イケメン霊媒師によるたった一つの冴えたやり方 作:O•Nホール
賛否はあると思うけど大量殺人者の人殺しでも夏油は生存の方向で。
作中でも触れるけど死ぬだけじゃ生ぬるいので。あとメロンパンの付け入る隙は一切合切無くす。
──十種影法術の4種を調伏をした次の夜。
ある人物からの連絡に深夜に起こされ事務所から招き入れる。
「すまないね。こんな時間に」
「まったくだ。子供が上で寝ているから静かに入れ」
「……ああ」
シヅカが起きぬよう応接間に招き入れて茶を出す。手持ちの応接のできそうな呪物呪霊も家のほうでくたばっているので呼び出すわけにはいかなかった。こんな時間に来られたストレスを少しでも解消するために高めの酒を手酌で呷る。……もう少し早く来ればよかったものを。あとでいくらでもストレス発散できたんだが。
「それで要件は」
「……。きっかけを作ったかもしれない君に頼むのは自分でもどうかと思うんだが──呪霊操術を使えるようにしてほしい」
特級呪詛師は今日も低級の呪霊しか連れていなかった。
げっそりとやつれた顔。目の周りには隈が刻まれており、寝れてないことが窺える。前見た時より体格も少し小さくなった気がする。
だから同情と罪悪感から詳しい話を聞いた。
収集していた呪霊を失い振り出しに戻った計画の遅れを取り戻すため、無茶をして呪霊を集めたが50体を超えたあたりから身体が拒絶する。呪霊を取り込めなくなった。
……その悩みを誰にも相談することができず、苦悩しながら色々試したが何をやっても改善しない。遂には藁をも縋る思いで原因となった此処を訪ねてきた。
「術式は実質使えなくなってしまったわけか。術師としては致命的だな。……だが俺としてはたとえ治せてもその義理はない。前も言ったがお前の言う猿が作る今の社会を壊されると大変困る」
そう告げると夏油は薄く笑う。
「……そう言うとは思っていた。だけど本当に困っているんだ。色々と調べさせてもらった。正直この際君が私から呪霊をとりあげた下手人だとかはどうでも良い。術式を使えるようになりたい。なんとかしてくれるならどんな対価でも払う。叶えられる願いなら私が叶える。だから君の力を借りたい」
「お前の助けはいらない。俺は現状に満足してる。だがお前が俺と縛りを結ぶなら手を尽くす」
「……。……わかった。それでいい」
2時間ほどかけて結ぶ縛りを契約書として紙面に起こす。
50個ほどの縛り。9割は文言を変えた直接間接を問わない、夏油の非術師への加害を今後一切封じるもの。これを破れば術式の剥奪。呪力操作の禁止を課す。
また、さすがに一方的すぎるので、もし夏油の術式をなんとかできなければ俺が今後夏油に助力するという契約も結んだ。
夏油の呪詛師としての死と呪術師としての再生。それを意味する縛り。対して俺としては治せる自信しかないので実質リスクは皆無。かなりふっかけたが夏油はこれを受け入れた。特級術師の夏油傑は既に死んでいるようなものだからと。……もし治らなくても俺が計画を手伝うならなんとでもなると思ったのかもしれない。
「徹底している……だがどちらにしろ君は私に猿の駆逐をやめろと言うんだな。大義を捨てろと」
「ああ。なんせお前の言う大義の果てにあるのはディストピア。誰も望んでない喜ばない世界だ」
「……そんなわけがないだろう。術師にとってのディストピアは今だ。君が非術師の悪辣さを知らないだけで、あの猿どもの無自覚な悪意は我々術師をいずれ殺す」
「主語がでかい。悪辣な奴がいるのは術師も一緒だろう。理由にならない。……術師だけが生きる世界。非術師の徹底的な排除。それが叶ったとしても非術師は必ず生まれる。排斥され適応する人類の進化の果てに、お前が殺されかけ五条を一度殺した男のような、呪力の一切ない子供が生まれる可能性は考えないのか。術師殺しの存在が生まれる可能性を。その時淘汰されるのは術師だ。呪力から人間が脱却するまでにどれだけ術師非術師の死体の山を積み上げるつもりだ」
「黙って聞いてれば! それは可能性の話だろう! 私はもう止まれない! 猿は、猿は嫌いだ……嫌いなんだ」
声を荒げ頭を抱える夏油に少し言いすぎたかもしれないと反省する。五条ですら理子にあれだけ重い感情を抱いていた。目の前で殺された夏油はもっと悩んだに違いない。
「お前の悲嘆は結局のところお前しかわからない。俺は人類全てを尊べとは言わない。むしろ精神安定のために見下せばいい。人は欲という名の優越感に浸らなければ済まない生き物だからな。今後は動物園の飼育員になったつもりで殺さない程度にお前の言う猿を見守れ……説教くさくなった。残りの縛りについて説明するぞ」
あとは術式を使えるようになるまで俺には基本逆らわないこと。その後も互いに敵対はしない。俺からの説明責任の義務も設けた。
夏油を高専に引き渡す縛りをしないのは誰のためにもならないからだ。更生の余地はないかもしれないが、死なせるのはあまりにも短絡的解決。縛りで加害を封じ、嫌々人助けさせれるならそっちの方が罰になる。
「…………すまない」
