勇者どころか巫女でもない   作:伊織ん

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同時投稿します。

今回は説明回とアニメ回。私の考えた設定と描写がしっかり伝わるといいな。


生命エネルギー:勇者計画編.10

 夏も終わり、秋も深まってきたころ。

 

 『神樹の恵み』から得られる生活必需品や資源・エネルギーが四国にいきわたり初め、それと同時に臨時政府が打ち出した政策によって、物価や治安は徐々に安定し始めていた。

 

 避難民たちの受け入れも少しずつ始まったが、あまり良いウワサを聞かない。

 この香川県ではあまりそういった話を聞かないが、地方に行くと『余所者』として扱われ、警戒されるらしい。

 元から住んでいた地元民と、避難してきた避難民とのグループで派閥が出来上がり、各地で様々なトラブルが頻発していると耳にする。

過激なところでは、物価や治安が不安定になったのは四国外から避難してきた奴らのせいだ! と言い出す輩もいるようで、避難民は迫害のような扱いを受けている場所もあるらしい。

 もしかしたら横手君も、通っている学校でそういう扱いを受けるかもしれない。電話でこまめに連絡は取りあっているが、少しでも様子が変だと感じたら、愛媛まで行くことも視野に入れよう。

 桐生は勇者班が用意した謎の検査機器を装備班と共に弄って、勇者たちの測定試験を行いながら、そんなことを考えていた。

 

 

 

 さて、あれから神樹班と勇者班は大きく進展を見せていた。

 神樹班は神樹の恵みから霊的要素の詰まった未知のエネルギーを科学的に観測、数値化することに成功。この霊的エネルギーは人間の『生命力』を大幅に向上させるものだと判明。

 漫画やアニメなどで『気』などと呼ばれているモノに近いらしく、身体能力の向上や自然治癒能力などが飛躍的に増大することが判明した。

 

 神樹班たちはこの霊的エネルギーを『生命エネルギー』と命名。

 神樹が四国を囲むように構成している結界と呼ばれている樹木からも、この生命エネルギーが大量に検出されたため、生命エネルギーが四国からバーテックスを阻む理由となっているのではないかと推察している。

 この報告を受け、勇者班は勇者たちからも生命エネルギーを観測したと報告し、この生命エネルギーが勇者の力の源だと結論付けた。

 そして、『なぜ勇者たちだけがこの生命エネルギーを扱えるのか』を調査したところ、どうやら相性なようなものがあるらしい。

 そもそも、普通の一般人にもごく微量ではあるが、この生命エネルギーは検出されるようだ。しかし、身体機能の維持へと大部分が消費されてしまうのか、検知できる生命エネルギーはほんのわずかしかない。

 それに比べて、勇者たちは検知できる生命エネルギーの量が一般人と比べて途方もなく大きい。

 何も装備していない状態でもそうなのに、それぞれの専用武器や勇者服を纏うとその量はさらに増大した。学者たちは突貫で作った生命エネルギー検出器の異常を疑ったが、何度測定しなおしても同じ結果となった。

 

 これで一般人が勇者たちの武器を手に取っても、力を発揮できない理由が分かった。

 武器はあくまで生命エネルギーの増幅器。勇者服も武器ほどではないが同様に増幅器であり、使用者自身がそもそも生命エネルギーの余裕がないから、おそらくバーテックスに対抗する力を発揮できないのだろう。

 実際、勇者同士で武器の交換を行って生命エネルギーの測定を行ったが、本人の装備より明らかに計測値が下がった。増幅器という考察はあながち間違いではないと結論付け、勇者班はこれらを定例となった報告会で発表した。

 ちなみに、桃の花びらに生命エネルギーを加えて(?)押し固めてみたが神樹の恵みにはならなかった。そもそも神樹の恵みになる前と後で生命エネルギーの計測値が明らかに違う。神樹の恵みが生活必需品などに変化するメカニズムも依然不明であり、まだまだ分からないことだらけであった。

 

 

 

