そこそこ新キャラも出てきます。
また話は進みませんがお楽しみ下さい。
「よく集まった!我が精鋭達よ!」
「まあ過半数は画面の向こうですけどね」
爆弾染みた情報を叩きつけられた曹操はやけっぱち気味に会議を開いていた。MBにおける頭脳労働担当の者達、彼等を呼び出し知恵を借りる為の場だ。日本にいないメンバーは画面越しでの通話であり、通信傍受されない様に魔術及び科学によって多角的に防御している。その上絶霧での隠蔽を行う事でこの会議は神話の神々にすら覗き見は不可能だ。MB最大の警戒体制で会議行われている状況に議題を知らぬ者達は得も知れない緊張感に包まれていた。
「さて集まってもらったのは他でもない、魁斗君から得られた情報の精査だ。色々と目を疑う事はあるだろうが意見があれば言って欲しい。これらの事がどこまであり得るかだ」
その緊張感は即座に困惑に変わる、新入りの幹部である兵藤魁斗からもたらされた情報が意味不明だったからだ。やれ異世界だの、ラノベだの、異世界転生者だのという与太話を真面目に書かれた資料を渡されて平常心を維持できる者は稀だろう。時折自身の知っている重要情報に合致している内容を目にして冷や汗をかく者もいるが見当違いの内容もありそのチグハグさに言葉を紡げずにいた。
『僭越ながら一言良いですか?まず行うべきは薬物検査と精神鑑定かと。資料を見る限り兵藤魁斗が正気であるとは思えません』
そんな中1人の女性が言葉を発する、黒髪ショートボブの彼女は緑色の瞳に確固たる自信を宿して誰しもが口に出来ず内心に秘めていた本音を語った。
「どちらも既に実施済みですが(元からおかしいという点に目を瞑れば)問題はありませんでした」
『であるならば唯の狂人の戯言ですね、その情報のどこに信用が置けるのです?』
手足を切断する事に躊躇せず、失った心臓を辛うじて補えている状態でも戦場に戻る者は勇猛な戦士であるが狂人なのも疑いない。内容も加味すれば彼女の意見は何も間違っていない、それはその場にいる誰もが同意できる事実だ。
「うんうん返す言葉もない正論だ……ただ、そもそも君をこの会議に呼んだ覚えが無いんだが連絡ミスかな?」
『えっ?』
自信満々に語っていた女が固まる、自身が呼ばれていなかった事実を信じられないのか視線は揺らぎ口元は引き攣っていた。まあその場にいる他の者達はなんだそうだったのかと薄い反応しかしていなかったが。
『私に案内が来ていなかったのはミスで無かったと?……曹操、貴方は随分と疲れているようだ。人間を超えた演算能力を持つ私こそMBの
秘匿に秘匿を重ねた会議を察知し入り込むのは身内である事を考慮した上でも彼女の有能さの証明だ。彼女の能力を疑う者はこの場に誰一人としていない……だが最大の頭脳等と戯言が混じってしまった事が数人の琴線に触れた。
『いやドンマイ、アンタにそういうの求めてないから。優秀なのは間違い無いんだから素直に自分の職務に戻りなさい』
『えっ?』
『ドンマイ、提出された書類だが見ずらい、修正しろ。……いやもうグラフは他の者に任せておく、他の業務に励め』
『えっ?』
『ドンマイちゃん、もらった兵器の仕様書なんだけと前提間違ってない?面白いとは思うけど一般兵が使うのに反動大きかったり使い勝手悪いのはダメじゃん?』
『えっ?』
三者三様のツッコミを前に出来る女ムーブは見事に砕け散っていた。画面の中で酸欠の金魚の様にパクパクと口を開ける女に対して三人は目配せをし息を合わせて声を上げた。
『『『まあそんな時もあるって!ドーンマイ!!!』』』
『キレそう』
ある日MBのサーバーにハッキングを実施し、即座に逆探知されメインサーバーを確保された自己成長型AI。個体名称【オールマインド】、通称ドンマイこそが彼女の正体である。AIに関わる人間を正負問わず発狂させる彼女は見知ったメンバーからは舐められていた。
「……フー、誰にでもミスはある、そう思いませんか?私の職務は多岐に渡り量も膨大です。私の貢献度を考えれば目をつぶれる範囲かと。
誰かがマジかコイツと呟く、失敗に対して改善策を出すのでは無く自己弁護を始めるのはAIというよりダメな学生や社会人である。
「そうだね君より組織に貢献している幹部はいないさ、君がいるだけで電子媒体への改竄を防げているからね。だからこそ君には余計な負荷をかけたくない。ド……オールマインド、ここは私達に任せてくれないか?」
「フフフ、ボスである曹操にそこまで請われたのであれば仕方ありません。狂人の思考チェックはあなた方にお任せしましょう。……後!あの不名誉なあだ名は金輪際使わないように!!」
曹操に煽てられたオールマインドは機嫌を取り戻し素直に会議から抜けていった。不穏な様相だった会議の空気は吹き飛ばされ、誰もが曖昧な表情をしている。通常のAIには不可能な所業だった、いや人間でも滅多にいない素質だろうか?