だが生きる人にそこまで鬼になりきれない。夏油の苦しみが少しは和らげばと飲んでいる酒を湯呑みに注ぐ。同情はしている。夏油は極端な解決方法を目論むに至る悲劇を見てきた。その事実がある以上はどうしても同情する。
注がれた一杯をあおり、酒精の含まれた息を夏油は吐き出した。
丑三つを過ぎ、深まる夜に男と交わす酒はあまり美味くはなかった。
最後にもう1つ縛りを設ける。口約束のようなものだ。
「はは、……悟か硝子の前にでも突き出すつもりかい」
「いや、硝子というのが誰かは知らないが、あいつ以外でお前の面を殴りたい奴がうちに居る。女子供だ。大人しく殴られてくれないか」
「……猿の娘か何かかな。だがいいさ。それだけのことをしてきた自覚はあるとも」
脱力した様子で少しは憑き物が落ちた顔をする。夏油は天井を見上げた。
昨日恵に使ったばかりの眠る夏油への憑依。体の調子をみながら解決法を思案する。
夏油の使う呪霊操術は祓い、取り込むプロセスが必要になる。取り込む際には口から拳大になった球状の呪霊の塊を丸呑みにせねばならず、その時の味がゲロ不味……吐瀉物に浸した雑巾を丸呑みにしている味がする。想像しただけで吐きそうだ。
丸呑みの性癖が無いとは言わないが、生憎とリアルでは無用なので呪霊を食べたことは一度もない。舐めることは山ほどあるが不味いと感じたことはない。根本的に俺のものとは別物なのかもしれない……と、思ったが、俺の場合無意識に術式の順転反転を使い分けている可能性がある。自分の呪霊のストックから蠅頭をひとつまみ。意識して夏油の術式を順転させ妖精のような姿を口に含む。
クーソまずい。口から出しかけたが、今度は反転を意識してみると一変し旨みが口の中に広がる。旨み成分の塊が口の中でもがいている。
弱々しく口の中で抵抗している蠅頭を飴玉サイズに変えて抵抗もなく呑み込めたが、胃に溜まることはない。問題なく夏油の術式に加えられたので一度解放し再度俺の術式で取り込む。妖精の姿だったので条件を満たす必要はないかと思ったが、一度解放したからか逃げ出したので部屋の隅まで追い詰め取り込んだ。俺の呪霊が俺のテリトリーから逃げられるわけがないだろう。
玉藻の説明を聞き俺の術式は夏油と同じ呪霊操術ではない……と思っていたが、出来ることは非常によく似た術式だ。夏油の場合2等級以上の差があれば無条件で調伏なしに取り込めたらしいが、俺の場合その条件が無いか。あるいは特級すら無条件で取り込めるか。夏油の呪霊を奪えたからそのどちらもの可能性がある。
その他の違いは人の姿を与え、自我を与え、魂を操れること。あとは対象が呪具呪物にも及んでいることか。これは事前に聞いている夏油の術式では出来ない。だがあるいは夏油の術式の拡張がそこまで及んでいないだけかもしれない。
極ノ番うずまきによる呪霊からの呪力と術式の抽出。呪霊の遠心分離のようなものと聞いていたが、反転で使ってみると新たに呪霊を生み出すか混ざった呪霊を元に戻せる。俺は当然のようにやっていたがストックから取り出した蠅頭も同じような原理で取り出したようだ。というか俺の呪霊のストックが小さなうずまきで、まとめて使っていた時のアレは新たに呪霊を生み出していたようだ。
少し試して夏油の反転うずまきでも呪霊を取り出す・好きな姿で生み出せることが確認できた。生み出す方は俺が抽送や吐出に合わせて使ってるらしい黒閃? レベルの緻密な呪力の操作がいるようだが。
夏油の呪霊操術だけじゃない。自分の術式への理解も深まっていく。呪霊の強化。その逆転。呪力の徴収。呪霊の呪力タンク化。だがもっとある。もっと出来るはずだ。
「主さ……──夏油キサマァ!」
興が乗って試しにとシヅカの制服姿で呪霊を生み出してみたところで、応接間に設置している家への扉から玉藻が入ってきたかと思いきや。その綺麗な顔が烈火の如き怒りの形相に変わる。普段隠している9本の尾の毛を逆立てさせ呪力を纏う。
怒り。焦燥。そして深い悲しみ。伝わってくる様々な感情。
玉藻が警戒する間に向けられる怒りの原因を探る。ソファでぐったりとする意識のない俺。虚な瞳をしたシヅカ姿の呪霊。そして催眠にかかったようなシヅカと思わしき女性の前に立つ、思うところのある男の姿。うん納得。
今夏油が怪我でもすれば俺と結んだ縛りに抵触する。呪力の籠った尻尾が飛んでくる前に怒り昂る玉藻と、シヅカに似せて作った呪霊を小さくして俺の術式で回収。落ち着くために一度夏油への憑依を解いた。報連相は大事だと生きてきて何度目かわからない実感を得た。
方針を固めもう一度憑依し、適当なホテルに夏油の体で宿泊。憑依を解いて、玉藻を呼び出し事情説明。理由を知った玉藻だったが拗ねに拗ねたので、気疲れも考慮してゆっくりじっくり愛しあった。
目を覚ました夏油は部屋に残された書き置きに従い後日、事務所を訪れることにした。部屋から出た時ラブホと気づいて少しキレそうになった。
X指定版は
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書いて♡ 書け(豹変)