ハイスクールDxDで掲示板もの   作:ねばねば納豆

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匙回です、題名で分かると思いますがシスコン魔王も出ます。
話は進まないけど許して!ソーナ周りは書いてて楽しいの!


失礼ね、純愛よ☆

「うおぉぉぉぉ!!!」

 

 シトリー領にて匙は自身の無力感を振り払う様に鍛錬をしていた。本命であるコカビエルが来る前に前線離脱し、自身が守るべきソーナには逆に守られる始末。その上気に食わない相手に助けられたのだ。頭の中はあらゆる感情でグチャグチャだ、そしてそれを理屈で抑え込める程賢くもない。匙は日々何も考えられなくなるまで鍛錬し泥のように眠ろうとする、だがそれまでは頭には様々な記憶が過っていた。

 

 ───私の眷属になりませんか?

 

 ソーナ・シトリーの眷属になった日は匙元士郎にとって最良の日だった。ごく普通の学生が自身に眠る力に覚醒し、自身が心惹かれていた才色兼備の美少女に見出される。気分は物語の主人公だっただろう、眷属になるのに兵士の駒を4つも必要としたというポテンシャルの証明もあったのだから猶更だ。これから多くの経験を積んでいきソーナとの絆を育み愛へと変わっていくのだろうと、そしてその暁には───デキ婚したいなどと妄想を重ねていた。

 

 ───教育ノウハウの共有や教員の出向を求められたらどうしますか?

 

 ……そんな高揚感に冷や水をかけられた。思い人が目指していた誰もがレーティングゲームに参加できる様に学校を作るという夢、それを叶えたとしても目的を果たす事は出来ないと、積み上げた努力を余所者に取られると言われたのだ。匙はそれを否定したかった、そんな事にはならない!そんな卑怯な事はさせない!と。

 

 ───そう、ですね。それは考慮すべき事です

 

 ……だが当のソーナがその通りであると認めてしまっていた。理想に燃え、必ず夢を叶えてみせると言っていたかつての姿からは想像もつかない程弱々しい姿で。それが理由無く嘲笑されたのなら見返してやると熱量を上げられた、議論を重ねた結果出たのであればその欠点を改善すれば良いだけだった。だがこれは部外者が軽く会話しただけで出てきた疑問なのである。眷属達が……匙が気づきもしなかった根本的な問題であり、彼らの誰かが言うべきだった。例えそれが主を傷つける事に繋がったとしても赤の他人に言わせてはいけなかった。

 

(あいつが言わなくたって俺達が気づいたはずなんだ!俺ならあんなに傷つける事は無かったのに……でもこんなのって)

 

 匙だって落ち着いて考えれば理解できる程度の事だ。同じ指導者、同じ練習時間で差が出るとすれば当人のやる気や才能であると。……匙にも心当たりはある。まだ神器に目覚めて鍛え始めたばかりである自分に対し、先にソーナの眷属となったメンバーでも何人かはすでにスペック上では自身が追い越しているのだ。共に鍛錬していた仲間達が自身よりやる気がないという事はない、口が裂けても言えない。だが明らかに差は出ている、特に神器の有無による差は大きい。それに目を背けていたのは他でもない自分達だ。

 

 

(……後から来た奴にいいようにされるなんて事許されるのかよ?!)

 

 自分達が努力して達成した成果を他者に譲らなければいけない事に抵抗を持つのは当然だ。だが、もしも才覚が劣る者が勝る者に勝てる様になる教育機関が存在できたとすれば弱者では無く強者を受け入れるのが悪魔社会全体の為になる。何せ悪魔の自力の差は匙の感じている物の比では無い、上澄と底辺を比べれば数万倍でもきかない実力差なのだ。政治的なやり取りはあるだろうがそれを拒絶するなどあり得ない。

 

(……それでも努力し続けていれば何か解決策が見つかるはずだ!)

 

 その考えは若さとも浅はかさとも言えるものだ、なまじ自身が努力した分伸びているだけに誰もがそうだと思い込んでいる。匙自身が持つ者側であるという自覚が少ない、自身が追い抜いた相手が無意識に諦観を抱いている事を察する経験もない。頑張ったら頑張っただけ報われる等という妄信、それは年を重ね挫折を経験する事で自然に解けるありふれたものだ……歪む程の挫折でもしなければ何も問題はない。

 

 ───誰か俺に攻撃してきてよ!大丈夫!怪我はさせないから!