「…………あいつ本当にAIなの?自分をAIだと思い込んでる精神異常者だったりしない?」
「あいつがAIでないという魔術的証拠は全くない。魔法による電子媒体の改竄を防げている理由も不明だ」
「改竄できないのは戦闘力が高いと暗示が聞かないのと同じ理屈だとは思うよ。そもそも電子媒体が出来たのってここ数十年の話だしね、魔法自体が電子媒体に最適化できてないんじゃないかな?」
裏社会における組織運営で最も苦労するのは書類作業だ、表だろうが同じと思うかもしれないが裏ではその比ではない。この世界では魔法での暗示はカメラの映像にすら干渉できる、それはつまりその気になれば
その点MBはオールマインドによる保護で改竄を気にせずに電子媒体を使用できる、他の組織に比べて処理能力が高くコスパも高いというアドバンテージを得ていた。
「ところでさぁ……ドンマイちゃんってコピーしても普通のAIにしかならないんだよね、怖くない?サーバー自体に特異性は見当たらなかったし……魔術要素本当に無いの?何か見落としてない?」
「再三見直したが無かった。アレは完全に科学技術によるものだと判断するしかない」
「AIってあんなファジーな感情表現出来ないはずじゃ?アイツそんなに高性能なわけ……えっ?容量600GB???今時USBメモリでももっと容量あるわよ???」
神も悪魔も実在する世界でAIの実在が疑われている、とても21世紀とは思えない会話だった。彼女をAIであると肯定するゲオルクもどこか自信無さげに眉を潜め、会議の参加者逹は意味不明な存在に困惑していた。
「まあ一旦ドンマイの事は置いておこうか。実際問題どう思う?」
緩み切った空気の中で曹操が建設的な会話に引き戻そうとする、その意図を汲み取った猫耳の様な形状のフードを被った幼なげな少女が話し出した。
「……正直ドンマイの意見に賛成です。異世界だのラノベだの信じるよりはそいつの頭がおかしいと考える方が妥当、もしくはどこかの勢力が私達に間違った情報で誘導しようとしているのか……曹操様は信じられているのでしょう?態々私達を集めようと思った根拠は何ですか?」
常識的な疑問を前に曹操はどこか悪戯っぽい笑みを浮かべて話した。
「ふむ、まあ彼が知る筈のない情報を持っているのも理由の一つだが……荀彧、彼は君の隠している名前と容姿を言い当てたよ。何でも三国志のゲームで君に似たキャラがいるらしい」
「なぁ?!」
荀彧、かつて曹操に仕えた軍師を名乗る少女は自身の理解を斜め上に超えた答えに驚愕する。ゲームの登場キャラと実在の人物の容姿や名前が被るなどどれ程の可能性だろうか?偶然の一致と断ずるには低すぎる数値なのは間違い無いだろう。
「経歴は抹消済み、もはや私や孔明ぐらいしか知らない名前を知っていた。過程や精度は兎も角相応に信用せざるを得ない。その上でだがこの『ハイスクールDxD』のストーリーはどこまで起こり得ると思う?」
意味不明であっても現実に存在するなら受け入れるしかない、神々が実在し凡ゆる神秘が存在する世界で生き抜く必須技能だ。少女は固まる思考を無理矢理動かし話し出した。
「……三大勢力の同盟はあり得るかと、かつて二天龍に対抗する為に協力は出来ています。それ以上のオーフィスが敵になるなら尚更です。他の神話の動きに関しては何とも、資料にある情報では判断材料が足りません」
「はいはーい!この御使いってのはあり得ると思うよ〜!何体か悪魔や堕天使を解体したけど意外と体の構造似てるんだよね〜!悪魔の駒があるなら堕天使や天使の駒も作れるんじゃないかな?」
「魔術的視点でも同意する。人工神器に関してもアザゼルなら生み出せるだろうな。長年神器狩りをしてきた中で回収した神器は百を降るまい、それだけの研究材料と時間があれば何らかの形にはなっているはずだ」
