鉄 壁 メ ス ガ キ 系 ヒ ー ロ ー   作:守られる偽物

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大胆だね?

そして二週間後の雄英体育祭当日。控え室で私達生徒はジャージを着て待機していた。最初はジャージを着ているだけでも変な感じがして慣れなかったけど、2週間もすれば違和感は無くなったね。

 

「皆準備は出来てるか? もうじき入場だ!!」

 

「コスチューム着たかったなー」

 

「公平を期すため着用不可なんだってよ」

 

飯田が注意を促す中、みんな思い思いの行動を取っていた。私は盾から送られてくる自己診断報告を見て、不具合が無いのを確認する。うん、異常なしだね!

ここ2週間で私もA組に馴染めた。やっぱり挨拶って大事だね。あれ以降、時々生暖かい視線があるような気もするけど……まぁいいや。

盾の軽いメンテナンスも終えた時、突然轟が緑谷に話しかけた。まだ2週間しか経っていないとはいえ、初めて見る組み合わせだ。

 

「緑谷。客観的に見ても、実力なら俺の方が上だと思ってる」

 

「へえっ!? う、うん……」

 

まぁ紛れもない事実だね。2人の個性は映像越しに知っている。衝撃波でビルをも粉砕する超パワーをコントロール不足で自傷しちゃう緑谷と、大規模に氷と炎を出せてそれをコントロールできている轟。どちらも高火力を出せるのなら、無傷でコントロール出来ている方が強いのは明らかだよね? ひたすら耐えさえすれば緑谷は自滅しちゃうしね。……ま、コントロール出来るならあのパワーは脅威だけどね。

 

「お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな。 別にそこ詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってるのかは…分かんないけど……そりゃ君の方が上だよ。実力じゃ大半の人に敵わないと思う…客観的に見ても……」

 

「緑谷もそーゆーネガティブなこと言わねぇ方が……」

 

本人が言ってる通り、緑谷が弱っちいのは紛れもない事実。……あの超パワーは下克上には向いてるけどね? それだけだ。まともに戦えば手足を折ってしまう木偶の坊が完成しちゃう……そんな致命的すぎる欠陥を抱えてるようじゃダメ。

切島が止めようとするけど、緑谷は何かを決意したように轟の方を向く。

 

「でも……!! 皆……他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れを取るわけにはいかないんだ。だから、僕も本気で獲りに行く!」

 

「……おぉ」

 

大胆に宣言した緑谷の目に迷いはなかった。でも、ひとつ大事な事を忘れてるね? 勝利するのはこのノア様だって事を。

 

「って、このノア様を忘れてもらったら困るよ? だって、1位を獲るのは私なんだから!」

 

「ノア…もちろん、お前にも負けねぇ」

 

へぇ…中途半端な君がこの私に勝てるかな?

なんでかは知らないけど、轟は滅多に炎を扱わない。せいぜいが氷を溶かす時くらいだ。 氷だけならバリアだけで十分。同時に炎も扱われたら盾で受け切るのも視野に入るだろうけど、使わないのなら絶対に火力不足で私を攻めきれない。

どっちみち、私は手抜きに負けるような強化の仕方はしていないんだよ。君にだけは、私が負ける光景が見えないね。

 

「皆、そろそろ時間だ!スムーズに入場できるよう、整列しておこう!!」

 

飯田は相変わらず真面目だね。ま、そこが美徳っていうか……

もちろん、私だってちゃんと整列するよ? 怒られるのは嫌だし。

 

─────────

───────

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!? ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えたルーキー!! ヒーロー科!! 1年!! A組だろおお!?』

 

マイクお兄ちゃん、いつになく気合い入ってるね。いつもより声が大きく思えるのは気の所為じゃなさそう。

 

「わあああ…人がすんごい…」

 

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…!これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな……」

 

「めっちゃ持ち上げられてんな……なんか緊張すんな爆豪!」

 

「しねえよただただアガるわ」

 

みんな興奮を抑えられてないね? バクゴーまで珍しくニヤリと笑ってる。

過去に行われた雄英体育祭の映像は幾つか見たけど、どれも人気になるくらいには白熱していた。テレビ放送もされてるらしいから、憧れの面も強いんだろうね。

 

「では!選手宣誓!選手代表!1﹣A爆豪勝己!」

 

