初期ブーストにしても高すぎない?
評価ありがとうございます。
今回は曹操視点の話ですね。
題名は思いつかなかったので適当です。
「……今日はあまりにも色々な事があったな。いや、何一つとして悪い事は無かったのだが……」
曹操は自室で疲れを隠せずベットに倒れる。想定外があまりにも多すぎた、弾丸の生産状況が改善したのはいい、いや半日もかからず終わったこの一件も大概ではあるが。
(アーシアはただの疲労だと診断していたし、医師の診断とも合致するから命に別条は無い。護衛にジャンヌをつけた、もし一部の人間の暴走があっても防げるだろう。情報漏洩も気にする段階では無い。悪魔から人間に戻れたなんて戯言は良くある事だ。どちらかというとアカネの魔獣創造の方を気にするべきだが非生物系以外は作らない様に頼んでいる、当面は異色のゴーレム使いだと誤魔化せるはずだ。……む?)
部屋の隅に霧が発生する。それは人間大に膨張し、中から一人の男が出てきた。いかにも魔法使いというようなローブを着てメガネをかけた気難しそうな男だ。
「乙女の部屋にノックもしないで入るのは感心しないな、ゲオルク」
「なるほど、それは失礼な事をした。で?その乙女に謝罪したいのだがどこにいるんだ?」
その男はゲオルク、曹操にとって右腕や左腕にあたる幹部の一人だ。
「正直今日はこのまま寝たい気分なのだがね。重要な報告でもあるのかい?」
「あの魁斗とか言う小僧の使用している魔法に関する現状の解析結果だ」
「困ったな、重要過ぎて逆に寝たくなったよ」
今回魁斗を呼び出した目的の一つに魔法の解析があった。現在人間が使用する魔法は悪魔が使用する物を人間用に改良した物がメインだ。魁斗の使用する魔法はそれとは違った物であり、呪文も2、3小節の物ばかりで汎用性も高い。それを解析し戦力増強に使おうと考えるのはおかしな事では無い。
「結論から言う、あの魔法の模倣や習得は現実的では無い。劣化させて使うのであれば現状の魔法で事足りる」
「不可能では無く、現実的では無いと来たか。理由を聞いても?」
「曹操、お前はあの魔法は神器と同様に感情を燃料に爆発的な力を獲得していると考察していたな?それは正しかった、あの魔法は勇気を魔力に変える術式が組み込まれている。その変換効率は解析した範囲でも一般的な神器を凌駕している。その分使用している魔法の燃費が悪いようだが大した問題にはならないだろう」
「……勇気とは、随分とヒロイックな感情を選んだ物だ。神器以上の変換効率も素晴らしい。だが、わざわざ勇気だけを選択する理由があるのか?怒りや憎しみ等の雑多な感情も魔力に変えた方が効率が良いはずだ」
感情の中でも怒りや憎しみとは抱き易い物だ。特に組織には人外によって家族や友人、恋人を失った者も多い。怒りや憎しみならばいくらでも湧き出す事だろう。
「理由ならばある、この術式はふざけた変換効率を得ている反面、異常なレベルで繊細な代物だ。ほんの少しでも感情が暴走すれば破綻してしまう程にな」
「感情の暴走を許さないだって?そんなバカな!矛盾しているぞ!感情とは強ければ強い程コントロールが効かないものだ、勇気も例外では…………いやまさか?!」
「そうだ、喜怒哀楽を筆頭にあらゆる感情は強くなるに連れてコントロールが難しくなる。だが勇気は例外だ、勇気はどれだけ強大になろうとも暴走する事はない。勇気とは恐怖を捻じ伏せ平常な行動をする為、心を制御する性質を持つ感情だからだ」
「……なるほど、確かに理にかなっている。燃料を厳選して効率を高めた訳だ」
「この術式を作った奴は夢想家であり、楽観主義者であり、頭のネジが全部抜けた天才なんだろうよ。普通思いついてもここまでピーキーな術式は作れないし、実証実験で動かす事もままならない。この魔法を解析して初めて実感したが神器という物は雑多な感情でパワーアップする分余裕を持った作りをしているらしいな」
どこか苛立ち呆れたようにゲオルクは語る。自身が考えもしなかった発想を現実に生み出した存在に複雑な感情を持っているのかもしれない。
「魔法の模倣が難しい事は分かった。他にコントロールできる感情も思いつかないしな。だが習得すら現実的では無いとはどういう事だ?魁斗君は勇敢ではあると思うが唯一無二という程ではあるまい、勇敢な者を選別すれば何人かは物になると思うが?」
「難しいだろうな、あの小僧レベルの狂人は滅多にいないし……どうやら何らかの存在からバックアップを受けているようだしな」
「狂人?彼が?それにバックアップだって?」
ゲオルクの言葉に曹操は疑問を持つ、確かに変人な部分はあるかも知れないが狂気は感じなかったからだ。あるいは魔法使い同士感じる事があるのかとも考える。
「どうにもお前は男の観察は雑になるな。奴の使う魔法の性質を知って何も疑問に思わないのか?戦闘時にお前は何と思った?」
「何と言われてもね……私という強大な敵を前にして生き残る事を諦めない勇敢な男だったよ。最後に腕を巨大化させた一撃には一本取られたね」
正直な感想を言う曹操を前にゲオルクは目尻を抑える。どうやら彼の求めていた答えでは無いかったようだ。
「……はぁ。では確認するが小僧はお前との実力差を理解できていたか?また、一度でも臆病風に吹かれた事があったか?」
「……ああ、具体的にかはともかく一定以上の実力差にはすぐ気がついたと思う。恐怖はしていたのだろうがそれで足が鈍っていた事は無かったはずだ」