「この事件に関して───」
「この人物は確か───」
「技術的に───」
一人また一人と自身の考察を話し出す、英雄の子孫や魂を受け継ぐ英雄とそれほど才気に溢れている訳でない人間が意見を交換する様は神話の神々には信じられない光景だろう。有象無象は束になっても選ばれた者には勝てないと考えている彼らは凡人にもリソースを割く事に意味を見出せない、実際時代によっては無駄となってしまうのも事実だ。だが今の時代はそうではない、余裕を持てる様になった人類は肉体労働だけで無く頭脳労働にも数を活かせる様になった。一人一人は神々に劣るとしても積み重ねれば超える事も出来るだろう、曹操はその一端を前に笑みを浮かべながらそれらの意見を纏めていた。
◇
「───つまりは大筋の出来事は起きるかもしれないと、弱体傾向にあった三大勢力が息を吹き返すわけだ。厄介すぎるな全く」
最終的にストーリーに多少無理はあるがあり得ない訳ではないという意見で一致した。数値としては2〜30%程度だろうが直近リアス達への襲撃というあり得ない事態も起きている以上楽観視は出来ない。
「一つ質問です。この物語の主人公である兵藤一誠に関してはどうしますか?取り込もうと思えば簡単に出来るとは思いますが……私個人としては排除するべきかと」
主人公、物語の中心人物であり世界の命運を握る事も多い。何らかのアクションを起こす価値のある相手なのは間違いない、特に一誠はデウス・エクス・マキナの如く都合良い状況を生み出している。放置するには余りにも強大な存在だった。
「あ〜彼に関してはノータッチで、
(引き込むと魁斗君は良い印象を持たないだろうし、ね。態々魁斗君を切ってまで引き込む価値はないかな……贔屓し過ぎると桂花が怒るだろうなぁ)
私情と実益双方から一誠に関しては放棄を選択する、今更という事もあるし味方への配慮も兼ねていた。その様な気配りは地味ながらも重要だ、少なくとも魁斗への贔屓に噛みついてくるだろう仲間が目の前に一人いる。共に苦難を乗り越えた相手だ、理由を話せば理性で我慢してくれると信じて……いや多分無理だなと脳内で結論付けたのだ。曹操は才能ある子って灰汁が強いなぁと遠い目をしていた。
「仮にも主人公がそんな扱いなんて儚いもんだね〜。因みにその時眠った力が目覚めて悪魔に打撃を与えてくれたりとかは?」
「多分無理だね。本来彼が積むはずだった経験は魁斗君に持って行かれている、悪魔にすらなっていないし強さを使いこなす土壌がない。まあ彼雑にパワーアップする事多いらしいんだけどね」
「
「下品な癖にやたら強力なのよね。装備破壊に読心、何処由来の技なんだか」
心理的にも物質的にも接近戦をしたくない組み合わせだ、曹操も何かの間違いで覚醒した兵藤一誠を相手にする場合は遠距離から仕留めるだろう。最もそう上手くいくとは限らないので装備破壊と読心対策の能力は作っておくかと曹操は計画していた。
「常識的に考えたらどっかの神なんじゃない?名前は兎も角効果はそういう権能持ってる神ぐらいいるでしょ。曹操ー、そこら辺資料に無かったけど誰なわけー?」
兵藤一誠に力を与えた存在は乳神と呼ばれる異界の神、恨み辛みしか残っていなかったはずの怨霊を乳を愛する何かに変質させる厄介な存在だ。知れば誰もが警戒し対策を考える事だろう。
「
この世界でその存在を知る者はいない。
怒らないで聞いて下さいね?乳神なんて頭の悪い名前の神様が実在する訳ないじゃないですか(北海道にいる)
はい、知識持ちが知らない事に振り回されるのは鉄板ですよね。今回は原作自体が違ってるという変化球です。この差異がどんな影響を与えるかは誰も知らない(作者も知らない)。まあ乳神関係なく差が酷い事になるのは目に見えてるから誤差だよ誤差。
次回もお楽しみに。