鉄 壁 メ ス ガ キ 系 ヒ ー ロ ー 作:守られる偽物
努力不足じゃ私に勝てないよ?
午後のヒーロー基礎学とヒーロー情報学も終えて、私はバクゴーとの約束通り指定されたグラウンドへ向かおうとした。
それでドアを開けてみれば…人、人、人……多くない? いつからここは博物館になったんだか。
「ちょっと、通れないんだけど?」
私の言葉は聞こえなかったのかな? ……いや、こっちを見ているから聞こえているよね? もし本当に聞こえてなかったら、こいつらは揃いも揃って難聴になる。
こいつら、バリアフィールドで押し返してもいいかな。普通に進路妨害だし、何より私を小馬鹿にするみたいにジロジロと見てきて不愉快だ。
後ろのドアで帰ろうと思ったけど、向こうでもみんな立ち止まってるから、状況は同じなんだろうね。
「敵情視察だろザコ。意味ねぇからどけモブども」
私が盾のバリア機能をONにしようとしたら、バクゴーが罵倒混じりに無理矢理出ようとした…けど、目の隈が酷い男の子に立ち塞がれた。
「ヒーロー科にいるやつってみんなこんななのかい? ちょっと幻滅しちゃうなあ……知ってる? 体育祭のリザルトの話。結果によってはヒーロー科編入も検討してくれるって話を」
夜中に色々調べたんだけど、ヒーロー科ってのは入試で毎度実技をやるんだって。
授業内容を見る限り、雄英は勉強も出来ないとダメっぽいからね。でもここにいるってことは、筆記は出来たけど実技で落ちちゃった感じなのかな? なら悪いのは……お前だね。
「ふーん…でもさ、ヒーロー科に落ちたのならただの努力不足って事なんじゃない?」
「努力不足だと……?」
私のありがた〜い助言に、隈男くんは信じられないような目で見てきた。私としては正しい事を言っているつもりなんだけどなぁ〜?
「そう。過酷な競走から生き延びる為には、血反吐を吐くような努力をしなくちゃいけないの。それなのに努力を怠ったお前が誰よりも悪いでしょ? 見れば分かるよ。中途半端にしか鍛え上げられていない身体が何よりの証拠。それなのに下克上を狙うなんて、随分と相手を舐めてない? それとも現実の実力差も見れないのかな? そんな気持ちで狙ってるなら永遠に無理だよ〜」
「っ……言うじゃないか。でも悪いけど、俺は宣戦布告しに来たんだよ。調子乗ってると足元掬っちゃうぞ……ってさ」
宣言通り掬えるといいね。まぁ? このノア様がいる限り下克上なんてありえないけどね? 一応注意はしておこう。
今度こそ教室を出ようと思ったら、次は銀髪の荒々しい奴が出てきた。いつになったら私はグラウンドに行けるのかな?
「隣のB組のモンだけどよぅ!! ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!! エラく調子づいちゃってんなオイ!! 本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」
「あっそ。強いから関係ないよね。んじゃバクゴー、チャチャッとどっちが上なのか分からせてあげる」
「引っ張んな盾女ァ! 俺は普通に歩けるわ殺すぞッ!!」
もう面倒くさいや。私はバリアフィールドを起動して、バクゴーのワイシャツを引っ張りながら強引に教室の外へ出る。
誰かさんの非難なんて聞こえないよーだ。無視して引っ張っちゃうもんねー!
「俺が危険だと判断したらその時点で止めるからな?」
トサカみたいな髪と首のスピーカーが印象的なプレゼント・マイクのお兄ちゃん監督のもと、私とバクゴーがグラウンドの中央で対面する。
マイクお兄ちゃんは心配そうに見るけど、伊達や酔狂で最強の盾は名乗ってないよ。
「大丈夫よ! そもそも私が危険になるほどバクゴーに火力無いだろうからね! いひひ!」
「んだとコラ! てめぇの盾なんざすぐに吹き飛ばしてやるわ!!」
私が提示した勝負方法は至って単純。バクゴーは3分以内に私の身体に触れられたら勝ち。私は逆に3分間耐えたら勝ち。ただし…私は攻撃を避けるのはいいけど、ひたすら逃げるのは禁止。まぁ禁止してなくても逃走なんてやらないけどね? 最強の盾が逃げるわけないじゃない。
細かいルールこれくらい。あれこれルールを加えるよりも、シンプルな方が分かりやすく力の差を見せつけやすいし、バクゴーも了承した。
「それじゃ、始めよっか。どこからでも来ていいよ? 全部受け止めてあげる」
私を中心に盾をクルクルと回らせて、どこから来ても守れるのだとアピールする。それに対してバクゴーは好戦的な笑みを浮かべて、掌で爆発を起こしてその反動で突っ込んできた。シンプルだけど、だからこそ相手からすれば厄介な加速方法だろうね。ま、私は関係ないけど。
バクゴーは盾を避けるように腕を差し込もうとするけど、バリアフィールドで簡単に阻めてしまう。この調子が続きそうなら、私は棒立ちでいいかも?
