ハイスクールDxDで掲示板もの   作:ねばねば納豆

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戦隊が終わるとか不祥事とか色々嫌な話が多いですね。
仮面ライダーの様に復活出来る事を祈りましょう。


無敵 VS 万能 その2

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!」

 

 悲鳴、いや声になっていない音漏れの様な異音を出しながら匙は膝から崩れ落ちた。痛みは無い、前後不覚に陥ってもなお匙の肉体は無傷だ。匙を苛んでいるのは全身を襲う奇妙な圧迫感と呼吸もままならないレベルで続く嘔吐だ。吐き出されている()は匙の体を覆いつくす勢いで止まらない。

 

(な、何だコレ?呪いの類か?でもそんな感覚は……)

 

 この怪奇現象を前に匙は呪いではないかと考えた。呪いは魔法よりも破壊力には劣るが破壊を伴わない効果を出す事に優れている。ダメージを負わない匙相手に試そうとするのは自然な事だろう。だが匙は自分の考えに疑問を抱く、そも例え肉体をバラバラに引き裂かれ人間の扱える神器に貶められたとしてもヴリトラを前にしては並大抵の呪いは無意味だ。万が一それ程の呪いであれば掛けられる前に気づくし、今もその様な感覚は無い。

 

「おーこれでも無傷なのか。消費も大した事無さそうなのに体内も保護対象とか盛り過ぎだろ……やっぱり何かしらの条件つきか?全身は隈なく攻撃したから固定部位が弱点というパターンは考えにくいし属性もメジャー所は試したしなぁ」

 

「……夕方に帝王切開で生まれた人間みたいなピンポイントな奴ならどうしようもないぞ?或いは本体が別にある奴か?うーん、神話とかだと他にどんなんがあったかな?」

 

「いっぺん本気の一撃入れてみるか?……流石に模擬戦で死人出しかねないのはダメか。後何を試せるっけなー」

 

 蹲る匙を視界に入れつつも魁斗は思考に耽る。敵を前にした行動としては迂闊ではあるが魁斗にとってこの模擬戦は練習でしかなく、色々と試してみようとしか考えていない。なにせ日頃の鍛錬相手は半端な魔法なら拳で消し去るのだ。手数よりも質に主眼を置いた魔法しか使う機会がない。魁斗にとって程よい強さで頑丈な匙は都合の良い試合相手(サンドバッグ)だったのだ。

 

(───ふざけるな!!俺は、俺は!!!)

 

 それを察した匙は怒りの感情に囚われる。血の滲む様な努力を惜しまなかった、危険かもしれない神器移植だってした、ソーナの為に全てを捧げる気概があった。その全てを否定されたとしか受け取れなかったからだ。それが嘘か真かは別にしろ激しい感情が神器を更なる領域へ導く事に違いはない。……最も代償もまた相応だが。

 

『───捧げよ。さすれば身に余る力を与えん』

 

 匙の激情を呼び水にインド神話に名を刻む災厄の邪龍が目を覚ます。それは偉業であり愚行、最早匙の未来に安寧は訪れず破滅か栄光しかあり得ない。それを知ってか知らずか匙は英雄への一歩を踏み出した。

 

罪科の獄炎龍王(マーレボルジェ・ヴリトラ・プロモーション)

 

 ───原典より早く至った禁手はより禍々しく、より激しく、産声を上げた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

「───驚いた、もうそんな所まで至ったんか。複数の神器を持った事で相乗効果でもあったんやろか?」

 

 匙が変身したヴリトラの姿を見てはやては感嘆した様に呟く。一部の例外(赤龍帝)は確認されているが通常禁手に至るには長い年月を要する。須らく強者という物は例外を生み出す側ではあるがそういう意味では匙がそちらの領域に足を踏み込んだという事だ。

 

「ハハハ!力が全身から湧き上がってくる!!これがヴリトラの真の力か!!」

 

 当然本来のヴリトラの力には遠く及ばない。だがそれでもその力は龍王クラスに届き並大抵の者では歯が立たない。だが匙は巨大な龍と化した想定の鍛錬等しておらず、人間体の鍛錬が役に立つ事もまた稀だろう。その上あふれ出る力に溺れ高揚感を抑えきれていない現状ヴリトラの力を十全には使いこなせない。

 

「……マ?ヴリトラ?そりゃあ攻撃が効かない訳だ」

 

「そうだ!邪龍ヴリトラ!これが俺の力だ!!!」

 

邪龍の煉獄(ボトム・オブ・パーガトリー)

 

 間の抜けた反応をする魁斗は邪龍の領域に閉じ込められる。魔力を削り取り奪い取る為生み出された牢獄、罪が洗われる処か何もかもを燃やし尽くす呪いの業火。それだけでも大抵の生物は骨も残らないというのに匙は重ねてブレスを叩きこむ。その有様には理性は感じ取れなかった。

