勇者どころか巫女でもない   作:伊織ん

24 / 28
おまたせしました。勇者たちと交流が始まります。

大阪には「大阪うまいもんの歌」というそのまんまの歌があります。
これで大阪名物を知ろう!

ちなみに、大阪ではお好み焼きは『格子切り』以外は認められていません。
『ピザ切り』を行った場合は、たとえ勇者様であろうとも、問答無用で道頓堀に沈められますのでご注意を(大嘘)

さらに、広島焼きと関西(大阪)焼きを間違えて言った場合は両方から袋叩きにあいます。恐ろしいね。
雑な説明をすると、おそばが入っていて、生地が薄いのが広島焼です。
関西(大阪)焼きはおそばが入っておらず、生地が分厚いのが特徴です。


地方の名物:勇者計画編.9

 横手君が愛媛に引っ越してしまってから数日。

 

 九月となり、新学期が始まったので、勇者たちも授業が始まった。

 以前、初めて顔合わせした際には、授業もないのにわざわざ出てきてくれたらしい。烏丸め、それなら別に朝からじゃなくてもよかったじゃないか。

 桐生も避難所生活から脱出し、丸亀城敷地内に建てられたプレハブ小屋の中へ住居を移すことになった。飯は食堂に行けば食べることができる。スーパーどころかコンビニより近い、桐生にとってはそれが一番有難かった。

 

 さて、勇者たちが授業の最中は、桐生の仕事は無い。フリーである。

 とはいっても、やることが無いわけではない。まずはこの霊的技術をメモした講義ノートを理解しなければ……。桐生はノートを開く前から読む気が失せていた。

 

 霊的技術についてなのだが、あの『神樹の恵み』とやらはやはり霊的エネルギーの塊らしい。既存の物質とは原子・分子・結合方法から違うようで、新発見の元素を含んだ鉱石なのでは? と学者の間では騒がれていたが、じゃあその前の『花びらのようなもの』はなんだと言うことになると、ただの桃の花びらと解析結果が出てしまった。

 桃の花びらを押し固めたら『神樹の恵み』が出来上がるのかというと、当然そんなことはなかった。

 人工的には作れない、未知の元素を含んだ鉱石(?)が神樹から取れる。それが形を成して人類が必要なものに変化する。未知の要素に興奮する学者もいれば、匙を投げる学者とさまざまであった。

 

 勇者班や神樹班・バーテックス班が結果を出さなければ、装備班としてはやることがない。

 やることと言えば、大社神官による講義を受け、大社職員が言っていた勇者を『変身』させる方法を理解するために、霊的要素が満載となった講義ノートを資料と共に見返して、他の装備班と共にオンラインチャットなどで大社神官に質問するのが日課となっていた。

 ちなみにこのオンラインチャット、世界中の名だたるインターネットサービス会社が国ごとキレイさっぱりなくなってしまったので、やることのない装備班が一から作ることになった。

 『NARUKO』と命名された純四国産会話アプリである。今はチャットしかできないが、今後は通話機能なども実装し、勇者たちの通信端末にも実装することになる。そのテストもかねて、こうして装備班が試験的に使用しているのである。

 

 お昼に差し掛かったところで、チャイムが鳴り響いた。

 勇者たちの教室から漏れて聞こえてくるのだろう。お昼にするか。と桐生はプレハブを出て食堂へと向かった。

 