 

 匙の心にひびを入れたのはソーナを悲しめた元凶からの挑発、いや当人にそんなつもりは欠片もなく聞き分けのない子供を嗜める程度の事実確認だ。その歯牙にもかけない物言いに匙は目にものを見せてやると神器で攻撃を仕掛けた……結果は相手の言い分が正しかったと証明するだけに終わった。自慢の神器は何の効果もなく、傷はおろか意表すらつけていない。どれだけ負けん気が強かろうと認める他無かった。今は無理でも……いつか、いつか必ずリベンジすると心に誓いながら。

 

 ───多少はできる様だが所詮は人間、脆いな

 

 そんな思い上がりは即座に砕け散った。自身を圧倒した男のあっけない敗北、想像を遥かに上回る強者達の大戦争。役に立つとか立たないとかそういう次元ではない、嵐の中に放り込まれた蟻は呆然とその戦闘を見つめる事しかできなかった。もしや自分達が目指すのはあのレベルなのか?そんな事不可能ではないか?という絶望を頭に過らせながら。

 

 ───たゆたう紫炎のエレメント!魔導騎士ウルザーdゴバァッ!!

 

 そんな暴虐の嵐の中で兵藤魁斗は立ち上がった……心臓を貫かれ代用品で辛うじて命を繋いでいるだけの状況でだ。結果として匙が嫌う、憎しみすら抱く男は最後まで立ち続け自分達を守りきった。……その姿にどんな感情を抱いたのかは匙自身にも分からない。

 

(仲間の為だった、勝算もあったんだったと思う……それでも俺は同じ状況で立ち上がれるのか?―――ソーナ会長はどう思っているんだ?)

 

 魁斗を見るソーナの横顔は匙が見た事のないものだった。感動か羨望か憧憬か……あるいは恋慕なのか、それが何にしろそんな顔はして欲しくなかった、自分に向けて欲しかった。どす黒い感情が匙に宿っている、あらゆる感情をミキサーして燃料に変え匙は鍛え続けた。

 

「随分気合が入ってるわね☆」

 

「セ、セラフォルー様?!」

 

 そんな思考を中断せざるを得なくなった。唐突に現れたソーナの姉であり魔王であるセラフォルーに対ししどろもどろになりながらも頭を下げる。マナーも何もないものだったがセラフォルーは特に気に留めず話を続ける。

 

「何事も焦っては事を仕損じるわよ☆肩の力を抜くべきじゃないかしら☆」

 

「で、でも?!」

 

 その言葉の先が続かない、強くなりたいという気持ちばかりが先んじているという自覚はある。それでもじっとしている事などできない。目上の相手、将来的な義姉(になって欲しい)相手に何とか説得しようと頭を回そうとしている中、セラフォルーが先に口を開いた。

 

「まあまあ、一度言葉にしてぶちまけるのも必要よ☆ゆっくりとでいいから話してみなさいな☆」

 

「は、はい……」

 

 匙は促されるまま無心に自身が溜め込んでいた思いを吐き出していく、途中無我夢中で言葉が荒くなるも罰せられる事もなく何も言葉が出なくなるまで話続けた。その結果匙は心が軽やかになったのを感じていた……一度だけ心臓を掴まれる様な感覚があったが。

 

「心が軽くなりました。ありがとうございます、セラフォルー様。ソーナ部長には言えない事も沢山話せた気がします。あいつにだって負けない用に頑張れそうです!」

 

「……気が晴れたなら何よりよん」

 

 今更ながら何か変な事を言っていなかったかと匙はセラフォルーの顔色と窺うがニコニコと笑みを浮かべており機嫌が悪い様子も無かったので胸を撫で下ろした。流石にデキ婚うんぬんの話をしてはいけない程度の常識はある、精々ソーナを慕っている程度の事を話しただけだと納得したのだ。

 

「でも例の魔法使い、兵藤魁斗君だっけ?常識的な方法で彼に追いつくのは難しいわね、正直言って神器使いで今の彼のレベルに到達している人間は滅多にいない。今後も成長するでしょうし……貴方が神滅具使いならまだしもねえ」

 

「うっ!そ、それはその」

 

 セラフォルーからの指摘に匙は狼狽える、匙自身も自覚している事だったからだ。ソーナから眷属達にはいずれ上級悪魔へと昇進して欲しいと言われている、学校で教師をする為の実績作りや卒業者を眷属にしてアピールをする為にもゲームへの参加資格を得なければ話は始まらない。昇進には最低でも数年、周りの妨害も考慮すれば十年はかかると見込んで鍛え上げていた……そんな中ソーナの見込みでは魁斗の実力は最上級悪魔やその眷属並みであるという。自分達の目標よりも更に先へいる相手にすぐに追いつけるなどと思い上がれない、下手しなくとも一生追いつけない可能性もあるのだから。