他のクラスも入場して、私達生徒が中央で整列する。それを確認した今年の体育祭の1年ステージを担当する、うっすいヒーロースーツを身にまとった先生、18禁ヒーローのミッドナイトが選手宣誓を宣言してバクゴーを指名した。

 

「え〜〜〜かっちゃんなの!?」

 

「バクゴーは口悪いけど…その代わり成績優秀、センス抜群だからね。当然じゃないかな? 入試も1位なんでしょ?」

 

緑谷がすごく驚いてるけど、私からすれば納得の指名だね。……ちょっと。なんで私をの方を見るのさ。今から選手宣誓するバクゴーの方を見なよ。

 

「あのノアが他人を褒めてるだと……!?」

 

よし、アホの上鳴は後で直接ぶっ飛ばそう。私は弱っちい奴をバカにすることはあっても、認めた奴はちゃんと見ている。 バクゴーは私に追いつきかねない逸材だ。すぐに並んでくる相手をちゃんと見ない訳にはいかないもの!

すると、隣にいる普通科の奴が付け加えてきた。

 

「ヒーロー科の入試、な」

 

……あ? 今こいつ、雑魚の分際で何言った? くだらないプライドでバクゴーをバカにした? ……他人事のはずなのに、なんだか許せない。

 

「おい、そこのお前」

 

「な、なんだよ……」

 

私は吐き捨てるように、とても冷たい声で話しかける。バカにするのもいい加減にしろよ雑魚。私はこんなのを相手するためにここに立ってる訳じゃないんだよ。

 

「言っていい事と悪いことの区別もつかないの? そんな頭の足りないバカはさっさと消え失せろ」

 

私はサムズダウンしながら言いたい事を言って、さっさとバクゴーの方を向く。普通科の奴らは露骨に睨んできたけど、そんなの気にするもんか。

そんな事をしていたら、バクゴーがポケットに手を入れながら壇上に上がり、マイクを起動して気怠そうに宣言した。

 

『せんせー、俺が1位になる』

 

「「「絶対やると思った!!」」」

 

思わずA組の意見が揃った。普段は我の強さでバラバラな意見を出すことが多いA組だけど、たまに意見が謎の一致をするんだよね。

ま、バクゴーらしいかな? この私に勝てていないのに、まさかそんな大胆な宣言をするとはね。そうまでして自分を追い込むなんて、随分と本気(マジ)なんだね?

 

「調子乗んなよA組コラァ!!」

 

「何故品位を貶めるような事をするんだ!!」

 

「ヘドロヤロー!」

 

「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」

 

「どんだけ自信過剰だよ!! この俺が潰したるわ!!」

 

案の定というか、A組の1部も含めた殆どのクラスからブーイングが巻き起こる。

でもバクゴーは親指で首を掻っ切るようにして更に挑発する。ありゃ、B組からも非難の声が来ちゃったね。

……あれ、緑谷は気がついてる? あぁ、幼馴染ってやつなんだっけ。付き合いが長いから分かったのか。 ま、私は2週間とちょっとの関係で気がついたけどね、ふふん。

 

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!!」

 

競技説明が始まると同時に、ミッドナイトの後ろにホログラムが投影された。かなり便利っぽいし、後で試しに私のボディにも搭載しようかな?

 

「第一種目はいわゆる予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!!さて運命の第一種目!!今年は……コレ!!!」

 

ミッドナイトのセリフに合わせて、"障害物競争"という文字が大きく表示された。障害物競走か……私が得意でも苦手でもない微妙なのが来たかも。私、特別足が速い訳じゃないんだよねぇ。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km! そして我が校は自由さが売り文句! ウフフフ……コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」

 

ミッドナイトが説明を終えると、早速外へ繋がるゲートが開いた……って、狭くない?明らかに人数に対して広さが足りないんだけど……あ、この時点でもうふるいにかかってるんだ。

 

「さあさあ位置につきまくりなさい……」

 

私はミッドナイトの指示が来ても、あえて前を狙わずに後ろへ陣取る。何故かって?