 食堂には勇者たちが集まっていた。皆、うどんを美味しそうにすすっている。

 郡君と喋っていた高嶋君がこちらに気づいたようで、手を振ってきた。

 「桐生さん、来ていたんですね!」

 「いや? 俺ちょっと前からココの敷地内に住んでるんやけど。」

 「え! そうだったのか? タマは今まで見かけなかったから、てっきりまだ先の話だと思ってたぞ!」

 高嶋君と土居君が真っ先に声をかけてくる。この二人は元気の塊だ。

 「あ~、食堂に顔を出したのは昨日が初めてやし、見かけへんのも無理ないで。」

 「桐生さんもお昼ですか? でしたらご一緒にいかがですか?」

 「そうだな、桐生さん。ここのシステムは分かりますか? 良ければ案内しましょうか。」

 上里君と乃木君も親身になって接してくれた。

 「いや、昨日も利用したから大丈夫や。今日はラーメンや。」

と食券機で買ってあった食券を見せたとたん。高嶋君を除く勇者たちの雰囲気が変わった。

 「な、なぜですか……桐生さん。なぜ、うどんではなくラーメンを……」

 「いや、乃木君。流石に昨日・今日と同じものは食えんて。しかし、そうやな。昨日も今日も麺類なのはちょっとアレやな……。今から変えてもらうことって出来るんかな?」

 「そんなことしなくても、肉うどんとか、釜揚げうどんとか、天ぷらうどんとか! タマは毎日食べても飽きないぞ!」

 「うどんには変わりないやんけ。」

 勇者たちは桐生を信じられないものを見るような目で見ていた。高嶋君は苦笑いしている。

 「全く! うどんを毎日食べれないなんて、友奈みたいなことを言うんだな! そんなことをいうヤツが二人もいるなんて、タマはおっタマげたぞ!」

 「タマっち先輩、言い過ぎだよ……」

 「杏もそう思うだろ!? うどんは主食だ! 飽きることはない!」

 「それはそうなんだけど……」

 伊予島君。そこで同意されたら困るんだが?

 「友奈さんの時もお話したけど、桐生さんも四国外から来た人だからやっぱりちょっと抵抗があるんだと思うの。でもすぐに慣れると思うよ? 友奈さんだってこうして毎日うどんを食べてるんだし。」

 確かに高嶋君も肉うどんをすすっている。高嶋君に聞いてみると『おいしいから大丈夫だよ』と帰ってきた。何がだ。

 「桐生さん、今からゆっくり慣らしていきましょう。さあ♪」

 「やめろ、上里。俺は屈さんぞ。大阪人のソウルフードはお好み焼きとたこ焼きや。五五一の豚まんは何処だ。四国にはないのか。」

 ※ありません。店舗は近畿二府四県だけです。無い時~(泣)。

 「高嶋! お前も関西人やろ。何を四国に汚染されとんのや。目を覚ませ!」

 「でもね、桐生さん。四国のうどんって、ものすっごく美味しいんだよ! 今まで食べた中で一番だと思うんだ。」

 「それは分かるが、だからって毎日食えるわけでもないやろが。ええい、四国のうどんは化け物か。」

 いかん。高嶋君はもうダメだ。味覚が四国に汚染されてしまっている。

 はっきり言って、高嶋君はもうこの戦いにはついてこれそうもない。

 らちが明かないと判断した桐生は、近くにいた床掃除をしている食堂の職員に声をかける。

 「おばちゃん! この食券を別の定食に変えてくれんか!? うどん以外でだ!」

 「ハア? うどん以外? お前さん、何馬鹿なこと言っているんだい? うどん食べなさい、うどんを。」

 アカン、このおばちゃんも明らかな『うどんキチ』だ。話が通じない。

 仕方がないので、勇者どもとおばちゃんのブーイングを無視し、買った食券を窓口に置く。

 さっきまでニコニコしながらうどんを茹でていたおばちゃんは、ラーメンと書かれた食券を見た途端、『非国民め……』とか言い出した。はだしの●ンかよ。じゃあ食券売るなよ。あるから置いてるんだろ。

 

 しばらく待つと、うどんが出てきた。なんでだよ。

 「おい! おばちゃん! 俺はラーメンを頼んだんや! 何でうどんが出てくるねん!」

 「ウチはうどんしかやってないよ。」

 「嘘をつけ! モノが無いのに食券を売ってるだなんて、これじゃ詐欺だ!」

 「あ、ごめんなさい。それ来月からなんですよ」

 ガーンだな。出鼻どころか取り憑く暇もない。

 なんなら『良いから早く食え、うどんが伸びる』と怒られた。理不尽にもほどがある。

 仕方がないので、出されたうどんを食べることにした。

 勇者たちの隣に座ると、乃木君はうどんを見てフンスと鼻息を荒くしていた。

 「桐生さんも、やっぱりうどんにしたか。よかった、よかった。」

 「アホウ、注文ミスじゃ。俺はうどんを頼んでいない。」

 「ここまで来ると……、流石にかわいそうね……」

 郡君。分かってくれるのは君だけだよ……。

 桐生はズルズルと、うどんを食べ始めた。

 

 うまい。

 

 

 

 食べ終わった後、勇者たちは午後の授業までまだ時間があるらしく、こちらのことを聞いてきた。四国外の話がメインであったため、主に高嶋君と自分が話題の中心だ。

 

 「だからな、お好み焼きとご飯は合うんだって。」

 「嘘をつけ! タマは信じないぞ! なんでその二つが一緒に食べられるんだ! お好み焼きはオカズにはならないぞ!」

 「高嶋さんも、お好み焼きをオカズにして食べるの……?」

 「えっと。私はやらないけど、食べてる人を見たことがあるよ? お好み焼き定食って言うんだって。」

 「えぇ……? タマげたなあ。」

 「あの……、大阪の人は一家に一台、たこ焼き機があるって本当なんですか?」

 「伊予島君、何を当たり前のこと言うとんのや。ホットプレート買ったら、プレート部分を取り換えるヤツがセットでついて来るやろ。」

 「それは……、見たことがないですね」

 「ひなたも言うように、私も同じだ。たこ焼き用のプレートなんて見たことがない。」

 なん……だと……?

