最近全然文章かけてなかったのに比較的スラスラかけました。
我ながらムラっけ酷いですね。
―――ずっと悪夢を見ていた気がする。
延々と体を切り刻まれ、唯一の心の支えだった人を守れず、最後は因縁の相手にいいように弄ばれた。
「―――――――――パ―――」
敬愛する主やその眷属達にも迷惑をかけ続けている、大凡最悪の終わりだった。僕は一体何のために生きt
「―――パ、パパ!」
「グエッ!」
沈んでいた思考が衝撃で引きずり戻される。ゴホゴホと咳き込みながら目を開けるとお腹の上に一人の子供がいた。自身と同じ金髪碧眼の十歳くらいの女の子……どことなく自分と誰かに似ていた。
「パパすごくうなされてたよ?怖い夢見てたの?」
「パ、パパ?!」
当然木場に心当たりはない、悪魔の仕事の際求められた事はあるが暗示も使いつつ断っている。
「僕に子供はいないよ。君は誰なんだい?」
「???パパ、寝ぼけてるの?」
子供らしい純粋な瞳に木場はたじろぐ、少なくともこの子は本気で自身を父親と思っているのだ。
「ママー、パパ寝ぼけてるみたい!」
「あら、そうなの?」
少女の母親らしき声を聞いて木場は固まる。それは記憶にある声より若干大人びていた……もう二度と聞けないと思っていた声だった。
「―――イザイヤ?どうする?もう少し眠る?」
「―――トスカ?」
「いや、すぐ起きるよ。朝ごはんにしようか」
分かったと笑顔を作る妻の顔を見て幸せを噛みしめる、何か特別な人生ではないけれど僕は幸せだ。
――――――ココガゲンジツナンダ、ソウダソレガイイ
◇
『顕現せよ!ケルベロス!!』
「ケルベロスって聖剣と関係あったっけ?」
数では叶わぬと悟ったガリレイは質を高めようと新たな戦力を生み出す。ギリシャ神話において冥府の番犬を務める三頭の犬、ケルベロス。既に生み出していた騎士達を生贄に生み出されたケルベロスは音を置き去りにして魁斗に襲いかかった。
「おお早い早い、それがお前の切札か?」
『貴様っ!』
スーツで顔が見えなくとも声色で余裕があるのが伝わる。実際ケルベロスの三頭を使った攻撃を危なげなく回避し続けていた。
「頭増やすのはいいんだが正直扱いにくくないか?頭なんて噛みつくか頭突きしかできないんだし、正直普通の犬が大勢で攻めてくるほうが厄介だぞ?それともブレスでも使うのか?」
呆れ半分の半笑い、敬意とは真逆の嘲笑、事実ケルベロスを出しても状況は全く好転していない。ただ悪戯にリソースを消費しているだけだ。
(落ち着け、どれだけ戦力差があろうと奴にこちらを見つける手立てはない。フリードが戻ってくるかコカビエルが来るまで牽制を続ければいい。最悪転移で撤退すれば……)
「なんだ?逃げる算段でも建ててたか?ご自慢の聖魔剣が文字通り刃が立たないんだ、臆病風に吹かれてもしょうがないと思うぜ、俺は」
安い挑発、誰が聞いてもそうだと分かる。突出した知性を持ち合わせたガリレイに分らぬはずがなく、聞き流せばいいだけのはずだ。
『……自惚れるなよ小僧、貴様如きに我が聖魔剣は負けぬ!』
長年聖剣を研究してきたという自負が、自身の全てを捧げてきた狂気がそれを許さない。神話に名を刻んだ神々や異形達ならいざ知らず、ほんの十数年生きただけの才気あふれる若者程度に背を向ける事などできるはずも無かった。
『
ガリレイは杖のリミッターを解除する、データ取りは済んでいるとはいえ一点物の特注品を無駄にするかもしれない行為だ。ガリレイはそれを魁斗の肉片さえ確保できれば採算は取れると最低限の利点を見出し強行した。空浮かぶ聖魔剣、整然と並ぶ骸骨の騎士、更に生み出されたケルベロス、多少力を持った人間なら裸足で逃げ出す地獄絵図だ。
『貴様h「えっ?さっきと何も変わらないじゃん?!せめて新種出せよ」殺す!』
◇