 さて、この報告を聞いた会議の参加者たちは、桐生も含めて、みな希望に満ちた顔をしていた。あの化け物共に対抗できると思われる力を、一部分とはいえ、この短期間で解明したのである。

 巫女たちの神託によれば、『このペースだと、結界は持ってあと二年』と言われていたらしい。それと比べたらわずか数ヵ月である。

 人類が月面に初めて到達したときのように、まさしく小さな一歩だが、人類の偉大なる飛躍であった。

 

 そうすると次は『この生命エネルギーを、どうやって一般人でも使えるようにするか』を具体的に考えなければならない。

 まだ生命エネルギーを観測しただけで、これをどう使えば対バーテックス兵器として成り立つのか、そもそも、生命エネルギーは本当にバーテックスに効くのか? そこはまだ検証していない。

 しかし、政府関係者と技術者たちは、カギは大社にあると睨んでいた。

 偶然なのか、はたまた知っていたのか分からないが、生命エネルギーを増幅する『勇者服』を生命エネルギー発見前に既に作っていたからである。

装備班とバーテックス班が率先して、大社関係者に『あの服はどう作ったのか』と問い詰め始めた。

 勇者服を作った大社関係者曰く、大社が信仰する神道の最上級の正装であり、製法も伝統に倣って縫い上げた『由緒正しい服』としか答えず。具体的な製法を聞いても不思議な儀式を行いながら、手間暇かけて作った服でしかなかった。

 これには装備班もバーテックス班も困ってしまい、それ以上問い詰めることは無かったが、納得していない者も多く、特にバーテックス班に配属された防衛省のお偉いさんは、会議後も勇者服を作った大社関係者に、しつこく質問を繰り返していた。

 

 

 

 定例会議後の大社関係者による霊的要素のお勉強会を終え、クタクタになりながら帰ってきた桐生は『土地神ってなんだよ…』などとボヤキながら、そのままベッドへと倒れこみ、ぐうぐうと眠ってしまった。

 起きた時にはお昼はとっくに過ぎて、勇者たちの授業も終わっている時間だった。

 寝過ごした。と焦った桐生はすぐさま身支度を整え、いつものように放課後は鍛錬をしている勇者たちのもとへと向かった。

 

 道場のような練習場所で勇者たちは既に胴着に着替えていた。なぜか巫女の上里君まで胴着を着ている。

 どうやら、乃木君と高嶋君が組み手をしているようだ。監督となる先生も、責任者もいない。というか責任者は、勇者たちのサポートをする桐生の役目だ。明らかな職務怠慢である。

 桐生も先生も居なかったため、各自好きなように稽古をしていたのだろう。高嶋君が乃木君に投げ倒されていた。

 

 「若葉のやつ、イキナリだな~」

 「まだ先生も桐生さんも来ていないのに……」

 「お二人とも遅いですよね……。何かあったんでしょうか。」

 隅で休憩していた土居君と伊予島君、上里君がそんなことを言っていた。

 完全に入るタイミングを逃した桐生は、ソロリと入り口から中を覗き込みながら、道場に入るタイミングをうかがっていた。

 そうこうしていると、高嶋君が立ち上がり、掛け声を上げながら乃木君へと向かっていったが返り討ちとなっていた。

 

 「ったた……。凄いなぁ、若葉ちゃん。一本も取れないや」

 高嶋君が乃木君を褒めていたが、乃木君は何やら不満そうに口を開いた。

 「今、お前は十回死んだ。」

 「え?」

 「あの化け物たちは手心なんて加えてくれないぞ」

 なんだか乃木君が物騒なことを言い始めた。

 「私たちの戦いは過酷なものになる。軽はずみな気持ちならすぐに出て行ってほしい。」

 オイオイオイ、確かにそうだろうが、乃木君は自分たちが戦うことが確定しているような物言いをしている。

 大社や政府関係者、学者や技術者たちが勇者頼みの状態を脱却しようとしていることを勇者たちにも説明したはずなのに。おかしいな、うまく伝わっていなかったのかもしれない。

