イケメン霊媒師によるたった一つの冴えたやり方 作:O•Nホール
「はい、こちら伏黒恵くんでぇす! みんな仲良くね!」
「どうも、その。よろしくお願いします」
生意気そうなガキだな、と。禪院真希は担任に紹介された目の前の少年の第一印象をそう定めた。
五条悟が連れてきた中学三年生。夏のこの時期世間ではオープンスクールの季節だなんだと言っていたが、この都立呪術高等専門学校にそんな制度もイベントもない。来年後輩になるんなら扱いてやる。どこか禪院の血統を感じる顔立ちに謎の苛立ちを覚えながらそう思った。
オープンスクールだと言って五条に、彼の受け持つ生徒のいる此処。来年通うことが決まっている東京都立呪術高等専門学校に連れてこられた。
術式はー、彼女はー、いねえわけねーだろお前どこチューだテメーコラー、すじこー、などなど。学年ごとの人数は元から少ないのか。それとも減ったのか。数人から質問攻めにあう。
術式を答えたら見覚えがあるようでない女の人に滅茶苦茶睨みつけられたし、彼女なんているわけない。好きな女性なら……血のつながらない姉がいるくらいで、いや津美紀を理由にして勘繰られてもアレだからいないと答える。答えたら今度は、その顔で彼女いないわけねーだろおおおん!? と豹変してチンピラみたいな絡み方をしてきたパンダ……パンダ? に面倒くさかったので在学中の学名を素直に答えた。中学聞いてパンダがどうするんだ。大体なんで喋るパンダが高校にいるんだ。
すじこの人もよくわからない。たらこと返したら喜ばれた。説明されてもわからない。なんだ、おにぎりの具で会話するって。術式の影響でも不便すぎる。固有名称にするならもっとなんかあるだろ。
「さて、仲も深まったようだし。校内見学とか授業の見学とか好きにやっちゃって! あとは任せた!」
これで仲良くなったと思うのはお前くらいだエセ教師。
「ちょっと待てや担任! お前ほんといい加減にしろよ!? ちったあ監督責任果たせや! いっつもどこでサボってんだよ!」
「そうだーそうだー! 校長が何で許してるのか知らねーけど実技自主ばっかじゃねーか!」
「高菜!」
薄々わかってはいたがこの人適当すぎる。そして受け持つ生徒も全員キャラが濃い。いや術師なんてそんなものか。乙骨さんに耳塚さんもなんだかんだで濃い。
「ちょっと人聞きが悪いね君たち。しょうがないなあ。実は僕、ある重大な任務を果たしているんだよ。上層部……いや天元様からの命令でね」
……ん? 天元? それって。
「おま、それガチな奴じゃん……」
「こんぶ……」
「それお前じゃなきゃ行けねーのかよ」
「やってることは監視だけど、正直僕でも手に余る相手だよ。負けたし」
「負けた!?」「しお!?」
塩は具材に入るのか。そうか……。
「じゃ、そういうわけだから! ちょっとサボ……偵察に行ってくるね!」
「あ、ちょ……。……え、あの何ですか」
音もなく去っていった高専1年担任教師兼伏黒姉弟の保護者。残された生徒はなにか事情を知ってそうな伏黒恵に詰め寄った。
──数日前。
茹だるような夏真っ盛り。街の中でも盛況な蝉の鳴き声が五月蝿いある日。
「男女比の偏りどうにかなりませんか……」
シヅカが理子を伴い学校の友達と遊びに出た事務所に、憂太が肩身が狭いと嘆願してきた。
「ここにいる男といえば俺と憂太だけ。五条は所詮来客だ。呪霊に困って来る依頼者と一緒だからな……たまには歳の近い男同士つるんで馬鹿をやりたくなる気持ちはわかる」
憂太が選んだことだが呪術に関わっている以上学校では一線引いているところがあるのだろう。呪術が霊が言ってると少ないながらできた友達にもオカルティックなやつだと思われかねない。ただでさえ学校では畏怖されているらしいから今以上に敬遠はされたくない気持ちも理解できる。
「なら……いえ、そうですよね」
「そうだな。以前お前たちを雇った時にも言った気がするが募集してまで人員を増やす必要を感じない。更に言えば万のドア経由で今は交通費も時間のコストも安く済んでいる」
未来の猫型ロボのドアというよりも動く城のドアだが、あれよりは汎用性がある。呪物処理の時全国各地でマーキングしたから最初の労力こそあれど今は便利になった。
さてスクナが信じられないという顔でこちらを見てくるのだが、何だろうか。女としての自覚が足りないなら教える用意はいつでもある。家に続くドアに視線をやると青ざめ首を横に振るスクナ。
「……だがどうした急に。お前には里香がいる。里香に不満があるわけでもない。他の女性を気にはならないだろ」
「それはそうですよ。ただ僕はともかく里香に余裕がなくてですね」