このゲートには、絶対邪魔されずに通れる場所があるの。……上だ。

ちょうど試してみたい機能もあったし、やるなら今しかないね。

全員がゲート付近に陣取ると、上部に取り付けられたランプが点滅し始める。

 

「さぁ……最強の盾、ノア様の活躍を見ていなさい!」

 

ランプの光が全て消えた瞬間、ミッドナイトが競技の開始を告げる。

私は地面に置いた盾に片方ずつ足を乗せて、取り付けられた金属パーツを靴に噛みつかせる。

 

「スターーーーート!!」

 

押し合うように前の奴らが走る中、私はその上をサーフィンのように飛ぶ。USJで飛んだ時は盾に直接掴まってたけど、手が塞がってたからね。そこを改良した結果がこれってワケ。

下では轟の氷にやられて身動きの取れない奴ばかりだ。こりゃ飛んで正解だったね。

 

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

 

バクゴー達も上手く回避したみたいだね。ここからは直接私を妨害する奴もいるだろうし、盾から降りてそのまま走る。空を飛んでいる時は盾を旋回させられないせいで、かえって危険だからね。空中から強襲できるバクゴーや、その気になれば自傷覚悟で私のバランスを崩せる緑谷と、撃墜される可能性は高い。

それなら妨害手段が増えるリスクを背負ってでも、地上に降りれば動ける盾で確実に防いだ方がいいに決まってる。

 

『さあいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

「うわ、ロボット? かなりいるね」

 

マイクお兄ちゃんの実況とほぼ同時に峰田がぶっ飛ばされたと思えば、奥にロボット軍団が待ち構えていた。

でも、よく見れば随分と脆い金属を使ってるね。ほとんどの接合部もあえて緩く組まれてるし、こんなの簡単に壊せる。

 

「ほらほら、かかっておいで〜。ノア様が1抜けしちゃうぞー?」

 

私は迫り来るロボット達を無視してそのまま走る。追いかける雑魚ロボット達だけど、私はそいつらには目もくれず走り続ける。

 

『標的捕ソッ────』

 

『ブッコロ────』

 

自動迎撃モードをONにして、近づいてきたロボットだけをエネルギー弾で吹き飛ばす。

それでも捌ききれない奴はバリアフィールドで押し返して無視する。他が迎撃のために一瞬立ち止まる中、私は独走状態だ。

 

「うわ、でかっ………って、壊れた? いやいや、いくらなんでも雑魚すぎじゃない?」

 

途中にめちゃくちゃデカいロボットも来たけど、頭にエネルギー弾を当てたら動かなくなった。いくらなんでもボロすぎじゃない?

あ、外側にカメラ付いたロボットがある。手振っとこ。

 

『A組のノア! ロボ相手に1度も立ち止まらず独走状態!! おまけにカメラへ手振る余裕まであるぞぉ!?』

 

『あいつの盾は硬さもそうだが、自動迎撃も強みだからな。あいつからすれば無視して走るのが最適だろうよ』

 

私が独走状態だけど、どうしてもスピードだけは他の奴らの方が上。このまま引き離していきたいけど……って、崖!?

 

『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーール!!!』

 

崖から視線を変えると、広く深い崖にいくつかの狭い足場に、足場同士を繋ぐワイヤーロープがかけられている……でもこれ、私が走ったら、 千切れて落ちちゃう可能性もあるよね? だったらこうだ!

 

「障害なんて飛んじゃえば関係ないよー!」

 

『ノアの奴、今度は盾に掴まって飛んだァァァ!! ホントなんでもありだなあいつの盾! あ、ちなみに盾はノアの個性だからセーフだぜ! サポートアイテムじゃないからそこんとこ注意な!』

 

今度は盾に追加したグリップを握って、片方の盾だけで飛ぶ。案の定、追いついてきた轟やバクゴーからの妨害が来た。でもフリーになってる盾がバリアフィールドを展開して攻撃を防ぐ。

 

「こうなると思って片方残しておいたんだ! 攻めれないね? 当たらないね? 悔しい? ねぇ悔しい? ひひっ!」

 

「チッ……」

 

「クソが!」

 

頑張って殴ってみれば? 後ちょっとで当たりそうなのに当たらないのはムカつくでしょう? でもそれが現実なのさ。恨みたければ努力を怠った自分を恨むんだね〜!

 

『先頭が一抜けて下は団子状態!! 上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずに突き進め!! そして早くも最終関門!! かくしてその実態は───…一面地雷源!! 怒りのアフガンだ!! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚酷使しろ!! ちなみに地雷の威力は大したことねぇが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』

 

「チッ……」

 

私は1番面倒な障害物が来たことに舌打ちする。

よりにもよって地雷か……地上じゃ下側にバリアを上手く張れない。踏み込みやバランスへ強く影響するからね。かと言ってこのまま空を飛んでいても、バクゴーの方がスピードは上。追いつかれるのは明らか。

私が何か利用できないかと思い周囲を見ると……いた。後ろにいる緑谷がロボの装甲板を抱えながら何かしている。……あれは、地雷を掘って集めてる?

