何やら不思議な女に連れられやってきた場所……幻想郷。自然豊かで、人外の存在が許された世界。
「こんな世界もあるんだな」
「私からしたら、アンタの方が変なんだけどね」
高所に位置する、幻想郷と“外”の境目である博麗神社にて私は街を眺めた。
隣に立つ女は博麗霊夢。黒髪と赤いリボン、赤い巫女服を着た奴で、服装のあまりの露出の多さに痴女かと思ったのだが、どうやら服は制服らしい。
私はといえば“ここらしく”という理由で藍色の着物を着、下駄なんて履いてみせているが、足は痛いし、なんだか変な着心地である。
「少しその気持ちは分かる。私も初めて知ったときには困惑したしな」
「……ま、確かに
この世界の構造は、独特なものとなっている。
科学技術が発展した、通称『外の世界』の中に、独立するような形で幻想郷は存在し、一つの世界として成立している。
ここへたどり着くには地獄やら冥界やら月やら……とにかく外の世界にとっても秘境中の秘境から頑張って入口を探すか、或いはこの世界を創ったという、狐の妖怪から招待させるしかない。
基本的に『外の世界』では外れ者たちの拠り所であるためか、発展の可能性がありつつ、誰しもは入れない程度の制限がかかっている、というわけである。
霊夢に実感がわかないのは仕方がない。
ここはある意味でひどく閉鎖的なコミュニティであり、その中に生きている者にとっては、異常でも常識になってしまうのだ。そもそも、この幻想郷と他の世界との関係を俯瞰視点で眺めたことがあるのは、初代の博麗の巫女か、もしくはあの女狐だろう。
「そういえば、あの女狐は?」
「……紫のこと? そんな呼び方してたら後で怖いわよ。
場所については、知らないわ、そんなこと。適当にぶらぶらしとけば見つかるんじゃない?」
うーん、なんて雑なんだろう。
「そういえば聞き忘れてたけど、アンタお賽銭は?」
「金があると思うか? 元ホームレスの私に」
あからさまに肩を落とす巫女。
なんだろう、このダメ人間みたいな雰囲気は。もしかしたらだらけ族なのかもしれない。
「その代わりといってはなんだが。私もここで働いてやろうか? 無償で」
その瞬間だった。
風が吹いたかと思えば、私は霊夢に手を握られていた。まるで動きが見えない。
というか、こういうときだけ素早くなるのはなんだ。どうなってるんだこいつは。
「ほんと? その言葉に嘘はないわね? 絶対ね?」
「え、あ……はぁ……」
こうして、私と博麗霊夢の奇妙な同棲生活が始まった。