鉄 壁 メ ス ガ キ 系 ヒ ー ロ ー 作:守られる偽物
私の保護が決まった次の日の夕方。
私は紫色のガラスバイザーを付けた、ちっちゃいおばあちゃんのリカバリーガールに呼ばれて、保健室の頑丈な金属製の椅子に座る。
私は他の人間よりかなり重たい。軽い身体検査をした時、周りがデジタルな機械ばかりな中、アナログな感じの体重計に乗ってみたんだけど、軽く120kgはあったみたい。
驚いてるのを不思議そうに見ていたら、小柄な体格でこの重さは異常なんだって。盾も含めたら350kgはあると思う。あれはガラクタの中でも特に重たく頑丈な金属をガチガチに固めて作ったからね。部品の隙間があってもそれくらいはあるはず。重たいから当然素早く動かせない。だから浮遊機能は特に強化を重点的にしてるんだよね。
「これから詳しい検査をするよ。はい、同意書とペン。よく読んで書きな」
「………うん、怪しい所はなさそうね」
社会とは無縁だった私も、不思議と文字は読める。ガラクタの中には小さなデータチップみたいなのもあって、その中に言語データとかもあったんだと思う。ちゃんと意味も理解できるし、書き順まで分かるんだ。
私はおかしい部分や見落としが無いように何度か読み返して、同意書に『ノア』と片仮名でサインをする。
リカバリーガールに同意書と油性ペンを返して、盾を近くの壁に立てかける。検査には邪魔だし、この人達は私を攻撃しないし、何より敵意みたいなのを全く感じられない。
「それじゃ、検査を始めるよ」
装甲を外して露出させたボディに様々なコードを差し込まれ、コピーされたデータがパソコンに送られ、それが終わったと思ったら様々なスキャン機器を通される。
それらの検査で得られたデータは、頭に重機みたいなものを被ってるパワーローダーのお兄さん(おじさんと呼んだら明らかに落ち込んでたから慌てて呼び方を変えた)がカタカタとキーボードにあれこれ打ち込んでいく事で分かりやすく翻訳される。
……何度か体験したことのあるウイルスやハッキング特有の異物が混じるような感覚はないし、防御プログラムも常に良い物へ変えていってるからそう簡単には乗っ取られない。
「リカバリーガール、こいつの中身やべぇぞ!? 全身が機械なのに、脳だけは人間のものだ!!」
「脳だけ人間のものだって? ……驚いた、本当に脳だけ機械じゃない」
「元々そうだよ。機械のパーツは良い物に置き換えたけどね」
パワーローダーのとリカバリーガールが画面を食い入るように見て驚いてるけど、私は脳を除いて元から機械なんだ。
特に頭周りのパーツは慎重にやっていた。脳を守ってるケースは手をつけてないけど、その周りの装甲は何度も替えている。
ちょっと、なんでそんな悲しむような目で見るのさ。
「こりゃ個性由来じゃねぇ。全部人の手が加わった機械を使ってるんだ……クソッ!!」
「なんで怒るのさ。私は全然気にしてないのに」
パワーローダーが何故か悔しそうに机を叩くけど、私からすれば昔からそうで、当たり前の事でしかない。
……まぁ? 勘違いされるのは癪だから言うけどね?
「……検査は終わりだ。ごくろうさん」
被り物越しにでも分かるくらい暗い顔をするパワーローダーに反して、私は軽い足取りで保健室を出る。全く、気にしすぎだよ。……あの地獄みたいな場所にいたら、そんなのどうでもよくなるのに。
検査の翌日、朝っぱらから私はミイラ男……の中身な相澤に職員室へ呼ばれた。
実は相澤、布大好きなミイラじゃなくて、ただ大怪我してるだけなんだってさ。戦いでも布を使ってたから、私は重度の布好きだと思ってたけど違ったみたい。
それにしても、相澤は顔も包帯だらけなのに随分と前が見えるんだね?不思議でならないよ……。
「───おい、聞いてるのかノア」
「ふえっ!? ごめんごめん、ちょっと考え事してた。……で、何だっけ?」
びっくりするなぁもう! ……って、これは聞いてなかった私が悪いか。
2度も言わせるのは失礼な気もするけど、ちゃんともう一度聞いておかないとね。これで聞いてたフリしたら怒りそうだし。
「はぁ……これからは気をつけろよ? んじゃもう一度説明するぞ。今日からお前は俺の担当している1年A組に在籍してもらう」
「ふーん……」
いまいち実感が湧かない。いきなりその1年A組とやらに在籍しろ言われても……いや、相澤が面倒くさそうな雰囲気出してる。
「校長が言うには、俺のクラスが最適なんだとよ。それと、お前の言う子供達も俺のクラスにいるぞ」
「へぇ…ま、退屈はしなさそうだね」
もしかしたら、楽しい毎日になるかもしれないね。でも……いきなりすぎない?