視線を憂太に戻して詳しい話を聞くと、里香の嫉妬が激しく夜が大変とのこと。否、美人ばかりの職場でデレデレする憂太にお仕置きしていると里香に訂正された。むしろ途中から憂太に逆に襲われると。
「里香が!」「憂太の方こそ!」
「惚気か。お熱いことだが程々にしとけよ」
夏の暑さに当てられたバカップルが惚気始めたので聞き流す。スクナとアイコンタクトでイチャついてる自分に返って来るので他所でやれとは言えなかった。
小遣いをやってプールにでも行ってきたらどうかと憂太と里香を送り出した。
「ふん、どうせ好き勝手するのだろう。何を悩む必要があるこの性欲猿」
今日はどうするか考えがまとまる前に痺れを切らしたスクナが拗ねる。若干投げやりに好きにすればいいだろと言っているが期待しているのが見てとれた。
「拗ねても可愛いなお前は」
「ばっ……! 可愛いとか言うなっ……大体俺は男であ、ん……」
つい呟くと口ではそっけなくも喜んでいるスクナの唇を塞いだ。
スクナと一戦交えてかいた汗を流し、髪を拭きながら事務所に戻ると五条が来ていた。
「や、カムイ。ちょっとしたお願いがあるんだけど」
「断る。お前のその頼み方は碌でもなさそうだ。正式な依頼にしてもふっかけるからな」
「まあまあそう言わずに。今度良いものあげるからさ。……で、相談なんだけど。んん。……ちょっとぉうちの子なんですけど、預かって貰えませんかあ?」
はーなんなんお前キッショ。誰の真似かは知らないがせめて人間やめてからにしろ。
結局預かることになってしまったが、五条の隠し子かと思いきや他所の息子らしい。理子を殺した男の忘れ形見と言うべきか、それとも殺した五条に押し付けられた男からの呪いか。
呪術の才能あるから見てやってよ、と。連れてこられたちょっと擦れてそうな男子。というか万が闖入していた伏黒津美紀の弟だ。
「伏黒恵です。先日は姉がお世話になりました。……その、つまらないものですが」
そっと差し出してくる菓子折り。少し無愛想だが行儀が良い。保護者もこれくらい気を遣え。
「ご丁寧にどうも。カムイとでも気安く呼んでくれ。姉は元気か?」
「はい。お陰様で。……元気すぎて困るぐらいです」
ぼやく割には嬉しそうだ。
「なら良かった。さて早速だが出かけるぞ。まだ術式を十全に使えていないそうだからな」
「は、はあ……あの、そのドア出口じゃ……え」
明らかにドアの先に広がってないだろう空間に驚いている。この程度で驚いていると先が思いやられるな。
ちょうど据え置きのゲームを遊びに天元が家に来ていたので声をかけて、広めの場所に新しく張れるようなった丈夫な結界を用意してもらう。
五条から聞いている伏黒恵の術式は十種影法術。どっかの有名な術師の大家相伝の術式で、その家から出奔したのが今は亡き彼の父親。術式があるとわかって、実態が知れないうちから恵の術式を求めてウン億という金が動いたとかいないとか。
死んだ親父は呪力が一切無く、身体能力が異次元で殺されかけたというか一回殺された、と殺し合いをしたらしい五条がぼやいていた。
術式の詳細はその名の通り10種の影を媒介にした式神が使える。最初から使える玉犬2種以外は調伏が必要で、今使役しているのは玉犬含め6種。残る4種の内3種は実力不足故に。もう1種は奥の手かつ禁じ手の自爆技だと恵は認識しているらしいが、調伏できれば五条すら超えられる潜在能力がある。
「とりあえず貫牛と円鹿だったか。出してみろ。五条から聞いてるが俺の方で倒し方は見極める」
「マジですか? 1体ならともかく消耗激しすぎて多分呼び出すと気絶しますけど。あと2対同時に相手するのは流石に無理なんじゃ……」
「それも聞いている。天元の結界は丈夫だ。それに俺は五条より強いらしいからな。意識のないお前1人守るくらい容易だ」
実感湧かないけど。
緊張した面持ちで2体を呼び出した恵は、呪力の消耗で気を失う間際。ありうべからざる人型を見た気がした。
津美紀が起きたので伏黒姉弟2人暮らし続行中。五条家の護衛つき。
十種影法術は玉犬で2種換算。ので作中で全種既に開示済みということで1つ。万象の調伏は高専入学後を確認。それ以外で出てきた玉犬2種と脱兎、鵺、大蛇、蝦蟇は入学以前に調伏済み(独自設定)でよろしく。
X指定版は
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いる(真顔)
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書いて♡ 書け(豹変)