「いやー、今回は雑魚始末するだけの楽な仕事だと思ってたんでござんすがねー。何あの化け物?怖すぎるんですけど?」
町中を移動しながらフリードは愚痴を吐く。フリードは弱い者いじめは好きだが戦いは嫌いである。まして格上相手など以ての外だった。
「ま、どうにも奴さん世にも珍しい正義感の様でございますしー、やりようはいくらかあるだけマシっすかね」
裏社会において善良な人間は絶滅危惧種だ、しかも大半が教会の戦士である。理由はシンプル、神器にしろ異能にしろ目覚めたての人間は弱い、そんな中堕天使や悪魔の様な異形に襲われた時生き残るのは大抵善良ではない人間だ。辛うじて生き残った善良な人間も擦れてかつての善良さ持ち続ける事はほとんどない。教会の戦士は後ろ盾を持ち余裕があるからこそ善良さを持てていた……あくまでも教義が許す範囲の話だが。
「悪魔の姫君にハート飛ばされてるとか運良すぎっしょ!……いや逆に不運か?」
最高クラスの後ろ盾と柵が同時にできる、それを幸運と取るかは不運と取るかは人それぞれじゃないっすかね?
「おっ?ターゲット発見〜!さっと捕まえますかね〜」
ニタリとフリードは笑う、あの善良な化け物が狼狽える姿が楽しみだ。強い者イジメなんて滅多にできる事ではないのだから。
◇
―――戦いの必勝法?まあ、敵の思考を乱す事ではないですか?煽って冷静さを奪うのが一番楽ですね。
(さて煽るだけ煽ったがどうすっかね)
ガリレイは極めて優秀な研究者である、手段は兎も角同じだけの成果を得られる研究者はそういない。だが同時にそこ止まりではある、戦いは数だという格言はあるが何事にも限度があった。戦力が多くなりすぎてそれぞれが動きを阻害している、特にケルベロスは人間を一飲みにできる程の巨体が完全に邪魔になっていた。
(ジャミングが切れるまでには流石に冷静になるだろうしなあ。索敵能力の無いジャンヌが偶然見つける以外の勝ち筋が無い。ジャンヌと合流してコカビエルに備えたほうがいいか?……連絡取れないけど)
敵はほぼ無限湧きの状態であり、より強力な援軍がいる可能性が高い。ガリレイがここまで変質している以上原作知識もどこまで役に立つか分からない。戦況は最初から魁斗達に不利なままだった。
『死ねえ!!』
「おっとっと、今のは危なかった。……なんで声かけたんだ??」
『コロス』
(沸点が低くて助かる)
使い手の感情に連動する様にケルベロス達の動きが早くなり、同時に荒くなる。感情をトリガーに出力を上げるのは神器の強みだがガリレイのコントロールが不安定になり始めていた。
(或いは杖の暴走の予兆か?大分無茶な事してるみたいだしな……いっちょ揺さぶりをかけてみるか)
揺さぶりをかけるといっても剣や騎士は数えるのも億劫になる程倒している。今更倒しても大した影響は無いと考えるのが自然だ。……であるならばターゲットにするのは巨体を体よく盾にしていたケルベロスしかない。
「いい加減鬱陶しいしな、お手だ犬っころ!」『マジ・マジカ』
巨大化した右腕がケルベロスの中央の頭目掛けて振り下ろされる。ケルベロスも負けじと腕を噛み砕こうと牙を剥く。牙は間違いなく硬質化した皮膚を傷つけたが振り下ろされた勢いでケルベロスは轢き潰された。
「―――なんだ、これ?!」
ほんの少しの擦り傷に過ぎないにも関わらず魁斗は尋常ではない苦痛を、まるで熱で融解された鉄を流し込まれたかの様な痛みを味わっていた。
『かかったな!ケルベロスの牙には猛毒を仕込んでおいた。人間は愚か上級の悪魔や堕天使すら悶え苦しむ猛毒だ!貴様の命もh「スパッ!」……は?』
ガリレイの言葉を無視して魁斗は躊躇なく噛まれた腕を切り落とした。解毒薬がない以上その選択はベターである事は疑いない。だが実際に即決できる人間がどれ程いるのだろうか?
