鉄 壁 メ ス ガ キ 系 ヒ ー ロ ー   作:守られる偽物

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ドングリはいずこ…
そういえば今まで不明だったノアの武器名が判明。名は『メタルココン』直訳すると"金属の繭"…的な意味だそうです


中途半端な決着

 

『さあさあ、いよいよトーナメントも大詰め!! 準決勝第一試合はこいつらだ!! 今回も激戦が繰り広げられそうな対戦カード!! お互いの実力はトップクラスの最強対決だ! ヒーロー科轟 焦凍!!対ッ!! 同じくヒーロー科 ノア!!』

 

ゲートをくぐり、私はリングへとゆっくり歩いていく。リングの中央で轟と向かい合って、私は一つだけ質問をする。これは轟の覚悟に対する問いで、私のわがままだ。轟の答え次第では、観客からすれば非常に舐め腐った傲慢な行為を私はすることになるけど……そんなの知ったこっちゃないね。千の非難が飛んでこようが私はそれを貫き通すだけ。

 

「轟…今からは私は、私の意思でわがままな質問をする。お願いだから誠心誠意答えてね? ……お前は私の試合で、そっち(左の炎)を使うつもりはある?」

 

「…………」

 

私の質問に、轟は沈黙と深く悩むような顔で答える。どんな答えが返ってくるのかなら薄々分かっていた。多分緑谷に対して炎を使ったのは、ほとんど衝動的なものだったんだろうね。人の信念っていうのは、きっかけが来てもたかだか数十分で変わらない。緑谷の時みたいに強く突き動かされでもしない限りは、少なくともこの試合で轟は半分だけで戦うだろうなぁ。

 

「……うん、分かった。私だって別に強要するつもりはないから、嫌なら使わなくてもいい……でも、そっちだけわがままを通されるのは不公平だと思わない?」

 

「……どういうことだ?」

 

よし、ちょっと不安な所もあったけど食いついた。全く、これで無視とかしてきたら大損どころじゃなかったよ……

 

「簡単な話だよ。私はお前のわがままを通してやるから…お前は対価として、私のわがままを通せってワケ。ドゥーユーアンダースタン?」

 

「…聞かせてくれ」

 

「……その答えは肯定…って事でいいんだね? で、私のわがままは他の奴…特にどこぞのナンバーツーには、この試合の結果にケチをつけられたくない。お前は轟が半分のチカラで戦ったから勝ったとか、本調子じゃなかったからとか…とにかく、ハッキリと白黒つけたいの。だから……私も全力を出さずに半分のチカラで戦う。お前が中途半端なチカラで戦う限り、あやふやな決着ばかりになると、私は思ってる」

 

私は片方の盾をミッドナイトの方に近づけて、すべての機能を停止させる。浮遊も、バリアも、エネルギー弾も、何もかも使えない状態だ。再起動も時間がかかる捨て方を見て、審判の先生達も私の意図を察したのか、小さく頷いてくれた。

 

「これでもまだまだ矛盾だらけな、妥協に妥協を重ねたモノだけど……この試合だけは!! お前が半分で戦うように、私も全力を出さずに半分だけで戦う。このノア様が! 全力を出さずに戦うお前のその誓いが!! 傲慢な行為が!! プライドが!! お前みたいな思い上がりヤローには、到底不相応なものだって直々に理解(わか)らせてあげる」

 

周囲からすれば傲慢ここに極まれり! なんだろうけど……轟なんて最初っから同じ事をしてるんだし、私怨混じりでもこれくらいは許されるべきでしょ。

 

「…………それでも、俺は勝つ」

 

互いに構えをとったのを見たミッドナイトが実況席に手を振って合図を送ると、律儀に待ってくれたマイクお兄ちゃんもいつもの勢いで開始を告げる。

 

『おっ! 話し合いは終わったか!? それならいってみよぉぉぉ!!! Ready…FIGHTッ!!』

 

私は立ったまま轟の攻撃を待つ。轟は案の定と言うべきか、右手を床につけるようにかざして、リングの全てを覆い尽くす程の範囲で床を氷結させる。単純故に絶大な効果範囲。でもその分精彩を欠くやり方だ。

