TSした俺は、ヤリチン時代に堕とした妖達に攻守一転、百合百合される。   作:ホクホクなタイプのポテト

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孕めオラァ!

 

 

 

 男は、祓い屋(はらいや)であった。

 

 祓い屋——。表向きは、穢れを祓う仕事として親しまれる稼業である。しかし、其れは祓い屋の一面でしか無い。彼等は所謂裏稼業、専門としている分野が他に有る。

 

 祓い屋は、妖祓いを専門とする仕事であった。

 

 「妖なんて、科学的な理屈で説明出来てしまう」と、もはや妖怪等信じられなくなった現代。だが、其れは魑魅魍魎が時代に適応し、鳴りを潜めているからである。形を変え、姿を変え、人間社会に混じる彼等は、好機を窺い日夜、力を高めているのだ。再び夜を、人間から取り戻す為の力を高めているのだ。

 

 例を一つ挙げよう。

 

 『F県某市、児童5名同時行方不明事件』。あまりにも特異なスクープは、世間を騒がせた。後に同県山中で、四人が見つかり、話題に上がる事も減っていく事になる。

 だがしかし、忘れてはならないのが、一人は未だ行方不明のままである事である。

 大人達は、見つかった他四人に手掛かりを求めたのだが、期待に添う言葉は得られなかったとしている。何でも、彼等は揃って口にするのだという。——『大きな狐がA君を飲んでしまった』と。

 

 当初は警察犬を動員しても尚、手掛かり一つ得られなかった此の事件。であるが、四人が救出された“奇跡„に大いに貢献した者達がいた。——それが、祓い屋であった。

 

 男も事件解決に向けて、駆り出されていた。と言うよりも、四人を見つけ出したのは男であった。尤も、文献には残っていない。彼等を詮索する事は警察内部で禁忌とされているのである。

 

 男が、事件解決者である事から解る通り、男は実力者であった。其れも、祓い屋が確立して千年以上の歴史の中で最強なのではないかとする呼び声すら有る程であった。

 

 男が祓い屋として実力者である一方、男には他とは違う奇異な癖があった。

 

 ——男は物好きであった。

 

 絶大な力を誇示し、性に溺れた物好き。

 

 対象は専ら、自身が下した妖怪変化。何も考えず、腰を打ちつけ、自己満足な性の捌け口として快楽を貪れる妖オナホ。

 

 もはや、性行為が好きなのか、妖を犯す事が好きなのかも判らなくなった物好き。

 

 それが、男であった。

 

 

 

***

 

 

「今宵は満月。実に良い青姦日和だ。」

 

 

 男は怪しく笑う。

 

 月明かりの差す、無人の校舎。土足厳禁と綴られた張り紙を尻目に、男はずかずかと進んで行く。

 夜の校舎、警報器の赤い灯り、響く水音。其の何れもに目をくれず、ただ目的地に歩みを進める。

 

 今宵も今宵とて、妖祓いに繰り出した男。面倒臭がりのきらいの有る男であったが、妖祓いは別腹とばかりに舌舐めずりをする。

 

 

「ちょっと!待ちなさいよ。」

 

 

 皆の帰った、人気の無い校舎に、少女の声が跳ねた。

 

 凛とした声。其れでいて、生意気さを感じさせる声音。少女の二つ結びの髪が揺れると、理科室の振り子を思わせた。

 

 

「お前が遅いのが悪ぃんだよ。さっさとしろ、レンカ。」

 

 

 ——風波(カザナミ)レンカ。彼女もまた、祓い屋として稼業を継いだ少女であり、不運な事に気まぐれな男のペアを任された女でもある。

 

 男は、そんなアンラッキーな彼女の歩幅に合わせることも無い。幾度も繰り返したやり取りであったが、其の度に彼女は男に腹を立てるのだ。

 

 実力は認めていても、性格はゲロ以下であり、出来る事なら関わりたく無い、というのがレンカの考えであった。男の妖に対する所業を見ると尚の事。

 

