がまだ組織的に行動を行えているのなら行ってみるのもありかもしれない。

 

 「わかった。四国へ向かおう、そこが安全なんだろう。お前たち、親や家族はどうした?」

 「途中ではぐれちゃって…」

 高嶋友奈は表情を曇らせて言った。

 横手茉莉に至っては何も言わず黙り込んでいた。

 「四国が避難指示を出しているみたいだ、お前らの家族ももしかしたらそれを知って、そこへ向かっているかもしれんな。私と一緒に四国へ行くか?」

 二人は顔を見合わせて…その後うなずいた。

 




オタク君は得意分野になると早口になる。

誤字脱字など、一応投稿前にチェックしてますが、もしあれば遠慮なくお願いします。

文体や表現方法、視点描写、その他読みづらいなどのご指摘がありましたら、こちらも指摘していただければ極力反映しようと考えております。
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