「チッ……バリアか」
「あれあれ? 盾を壊すどころか、そもそもさわれてないじゃん。あ! もしかして、みんなの前だからって見栄張っちゃってた? だっさぁ〜!」
「……」
私の挑発を無視して、血管を浮き立たせながらバクゴーはもう一度攻める。今までと違って黙ってる辺り抑えてるつもりなんだろうけど、頭に来ているのはバレバレだよー。
……あれ、どの攻撃も違う場所を狙ってる……? あ、そういう事か。バクゴーの奴、バリアの無い部分を探してるんだ。キレてる割には冷静な判断が出来てるね。
確かにバリアには呼吸の為にいくつか穴を開けてある。でも盾が動くだけで、その穴も連動して動くの。だからバクゴーと盾を向かい合わせるだけで永遠に攻撃は通らない。バリアで防ぐだけなら熱もそこまで通らないし、3分耐えるだけならエネルギー弾を撃たなくていいし排熱も不要。これじゃ私の勝ちが確定してるようなもの。あーあ、ちょっとは期待してたのにつまんない。よし、退屈だし煽っちゃおう。
「殴れないね? 触れないね? 近づけないね? あれだけ大見得切ってこの程度? ほらほら、私はまだ1歩も動いてないよー? 力の差が明らかになっちゃったね?」
「黙れや! 口と盾しか動かせないのかテメェはよォ! 車椅子用意してやらぁ!」
バクゴーは爆発のラッシュを浴びせながら罵倒してくる。車椅子を用意してくれるそうだ。会ってすぐの私の老後を心配してくれるなんて優しいね。でも死ぬまで最強の盾を引退するのは、万に1つもありえないとは思うけど? もし、もし私を超える逸材が現れるのなら、それはまだまだずーーーーっと先の話だろうね。少なくともこのへっぽこ爆発じゃ先は遠いね〜。
「あーあ、もう2分は経ったんじゃない? あ、爆風で時計も見えないか〜! ごめんね〜? 時間切れになったらちゃんと教えてあげるから!」
「その前に突破するから不要だ殺すぞ!」
私の挑発に反応しつつもしっかり空気穴付近を狙ってる辺り、冷静に物事を見れてるよね。まぁバクゴーが空気穴に腕を通すよりも、私の盾が速くバクゴーの正面を向くんだけどね。私の守りを突破して触るには、最低でも盾の旋回を超えるだけの瞬間的な加速力か、黒ダルマみたいにバリアを強引に突き破れるだけのパワーが必須。けどバクゴーはそのどちらも持っていないから、絶対に突破できないってワケ。
「3分経ったぞーーーー!!!」
そんなこんなで3分経って、私の完全勝利が確定した。これは
私は盾の堅牢さに信頼はしているけど、慢心はしていない。最初のうちは何度もガラクタに盾を貫かれた。今回は無敵の活躍をしたバリアだって、あの時の黒ダルマは何事もなく突破してきている。
なら、私を強くするしかないよね。
「……ノア」
「あ、やっと名前で呼んでくれたね。偉大なると様が足りないけど、とりあえず今は許してあげる。で、どうしたの?」
バクゴーはこっちを睨んで…いや、ただ目付きが悪いだけだこいつ。普通に見ているつもりなんだろうね。バクゴーは私を見ながら、額に指を突きつけてきて宣言してきた。
「次は負けねぇ」
「ひひっ! 勝てるといいね。まぁ? バリアも突破できない努力不足の雑魚のようじゃ、私に勝つなんて到底無理だと思うけどね〜」
「言ってろ。すぐに抜かしたるわ」
この私に宣戦布告してくるなんて、随分と上昇志向が高いみたいだね? ……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ! 期待はしておこうかな。
「むむむ……」
