今回でオリ主(主人公?)がどんな人物なのかがちょっぴりわかっていただけるかなと。
こいつをどう料理してやるかは私次第です。
烏丸久美子のバイクは無残にも壊れてしまっていた。
烏丸は壊れたバイクに近寄り、後部のリアボックスから荷物を取り出し、スーパーマーケットのトイレへと向かった。
着替えを済ませて戻ると、高嶋友奈と桐生が談笑していた。横手茉莉も時々会話に混ざっていたが、高嶋友奈ほど積極的ではなさそうに見えた。
高嶋友奈が戻ってきた私に気づき、私が着ている白衣に興味を持ったのか物珍しげに尋ねてきた。
「久美子さんは科学者なんですか?」
「いいや、科学じゃない、大雑把に言えば、歴史研究者の見習いと言ったところだ」
子供に文化人類学だとか考古学だとか言っても、理解できないだろう。そう思っていたが桐生が口をはさんだ。
「高嶋君、映画は見たことある?『エンディー・ジョーンズ』みたいなアドベンチャー冒険映画。」
「あ、見たことあります。この前テレビでやってました。」
「なら話が早いわ。烏丸さんは考古学者言うて、過去にどんなことがあったのか歴史を紐解くのを専門とした研究者ってところやな。さっきもハリウッド俳優顔負けのアクションも披露してはったし、やっぱ考古学者ってのは勢いとガッツが大事なんやで。」
横手茉莉は胡散臭そうに桐生をにらんでいたが、高嶋友奈は、やっぱりすごい人なんですね!とキラキラした目をこちらに向けていた。
何か考古学に対して変な幻想を抱かれてしまったが、特に大きな間違いでもないので、あえて訂正しなかった。
「学者ってのはこの世でトップクラスのバカの集まりさ。自分の専門分野外については無知無能だから、何でも知っているとは思わない方がいい。」
保険のような言葉を高嶋友奈に投げかけると、桐生も心当たりがあるのか、うんうん。とうなずいていた。もしかしたらコイツも研究者なのかもしれない。
そう思いながら私は破れたライダースーツをごみ箱に捨て、店の外に出た。
高嶋友奈と横手茉莉、桐生もついてきた。
先ほど車に乗り込んで逃げようとしたが、あっけなく食い殺されてしまった男の死体に近づく。
「う……」
横手茉莉は死体を見るのがつらいのか、目を背けていた。
「きついなら、それ以上近づくな」
「は…はい…。すみません」
横手茉莉は死体から離れた。高嶋友奈も心配して付き添っていたが、桐生は私に近づいてきた。
ヒトの形をとどめていない遺体を物色し、車のカギを探そうとすると、桐生がそれを止めた。
「ちょいちょいちょい、烏丸さん、いくらなんでもそれはアカンやろ」
「なんだ、この異常事態だというのにお前は道徳や倫理を優先するのか」
「いやいや、そうじゃなくて。ホトケさんにはそれ相応の態度が必要でしょうがってば…ホラ、そこどいて」
と私を押しのけて、え~っとまずは仏教…と言いながら跪いて、死体に向かって手を合わせ始めた。
どうやら弔いをするらしい。
桐生は、次にキリスト教…と言いながら胸の前で十字を切るが、イスラム教は…どうやるんだったかな…と言い出した。なんだ、適当じゃないか。
数秒ほど考えこんでいた桐生だが、ええわ、もうわからん。堪忍や。と遺体のポケットをまさぐり始めた。呆れたやつだ。こいつも人のことが言えないだろう。
そうして、車のカギを見つけたのか、ポケットからカギを取り出した桐生は私に向かってカギを投げ渡してきた。
カギを持って車内に入り、エンジンをかけると車は問題なく動き始めた。ガソリンも十分に残っているようだったので、そのまま走らせ、横手茉莉と高嶋友奈の隣に停めた。
「乗れ。これで四国に向かう。道に問題が無ければ、半日もあれば着けるはずだ。途中で警察署にも寄ってみるつもりだが、この状況だと救助は期待できないだろうな。」
まだ他の遺体を物色している桐生をちらりと横目で見ながら、高嶋友奈と横手茉莉に早く乗るよう催促をする。
が、帰ってきたのは意外な言葉だった。
「……駄目です」
