イケメン霊媒師によるたった一つの冴えたやり方 作:O•Nホール
実はこういう話の方がスイスイかけたりする。
休日。
「虎杖、来なさい。街に出るわよ」
「へ、俺?! なんで」
「ほら、早く!」
「何なに、なんなの!?」
のんびりしていたところ、釘崎にせっつかれて虎杖は自室を出る。当然のようにつまらないと言いつつ漫画を読んでいた宿儺も一緒に──東京の街へと連れて行かれた。
「おそーい!」「チョー待ったし!」
待ち合わせでもしていたのか、枷場美々子と菜々子がソフトクリームを食べつつハチ公前で一つの椅子をシェアして座っている。
「ごめーん! 虎杖がモタついたせいだから、お詫びに荷物持ちしてくれるって」
「はあ!? 俺そんなこと一言も言ってないんだけど!?」
「じゃあひ弱な私たちに買い物した後重い荷物持てって?」
「紳士的じゃないじゃん」
「そうだぞーモテないぞー」
菜々子と美々子に合いの手の如く嫌味を言われ虎杖は気押される。
負けじと正論を言い返した。
「いや、そんな買い物すんのかよ。それなら俺じゃなくても良いじゃん。伏黒もよぼーぜ?」
「馬鹿ね、アンタ連れてこないと宿儺が来れないんでしょーが」
「は? なんで宿儺が出てくんだよ」
「だって今日のメインは宿儺だもの。アンタ服全然ないでしょ?」
「……はあ?」
虎杖は全然予想だにしてなかった本日の目的に、嫌々ついてきた相方と共に呆気に取られた。
やってきたのは女性物のアパレルショップ。モールやデパート内にあるテナントならまだしも、彼氏でもないのに店内にいるのは気まずい事実を虎杖は今日この日、初めて実感する。
「この辺で、どう!?」
「ありがとうございますー、あ、着替え手伝うのに試着室一緒に入っても良いですかー?」
「ええ、どうぞ!」
ごゆっくりー、と宿儺を一目見て火がついた店員が去る。そして残されたのは採寸して合うであろうと選定された服の数々。
……実はこの店、店長の意向により胸部装甲がデカかったり、身長が高かったり低かったりとニッチだがあると喜ばれるサイズの服が豊富に取り揃えられている。宿儺のような必要とするお客様が来て、店員のテンションが高かった理由でもある。
さて、店側のセレクトのそれらを持って宿儺を取り囲むように迫る華の女子高生3人。
宿儺としては服なんてなんでも良い。着てなくても良いぐらい。だが着せ替え人形にされるのは御免被りたい。
宿儺は逃げ出した!
しかし回り込まれた!
大魔王は逃げられない。
1着目
菜々子のチョイスは肩出しルックの柄の入ったTシャツに、ホットパンツ、ニーハイを履いたちょっとヤンチャなスタイルだ。
胸部装甲が厚く大きいのでヒラヒラとしているTシャツを胸の下の紐で縛って腹からウエストのラインを細く見せている。しかし前の丈が少し足りず、臍が見せそうで見えない、そんなチラリズムがフェチ度が高かった。
「……まあいい。好きにしろ」
「よしっ!」
本人の了承を得て購入決定。
2着目
なんでロリ巨乳の宿儺にぴったりサイズがあるんだ。でもあるんだから良いだろ、と言わんばかりに店員に奥から持ってこられたゴシックロリータ。胸部の膨らみ、俗に言う乳袋もピッタリで怖い。
「……なんだこれは」
「えっと、一応今は女の子の姿なんだし、郷に入っては郷に従えって言うし。女の子って服を1着ぐらい持ってても良いんじゃないかなあ……と。丈もこっちに比べれば長いし」
そう言って美々子が取り出したるはミニスカのゴシックドレス。
「……」
まだマシ。めちゃくちゃ高いが購入決定。
3着目
メスガキといえばこれ! お腹丸出し、胸しか隠せないタンクトップ! パンツ丸見えミニスカート!