その日の夜。与えられた仮の自室にて、私は腕を組みながら盾の前で唸る。
私はサポート科で余ったスクラップを譲ってもらい、様々な機能を追加していった。
一昨日と今日の戦いで、まだまだ未熟だと思い知らされた。落ちてきた鉄骨すら防いでくれるバリアを突破してきた黒ダルマに、圧倒的なセンスでこちらに肉薄してくるバクゴー。大幅な強化は急務だ。今に満足しちゃいけない。
「やっぱり排熱効率が課題だなぁ……」
盾は内側を更に頑丈な素材に置き換えていってる。表面は少し柔らかい方が衝撃を逃がしてくれるからそのまま。ただ、あれこれ盛り込み過ぎた結果、エネルギー弾を撃った後の排熱が問題になった。一時的なものとはいえ、盾の強度が落ちてしまうのは無視したくない。万が一、盾の排熱が間に合わずオーバーヒートしようものなら、ほとんどの機能がダウンしてしまう。……いつかはその時の対策もしないとね。
「……強制排熱機構も視野に入れないとなぁ」
盾に搭載された射撃パーツ周辺に、排熱装置を取り付けてみる。普段は装甲で守って、射撃直後に行われる排熱時にだけ装甲が可動する仕組みだ。
……正直、この方法は私好みじゃない。瞬間的にとはいえ弱点を晒すなんて馬鹿馬鹿しい。……でも、これしか方法が思いつかない。今は妥協するしかないか……
「……寝よ」
これはドツボにハマっているかもしれない。こういうスランプな時は、さっさと眠るに限る。シャワーも浴びることはあるけど…慣れていないせいか、あれはあまり落ち着かない。
私はスクラップを箱にしまいつつ、布団に潜り込んで次の日の自分に託した。
翌日。私は教室に入って早速バクゴーに挨拶をする。
「おはようバクゴー。随分と不機嫌そうだね?」
「ケッ…誰のせいだと思ってんだ? …………おはよう」
あれ、昨日と違って噛み付いたりはしないね。力の差にビビった……訳ではなさそうだね。どっちかと言えば私を強者だと認めてくれた感じかな?
「か、かっちゃんが普通に挨拶したーーー!!??」
「どういう意味だコラ! 殺すぞデク!!」
なんかモジャモジャ頭のデクとやらにブチ切れてるね。沸点低いのに冷静……でもバクゴーに限っては矛盾してなさそうだね。にしても……バクゴーは挨拶も出来ないんだぁ……ふひひっ!
「あれあれ? バクゴーはちゃんとした挨拶も出来ないのかな? あ、恥ずかしくて言えないのかー! ……ごめんね?」
「んなもんできるわ! 完璧な挨拶だぞ見てろや! おはよう切島ァ!!」
「うおっ!? 朝から元気だな爆豪! おはよう!!」
赤髪の子は切島って名前なんだ。ちゃんと覚えとこう。そういえば切島はバクゴーと仲良いのかな?
「おはようクソメガネ!!」
「メガネはともかくクソは余計だぞ爆豪君! しかし挨拶は大事だな! おはよう!」
なるほど、メガネを付けてるこいつの名前はメガネなんだ。……って、メガネがメガネ付けてるってこと? 随分とややこしいことしてるなぁ。コンタクトレンズにすればいいのに。
「おはよう、メガネ!」
「ノア君!? 俺の名前はメガネではなく飯田 天哉だ! 爆豪君は基本的にあだ名で呼ぶから、彼の呼び方は本名ではないぞ!」
あ、名前メガネじゃないんだ。飯田なんだね。というかバクゴーはあだ名で呼ぶんだ。あ、だから私の事盾女って呼んでたのか!
「それじゃ飯田、おはよう!」
「ちゃんと名前で呼んでくれてありがとうノア君! おはよう!」
私はちゃんと名前でおはようをし直して席に着く。こりゃ、思っていたよりずーーっと楽しい毎日が送れそうだね。