TSした俺は、ヤリチン時代に堕とした妖達に攻守一転、百合百合される。   作:ホクホクなタイプのポテト

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ケモミミ少女の頭の構造について、考えないようにしたい。

 

 

 

「ふわぁ……。ねみぃ……。」

 

 

 朝日を受けて、むくりと起き上がるリンドウ。未だ眠気を帯びた表情に、男の勇ましさは感じられない。

 リンドウは隣を確認する。少し人肌の温もり残る布団。其の様子から、ユキハレが自身を起こさないように、そっと抜け出したのだと悟った。

 

 

「ユキハレぇ……、ユキハレぇ……。」

 

 

 餌を求める雛鳥のように、人肌恋しく鳴き周る。寝惚け眼で歩む足取りは、屍食鬼のようにたどたどしい。自宅の廊下を進むにしては鈍かった。

 

 

「ユキハレ、腹減ったぁ……。」

 

 

 くぅくぅ鳴る腹の音に、耳を傾けてみれば、腹空く自分の弱さを知ったリンドウ。思えばいつの日も、ユキハレは食卓に一汁三菜を欠かさず、成長期の男の栄養バランスは勿論、好き飽きさえも考慮されていた。

 

 

「お?リンドー、ほんとに女の子になってんじゃん!」

 

 

 興奮した様子で、リンドウに声を掛けたのは、居間に我が物顔で座る女。崩された姿勢や、だらけた姿から、女が八神家と気の置けない関係である事が窺えた。

 

 黒い髪のワンポイントで、前髪の一束を桃色のメッシュにしている女。巻いた髪を二つ結びに、犬耳のように揺らしている。メイクや出立ちから、所謂“ギャル„である事は容易に想像が出来た。

 そして、女が身に纏った、其の香水では隠せぬ程の妖気が漏れ出していた。

 

 女も又、リンドウによって堕とされた大妖であったのだ——。

 

 

「耳も脚も、早いじゃないか。()()()()、誰から聞いたんだ?」

 

 

 ——八房(ヤツフサ)。其れが、女がリンドウから与えられた名であった。

 

 

「ユキハレが『夜分遅くに申し訳ありません』なんて言うもんだからね。」

「なんだぁ〜?心配してくれたのか?……まぁ、お前に限って言えば、そんな事ねぇか。」

「……まぁね。」

 

 

 ユキハレは冗談を言うような性格でも無かったので、ヤツフサは確認程度に顔を出した。普段はふらふら、風来坊のように生きるヤツフサも、此の時ばかりは足を急がせた。

 

 結果、ヤツフサの前に現れたのは、彼女の知るリンドウの口調で話す少女であったのだ。

 

 いつも、リンドウがヤツフサを茶化したような態度であっても、此の時ばかりは本当に心配したのだ。

 しかし、ヤツフサのキャラは、そうでは無い。男の前では包み隠すしか無かったのだった。

 

 

「まさか、ユキハレがねぇ……。」

「そうそう。」

 

 

 驚いたように呟いたリンドウに、ヤツフサも又同調する。事実、ユキハレは機械に疎く、ヤツフサ達、リンドウの女妖怪に、彼女の方から連絡を取る事等は無かった。

 

 けれど、非常事態。ユキハレは慣れない手つきで、どうにかこうにか救難信号を送ったのだった。

 

 

「ほんと驚いたよ。ユキハレって滅多にメッセージ送らないし、来ても自筆の紙を写メってポチッー、じゃん?」

 

 

 ユキハレはタップ入力もフリック入力も出来ない。だから、メッセージを送る際は予め紙に書いて写真を撮る、奇々怪々な方法を採用していた。提案者はヤツフサ。何度も入力方法を教えたが、点で駄目で、心折られたのは又別の話。

 因みに、電話機能にも辿り着けず、彼女にとって最新の連絡手段は、専ら黒電話であった。

 

 リンドウは「まぁな。」と吐き捨てて、ヤツフサに同情する。元男は、ユキハレの達筆とギャルギャルキュピキュピなヤツフサの相性が最低である事を知っていたのだった。

 

 

「メシ、食べてくだろ?」

 

 

 ヤツフサの前にどっかり座ったリンドウは、彼女に提案する。男の為に用意していた夕飯の残りであれば、女三人くらいなら容易く腹を膨らませる事が出来たのだ。其れ程までに、以前の男は大飯食らいであった。其れももう、過去の話となってしまったのだが。

 

 

「うんうん!食べてく、食べてく♪」

 

 

 日夜、テキトーな食事で済ましているヤツフサは、ユキハレの料理に舌鼓を打ったのだった。

 

 

***

 

 

「ぷはぁ、美味しかった!」

「御粗末様で御座います。」

 

 

 朝食としては少し重い、ユキハレの料理を平らげたヤツフサ。息を吐いて、至福の時間を堪能する。今現在、此の三人の中で最も食べる事の出来る人物は、女性としては長身のヤツフサだった。