「……これが服か? 下着が丸見えではないか」
「か、かわいいじゃない! ねえ!」
「え、ああうん」
「何に見惚れてんのよ変態。キッショ」
笑いを堪えていた顔が一瞬で絶対零度である。場の空気が風邪を引いた。
「あ、いやちげーって! まさか話振られるとは思ってなかったんだって!」
流石に却下。宿儺からも軽蔑する目で見られて心を無にしていた虎杖が慌てる。
しかし店長らしき女性が来て一声。
「あ、他に着られる人も居ないしそこまで着こなしてくれるんならサービスしとくわよ」
「え、良いんですか? じゃあ買いね!」
流石にパンツ丸見えはないとの虎杖の訴えでスカートはサイズアップ。定価より半額で購入。
4着目、5着目……着々と購入するものが決まっていく。趣味でやってるようなものだからと店主の厚意によりまとめ買いでかなり割り引いてもらった。
「宿儺、アンタ下着は?」
「……これ1枚だけだが」
「え、駄目っしょそれ!?」
「うっわ、ないわー」
「俺悪くねえって! そいつ忘れてるかもしれないけど人間の体じゃねーんだよ。トイレも行かなくていいし汗もかいてないんだって。だからまあ……」
「……サイッテー」
虎杖は心が折れそう。
オーバーサイズかと思いきや、下着に関しても用意があった。宿儺ほどの身長は考慮してないが部位ごとなので市販品の範疇で合うものが見つかる。
「……帰りたい」
下着売り場。アパレル系の中でも群を抜いて虎杖には居づらい場所である。
両手に山のような袋。漫画でも見たことねーよ、と虎杖は思いつつ、渋谷の街を周囲の視線を集めながら、連れてかれる宿儺の後をついて回り。
「つ、疲れた……」
ファストフード店の一角を占拠し脱力する。
「なに言ってんのフィジカルモンスター。呪力なしで砲丸を野球ボール投げする奴がこの程度で疲れたとか言ってんじゃないわよ」
「それとこれとは関係な……てかなんでそれ知ってんだよ」
「伏黒が言ってた」
伏黒もなんで知ってるんだと虎杖は訝しむ。とはいえこれは精神的な疲労でフィジカルは関係ない。
美々子菜々子と買ったバーガーに齧り付いていた宿儺がため息を吐く。
「……全くもって忌々しい。精神的な疲労すら共有されるとはな。女、こいつを小間使いにすれば俺の機嫌も損なうぞ」
「今日誰のために買い物来てると思ってんの。チャラよチャラ。というかそれも含めて奢ってやってるんだから感謝なさい」
「……くっ」
虎杖と宿儺は術師として未だ報酬すら貰ってない現状。6桁の買い物は到底虎杖の財布から出る金額ではなかった。虎杖の口座には貯金がいくらかあるとはいえ切り崩しているのは事実だ。
ゴシックロリータ。あれが確実に購入額を釣り上げた原因だった。
「まーお金はウチらのじゃないし。ちょっとしたバイトだよ。好きでやったことだし気にしないでいいし。元がいいからオシャレしてないの見てるとモヤモヤしちゃって」
「あっちのスクナは、ほら。する甲斐ないから」
「まじ勿体無いよねー」
あっちのスクナ、が未だ機会がなく会ったことがない釘崎と虎杖はよくわかってない。だが他者の記憶を知り、若干恐れているあり得た可能性を知る宿儺はなんとなく理解した。
まだ人扱いされているだけ自分の方がマシだと。
「だが服飾などなんでも良いだろうに。理解しかねる」
「んなことないって。女なんてオシャレしてなんぼでしょ」
「そうそう。着飾らないと損だよ」
「……女になったつもりはない」
苦々しい顔で、甘い炭酸を啜る宿儺。
「まあでもサンキューな。俺もコイツに服買ってやらないと、とは思ってたんだけど、なにがいいかとか全然わかんなかったからさ。寝巻きにシャツとかズボン貸してやるぐらいしかできなかったんだよ」
えっちじゃん。えっちだ。と双子は聞こえないよう囁きあう。男物、割と大柄な虎杖のサイズは一部以外小柄な宿儺にとってオーバーサイズ。しかし丈は少し足りていなかった。
「お礼なんていいわよ。今度は私たちの荷物持ちしてもらうから♡」
「……感謝して損した」
またこれをするのか、と愛嬌マシマシの釘崎に虎杖はげんなりした。
虎杖
相方がズボラすぎて全然下着全然変えないので見かねて洗濯担当。手洗いでないといけないと知った時はパンツ片手にマジか、と呟いていた。(育ての男親の弊害)ネットに入れたらいいのは後で知ったが、メーカー調べたら高すぎて手洗いすることにした。なんでこんな高いのくれたんだよ。
選ばれた服の数々が露出度結構高くて結局自前のパーカーをあげたりする。刺激の強い下着類を購入するところを目撃してしまい気まずい。やっと今の下着に慣れてきたところだった。
宿儺
なんだこのSUGOIDEKAIは。ブランド名? 頭がおかしい。
パーカー借りるも主張が強すぎて男物なのにパツパツ。返すときに跡がついて戻らなくなった。萎んだ胸がついてるみたいになったのでそのままもらった。部屋着と化した。もしかして→ペアルック
釘崎
イケメン霊媒師にポンと手渡された札束にやったろうじゃん、と虎杖ルームを突撃。ついでに美々子菜々子ともショッピングに行くことを思いつく。
美々子
同上。ついでに宿儺と虎杖にも自分たちの買い物に付き合わせた。
菜々子
同じく。虎杖がいかに買ったものを持てるか面白がって観察していた。
呼ばれなかった伏黒
影に物が出し入れできると判明すると荷物持ち要因として必ず駆り出されるようになる。その血(術式)の運命。
お金を出したカムイさん
まあこれぐらいあったら大丈夫か、でポンと大金を出した。
店長さん
お気に入りの女の子に合う服が全然なくてアパレル起業。元手ゼロで物を作れる能力があったので、ついでにいざという時のために呪力のストックを量産。誰なんだ一体……。
X指定版は
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書いて♡ 書け(豹変)