六女?いや違う、長男。   作:白井あおい

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今回はストーリー進まないです


天獄と地獄

少年は雲のような場所でキョロキョロとしている。しばらく歩くと天使がいた。白い羽に、金色の髪。少年はここへの疑問や考察なども吹き飛び、ただその少女に見惚れてしまった。

そして天使は少年に語りかける。

 

「天国…と言えばわかりますかね?その、お気の毒ですが…

 

 

 

 

 

 

 

……貴方は亡くなってしまいました」

 

 

 

考えてもいなかったその答えに少年は先ほどと同じぐらいの衝撃を受けた。

 

「やっぱり驚きますよね…」

 

へにょんと天使の翼が曲がる。へこんでいるのが丸わかりである。

それでも気にしていないようで、一歩歩み寄る。

「でも、良かったのかも知れないですよ?」

 

天使が一歩、また歩み寄る。

 

「ここならどれだけ寝たって怒られませんし、ご飯をいっぱい食べちゃっても太ることはありませんから」

 

いつのまにか少年と天使は互いの肌が触れ合うほどの距離までになった。少年は悍ましい感触を覚えた。それでも天使から離れようとは思えなかった。もっと触れていたいとさえ思ってしまった。

 

「それに…苦しい時には泣いても良いんです」

 

そっと天使が少年に覆い被さる。途端、少年の感情が崩壊する。嬉しいやら、悲しいやら、虚しいやら…

少年は声を上げて泣き始めた。

 

「よしよし、大丈夫ですよ。ここには貴方を責める人はいませんし、貴方が泣いたからといって殴る人もいませんから」

 

少年の背に天使の羽が覆い被さる。ただただ柔らかい感触に少年は顔を埋める。

 

「えへへ、くすぐったいです。ああいえ、そのままで大丈夫です。私もこういうのが好きなので」

 

はにかみながらそういう天使。

まるで、もう一度だけ掴み損ねたチャンスをもう一度掴んだかのような。

自分が探していた唯一無二の存在に出会ったような。

心底安堵した声音だった。

 

 

 

しばらくすると、少年は立ち上がる。

 

「あ、ご一緒しますよ。私は貴方の専属天使なので」

 

少年は言葉の意味がわからなかったようで、首を傾げる。その疑問に満ちた純粋な眼差しに天使の顔がみるみる赤くなっていく。

 

「え〜っと…とりあえず、ついていきます!」

 

天使は少年の腕に抱きつく。少年はまた悍ましい感触を覚えたが、特に気にすることもなくなった。

 

「どこにいきます?どこへだって行けますよ。空だったり、海だったり、山だったり…それとも、何かしたいこととかありますか?私がなんだってしてあげますよ!」

 

少年は何も答えを返さなかった。全てが今ひとつ聞き覚えのない場所になってしまっていたからだ。

 

「えっと…もしかして全部わかりませんか?」

 

少年は天使の言葉に強い頷きで答えた。

 

「あちゃ〜…じゃあ私が決めても良いですか?」

 

少年は先程と同じく強い頷きを返した。

 

「わかりました!じゃあ、図書館に行きましょう!」

 

そういうと天使は少年の体を両脇から持ち上げ、その上で翼を広げる。ふわり、白い綿のような何かが落ちる。

それが記憶の欠片ということを、少年は知らない。

自分が忘れてはいけなかった大切だった記憶であることを、少年は知らない。

天使がどのような存在であるのかを、少年は知らない。

自分がなぜ死んでしまったのかも、少年は知らない。

どうして天使に対して少年が悍ましい感触を覚えたのかも、少年は知らない。

()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としても

 

 

 

 

ー少年は知らない。

 

 

 

 

 

 

天使は知っている。

少年が自分を覚えていないことを知っている。

少年が純粋無垢になった理由を知っている。

自らが持つ力の恐ろしさを知っている。

少年の記憶を奪った方法を知っている。

少年を殺してここに招かれた理由も知っている。

少年が自分に依存しかかっていることを知っている。

少年に起こった全てのことが自分のわがままであることを知っている。

少年の心の優しさに漬け込んでいることを知っている。

少年のことを諦めきれないのを知っている。

自分の行動が制御しなくていいことを知っている。

 