 

「───本気で強くなりたいなら方法はあるわよ、リスクも相応だけどね」

 

「?!!本当ですか?!」

 

 諦観すら抱く中、セラフォルーの言葉に希望を感じ匙は強く反応する。そんな匙を見てセラフォルーは口角を上げて話を続けた。

 

「まだ内密な話だけど今回の襲撃の補填としてアザゼルから神器の提供があるの、その中には貴方が持つ神器と同系統のヴリトラ系の神器もあったわ。一緒に共有される神器の移植技術を使えば貴方は複数の神器を所有できる……同系統とはいえ複数の神器を持つ事の長期的リスクは見れてないけどね」

 

「やります!どんなリスクがあったってかまいません!!ソーナ会長の力になれるなら本望です!!」

 

 その言葉には実感がない、平和な日本でしか暮らした事のない学生では思い起こせる悲惨さに限界がある。痛いや苦しいで済む程度であるとしか考えられない、まして四肢を失った程度なら治せる世界にいるのだ。失ったら戻ってこない事もあると知らない男の覚悟など高が知れていた。

 

「ありがとう。これからもソーナちゃんをよろしくね」

 

 そんな内心を見透かした上でセラフォルーはにっこりと微笑む。匙はその笑みに得体の知れない物を一瞬感じたがそれを飲み込み元気よくまかせてください!と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「ソーナ様唯一の男性眷属はどうでした?」

 

 

「うん?そうね……嫌いじゃないわ」

 

 自身の執務室でセラフォルーは眷属からの質問にそう答える。彼女を知るものからすれば妹に近寄る男は全員敵だと言っても疑問はない、寧ろ今の様な悪感情のない答えの方が疑問符を抱くだろう。

 

「つまり好きでもないんですね。そこそこの問題児だったので?」

 

 セラフォルーの内面を幾ばくか知っている眷属はそれを最低評価であると判断する。そもそもマイナス評価であるなら排除されているのだから。

 

「だってソーナちゃんと同年代の男よ!ほんの僅かでもくっつく可能性があるとかそれだけで殺したくならない?!デキ婚狙いなら猶更よ!私だって我慢してるのに!」

 

「シスコン拗らせすぎや!!!…………えっ?今デキ婚って言いはりました?彼って日本人ですよね?未開の地の蛮族とかじゃないですよね?」

 

 眷属は敬語を忘れ突っ込みを入れる。過剰な姉妹愛とも取れるがその気になれば性別を変えられる世界では洒落にならない。遅れて匙のヤバさにも戦慄していた。

 

「失礼ね、純愛よ☆見境なしのおっぱい魔人よりマシです~!」

 

「私のは性愛はないからセーフ!ただ感触を味わいたいだけやから!コミュと育乳も兼ねとるから!」

 

「いや普通に他の眷属から苦情来てるからね?何回かしばかれてるよね?」

 

 やいのやいのと二人の女性が騒ぐ、彼女達を知らぬ者がこの有様を見て彼女達が冥界でもトップクラスの実力者だとは分からないのではないだろうか?

 

「───で?実際の所どうします?排除しないにしても眷属同士で発散させときます?何故かモテるようですし簡単にできますよ?」

 

「ううん、そういうのは()()いいや☆。今やって安っぽい覚悟が萎えても面倒だしね☆」

 

 セラフォルーは眷属の提案を却下する。その手の小細工が必要なのはまだ先だと考えていた。

 

「ソーナちゃんにはいずれ失う痛みを知って貰わないといけないしね☆その時まで頑張ってもらいましょ☆ソーナちゃんに不埒な視線を送った分は使いつぶしちゃうぞ☆」

 

「……やっぱり嫌っとるんやないですか」

 

 えげつない主にややげんなりとした眷属に対し、その主はきょとんとした顔をして答えた。

 

「嫌いじゃないのは本当よ?───だって切り捨てても心が痛まないじゃない☆」

 

 




ネタバレ:匙は原作には無かったオリ神器も獲得します。

 仮にも匙は原作のライバルポジですからね。大幅に強化を入れる予定です……空気が不穏?どうなるんでしょうね?(予定は未定)

 セラフォルーは眷属を魔法少女系(戦うヒロイン系も可)にしようと思ってます。今回出たキャラは分かりやすいかな?

 次回もお楽しみに。
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