 其れでも彼女はぺろりと完食。ユキハレの料理の前では、飢えた獣も鳴りを潜めたのだった。

 

 

「そうだ。折角来たんだしさ、リンドー、()()付き合ってよ。」

 

 

 リンドウに頼み事をするヤツフサ。彼女の提案を聞いて、元男は顔を顰めた。

 

 

「アレか?まだ昼だし、今の俺は女だぞ?」

「えー、いいじゃん。しようよ、やろうよ、気持ち良くなろうよ。」

 

 リンドウは心底面倒臭そうに呟いた。其れを受けたヤツフサは、駄々を捏ねる童のように振る舞って見せた。

 

 

「やだよ。」

「ちょっとだけだからさ。リンドーが、女の子になっちゃった事、()()()には黙っててあげるから。」

「……チッ。」

 

 

 ヤツフサが“あの娘„と強調した存在に、リンドウは直ぐに見当がついた。弱みを握られたような感覚に、辟易としながら、リンドウは舌打ちをする。

 アイツにバレるくらいなら良いかとも思うが、幾ら連絡手段が無いとはいえ、奴の耳は早く、遅かれ早かれバレてしまう。しかし、猶予。猶予は大事。

 

 リンドウは、ヤツフサの願いを聞き入れる事にした。

 

 

「はぁ……、行くか。ユキハレ、ちょっと出てくるわ。」

 

 

 腹を決めるリンドウ。

 

 一時は、『少女となった躰に、合ったサイズの衣服等持ち合わせていない』と逃げたリンドウ。其れに対して『そんな事も有ろうかと』とワンピースを出して見せるヤツフサ。しっかり少女丈の、清純派な白ワンピース。用意周到なヤツフサを睨むリンドウに、彼女は飄々とした様子で流していた。

 

 ユキハレの所持する着物も、リンドウの現在の身長には合ったであろうが、男ゆえに、直ぐに着物を着て出歩く事は出来なかっただろう。

 

 

「いってらっしゃいませ、旦那様。」

「あぁ、行ってくる。気は乗らないがな。」

 

 

 少女らしくワンピースを身に纏ったリンドウは、散歩に出掛けるような雰囲気であった。小さな足が通るのは、此れ又ヤツフサが持って来ていた小さな靴。

 

 女児用のシューズを履いたリンドウは、ペット用のリードを手に持つ。リードの先には四足の獣。側から見れば犬でしかない存在。

 リンドウが「行くぞ。」と小さく呟けば、足元の獣は「わん!」と陽気に鳴いて見せたのだった。

 

 

***

 

 

「近所の目とか、あんだけどなぁ……。」

 

 

 陽光の下に晒された少女は、一人愚痴る。

 

 

「いやぁ、女の子になったんだし、誰もリンドーだなんて気づかないよ♪」

 

 

 独り言であった筈が、其の言葉への返答が返って来る。声はリンドウの足元から。下を見遣れば犬が一匹。此れではまるで、犬が人の言葉を喋ったようだ。

 

 

「誰かに見られたら、どうすんだよ。黙ってろ、()()()()。」

 

 

 あくまで平然と、只の独り言のように前を向いてリンドウは呟く。

 

 リンドウが足元を歩く獣を「ヤツフサ」と呼んだように、事実、一見少女のペットでしかない其れこそがヤツフサ本人であったのだ。

 

 八房——。昼は人のように人間社会に溶け込み、夜は本性を現わし、獣として人を喰らう“人狼„。只の人狼には在らず、ヤツフサこそが人狼であり、人狼こそがヤツフサであった。

 

 だから彼女は、人間のように振る舞うのも上手かった。其れと同時に、時々本能が疼いては獣として生きざるを得ない。人狼の性だった。

 

 だからこそ、ヤツフサは犬ではなく、狼だったのだ。

 

 

「ふへぇ〜、気持ちいい。」

 

 

 そして、彼女は露出狂だったのだ。

 

 幸運にも彼女の癖は、獣の姿に成れる人狼と相性が良く、こうして間々素っ裸で出歩くのだ。 

 結果が見ての通り。いつものように露出プレイに勤しんでいた所を、男に見つかり毒牙にかけられたのだった。

 

 

「アンタ、何してんのよ……。」

 

 

 狼状態のヤツフサと、道行くリンドウの前から歩いて来たのは見知った少女。昨夜も仕事を共にした、つっけんどんな祓い屋の少女だ。

 

 

「レンカ、か。」

「げぇ……。」

 

 

 レンカはリンドウに声を掛ける。二人のプレイ(デート)に横槍が入り、ヤツフサは忌々しげに舌を垂らした。

 

 

「今、犬が喋らなかった?」

 

 

 疑うように、レンカは睨みを効かせる。当の本人、ヤツフサは知らぬ存ぜぬと犬真似をしてやり過ごそうとした。

 

 

「あぁ!あのさぁ!レンカは何してんだよ!?」

 

 