 

「魁斗君?!匙止めて!!もう決着はつきました!!」

 

 追い打ちを続ける匙をソーナは静止するがその声は届かない。散々コケにされた恨みを晴らす様に炎は燃え上がり続ける。自身であれば火の粉一つで戦闘不能に陥る呪いの集合体、そんな物の中に居れば魁斗でもただでは済まないとソーナは血の気が引くのを感じていた。

 

「はやて!早く止めてください!みんなも手伝って!」

 

「よし来た!さやかちゃんにお任s「んー?ちょっと待ってな?」グェ!」

 

 それでも何とか止めようとソーナは手を尽くす。姉の眷属であるはやてやその他のメンバーなら匙を止められるだろうと。だが動こうとした者をはやてが拘束する。ソーナからすれば理解に苦しむ判断だ。

 

「何を悠長な!!……はやて、貴女まさか?!」

 

 その行動を目にしたソーナの脳内に嫌な考えが浮かぶ。唐突に組まれた模擬戦、匙の鼻を折るだけならはやて達で出来た筈だ。少なくとも部外者である魁斗に任せる理由はない。いや適しているのは適しているがリスクも相応だ。だが目的が異なるなら話が変わる。取り込めないならば……と誰もが考える訳ではないがそういう派閥は必ず存在するのだから。

 しかし、ソーナの疑心暗鬼を他所にはやては首を傾げる。そこに企みが上手くいった喜びは無く、ただ純粋に疑問に包まれている様に見えた。

 

「……エクスカリバーにはあっけなく貫かれたって聞いとったけど物理方面が脆かっただけなんかな?」

 

【マージ・マジ・マジカ】

 

 呪いの業火の中から巨人が飛び出す。人よりもロボットに近いその巨人は勢いそのまま邪龍を殴り飛ばした。それだけでも驚く豪快な場面だが感知能力に優れた者はより驚く点がある。魁斗が変身したその巨人は多少の火傷はあれど全く呪われていないのだ。短時間とはいえヴリトラの呪いに晒されたならば龍王クラスでも無傷とはいかない。それでも全く呪われていない仕組みは単純、呪いを解呪したのだろう。時間と労力もかけずに一瞬でヴリトラの呪いを解呪した事は信じがたい話だが目の前で起きている以上信じるしかない。

 

「ぐがあぁぁぁぁ!!!い、()()!な、何で?!」

 

「ヴリトラは強大だが名乗るだけで弱点がばれる程度には有名だろ?所で時間帯は夕方カウントでノーカンなのか?」

 

 魁斗の拳は奇妙な光沢を放っている、よく見ればその正体は泡だと理解出来るだろう。木、岩、乾いた物、湿った物ではない海の泡による攻撃で敗れた神話の再現だ。その有名過ぎる逸話を考えれば魁斗の意見は間違っていない。ヴリトラの名を出した匙の失策と言える。

 

「いや、普通分かっても泡なんてすぐ用意できへんねん。相当強度上げんとただ割れてお終いやし」

 

 驚きを通り越して呆れすら滲ませた声色ではやてが言う通り戦闘中に泡を用意は普通できない。よしんば出来たとして武器として使用可能な強度を持たせるのは別方面の難しさだ。その二つの条件を満たせる相手を前にして初めて匙の失策となる。そんな低確率な問題を考えるくらいならヴリトラの名を出して相手の戦意を削いだ方が合理的というものだろう。

 

「で?次の手は?守りは崩れたんだ、相応のもんが無いならただ痛い目に合うだけだぜ?」

 

「ク、クソッタレェェェ!!!」

 

 苦境乗り越え新たな力を手に入れた匙、だがその力は敵との相性が悪過ぎた。敵を打倒するには更なる覚醒が必要となる。匙にはそれが出来るだけのポテンシャルはあるだろう。

 ……ただ今すぐ引き出せる程の心の強さは持ち合わせていなかった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

「いやー彼素質ありますね。根性もあるしまだまだ伸びますよ。ああ、結局名前聞けなかったな」

 

「あ、うん。さよけ」

 

 それをボコボコにした奴が何言ってんだと思ったが口には出さない。色々とツッコミ所が多過ぎて何処からツッコメばいいか分からなかったのもある。それだけ終盤の戦いは酷い物だった、殴り合い(比率1:9)を続けて匙が倒れれば立ち上がるのを待ってまた続けるという物だ。"まだやれる!ガンバレ!"と殴り倒した相手を応援する様はサイコと言わざるをえない。いっそ倒れても攻撃を止めずノックアウトする方が良心的だろう。

 

「またやりたければ連絡下さい。俺も色々試せる相手との鍛錬は為になるので」

 

「多分もうやる事無いんちゃうかな?(後でちゃんと伝えとくわ)」

 