どれだけ範囲が広くても私の盾が張るバリアの前では意味をなさない。攻撃は対象に当たることではじめて意味があるんだ。

轟の扱う氷結は『必ず』氷結の発生地点から伸ばすようにしか広げられない。氷結が進む途中に壁があれば、すり抜けずに壁を沿って氷結が広がる。だからバリアでの遮断は容易、その上今みたいな指向性も無い撃ち方じゃ、発生地点から遠ければ遠いほど氷結の広がり方が大雑把になっていく。

 

「効かないのは分かってても全力で撃つ、か……そりゃやらないよりはマシだろうけど、こんな雑な撃ち方はよろしくないと思うなぁ〜? ほら、薄くて簡単に割れちゃった」

 

「チッ、あっさり踏み抜くとはな……」

 

バリアフィールドに使っている力場を勢いよく動かせば、邪魔な氷も簡単に砕ける。足床の氷も軽く踏み込むだけでヒビが入って元のコンクリ床が露出して元通り。ある程度移動の阻害も狙っていたんだろうけど、私のような重たい敵に対しては流石に範囲を無駄に広げすぎだ。

私がエネルギー弾を放てば向こうは氷の壁を作って防ぐ。確かに盾として使う事は間違いじゃない。確かに避けられない場面なら、むしろ正解に限りなく近い行動……でも、もう少し工夫が必要だよ?

 

「この際はっきり言っちゃう。お前は個性に頼りすぎ。確かに私はたとえ棒立ちでいようが、この盾ならあらゆる攻撃を防ぎ、敵だけを傷つけられると信じてる。でも同時に疑ってもいる」

 

「くっ……」

 

氷の盾で死角の生まれた轟へパワーにものを言わせタックルを仕掛ける。轟は氷結で複数の壁を作って止めようとするけど、あっさり砕かれていく壁を見て氷の道を作って急加速、離脱を試みてきた。甘い、甘いよ。

私は前に展開した盾をピッタリと静止させ、床に手を置いて本体(ボディ)を半回転。盾を壁代わりに蹴り上がる。跳躍方向はもちろん轟の回避先。

 

「確かに個性は"できる"を増やす」

 

氷床による疑似加速ではコンクリートを走る時とは比較にならない程ブレーキがかからない。私の直線による突撃によって止まるという選択肢が潰れた以上、次にしてくるのは方向転換による逸らし。それも3次元的なもの。

先読みというのは、敵の選択肢を極限まで潰すことで真価を発揮する。案の定轟は上方向への逃げを選んだ。突撃の勢いそのままにムーンサルトキックで傾斜部分を蹴り砕けば、氷の橋は支えを失って、誰にも制御不能の回転板切れになる。

 

「でも今のお前はむしろ"できる"を自分から潰している。頼らないことを知らないみたいだね?」

 

戻ってきた盾で、想定外の着地で隙だらけになるだろう轟を狙おうとするけど、予想と違って轟は足から着地して私のエネルギー弾を横っ飛びに避けた。

チッ……着地の隙を狙うつもりだったけど、上手いこと地に足をつけられたか。随分と悪運が良いなぁ。

轟の口から白い息が吐かれて、あまりにも分かりやすく向こうの限界を知らせる。苦し紛れに氷結を飛ばしてきたけど、盾が無傷のまま弾き飛ばす。

 

「轟。お前がどうして右側(氷結)に"執着"したかなんて、私は一切合切知らないし、別に知りたいとも思わない。興味ないしね。……でもね、私はお前のやり方がどうしようもないくらいムカつくの」

 

「ハァ…ハァ…ムカつく……だと?」

 

膝をつき息を切らしながら轟がこっちを睨んでくる。私は怒りや困惑が入り交じったその視線にあえて冷たく目を合わせて話を続ける。主観的にも客観的にも、戦闘中に説教まがいの行動してるからね、私。

 

「そうだよ。私は頑張りさえすれば中途半端なチカラで勝てると思っているお前がムカつく。中途半端なチカラで誰かを救おうとしてるお前がムカつく。特にっっ!!!! 中途半端なチカラでやり続けても、何かを成し遂げられると思っているお前がムカつく!!!」

 

轟はまだ私を睨み続けている。でもその目は明らかに更なる迷いで揺らいでいる。

……あー!! こいつを見てると、なんだかヤな事まで思い出してきてイライラする。理性的な思考が感情的なものに塗りつぶされてきている。

……よし、私がまともでいられるうちに終わらせてしまおう。

 

