ストックして次の話書く方がいいとは思うんですが、承認欲求抑えきれないので投下します。
何故かソーナの話、書いてて楽しいからね仕方ないね。
シトリー領にてソーナは眷属と共に療養していた。今回のコカビエルの襲撃による怪我はそれ程深くは無くとも最悪の事態一歩手前だった事に違いは無い、私人としても公人としても安全を確保したかったソーナの両親や姉である魔王が呼び出したのだ。
「……………はぁ」
九死に一生を得て実家に療養しているにも関わらずソーナの気持ちは晴れなかった。最終的な被害内容や今後の身の振り方等悩みの種は尽きないのが理由だ、自身で責任を取れないか手の届かない所で全てが決まってしまう。当事者であるというのに何も出来ない無力感を感じていた。その中でも1番大きな悩みは今回の一件を生き延びたのはリアスとソーナの尽力の賜物であると事実とは異なった内容で公表されている事だ。相手が堕天使幹部とはいえ悪魔の中でも未来を期待されているルーキー2組がほぼ何の役にも立たず偶然居合わせた人間によって救われたなど公表できる訳がない。何らかの忖度が行われる事はソーナも理解していたがその内容が斜め上だった。
───兵藤魁斗は悪魔の姫達の愛の奴隷である。
男が愛の為に命を賭ける、ありふれていて理解しやすい動機だ。戦力的にソーナ達がコカビエル相手に役立つ事などはあり得ない、であれば悪魔らしく唆したという方向で話を盛ったのだ。リアスとソーナは自身を遥かに上回る強者を色で惑わし戦力を引き出したという事になっている、2人の姫が愛を囁き自身だけで無く仲間にも戦わせたというのが今回の真相であると。対外的に見て辻褄もあっているしそれが疑われにくいのは理解できる……だが納得できるかは別問題だ。
「死力を尽くして戦ってくれた相手への扱いではありませんね……」
実際にアピールをしていたリアスにはそんな感情を抱いていてもおかしくはない、だがほんの少し話した事のある程度のソーナにはそういう感情は無かったはずだ。感じた視線も不躾な物はほぼなく自身の眷属の方が余程多い、そんな相手にレッテルを貼り付けてしまったという後ろめたさをソーナは感じているのだ。
───ドタタッタ!ドドッタッタ!!
物思いに耽っている中聞こえてくる足音にソーナは別の意味で頭痛を感じる。いや今回ばかりはそれだけ心配をかける事態だったのだがそれでも頭を抱えたくなったのは仕方あるまい。
「ソーナちゃ〜ん☆!!怪我は大丈夫?!」
「モガッ!?モガガッ?!!」
とっくの昔に完治済みですと返答しようにも(相対的に)豊かな双丘によって口が塞がれてしまっている。いつもより数段上の愛情表現に若干苛立ちを抱きつつも抵抗は無意味だと察し数分間持つ者の圧力を味わう事になった。
◇
「……私達が誑かしたという筋書きに関しては変えられなくとも報酬に関して色をつけられはしませんか?私達を救った事実は間違いないのですから難しくは無いかと」
「私もそうしたいんだけど☆無☆理☆人間相手に報酬渡すって発想すら無いぞ☆契約外の対価は不要っていうのが悪魔の一般論だもの☆」
「……私個人かシトリー家から何か渡すしかありませんね。彼に何が欲しいか確認を取らないとですが……」
ソーナは大きく溜め息をつく、自身のみならず眷属も救われたというのにそれに報いる事が難しい。改めて悪魔社会の頭の硬さに嫌気がさす、そんな古臭い考えに囚われているから近年碌に契約を取れなくなっているのが分からないものかと。
「う〜んそれはそれで悪くないけどねー☆報酬ならソーナちゃんから渡せるもっといいものがあるじゃない☆」
「?……リアスか私の眷属にするというなら当人が拒絶していますので報酬にはならないかと」
「わー贅沢な子☆なりたい子はいくらでもいるのにね☆でも私が言いたいのはそういう事じゃないぞ☆」
ソーナは姉の言いたい事が分からない、シトリー家で用意出来る物より良い物など自身にあるとは思えないからだ。所詮一個人でしかないソーナが与えられる物などたかがしれている。そうやって悩むソーナの姿を見てニコニコしながらセラフォルーは話を続けた。