 

「……あれね!」

 

「あ? 勝負放棄かよノア……ッ!!」

 

私は盾を急減速させてそのまま緑谷の方へ突っ込む。

バクゴーは空を飛びながらこっちを見ているけど、すぐに私の意図に気がついたのかどんどん加速を早めていく。でも、そんな事をすれば……

 

「行かせるか……!」

 

轟が氷で妨害してくる。互いに邪魔し合う事でスピードが落ちて私としては好都合。他の奴らも地雷を慎重に避けてるせいか進みが遅い。

 

「緑谷! 手を組みましょう?」

 

「ノ、ノアさん!?」

 

私は緑谷の肩を掴み、装甲板をぶんどって盾を掴ませる。困惑する緑谷だけど、今からするのは私にも緑谷にもメリットがある。

 

「私が特別に、そう、特別に今回は守ってあげる。だから思いっきりぶっ飛びなさい!」

 

「ノアさん……分かった!」

 

私は緑谷の背に跨り、緑谷の体に自分の腕を回した。

 

「ふえっ!? 「ほら行くよ!」う、うん!」

 

何故か顔を赤くしながらあたふたした緑谷だけど、私の声で我に返って、そのまま衝撃に備える。

地雷を大量に埋めた場所にエネルギー弾を打ち込み、爆風をバリアフィールドで受けて一気に加速する。

 

『後方で大爆発!!? 何だあの威力!? ってA組緑谷とノア、爆風で猛追ーーーー!? つーか!! 抜いたあぁぁぁぁぁー!!!』

 

「来やがったか!」

 

「なっ!?」

 

備えていたせいかすぐに反応したバクゴーと、驚きで一瞬だけ硬直した轟。その差が運命を分けるんだよ?

バクゴーは一気に加速をして逃げ切ろうとするけど、轟は数瞬だけ遅れて、ようやく追う選択をする。

でも、もう遅いよ。追いかける轟の足元に……ドン!

 

「クソっ……」

 

お、ラッキー! 足元にあった地雷が起爆して轟が吹っ飛んだね? それじゃ後は……バクゴーだけだ。

 

「ノア! デク! テメェらのやる事なんざ俺にはお見通しだァ!!!」

 

まずい、少しづつ減速してきた……バクゴーは逆にどんどん加速していってる。 どうにかして追い抜くかバクゴーの加速を止めないと!

って、どうしたの緑谷!? ……正気!?

 

「──ノアさん! 真下に撃って!! ……かっちゃんを抜けるかもしれない!」

 

「…あぁもう! どうなっても知らないからね!?」

 

私は緑谷の指示通りに、真下へ向けてエネルギー弾を撃つ。

するとどうだ。偶然密集していたのか、大量の地雷が起爆して私達だけ再加速した。それと同時に、バクゴーのバランスも崩して加速を落とせた。

……悔しいけど、これは私だけじゃ突破出来なかったね。

更なる加速で吹っ飛んでいる中、私は盾にブレーキをかけつつ緑谷の肩を掴み……ゴール寸前のところで投げ飛ばした。

 

「うわぁっ!?」

 

『誰が予想したぁ!今一番にスタジアムに帰ってきた生徒!緑谷出久とノアの存在を……ぉ…なんで緑谷転がってるんだ? なんでノアは』

 

マイクお兄ちゃんと観客がポカーンとしている中、私はまだ訳が分からないという顔をしている緑谷に近づく。随分と間抜けな表情をしているね?

 

「……ノアさん?」

 

「あの時、私が勝ち取った勝利じゃなくて、お前の判断が得た勝利だから…仕方なく、仕方なく1位はあげる。まぁ? 自力で勝ち取った1位じゃないと私は納得出来ないだけだからね?」

 

私が1位になるのは納得出来ないから、緑谷に譲った。これは私の力が得た勝利じゃなくて、緑谷の力を借りて得た勝利だ。

なら、この競技で頂点を掴むべき人物は分かりきってる。

 

「それにしても緑谷……随分と大胆だね? 地雷に突っ込むなんて馬鹿なこと、命知らずしか出来ないよ?」

 

今ここに、私が認める奴が増えた。




使えるならなんでも使うメスガキ。でも見捨てたりはしないんですよね。
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