「駄目? 何がだ?」
「スーパーに残っている人も、桐生さんも一緒じゃないと」
「……おい、簡単に言うなよ」
スーパーマーケットにはまだ数十人ほどの人間がいる。化け物がいなくなった後、逃げ出した人も多いが、それでもまだかなりの数の人間が店内に残っていた。
「まさか、あの大人数で移動しようと言うんじゃないだろうな?集団移動は危険が大きすぎる。それにあんな人数じゃ移動できない。無理だ」
「でも、店の中にいる人たちを放っておけないです。みんなと一緒じゃないなら、私は行けません」
高嶋友奈は譲らない。
どうしたものかと考えていると、それまで高嶋友奈の横で黙っていた、横手茉莉が口を開いた。
「ゆうちゃんの言う通りです…。それに四国が安全だって言う情報を教えてくれたのは桐生さんです。あの人を置いていくのはどうかと思います…」
と、私に対して異論を唱えた。
しかし困った。これから四国へ向かう際、道中でまたあの化け物と遭遇するかもしれない。もし遭遇した場合、戦えるのは高嶋友奈だけだ。
「……仕方ない、わかったよ。このあたりの車から使えそうなものを何台か選んで、分乗していくしかないだろう」
「あの、だったら…この途中で見かけたんですけど、バスは使えないですか」
さっき私に物申した態度から一転して、恐る恐ると言った様子で横手茉莉がそう言った。
桐生はまだ死体を物色していた。
「アカン、財布すら見つからんかった」
スーパーマーケットの駐車場の端にマイクロバスが乗り捨てられるように置かれていたため、店の前まで走らせると、物色を終えた桐生が待っており、開口一番に悪びれもなくそう言った。
さっきまで遺体に手を合わせていたクセにこの態度である。
桐生曰く、気持ちを込めて、やることはしっかりやった。その後、残ったモンはどうしようが俺の勝手やろ?こんな状況やし、使えるもんは使っとかんとな。ワハハ! とのこと。
たくましいのか馬鹿なのか。先ほど研究者として、少しだけ同族の気配を感じたのだが、気の迷いだったということにした。
店の中にいた人間たちに桐生が調べた情報を基に、四国に向かうことを伝えると情報元がしっかりしていたからなのか、桐生の四国に向かうという論理立てた結論に反対する人はいなかった。化け物と戦える高嶋友奈とともに行動することが最も安全だと、みんなわかっていることも後押ししたようだ。
ちなみに、マイクロバスの運転経験を桐生に尋ねると、
「すまん、俺、普通AT限定なんや。しかも、ここ数年は原付きしか乗ってないねん。まぁ、ちょっと練習すればイケルかもしれんけどな!」
とのこと、使えないやつだ。
だが、ヤツの情報収集能力は使える。あの短時間で安全圏である四国を導き出したのは素直に称賛に値する。
と言うわけで、桐生には四国までの経路の選択、そして引き続きこの世界の情勢・情報を収集するように命令し、バスは四国へ向けて出発した。
バスを走らせてすぐ、高嶋友奈は先ほどの戦闘で疲れてしまったのか眠ってしまった。
さっきまであんな化け物と戦っていたとは思えない、あどけない顔で少女は眠っていた。
高嶋友奈が寝たことを確認して、横手茉莉が、あの時なぜ笑っていたのかと私に尋ねてきた。
気が付かないうちに笑みが漏れていたのかもしれない。横手茉莉には気のせいだと伝えたが、察しのいい子だ。
私は今、この状況が楽しいんだ。
言われた通り、情報収集をしているのか、パソコンのタイプ音と乗り込んだ人間の寝息がかすかに聞こえる車内で、私は横手茉莉に見られないように注意しながら笑みを浮かべてバスを四国へ向けて走らせていた。
一応、原作『烏丸久美子は巫女ではない』の1話はこれで終わりです。
1話につき、2話のペースで書いていくと『烏丸久美子は巫女ではない』全体を書き上げるには10話ぐらい必要ってことになりますね…。
続けれるよう頑張ります。
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