 「背負ってる。私だって……。」

 立ち上がった高嶋君は乃木君と対峙し、そう答えていた。

 「ここに来るまでにね、たくさんの人を助けられなかった。神の力を拳に宿したとか言われてもね、私は無力だ。たくさんの人に生かしてもらって、今ここにいる。ここに来た。」

 そう言った高嶋君は四国に来るまでによく見た、あの徒手空拳の構えを取って。

 「こっちの方が得意なんだ。全部背負う、ヒーローだから!」

 

 あの時、自分に言い放った全てを背負う覚悟を。

 誰も見捨てない、何度でも背負って運ぶ、それが高嶋君の全てを背負う方法だと。

 あの時、桐生は聞くに堪えないと切り捨てた高嶋君の思いをもう一度、乃木君に答えていた。

 

 「ヒーロー?」

 乃木君も困惑している。

 「正義のヒーローはね、絶対くじけないし、諦めない。カッコいいんだよ!」

 「カッコイイ? それはテレビや漫画の話だ」

 そう反論した乃木君の懐に高嶋君が飛び込む。

 しかし、乃木君は華麗にさばき、不利と見た高嶋君は一度距離をとる。

 「カッコイイにあこがれちゃ、そんな勇者がいいと思うんだけど。駄目!?」

 高嶋君は地面を舐めるように姿勢を低くて乃木君に突撃し、体全体を回しながら足を刈り取るように右回し蹴りを繰り出す。

 これに乃木君は素早く反応して回避。

 スキを見逃さず、高嶋君は左足を軸にし、飛び後ろ回し蹴りといった、とても高度な空中での回し蹴りを乃木君のガードの上から叩き込んだ。

 す、すげぇ。香港映画でしか見たことのないような技が目の前で繰り広げられている。

 体重全体を乗せた回し蹴りが効いたのだろう。いくら咄嗟にガードしたとしてもその衝撃に耐えられなかったのか、乃木君は半歩後ろにたたらを踏む。

 あれだけスタミナ消費の激しそうな技を繰り出しても高嶋君は止まることなく、ガードを崩した乃木君に対して右の拳を握り、乃木君の胸の中心に拳を叩き込んだ。

 

 これは高嶋君が一本取った! と思った桐生であったが、両者は胸を押さえて地面へと蹲ってしまった。

 え、乃木君はあの一瞬で、カウンターを叩き込んだのか。全く見えなかった。恐ろしい反射神経の持ち主だ。

 桐生は二人の映画のような攻防に見とれてしまっていた。

 「え? え!?」

 「ど、どっちが勝ったんだ!?」

 「相打ち……?」

 他の勇者たちにも見えなかったようで、困惑している。

 しばらく痛みに耐えていた二人だったが、

 「覚悟って……痛いんだよ?」

 と高嶋君が胸を擦りながら、乃木君にそう答えていた。

 

 「……分かった。よろしく頼む。友奈。」

 なにやら少年漫画のように、拳で分りあえたらしい。さっきまでと乃木君の態度が一転していた。

 「なんだか不思議な人ですね。友奈さんって……」

 「タマの目に狂いは無かったな。流石タマ!」

 「若葉さん、友奈さん。二人とも仲良くしてくださーい」

 伊予島君がまた相打ちとなっている二人にそう呼び掛けていたが、

 「サボってないで、そっちもトレーニングを始めるんだ。」

 と指摘されていた。怒られてやんの。

 「ついでに桐生さんも早く入ってきてください!」

 あ、アラ? どうやらバレてたみたい。

 「わ、若葉は手厳しいぜ……」

 土居君の意見に賛同する桐生であった。




アーマードコアが発売されると、また更新速度が落ちるのは確定的に明らか。



誤字脱字など、一応投稿前にチェックしてますが、もしあれば遠慮なくお願いします。

文体や表現方法、視点描写、その他読みづらいなどのご指摘がありましたら、こちらも指摘していただければ極力反映しようと考えております。
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