 

「おうおう。居るぜぇ、コイツは。臭いくさい、妖の臭いがプンプンするねぇ。」

 

 

 男は、そう言うと愉しげに笑う。

 

 

「それも、女妖怪特有の男を惑わす、甘ぁい臭いだ。」

 

 

 此れ迄の経験則から導き出した予測に、男はより一層笑顔を増した。近頃、男妖怪ばかりで腹が減っていたのも理由であるが、囲っている女達に飽きていたのも理由であった。

 

 即ち、男は新たなる蜜壺に胸が高鳴っていたのである。

 

 

「アガガギャギャギグニ゛ャ゛ア゛——!!」

 

 

 廊下の向かい側、艶の有る黒髪の持ち主が咆える。此方を迎え撃つかのように、妖の方から姿を見せた。

 

 暗い瞳、無数の腕、血を口いっぱいに頬張ったかのような赤く染まった口内。人々の恐怖が詰まった容貌であるが、男を燃え上がらせるには充分であった。

 

 男の信条は至ってシンプル。

 

 女の姿であるのなら、下して、抱いて、啼かせてやる——。

 

 

「いいねぇ……。」

 

 

 男は、自身を殺そうと伸ばされた魔の手を祓い退けて行く。妖は、自分の攻撃をものともしないで向かって来る人間に、妖でありながら恐怖心を覚えた。

 

 

「警備員を食ったのか?紅いリップがはみ出てるぜ。化粧下手で、強い女。悪くねぇ。」

 

 

 妖は悟る。喧嘩を売る相手を間違えたのだと。男が捕食者であり、自身が被食者であるのだと。

 

 

「ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

 

 せめて耳を潰そうと咆哮する妖。其れは遅れているレンカであっても反射的に耳を塞いでしまう程の声量であった。

 しかし、男は厭わない。ただ目の前の女が欲しい、其れだけだったのだ。

 

 

「——ちょっと!大丈夫な、の……」

「オラァ!!首絞めると反応が良くなったな?感じてんのか?感じてんだろ、クソマゾ怪異が!!」

 

 

 レンカが事態を深刻に受け止め、駆けつけると、既に情事は始まっていた。女型の妖を組み敷く男。人々に恐れられる妖が、最も容易く物のように扱われている。

 

 

「何とか言えや!!俺の祓術次第でお前を潰す事だってできるんだぞ!?」

「ア゛ガガガガガガガガ————」

 

 

 此れ見よがしに力を見せ付ける男に、妖は呻く。意味を持たない、耳を劈くような叫声も、男にとっては睦言の類いでしか無かった。

 

 

「はぁ……ホント、本当に最悪!アンタ、マジ有り得ないから!!祓え!!早く祓いなさいよ!!」

 

 

 レンカに見せ付けるかのように情事を続ける男に対して、彼女も怒りの限りを露わにする。何度も見てきた光景に、新鮮な気持ちで地団駄を踏むレンカだったが、此のような馬鹿げた行為に慣れてしまわない為であった。

 

 またか、と呆れる気持ちと怒気が半々。最近のレンカの心は、そういう感じであった。

 

 

「まぁ、待てや。何なら、お前も混ざるか?」

「混ざるわけないでしょ!?」

 

 

 いっそのこと自分が祓ってしまおうと考えたレンカであったが、其の実、目の前の怪異は彼女では祓い切れない程の大妖でもあった。正に、生徒達の尾鰭が付いた事によって生まれた大妖だったのだ。

 

 其の脅威を容易く組み伏せる男に、小匙一杯の羨望もレンカには有った。

 

 

「もう、私帰るわよ?そんなに好きなら、怪異と仲良くおせっせしてなさい。」

 

 

 踵を返したレンカに対して、男は「おう。」と短く返答する。男の顔が少女の方を向く事は無かったが、端から其れ程親しい関係でも無いのもまた事実。所詮は祓い屋の若手として組まされたに過ぎない彼等にとって、古くからの付き合いは有れど会話は冷め切ってきていたのだった。