『貴様イカれているのか?!』
「お前にだけは言われたくないんだが??」
ぶっちゃけ方向性が違うだけでドッコイドッコイである。辛うじて社会に迎合できる分魁斗の方がマシだろうか?いや、怪しいかもしれない。
『ま、まあいい。これで貴様の戦闘能力は半減したようなものだ!ジワジワとなぶり殺しにしてくれるわ!』
隻腕のリスクは片腕しか使えないということだけではない。腕がない分体のバランスは崩れるし、その感覚になれるのにもリハビリが必要だ。足よりはマシだが腕がなくなってすぐ戦場に立つなど正気の沙汰ではない。
「毒抜き良しっとじゃあ
魁斗の声に応えアパテーが魁斗の切り落とした腕を縫合する。骨、血管、神経系、筋繊維、皮膚と
「うん、問題なし!練習の成果がでたな。」
『貴様イカれているのか?!』(二回目)
魁斗の魔法のレパートリーに回復魔法は存在しない。スーツで一定の防御力と自己治癒力は確保できているとはいえ回復手段を確保する必要があると魁斗は考えた。その結果がアパテーを利用した縫合である、アーシアの協力を得て何度も身を切り練習を繰り返し現在では脳や心臓等の重要な臓器以外ならば縫合出来るようになったのだ。どう考えても回復薬を常備した方がいい、馬鹿の所業である。
「毒っていうのは頭から抜けてたな、さっきの地中からの攻撃といい俺はイレギュラーに弱い」
『イレギュラーは貴様の存在そのものだ!!!』
((((否定できる要素が全く無い!!!))))
ガリレイとリアス達の心が一つになった瞬間だった。薄々魁斗が狂気を持ち合わせているのを察していた者もいるがここまで頭がおかしいのは予想外であっただろう。仲間を失った悲しみすら引っ込むインパクトだ。
「で?次はどんな手段でくる?」
『おのれぇ』
まだまだケルベロスを生み出す余力はある、だが使用魔力量が引き上げられたのかケルベロスが噛み付いても逆に牙がへし折られてしまっているのが現状であり無駄になるのが目に見えていた。
『うわっ、ケルベロスまでボコボコにされらっしゃる?!』
『―――フリード!やっと来たか!』
フリードの帰還にガリレイは歓喜の声を上げる。最早為す術もないという最高のタイミングで戻ってきたフリードがガリレイにとって救いの神にも思えた。
「……そういや人質を取るみたいな事言ってたか、正直相手が思いつかないな」
『ちゃ〜んと連れて来ましたよ、オタクの大切な人をなあ!』
(両親ならサクッと見捨てるか)
魁斗は今生の家族は全員嫌いである、能動的に手をかける事は絶対にしないが他人の命がかかっていれば見捨てる事に躊躇はない。
『おやおや〜?余裕ぶっちゃってますね〜。もしかしてお守り持たせとけば安全だと思っちゃった〜?残念〜とっくに無力化済みザンス。半端に隠密性考えたのが間違いでしたね!』
(……お守り?)
魁斗にそんな物作った覚えも渡した覚えもない。何かの間違いで赤の他人が連れてこられたのでは無いか?という疑問が浮かぶ。この状況では見捨てるしか無いが流石に巻き込まれてしまったその人には罪悪感を持たざるおえなかった。
『じゃ〜ん!君の大切な、大〜切な〜恋人のレティシアちゃんでーす!』
「……そうきたかー」
喉まで出かかった言葉を魁斗は飲み込む、なにはともあれ後倒すべきはコカビエルだけになった。
お願い、死なないでガリレイ!
あなたが今ここで倒れたら、最強の聖剣を作るっていう夢はどうなっちゃうの?
フリードが人質を連れてきた。上手く使えば、魁斗に勝てるんだから!
次回 「フリードも死す」 デュエルスタンバイ!