「それはおかしいとは思わないか?勇気を消費して戦っているのに何故恐怖で足を取られる事が無かった?」
「それは……」
それは疑問に思うべき事象だった。勇気とはただでさえ失い易い消耗品だ。格上との相手でただでさえ勇気が必要な中、勝利の為に勇気を消費するのは一歩間違えれば敗北に繋がりかねない。
「戦場で
「……つまり彼はとんでもない勇気の持ち主だったと?」
「いや、
「奇跡的に魔法の特性と彼の性格が噛み合っている……いやそういう人間だからこそ目を付けられた?バックアップされていると言ったな?あのガラケーの事か?それで精神を操作されている可能性は?」
曹操の鈍っていた頭脳が回転を始める。魁斗には色々とおかしな部分があった。天然の魔法使いが現れる事はあるがあれ程特殊な魔法はどうやって学習した?誰かから教わったのではなく自然と使える様になったなどと言っていたがそれは魁斗の主観であり第三者の思惑があったのでは無いか?その存在は魔法を教えるだけ教えて何を目的としている?まさか気まぐれに教えた等と言うこともあるまい。それなら他にも魔法の使い手はいるだろうし、それだけ強力な魔法なら曹操も噂ぐらいは聞いた事があるはずだ。
「思考の誘導くらいならありえるだろう、新条アカネの治療を行う流れは唐突だったからな。だが、性根は奴自身の物だ。怒りや憎しみなら兎も角、勇気は精神操作で生み出せる物では無い。バックアップに関してはあのガラケーは子機でありどこかにある本体で魔法の精密な操作をしていると考えている……事前準備も無しにたかが2小節の呪文であんな事象を起こせてたまるか!!」
最後の言葉には冷静なゲオルクらしからぬ力が入っていた。魔法を生業とする者として思う所があったのだろう。
「つまりあの魔法を使用するには魁斗君クラスの特異な精神性を持った人間を用意し、バックアップをしているだろう何者かと協力体制を築かなければいけないわけだ。……うん、どうしようもないねこれは」
使い手を用意するだけなら最悪志願者を募って子孫を増やし魁斗と類似した精神性を持つ者を探すという手もある。だが裏で紐引く相手の目的が分からない状態で行うのはあまりにも意味が薄い。そもそも魁斗が乗り気ではない以上余計なヘイトを溜めるだけになるかもしれない。
「これらの事を踏まえてだが、奴は危険だ。有益な点は多く現状多大な利益を出しているがいつ我らに牙を剥くか分からない……いっそのこと
ゲオルクの懸念は正しい、仮に魁斗が裏切りを働いた場合幹部級以外では勝機は薄く、不意打ちを考えれば曹操以外で勝利できる人員は極少数だ。今このタイミングで
「確かに彼には危険な面もあるね。だが、彼を排除するなら他にも対象とするべき相手はいるんじゃ無いかな?そう、例えば聖書の神の遺志を宿すとされる神滅具を身に宿した超絶有能な美少女とかね!何せ組織全体の概要を知ってる上に最強の存在で止められる人員も居ないのだから!」
曹操は取り出した槍で肩を叩きケラケラと笑いながら話す。
結局の所可能性は可能性でしか無い、リスクなど当の昔から背負っているのだと。
そんな曹操を見てゲオルクはため息をつき肩の力を抜いて話し出す。
「有能な人間は皮算用で発注数を決める事は無いと思われるが?」
「ははは……ごめんなさい」
真面目な空気が完全に途絶えた瞬間だった。
曹操の失敗で被害を被ったのは製造班だけでは無い、多方面に負荷がかかっていたのである。ゲオルクは製造にリソースを割いた分の補填を行っていた。文句の一つや二つ言ってもいいだろう。
「おほん……魁斗君に関してだが仮に精神操作を受けたとしても私達には被害は出さないんじゃ無いかな?」
気を取り直し曹操は魁斗を勧誘した時の事を思い出す。
"君、お兄さんの事が嫌いだろう?何故あそこまでして守ろうとしたんだい?"
"そんな事が命を見捨てる理由になるのか?……優先順位は低いがな"
「彼は誇りある強さを持っている。精神操作など自力で跳ね除けるさ」
「理想論だな。実際に起きた時責任を取る気はあるのだろうな?」
「当然さ、私はリーダーだからね」
有能な人間を率いる事が出来るのだ、多少の不始末を引き受けるぐらいなんでも無い。
曹操はそう考えていた。
◇
後日、魁斗が回復した後の話。
「キングジョー(頭部・腕部のみ)を百体ぐらい作ったら当分ここにいる必要も無いよね?魁斗の所に遊びに行ってくるね」
「OK、少し話し合おうか?」
その後、防衛や生産に適した怪獣を作る事と自衛用の怪獣を用意する事を条件に許可を出した。当然仕事は増えた。
「私も休暇を取って旅行に行きますね、何かあったら連絡下さい」
「ジャンヌは何処に行くんだい?よければw「働け」……はい」
「私はあの魔法の研究だな、実用性はともかく興味深い。一月は籠ると思え」
「ゲオルク、流石になg「籠る」……はい」
二人は幹部であり、皺寄せはリーダーに行く物とする。
曹操は少しだけリーダーを辞めたくなった。
主人公「こいつ強いぞ!怖い!あっ勇気出てきた!(魔力増大)」
曹操「なんて勇敢な男なんだ!」
そりゃ曹操も勘違いする。
主人公の頭がおかしいのとマジレンジャーの魔法なんて普通はまともに使えないよって話。原作?あれはエリート家系の話だから……
愛とか勇気って基本有限だと思うんですよね。
こういう転生者の事を現地人が考察する話は好きです。
多分神様そこまで考えて無いと思うよ?