「ナゼェ?!」

 

 意識が途切れる瞬間まで粘った匙は大したモノだと思うがそれだけだ。意地で立ち上がっていただけで勝利は完全に諦めていただろう。無知故の無謀さを失っても若さ故の拘りはまだ残っている。そんなデリケートな状態でぶつけても何か得られるとは思えない。はやてとて無意味に若者を傷つける趣味は無い、当面は必要が無ければ接触すら避けさせようと決めていた。

 

「所で防御突破する前にしてたのは何やったん?呪いでは無さそうやし魔法か何か?なあなあ、お姉さんに教えてや〜!」

 

 一旦匙の事は置いておいてはやては魁斗へ近づき見上げる様に顔を近づける。覗き込む形になる魁斗の視界に入るのは当人の童顔とそれに釣り合わない山脈だ。ラフで開放感のある服装で夏場故にいくらか汗ばみ透けているその光景はちょっとした楽園だろう。魁斗はさっと視線を晒すがもはや匙の事は頭に無い。男を誤魔化すのはいつだって色仕掛けが1番だ。

 

「あー、別に特別な事はしてませんよ?ちょっとした変身魔法の応用です」

 

【マージ・マジーロ】

 

 魁斗が呪文を唱えると校庭の地面が切り取られた様に消えて無くなった。いや、よく目を凝らせばその中心にビー玉大の何かがあるのが分かる。それは吸い寄せられる様に魁斗の手のひらの中に飛び込んだ。見せられたそれを見たはやては何となく仕組みを理解した。

 

「ほーん、圧縮した砂を飲み込ませたんやね。で、仕込みを取り除こうと思った匙君は魔力を吸収して自分から圧縮を解除してドカンっと……えげつな!!」

 

 ドレイン系の能力持ち相手のキャパオーバーを目指すのはありふれた狙いだろう。物理的なキャパを攻めるパターンは稀かもしれないが。魔力の様に限界が分かりにくい物よりも物理的な限界のある内臓をターゲットにするのは理に適っているが中々思い付かないし実行に移せない。この男には人の心という物は無いのだろうか?

 

「いや、回復薬(フェニックスの涙)は用意済みと聞いてたし内臓破裂くらいなら気にする必要あります?」

 

「うん、薄々感じ取ったけど君はタガが外れたタイプなんやね」

 

 何処か不服そうに頭を捻る魁斗に対してはやてはその評価を変える事はない。何らかの理由でブレーキのかかりが悪い者は一定数存在する。平時であればリスクでしかないが鉄火場では利点たりえる資質とも言っていい。つくづく戦いに適した子供だとはやては考える。同時にコレと比較される誰かは大変だろうとも、特に何かしてやる義理もないのだが同情してやる程度はいいだろう。

 

「折角やし魔法談義でもせぇへん?君の珍しい魔法詳しく知りたいしな!お姉さんがお茶奢っちゃる!」

 

「ちょっ?!待って!」

 

 はやては女の武器を最大活用(当ててんのよ)して魁斗を近場のカフェまで連れて行こうとする。推定龍王クラスの強者を放っておける程悪魔に余裕は無い。可能であれば仲間へ引き入れ、それが無理でも友好的な関係を気付く価値が魁斗にはある。

 

(あ〜若い子の初々しい反応たまらんわ〜♪うんうん、こういうのがええんや!悪魔(頭中世)共にも見習って欲しいわ。あいつらヌメッとした視線向けるまでなら兎も角実力行使してくるの何なん?!こちとら魔王の眷属やぞ!ちったぁ倫理観のアップデートせぇや!)

 

 彼女は滅私し主人に尽くす眷属の鏡、個人的な趣味は一切絡んでいない。ただ優秀過ぎて様々な厄介事を押し付けられる分ストレスを溜め込んでいるだけである。カフェへの道すがら若い男の反応を楽しむくらいは許して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜カフェでの一幕〜

 

「この魔法を使う時はガッ!とやってグググってやってます」

 

「なんて???」

 

「呪文って必要になったら頭に浮かんで来ません?」

 

「君は何を言うとんの???」

 

「魔法使いながら殴るのが1番強いと思うんすよ」

 

「それが! 出来たら! 苦労! せんわ!」

 

 はやては魁斗が天然なサイコなのか知的なサイコなのか最後まで判断がつかなかったらしい。

 

 ※総合的にはお互い楽しく話せました。




 魁斗もコカビエル戦より大分強くなってますがエクスカリバークラスの聖剣・魔剣があれば普通に殺せます。人間は斬撃弱点だからね仕方ないね。尚炎はあんまり効きませんし呪いはヴリトラ(全盛期)クラスじゃないと効きません。本当に人間か?
 匙くんのファンはごめんね、次の話は良い目に合わせるから許して。その後……さぁw
 次回もお楽しみに。
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