エンドE.H.LOVE 夢の終わり。終われない恋の続き。

 


 

少年は気づいた時には沼の上の足場に立っていた。しかし、それは足場ではなかった。ただの死体の積み重ねであった。腕のみで助けを求めるかのように手を上げているもの、苦悶の表情を浮かべながら天を仰ぐ上半身、靴を履いた足首だけの死体。

少年はそれで恐怖を覚えたが、立ち止まることはできない。ぐちゃりと生々しい音を響かせながら、歩き始める。

そんな少年を、見つめる人影があった。

 

「……嗚呼、トマトのようにぐちゃぐちゃになったその足元。自分の生存の為にちっぽけな勇気を振り絞って進む君の姿。すごくすごく…綺麗だ。しかし…綺麗に撮れないのは難点だな。少し、ほんの少しだけ明るくしようか」

 

 

少年は歩き続け、ようやく地面に足をつける。死体の上よりも硬い感触、血が飛び散らないことに何よりも安堵した少年だが、休んでいる暇はなかった。

先程まで通っていた場所が燃え始めたのだ。

極上の餌(死体)を元に、常軌を逸した速度で燃え上がる。極上の餌(死体)は少年が今しがた通った道。このままでは…

少年は即座に判断し、地面を蹴って炎から逃げる。少年の目には確かな意志を見えていた。

それを火の上で座りながら見る人影が一つ。

 

 

 

 

「ふふ、綺麗に撮れる、かわいい……そしてやはり素晴らしいな。危険だと判断したら即座に最適な行動を取る。目の前の危機から逃げ、反撃する為の機会を伺うその姿。いい、実にいい…ならば次は凍えさせてみようか。大丈夫だ、これぐらいなら君は耐えられる」

 

 

少年が火に追われなくなり休憩した後。

周囲の景色が歪みだした。それは少年の目の錯覚であり、決して少年が倒れかけたからではない。

分厚い氷壁が行く手を阻んだのだ。氷壁はあっという間に少年の元から見えていた範囲まで張り巡らされ、まるで巨大要塞のようだ。少年は体の皮膚が凍る前に歩き始めた。

出口は氷で歪まなかった場所。上からの微かな風に、迷わずに少年は飛び降りる。

衝撃で腕を血に塗れさせながら、少年はまた歩きだした。

目の輝きは、まだ消えていない。

 

 

「むぅ、まさかこの氷獄からも抜け出してくるのか…まさか君がそんな大胆な行動をとるとは…ああ、その情熱が僕に向けられるのを想像しただけで心が震えるよ。しかし、そうか…ではあまり不本意ではないが、君には更に傷ついてもらおうか。手負いの獣は恐ろしいが、君の体でどこまで足掻けるのだろうか?」

 

 

しばらく少年が歩くと、狼が眠っていた。

気持ちよさそうに微睡みに身を任せており、少年は安堵しながらこの場を立ち去ろうとした。しかし、そうは問屋がおろさない。

彼は唐突に前のめりになってしまい、狼の背中に倒れ込んでしまった。冷や汗を流すが、もう遅い。少年は諦めてそのまま狼の背中で眠ることにした。

狼は上に乗った異物(少年)に対して気づいて起きたが、自身の背に乗ることをしたならば餌ではないと感じ、そのまままた眠りについた。

それを双眼鏡を使って覗き見るものがいた。

 

 

「待ってくれよ、話が違うじゃあないか。あの狼、異常に亡者を…いや待て。君はそういえば正式な亡者じゃない、ただの善人だった。ならばあの狼さえも手懐けられるのか。ふぅ…まさか君を手に入れるだけでこんなお得なことになるとはね。ふふ、君を僕が抱えて飛ぼうと思っていたが、まさか肩を並べて話せるようになるとはな。…おっと、計画の大詰めだからって気が緩んでしまったみたいだ。取らぬ狸の皮算用にはならないように気をつけねばね…」

 

 

