イケメン霊媒師によるたった一つの冴えたやり方   作:O•Nホール

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体調崩してしばらく死んでた。



真人

 シヅカを狙った例の呪霊プリン頭の強襲。お市がシヅカを逃し、攻撃を受けた里香が近接戦を仕掛け反転術式で消し飛ばそうとするも巧みに避けられ。その後は周辺の人間を狙った火と礫を使う攻撃を防ぐためにお市と里香は防戦一方。

 憂太も明らかな脅威に気取られた隙を突き、正体不明の別の呪詛師か呪霊が術式で憂太とシヅカ達を分断。アスファルトを破り、固まっていた友人たち丸ごと取り囲む樹木からシヅカは1人で逃げることもできたが、一緒にいた友達を守らんとして飲み込まれ。咄嗟に憂太が球根のようになった樹木に呪力を纏わせ殴りかかるも破れず。実物の樹木だったのか反転術式を流し込んだが解けず……で、中でシヅカが危害を加えられそうになって渡していた式神が発動。俺の幽体が内側から壊して、憂太が4人を救出。

「で、逃げたか」

「……逃げられました……」

 人混みを利用しながら逃げられた。民間人が犠牲になると追わなかったのは英断だった。疲弊しているのも理由の一つか。幽体もシヅカから難が去ったと判断して消えていた。こっちに意識を割けば良かったな。真人懲らしめてる場合じゃなかった。

「気にするな……というのは無理そうだな」

「あいつ嫌い! 服ボロボロにされるし、髪も焼かれちゃったし! 次絶対祓ってやるから覚悟しとけばーか!」

 大事なところだけなんとか服が保って隠せている里香は、呪霊が消えていった方角に大声で叫んだ。

 

 

 

「何が起こった! なぜ捕まえられなかった!」

『すみません漏瑚。ですがわからないのです。呪霊でも人間でもない何者かが内側に突然現れ、術式に直接干渉され拘束が解かれた……やはり私も姿を現して戦うべきでした』

「いや、すまぬ花御。おぬしを責めるつもりで言ったわけではない……不意を突き連れ去るにはあれしかなかった。あの女の呪霊……触れればこちらが消し飛ぶ危うさを感じたが、同伴していた男の術師も中々にやる気配があった。守勢に徹していたからなんとかなったものの、本気であれば逃げることも叶わなかったかもしれん。もう1人の男は真人が抑えていたとはいえ……真人はどこだ? まだ帰ってきていないのか?」

『さあ。彼のことです、何処かで遊んでいるのではないですか?』

「……なら、良いのだが」

 

 

 

「吐け!」

 気になる名前を言ってた真人の体に聞く。

「いいまひゅ、いうかりゃもうやめ──いぐ」

 人の呪霊。人の悪い側面が煮凝り、負の側面を継ぎ接ぎしているこれに温情はなく、心を割くつもりもない。いずれ愛着は湧くかもしれないが玉藻ほどではないだろう。……心太みたいに呪力出しやがって。せっかく消えないようにしてやったのに勿体無いことをする。追加だオラ。

 

 とお仕置きを兼ねて呪力を補充しつつ、調教も兼ねて知りたいことは聞き出した。

 ……今回シヅカを狙った特級呪霊2体の正体。シヅカの話を聞いた時からまんじゅう怖いじゃあるまいしプリン頭の呪霊ってなんだよとは思っていたが。プリン改め火山と大地の呪霊の漏瑚と草と森の呪霊の花御。おそらく後者がシヅカたちを閉じ込め連れ去ろうとした術式の使い手だろう。

 そして攫おうとした真意はシヅカに次世代の呪霊を産ませること。冷や汗が背筋を伝った。

 

 ハロウィン翌日。一夜明けて前日の渋谷の惨状に苦言を漏らすコメンテーターを確認した後真人から知り得たことを3人と共有する。 

「絶対私も祓いに行きますから!」

「飛んで火に入ってどうする。大人しく待ってろ。相当知恵が回る相手だぞ」

 弱いほど群れる筈の呪霊が、特級でありながら徒党を組んでいたのだ。時間稼ぎに俺へ真人をあてがったのは間抜けだが。

「でも! ……でも私の友達も巻き込まれたんです。お市ちゃんも里香ちゃんもボロボロにされて……指咥えて、守られるだけなのは嫌です! せめて一発蹴らせてください!」

「気持ちはわかるがな……」

 気炎を巻き上げる勢いのシヅカに、途中で応接室に入って来た理子が不思議そう尋ねる。

「シヅカなんかあったの……?」

「学校の友達と一緒に呪霊に誘拐されそうになったんだ。防げたけどね」

「その時その呪霊、私たちだけじゃなくて他の一般の人も殺そうとして。それを守って……あー、思い出しただけでむしゃくしゃするー! ゆーたー!」

「はいはい……ま、そういうことでさ。昨日天内さんは確か天元様のところにいたんだっけ。良かったよ巻き込まずに済んで」

 がばっと抱きつく里香を憂太が手慣れた様子で頭を撫で髪を解きながら慰める。

「うん。……あーもー、妾もそっち行けば良かったのう! 星漿体パンチ喰らわしてやれたものを!」

 自分だけ呑気にしていたことに罪悪感でも覚えたのか。能天気を装いシャドーボクシングをする理子にシヅカも里香も溜飲を下した。

 

 謝罪と臨時のバイト代と称して1万円を支給された憂太と里香がデートに出かけた。

「すまんなぁシヅカ。こんな姿晒して……ウチは、ウチは役立たずや……」

 部屋に戻るとボロボロのお市は呪力でその体を徐々に修復させている。ポロポロと涙を流すお市の小さな手をシヅカは取る。

「そんなことないよ! それを言うなら私の方が守られてばかりで……私がもっとしっかりしてれば、キョーコちゃんやイナガワさん達をまきこまずに済んだ。……ううん。今回だけじゃない。海の時だってお市ちゃんは危なかったんだから。ごめんね……」

「シヅカ……」

「…………でも、今回のことで覚悟決めたよ。……力をつけなきゃ。嫌がってる場合じゃない。アレ、使いこなせるようになるよ」

「まさか。ほんまか、シヅカ」

「恥ずかしくて途中で投げ出したけど。協力して、お市ちゃん」

 今回は憂太と里香が守ってくれたから誰一人死なずに済んだ。だがこのまま放っておけば邪智暴虐を尽くすであろう呪霊にはもう容赦しない。祓うまではいかないにしても、必ず自分で一発キツいのをお見舞いしてやるとシヅカは決意した。

 




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