「ソーナちゃんてばウブいわねー☆噂を本当の事にすればいいじゃない☆ソーナちゃんに文句言う男なんていないぞ☆……言ったら処分しないと」
「…………………………………はい?」
数瞬ソーナは思考が止まる、話の意味と姉がその話を自身に話したという事象そのものに理解が追いつかなかったからだ。セラフォルーは超を何個もつけなければいけないド級のシスコンである、ソーナへの溺愛っぷりは冥界中に轟いており婿に求める基準は聞いたものが妹を喪女にする気かと思う程だ。その姉のシスコンぶりを1番見てきたソーナが混乱するのもいたしかなかった。
「……姉さん、疲れているのですか?今からお茶とお菓子を用意するので待っていて下さい」
「(大きく深呼吸し息を整えて)うん☆ありがたくもらうわん☆」
セラフォルーはかつてグレイフィアと敵として相対した時並みの覚悟で返答する。シスコン故にメシマズを指摘出来ず、どれだけ愛があっても味覚が変わる事は無いのだ。ほんの少し震える手でお菓子を口に入れた瞬間、冒涜的な味が口の中に広がった。その衝撃はセラフォルーの脳内にソーナの成長記録を駆け巡らせる。ソーナの結婚式という存在しない領域に差し掛かった所で意識を取り戻し何とか話を進めた。
「……今回の一件って物凄く劇的だったじゃない?だから物凄く……物凄く嫌だけどソーナちゃんが恋に落ちてたら後押ししようかな☆って。……物凄く嫌だけど」
「どれだけ嫌なんですか???」
「出来る事なら一生清いままでいて欲しい、でもソーナちゃんの子供を抱くまでは死にたくない。心が二つあるのよん☆……何とか処女受胎出来ない?」
「聖母になれと言ってますか???」
ダメだコイツ早くなんとかしないと。あまりにもあんまりな姉の希望にソーナは辟易する。というかまず自分の婚期を気にして欲しい、この際妾でも愛人でもいいのでサーゼクスが貰ってくれないかと考えていた。
「で?実際の所どうなのん☆」
「どうと言われても……私もそういった出会いに興味がない訳ではありませんが魁斗君にその様な感情はありませんよ。話していて実りある相手ではあると思いますが……夢が叶った後の話など私だけでは思いつきもしなかったでしょう」
「───へぇ、ソーナちゃんの夢に口出ししたんだ」
先程までよりも低くなった姉の声を聞いてソーナは自身の失敗を察する。話を続けた場合自身を溺愛する姉の反応は魁斗にとって良くない物になるかもしれない。流石に命の恩人である魁斗に危害を加えるとまでは思わないがこんな事で余計な負担をかけるのも考え物だ。幸い夢を笑われた訳でなく自身の考えが甘かっただけでありそこまで顰蹙は買わないだろうとソーナは話を続けた。
「学校を設立し卒業生が結果を残す様になった後に教育ノウハウの共有や教員の出向を求められたらどうするかですね。そんなあって当然で悪魔に利益しか無い事で夢を砕かれる事を想定出来ていなかった……自身の考えの甘さに嫌気が差しますね」
「……ふーん、例のイレギュラー君ってば脳筋ではないんだね。そこに注意が行くならもっと
「…………お姉様は私の夢が達成不可能だと理解していたのですか?」
予期せぬ理性的な返答にソーナは本音をポロリと口にしてしまう。ソーナは魁斗から指摘を受けた後自身の夢に関してもう一度見直していた。自身が描いていた夢へのロードマップ、それは努力だけでは改善出来ない根本的な問題がある。そんなソーナをセラフォルーはニコニコと見つめて何も言わない、それは自分の口で話す様促されていると受け取ったソーナは話を続けた。
「……悪魔の個体差はもはや別種の生物と言っていいレベルです。仮に生涯全てを戦いに捧げても今の私に届くかどうか……あるいはそれ以下の者だって少なくない。選手の質という戦略レベルで負けている以上は戦術を極めても勝つ事などまず不可能、人間を参考にするならば教育だけで無く兵器による戦力の均一化ににも視点を向けるべきでした……理想に溺れ実態を理解しようとしなかった私の失態です」