 

 

「此処か?此処が良いのか?」

「……テ、ヤル……。……ノ……テヤル。ノロ、テヤル……。ノロテヤル……ノロテヤル……ノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤルノロッテヤル!!」

「——あ?」

 

 

 壊れたレコードのように怨みを口にする妖に、流石に男も危機を察知する。

 

 同時に男は面白くないと思った。自身に少しも靡かない妖を、どうにかして屈服させてしまいたい。募る想いは山のように、溢れた想いは川のように男の行動を左右した。情に支配された男は、妖の事など気にも留めないで一心不乱に堕とそうとする。

 

 だから、反応が遅れた。

 

 普段であれば、決して犯さない失態によって妖の窮余の策を食らう事になったのだ。

 

 

「ちょ、ちょっと早く離れて——」

「な、何だこれ!?」

 

 

 普通では無いと戻って来たレンカ。男に歩み寄るが、彼を取り巻く暗雲にしどろもどろする。全てを出し尽くしたかのように蒸発した妖の躰は、もう何処にも無い。

 

 

「まさか、呪術……!?」

「けほっ、けほっ……なんなんだよ。」

 

 

 男を取り巻く正体不明の力の見当がついたレンカが、しきりに呟いた。

 

 ——呪術。

 

 祓い屋の使う祓術とは違う。

 妖の繰り出す妖術とも違う。

 

 今は無き、想いを具現化する力。其れが呪術。力量など関係無い、器など関係無い。生まれなど関係ない、育ちなど関係ない。誰もが成し得て誰も至らなかった力が呪術であった。

 

 如何して学校の怪異程度が呪術など……。これが現代妖怪の、想像が生んだ妖怪の力か、とレンカは独りごちた。

 

 

「どうなったんだ……?」

 

 

 男の物では無い、高い声が不安そうに呟いた。声がする方へ目を向けると、煙が晴れていくと同時に、此れ迄無かった少女の姿が明らかになっていく。月明かりが全てを照らし、全貌を露わにした。

 

 低い背、短い手足。長い髪、大きな瞳。小さい顔、細い指。

 

 現れたのは、何れも此れもが、男を構成する要素ではない、真逆の存在。

 

 

「は?」

 

 

 今まで男の居た場所に、少女が一人。

 

 此れではまるで、男が少女に変えられてしまったようではないか。

 

 

「あっ……!」

 

 

 事態を把握出来てない男を他所目に、レンカは唐突に理解した。——呪術によって、憎い男が女になったのだと。

 

 

「あっはっはっは。」

「はぁ……?」

 

 

 目尻に涙を溜める程に大きく笑うレンカ。自分の声に違和感を感じつつも、自身を取り巻く状況を理解出来ずにいる男。

 

 

「ざまぁ、ざまぁ。これで大好きなおせっせも出来ないわね。」

 

 

 レンカは元男の小さな手を引き、鏡の前に立たせた。光が反射して、始めのうちは映らない。

 

 次第に晴れる鏡面に、元男は目の前の姿を捉える。

 

 

「なに、これ?」

 

 

 妖術か。幻術か。現実を直視出来ずにいる元男に対して、レンカは残酷に憂さ晴らしに、突きつける。

 

 

「アンタ、女にされちゃったみたいね。御愁傷様、男生最後の情事は楽しかったかしら?——リンドウちゃん?」

 

 

 悪戯そうに笑うレンカ。今、此の時、確かに此れ迄の関係が逆転していたのだった。

 

 

「うそ、嘘だ……こんなの、嘘だあああ!!」

 

 

 時として、現実は数奇。

 

 存在すらも変え得る奇術によって、男の運命は大きく変わる。

 

 

 今此の時をもって、男——八神(ヤガミ)リンドウは、女の子としての生を歩む事となったのだった。

 

 

 

 





 ありがとう、奥先生。ありがとう、矢吹先生。

 追記.タイトル変更しました。

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