少年は眠りから目を覚ますと暖かい空間にいた。ベッドの上で寝転がり、毛布がかけられている。

先程までの地獄は全て夢ではないか?少年の頭にはそのような考えがよぎるが、腕の痛みが先程のは全てが夢ではないことを証明していた。ここも危険だと判断した少年の行動は早かった。

が、それよりも動く人影がいた。

 

「大丈夫かい?ああ、別に返事はいらない」

 

少年は声のした方向を振り向く。そこには悪魔がいた。やけに露出の多い服装、容易に人を殺せそうな三叉槍。しかし敵意はない声ではあった。

 

「まあ、今回のことについて軽く説明させてもらおう。…ん?別に僕は君の魂を食べるなんてようなことはしないよ。そこいらにいる並の悪魔と一緒にしないでほしいな」

 

そう悪魔は喋るが、少年は緊張を隠そうとはしなかった。

 

「それが正しい反応なんだろうね…じゃあ説明をしよう」

 

悪魔は自分に注目するような仕草で少年を誘惑しつつ、事情を説明した。

 

「最近本来は天使の受け持つような善性の魂を持った存在を地獄に連れ込む、ということが流行っていてね…その者に対して上位の悪魔が個別に対応している、というわけさ」

 

そう言って悪魔は申し訳ないように目を伏せ、頭を下げる。

 

もちろん、流行は間違ってもいないし、説明したことも間違ってはいない。ただ一つ、これが流行っている場所が()()()()()()()()()()()()()()ということだけが説明されていない。

そうとは知らない少年はあっさりと騙された。善性の魂を持った存在が積極的に狙われる訳である。

 

 

「だから君は今僕の家に滞在してもらっているのだが…痛みが引くまで天界への引き渡しはできない。地獄ではおとぎ話にもあるように危険な場所がたくさんあるし、亡者どもは君を引き摺り込もうとしてくる。こっそりと渡す為には怪我をしていない状態で、血の匂いがしない方が望ましいのさ。君たちのような血は特によく匂うからね」

 

少年は先程の地獄に対して疑念を抱いた。少年の経験した地獄は他に誰もいなかったからだ。

 

「ああ、君の体験した地獄は1人をもがき苦しめる為に用意された地獄だから他の人間はいなかったんだよ。もちろん、全員一斉に地獄に巻き込まれることもあるのだが、それを見て気分をわざわざ悪くすることもないだろう」

 

少年は悪魔の説明に納得した。

 

「さて、まあ僕が君を襲われてしまう、と思いながらここで生活するのも苦であろうから契約書を用意した。よく読んで大丈夫なら僕に返してくれ」

 

少年は悪魔が渡した契約書を確認する。しかし少年には何が書かれているのかがさっぱりだった。

 

「あ、すまない。君にも読めるようにある程度要点を書いた紙だ」

 

『一定の期間、悪魔は契約者を守る

この契約は悪魔側から提案した契約である

悪魔は人間らしい生活を契約者にさせなければならない』

 

 

一見普通の契約に見えるのでそのまま返した。それを見て悪魔は微笑みながら受け取る。

 

悪魔は()()()()()()()しかまとめた紙を渡したのだ。もちろん、要約した内容はこれっぽっちも嘘は書いていない。これを悪魔の意図通りに書き直すと

 

『一定の期間(契約者が契約を打ち切るまで)、悪魔は契約者を(他の悪魔とこの地獄から)守る

この契約は悪魔側から提案した(時しか契約を破棄できなくした)契約である

悪魔は(地獄における)人間らしい(三大欲求に従った)生活を契約者にさせなければならない』

 

…となる。悪魔は嘘はついていない。ただ、少しばかり狡猾で、情熱のかけ方が違うだけだ。

 

悪魔は少年の血を契約書に垂らし、にっこりと笑いながら言う。

 

「ふむ、では契約成立だ。よろしく頼むよ、旦那様♪」

 

少年は悪魔に押し倒された。

 

 

 

エンド D,H. 狙われた魂、ある種の救済。




書くのが…辛い…!

エンドルートって…

  • 毎話毎の最初に書く。
  • 区切りの良い回で書く。
  • 作者の都合に合わせる。
  • そんなことより投稿しろ。
  • そもそもいらない。
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