 触らぬ神に祟り無し。此方だって、触らせたくは無い。リンドウは必死に話題を逸らして、彼女の目的を聞き出したのだ。

 

 

「カバラ様が『顔を見せろと伝えておけ』って言うもんだから、態々来てやったのよ。急に女の子になったし、取り乱してると思ってたけど、あの雪女もいるものね。来て損したわ。」

 

 

 つまり、用事こそ有れど、心配していたから会いに来た。遠回りにそう告げてしまっているレンカであったが、リンドウも気付いてはいなかった。ただ足元の獣だけが、厄介者を見るかのように冷めた目をしているだけだったのだ。

 

 

「……と言うか、それって犬なの?……そもそも何だか妖気も出てるような。」

 

 

 敵を見るように、瞳をギラつかせたレンカ。いざという時は噛み殺してやろうと臨戦態勢に入ったヤツフサ。

 

 どうも厄介事に片足を突っ込んでいる気がしたレンカは、「まぁ、いいわ。」と話を切り上げた。

 

 

「さっきからアンタに尻尾、巻き付かせてるけど、その犬って、雌なの?」

「あぁ。」

「……そう。まぁ、たとえ犬だろうと、アンタが周りに雄なんて置いとかないか。」

「そうだけども。言い方ってもんがあんだろ。」

 

 

 そう、キッパリ言い切るレンカは、リンドウとの付き合いの長さからの偏見だった。しかし、男からしてみれば図星。何が楽しくて、むさ苦しい雄等侍らせておく必要が有るのか。

 だから、リンドウは男妖怪であれば問答無用で蹂躙して来たのだった。

 

 

「ふーん、懐いてるわね。“げい„は?」

「女だって言ってるだろ……?」

「芸は出来るのかって訊いてんのよ!!」

 

 

 いつものように男に調子を狂わせられるレンカ。会話の主導権は、いつもリンドウ。いつもと違うのは、リンドウの性格だけだった——。

 

 

「まぁ、出来んじゃないか?なぁ?」

 

 

 悪戯っ子のように足元のヤツフサを、横目に見るリンドウ。安易に芸をして見せろと言っているようだった。

 

 

「お手。」

「……わん。」

「お座り。」

「……わん。」

「ジャンプ。」

「……わん。」

 

 

 さも興味ないですよ、と振る舞うレンカも、何だか楽しくなって、命令して見せる。ヤツフサは、自分の男以外に如何して尻尾を振る必要が有るのかと嫌々だったが、男が言うのだから仕方ないと状況を飲み込んだのだった。

 

 

「結構、動けるのね……。まぁ、どうせ妖怪だし、知性くらいは有るってことか。」

 

 

 本来であれば祓わなければいけない存在を、レンカは見て見ぬ振りでやり過ごした。尤も、男の庇護下であれば、人々に害を及ぼすような事も有り得ないだろう。

 

 どちらが手懐けられたかも判らぬような、祓い屋の少女は満足したように切り上げた。

 

 

「もう行くわ。今日にでもカバラ様のとこ、行きなさいよ。じゃあ、伝えたから。」

 

 

 レンカは、緩んだ口元を悟られないように颯爽と去って行った。

 

 

「ほんとメンドーな祓い屋だった。あのさ、リンドー。此のまま、しっぽり露出プレイと洒落込まない?ウチ鬱憤溜まっちゃってさぁ?なんなら女の子の気持ち良い所も——。」

 

 

 そう言い、指を輪っかにして舌を出して誘惑するかの如く、ヤツフサは欲求を打ち明ける。こう煽れば、リンドウの情欲が爆発して、性欲の限りをぶつけてくれる事を、彼女は知っていたのだ。

 

 

「いや、やめとくわ。早く帰んないと、ユキハレが悲しむだろうし。」

「————っ!?」

 

 

 しかし、男は今までとは違った。

 

 リンドウの変化にヤツフサは吃驚する。以前の男であれば、ユキハレの気持ち等、考える事は無かった。

 だからヤツフサは雪女の少女の事を、クズな男に引っかかってしまった、哀れで可憐な少女。尽くすべき主人を違えた白雪のような少女だと思っていたのだ。

 

 其れが、男の方から歩み寄るだなんて。何時迄も待ち続けた悲劇のヒロインが報われたような感じだった。

 

 

「リンドー、なんか変わったね。」

「そりゃ、女になっちまったからな?」

「そーいう意味じゃない気がするんだけど……、まっ、いっか。」

 

 

 踵を返した男に引かれるままに、卑しい獣は歩いて行く。小さな少女に連れられながら、ヤツフサは思う。

 

 

 ——どうにか、男に戻ってもらわなきゃな。

 

 

 其れは其れとして、露出系ギャル狼のケモミミは嬉しそうにぴこぴこと動いていた。ヤツフサは、久方振りの主人との露出を楽しんだのだった。

 

 

 

 





 感想・評価・お気に入り、ありがとうございます。モチベ上がりまくりって感じです。感想にはgoodしか返せませんが、好き勝手書いてください。

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