 「……高嶋さんも、持ってたの?」

 「うーん、私の家には無かったねぇ。見たことはあるんだけど、家でたこ焼きを作ったことが無かったから。」

 「は? 家でタコパやらんのか?」

 「たこぱ……? たこぱってなんだ? 杏?」

 「おそらく……『たこ焼きパーティー』の略、でしょうか。」

 「せやせや。家族みんなでたこ焼き機を囲んでな、自分で焼くんや。流石にたこ焼き用の串は用意できへんかったから、箸を使ってクルッと回すんや。大阪人の義務教育ってヤツやな。」

 「そんな義務教育、聞いたことがないわ……」

 「へえ~。楽しそうだね! 私たちも出来ないかな? タコパ!」

 「そのためには、まずはたこ焼き機を調達しないといけませんね……」

 「このあたりで、たこ焼き機は売っているのだろうか……?」

 「タマはこの前、デッカイたこ焼き機を見たことがあるぞ! 目玉が飛び出るほどデッカイのが作れるんだってさ!」

 「あ! それ私も見たことある! 凄いよね~アレ。」

 「土居君・高嶋君、それ二つしか作れないヤツやろ? あれはアカン、やめとけ。」

 「なんでだ? どうせならでっかく、ドカーン!としたヤツを作った方が面白そうじゃないか!」

 「アレな。致命的な欠陥をいくつも抱えとるんや。箱のパッケージに書かれてるイメージ画像に騙されたらアカン。」

 「タマっち先輩、大きいとそれだけ熱が伝わりにくいから、真ん中は生焼けになっちゃうんだよ。そうですよね? 桐生さん」

 「そうや、俺も試しに一回使ったことがあるが、あれはアカン。そもそもデカくて、キレイにひっくりかえせんし、火力は弱いから伊予島君の言ったように生焼けになりやすい。おまけに時間がかかって、出来上がるのはたったの二個や。タコパには向かん。」

 

 筆者も使ったことあるが、あのたこ焼き機、火力がイマイチなのである。外はガリガリ、中は生焼けのドロドロ。しっかり焼くためには三十分もかかる。タコパには向いていない。

 

 「困ったぞ……ひなた、どうやって調達しよう。」

 「若葉ちゃん。私も見たことがないんですよ? 流石に大社の皆さんもお持ちになっていらっしゃらないと思いますし……」

 「あ! 私、良い事思いついちゃった!」

 「お、なんか名案があるか、高嶋君。」

 「久美子さんに聞いてみたらいいんですよ! 久美子さんも桐生さんと同じ大阪の人って聞きましたし!」

 「久美子さん……? 友奈の巫女だったか? そうか、彼女も二人と共に四国に逃げて来たと言っていたな。だが、流石に彼女が知っているとは限らないと思うが……」

 「せやせや、烏丸に聞いたところで『知らん』の一言で終わりや。」

 「桐生さん……そんなこと言わずに久美子さんに聞いてみてくださいよ……。私、みんなでタコパやってみたいです。」

 まあ、そんなことを話していると、食堂にチャイムが鳴り響いた。とうとう午後からの授業が始まるらしい。

 「マズイ。皆! 授業に遅れる。急ごう!」

 「わわわっ! まだお皿片づけてないよ~。桐生さん! 久美子さんにたこ焼き機があるかどうか聞いておいてくださいね! 行こう! ぐんちゃん!」

 そう言い残して六人は行ってしまった。

 ウムム……、しゃーない。高嶋君のお願いだ。今度烏丸に会ったら聞くだけ聞いてみよう。そう考えた桐生は、自分も皿を片付けて、例のノートを解読することにした。

 

 ちなみに、次の日から券売機にはうどん以外のメニューがキレイさっぱり消えていた。

 

 近くにスーパーあったかな……。




決して香川県民を馬鹿にしてるわけではございませんよ?
雛か親かも書いてみたいですね。

最近、説明会ばっかりだったので、会話文多め。
特に後半はワザと会話文のみだけにしてみました。
誰が誰だか分かってもらえるかな……。



誤字脱字など、一応投稿前にチェックしてますが、もしあれば遠慮なくお願いします。

文体や表現方法、視点描写、その他読みづらいなどのご指摘がありましたら、こちらも指摘していただければ極力反映しようと考えております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。