それは今回の襲撃でより一層思い知った事だった。本来ソーナやその眷属にとって中級堕天使はそれ程脅威となる敵では無い、そのはずなのにフェニックスの不死性と聖剣を持っているだけの軍勢に大いに苦しめられた。自身の理想を目指して鍛えていた眷属達が聖剣を振り回すだけしか脳のない不死身のチンピラ集団に圧倒される、戦術が戦略を覆せない事を嫌という程見せつけられたのだ。
「うんうん、不備をすぐに認められるのはソーナちゃんの美徳だぞ☆最悪数年中級悪魔と関わっていくうちに気付いてもらう予定だったけど随分早く済んだわね☆……ここまで危険な目に会うのは想定外だったけど」
「……つまり私は試されていたと?」
ソーナは自分の言葉にトゲがある事を理解していた。自業自得であれど自身の我が儘で周りに不利益を与えるかもしれなかった事実を簡単に受け入れる訳には行かなかったのだ。そんなソーナを見てセラフォルーは困った様に笑みを浮かべながら話続けた。
「……こういうのはね、自分で噛み砕いて理解しないと身につかないから。私達が魔王になった時も散々失敗して時間を無駄にしたからね……ちょっと指摘されたぐらいで気づけるソーナちゃんは本当に賢いのよ?」
「……そうですか」
どこか羨望を感じる声色だった、クーデターからの政権奪還は戦力的には何の問題は無くともその後の運営には大いに問題があったのだろう。そんな経験を積んだ相手にこれ以上何か言える程の図々しさをソーナは持っていなかった。
「ソーナちゃん、貴女の夢はとても難しくてまともに取り合う上級以上の悪魔も少ないわ。だから焦らずゆっくりとやるしか無いの、
「フフッ、流石に50年以内には何らかの成果を出したいですね」
「?、そういう気概があるのはいいことよん☆」
姉のどこかズレた発言にソーナは苦笑いする。下手すれば人類が滅亡するかもしれない程長い時間をかけるなど悪い冗談だ。兵器の確保や運用ノウハウ等一朝一夕では上手く行かないだろうが流石に悠長が過ぎる。
「あっそうだそうだ、今後のソーナちゃん達に関してなんだけどもう少ししたら駒王学園に戻ってもらう事になったの☆今度は私の眷属を常に護衛につける事になったからよろしくね☆」
「……え?」
ソーナはもはや学生として駒王学園に戻る事は無いと考えていた。堕天使との戦争まで行くかは分からないが堕天使との冷戦状態はより悪化する事に疑いは無い。自身が知らない政治的な取引でもあったのだろうかと疑問に思う。
「ほらリアスちゃんが眷属を失って落ち込んじゃったでしょ☆サーゼクスちゃんも色々と気を使ってるけど中々元気にならないらしいのよ☆で、身内で傷を癒せないなら学園での恋や青春で何とかならないかって話、もちろん護衛はちゃんとつけるわ☆」
「そうなのですか」
ソーナはその理由が若干弱いのでは無いかと考える、最悪堕天使との全面戦争もありえる状況でする程の事なのか……或いはだからこそ魁斗を本格的に取り込む為の布石であるかもしれない。どの道自分に伝えられないならば自分のすべき事は決まっているとソーナは思考を切り替えた。
「であるならば私も親友としてリアスが立ち直れる様に全力を尽くしましょう。一先ず魁斗君も呼んでお茶会でも開きましょうか!フフフ、腕が鳴りますね!」
「……………………………そっか☆程々にね☆」
後日お茶会に向けたお菓子作りが実施され、味見役の眷属や召使達が地獄を見たそーな☆
頭の良い子が理想と現実の擦り合わせをしていく図、現実的なラインで夢を考える様になりました。みんな自分程優秀じゃないんだって。
そんな事よくよく考えなくても分かるだろ!って大抵の人は思うんですが割とエリートにありがちな思考なんですよね。
ゆと◯教育でフリーな時間を増やせばみんな勉強すると思い込んでた人とか。
もっと酷いのだとヤ◯物依存なんてちょっと頑張れば抜け出せるさHAHAHA!みたいなマッチョイズムでヤ◯物解禁しちゃう事があるぐらいですし。
いくら頭が良くても自分を基準とした色メガネは中々外せないのです。
次回もお楽しみに。