「この一発でぶっ飛ばしてあげる。全く……このノア様の全力なんて、中途半端なお前にはもったいないくらいだよ」

 

骨の一つや二つ折ってしまおうが知らない。私は盾を背にまわして轟の顔面に、一切の加減を込めないままの拳を─────

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「焦凍ッッッ!!!!」

 

ノアが怒り任せに殴ろうとしてくる。いつものような人を小馬鹿にするような笑みも、怪我はしないように配慮する優しさも何も無い、慈悲にも思えちまう拳。それが振り上げられた瞬間、俺は初めて見た。

顔を見るのも忌々しい、俺の母さんを傷付けたクソ親父が、俺の名前を叫んでいた。

……なんだ、その顔は。俺は知らないぞ……!! なんで、母さんにそれが向けられなかったんだよ……!!!!

なんで、よりにもよってクソ親父が……家族を道具同然に見ていたクソ野郎が!!! 俺たちを想ってくれていた母さんと同じ顔をしてるんだ……!!!

気付けば、俺は声かどうかも分からない叫びと共に、また左側(クソ親父の力)を使っていた。

緑谷の時よりかはずっと小規模な爆発で生まれた煙が晴れていく。

……俺はリングの外にぶっ飛ばされて場外。リングのど真ん中で、ムスッとした顔のノアが無傷のまま立っていた。目を凝らしてようやく見える位小さな煤が数箇所ついている程度で、本当にアレを食らったのか疑っちまう。あの爆発はあいつにとっても不意打ち同然だったはずなんだけどな……。

 

「…轟君場外ッ!! ノアさん決勝戦進出ーーー!!!」

 

盾をいつも通りの数に戻したノアが近づいてくる。……圧倒的な差で負けた上に、感情に任せて約束まで破っちまった。

 

「悪ィな……約束、破っちまった」

 

「遅い!! 誰がどう見ても今更ってタイミングで破る!? ……はぁ。まぁ? 私は慈悲深いからさ。お前の心からした謝罪に免じて、特別に、そう、特別に! 許してあげる。……まったく! 親子揃って、無自覚に私のイラつかせるのが得意なんだから」

 

ノアはフンと鼻を鳴らして、動けない俺を俵担ぎで運んで担架に乗せた。

……身体中が痛ぇ。この後俺は指1本動かせないまま保健室でリカバリーガールにこってり絞られた。

 

 


 

轟を救護ロボに放り込んだ後、私は控え室で盾のメンテナンスをしている。あの程度の爆発なら必要ないとは分かっていても、手持ち無沙汰な時はついつい盾をいじくってしまう。これに関してはどうやっても治らない癖だ。

どうにかして暇を潰せないかと思いながら不要なメンテナンスを続けていると、不意に足音が近づいてきた。控え室付近は特別な許可でも無ければ生徒以外は通れないから、ここを通ってくる人物なら簡単に絞れる。決勝戦前というタイミングも考えればバクゴー以外の生徒か、お呼びじゃない侵入者のどっちかだろう。もしくは大穴でエンデヴァー。

一応警戒しつつドアが開くのを待つと、予想していた誰でもない。なんとバクゴーだった。

 

「ん? 何でお前がここに……って、こっち2の方か」

 

「……へぇ〜…ふぅ〜ん…………」

 

「オイなんだその目は殺すぞ」

 

「べぇーつにぃー?」

 

私が絶妙にニンマリと笑ってやれば、からかいがいのあるいつも通りの反応が返ってきた。なんだかんだ1番楽しみにしていた相手なんだ。これでバクゴーが調子崩れてたら、ここまで来た意味が無くなっちゃうもん。

 

「ん〜…んじゃバクゴー。決勝戦までちょっと時間あるし、今のうちに言いたいこと言っちゃう?」

 

「奇遇だな。俺もテメェには言いてぇことがあったんだよ」

 

ホント奇遇だよ、奇遇すぎてちょっとブキミかも。

互いに相手の顔へ指を差した後、サムズダウンしつつ首を掻っ切る。

 

「私を貫けるか楽しみにしてるよ、負け犬のバクゴーくん」

「首を洗って待ってろクソガキノア、優勝するのは俺だ」

 

職場体験先は……

  • エンデヴァー
  • ベストジーニスト
  • リューキュウ
  • 相澤先生達による指導ッ!!
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